第百五十四話 副ギルドマスターは苦労人
活動報告では書いたのですが、こちらでもご報告を。
テナントをフェルとドラちゃんに内緒と言うのはという声がけっこうあったので、長い付き合いだし確かにと思うところもあったので152話をほんの少し、153話の関係個所を書き直しました。
内緒にはしない方向で違和感なく書いたつもりですが、おかしなところがあればご指摘ください。
朝食を済ませると、ドラちゃんがプリン食いたいと言い出した。
『なぁ、昨日のプルプルしたやつくれ。あれ食いたい』
よっぽどプリンが気に入ったんだな。
『スイもケーキ食べたいなぁ』
スイもか。
甘い物スキだもんなぁ。
やるのは簡単だけど、ちゃんと制限決めないともっと欲しいもっと欲しいってなりそうだしな。
やりすぎるのも健康に悪いだろうし。
「うーん、それじゃあげるけど、プリンとかケーキとかの甘いものは1日に1人2個だからね。これはフェルもドラちゃんもスイも一緒だぞ」
『えー2個かよー。もうちょっとくれよー』
『2個だけかぁ』
ドラちゃんもスイもちょっと不満そう。
でもここは心を鬼にしないとね。
「2個じゃなくって1個でもいいんだぞ」
『いやいや、2個でいい。うん、2個だな』
『スイも2個でいいのー』
うん、これで解決。
『俺、プルプルしたのすぐ1個食いたい』
『スイはどうしよっかなぁ~。うーん、スイも1個ちょうだい。昨日のとは違うケーキがいいなぁ』
『我は白くて赤い果実が載っているものをくれ』
あ、みんな早速1個ずつ食うんだね。
というか、フェル、しれっと入ってきてるぜ。
まぁいいけどさ。
俺はネットスーパーの不三家でカスタードプリンとイチゴのショートケーキ、それからスイの分にイチゴのムースケーキを購入した。
「はいよ」
『おおっ、プルプルしたのだっ』
ドラちゃんは待望のプリンを口の回りをベチャベチャにしながら食ってるよ。
『うむ』
おわ、フェルは一口でショートケーキ食っちゃった。
『わー、食べたこと無いやつだー。あ、これ、甘酸っぱくておいしいよ!』
イチゴのムースケーキもスイの口に合ったようで良かったよ。
さてさて、みんなが食後のデザート食い終わったら、冒険者ギルドに行きますか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺たちは今、冒険者ギルドに来ていた。
冒険者ギルドに入ったら、職員から連絡が行ったみたいでエルランドさんがすっ飛んできた。
「ささ、私の部屋へ」
エルランドさんに連れられていつものギルドマスターの部屋へ。
「それで、今回はダンジョンのドロップ品等の買取ということでよろしいですか?」
「はい。それでですね、思ったより大量にありまして……」
「ほう、それほどですか。ちなみにどんな物があるんですか? うちとしても、それによって買取如何が決まりますし」
確かにエルランドさんの言うとおりだね。
全部はまず無理だし、エルランドさんが欲しいって言ってた皮だって全部買取は難しいだろうしね。
逆に宝石とかマジックアイテムは買取してもらえるかもしれない。
昨日確認したドロップ品やらのリストは確かメモをとったのがあったはず……。
お、あったあった。
メモを見ながらドロップ品やらのリストを読み上げていく。
「えーとですね、ヴェノムタランチュラの毒袋×3、オークの肉×56、オークの睾丸×31、オークの皮×125、リザードマンの皮×63、オーガの皮×102、オーガの魔石(極小)×21、トロールの皮×113枚…………(中略)…………解毒のネックレス×1です」
魔力回復の指輪は俺が付けてるから外した。
それから魔剣カラドボルグについてはものがものだから、ちょっと伏せておいて、最後に聞けそうだったら聞いてみることにした。
あまりにも長いリストに、途中からエルランドさんがあんぐり口を開けて唖然としてたよ。
美形エルフの間抜け面はちょっと笑えた。
「す、凄まじい量ですね……」
いやぁ、みんなが強いもんで。
みんな喜々として倒してたから、ドロップ品がわんさか手に入ったもんなぁ。
俺はダンジョンでの出来事を思い返す。
「私のいたパーティーもあのダンジョンの29階層まではクリアして、かなりの量のドロップ品やマジックアイテムを手に入れたのですがねぇ。ムコーダさんの足元にも及びませんよ」
