第百四十六話 ジャイアントサンドゴーレム
砂漠地帯の夜が明ける。
朝は簡単にみんなにはブラッディホーンブルのステーキ丼を作ってやり、俺はわかめとじゃこのおにぎりの素を入れて作ったおにぎりで済ませた。
スポーツドリンクで水分をたっぷりとった後、再び俺たち一行は砂漠を進んでいった。
昨日と同じく、ジャイアントサンドスコーピオンとサソリ軍団やサンドワームが襲ってくるがすべて倒してドロップ品を回収して砂漠をどんどん進んでいく。
途中の昼飯は、オーク肉でさっぱりとステーキ醤油おろし風味のトンテキ丼を作った。
そして、ネットスーパーでちょっと高めのアイスクリームを買って、食後のデザートに出してやる。
『おお、これは冷たくて美味いな。この暑さにうんざりしていたところだが、これは良い』
『冷て~生き返るぜッ』
『冷たくって甘くって美味し~。スイもっとこれ食べたいなー』
暑さでみんな無口になってたけど、冷たくて甘いアイスクリームで少しは元気がでたみたいだ。
食後の休憩を少しとったら、また過酷な砂漠地帯を突き進んでいった。
『何かデカいヘビの魔物が来るぞっ』
警戒していたドラちゃんがそう言った。
ドラちゃんが見つめる方角を見ると、横這いに3メートルくらいのデカいヘビが近づいてくる。
【 デスサイドワインダー 】
Aランクの魔物。
Aランクの魔物か。
『俺がやるぜ!』
ザシュッ―――。
デスサイドワインダーの頭が吹っ飛んだ。
ドラちゃんが風魔法を放ち、頭を切り飛ばしたようだ。
「おお、さすがドラちゃん」
『へへっ、まあな』
デスサイドワインダーのドロップ品の魔石と毒袋、それから皮を拾いアイテムボックスに入れる。
それからも襲い来るジャイアントサンドスコーピオンのサソリ軍団やサンドワーム、デスサイドワインダーを蹴散らしてドロップ品を回収しながら、先へ先へと砂漠地帯を突き進んでいった。
再び砂漠での寒い夜を過ごし、日が昇ってからは砂の大