「いやぁ、私というよりフェルとドラちゃんとスイがすごいですからね。私はほとんどドロップ品の回収係のようなものでした」
悲しいかな実際にそうでしたからねぇ。
うん、でもちょっとは戦ったんだよ、ちょっとはさ。
「ドラちゃんの雄姿…………見たかったですねぇ。チッ、あの副ギルドマスターさえいなければすぐにでも後を追ったというのに……悔しい」
チッて、エルランドさん……。
追って来られても困るだけだからね。
ドランの副ギルドマスターって本当に苦労してるね。
「まぁ、その話はさておき、買取の件ですがさすがにすべては無理ですね」
そうだろうな、あの量だしね。
「しかし、ダンジョン産の皮は需要が高いですしできるだけ買取させていただきたいと思います。オークの皮とリザードマンの皮、それからオーガの皮は全部買取らせていただきたいですね。それにトロールの皮も欲しいですし…………うーん、これはちょっと副ギルドマスターとも相談して何を買取させていただくか決めることになりそうですね。副ギルドマスターに予算の使い過ぎだって怒られたし(ボソッ)」
あ、やっぱ怒られたんだ。
自分で金受け取っておいてなんだけど、この人、自分の欲望で金使い過ぎてた感じしたもんなぁ。
主に地竜関連で。
「それはかまいませんよ。あ、さっきのリストにあった肉だけはこっちで消費しちゃうので買取から外してくださいね。あ、あと……」
俺はアイテムボックスからマジックバッグの(小)(中)を出した。
「なぁ、フェル。このマジックバッグって時間経過とかどうなってる? フェルの鑑定で分かるか?」
いろいろ考えたら、このマジックバッグの時間経過が普通にあるようだったら料理のときに使えそうだなって思ったんだよ。
俺のアイテムボックスって時間経過がないからさ、それはそれで物を保存する場合なんかはすごく便利なんだけど、料理のときは困る場合もあるんだ。
料理を作るときに味を染み込ませたり、一晩寝かせた方が美味しいもんなんかはね。
いつも味を染み込ませるときは肉にフォークで穴を開けたりして短時間でも味が染み込むようにしてたし、一晩寝かせた方が美味いものは宿だったら寝るときに机に出して置いたりしてたんだけど、マジックバッグの時間経過がどうかによって、料理のときにマジックバッグはかなり使える。
味噌漬けなんかも大量に作ってマジックバッグで保管しておいて、イイ感じに漬かったところで俺のアイテムボックスに移動とかさいろいろ使えそうなんだよ。
俺のアイテムボックスは異世界人特典みたいなもんだから、かなり良く出来てるんだと思う。
それを考えると、マジックバッグの時間経過ありそうなんだよねぇ。
俺の鑑定ではそこまでわからなかったからフェルにお願いだ。
『どれ、見てやろう。こちらの(小)の方は時間経過は普段と変わらぬから、要はたくさん物の入る袋ということだ。こちらの(中)も時間経過は普段と変わらぬな』
なるほど、両方とも時間経過は普段と変わらないのか。
ならば(中)の方を手元に置いて(小)の方を買取に出そう。
「エルランドさん、ってどうしたんですか?」
エルランドさんに声をかけると、目を見開いてフェルを凝視していた。
「あ、あの、まさか、そのフェンリルは、か、鑑定ができるのですか?」
あ~、そうか。
確か鑑定スキルがあるのはおとぎ話に出てくる異世界から召喚された勇者くらいなものって話だったっけ。
でもさ、フェルだって……。
「あーいや、こう見えて一応伝説の魔獣ですから」
『ぬ、一応とはなんだ一応とは』
いや、ほら俺の場合いろいろ見聞きしちゃってるからさ。
フェルが食い物に釣られて従魔契約結んだり、食いしん坊キャラだったりするの知ってるし。
「あ、いや、そう言われればそうですね。普通は見ることすら叶わない伝説の魔獣フェンリルなんですもんね」
そうそう。
エルランドさんもこの光景にちょっと麻痺してきてるね。
フェンリルとピクシードラゴンと特殊個体のスライムがいる風景にさ。
「それでですね、さっきのリストの中からマジックバッグ(中)も外しておいてもらいたいです」
「肉とマジックバッグ(中)ですね。それ以外は買取対象と考えてよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
これなら、あれについて話してみても大丈夫かも。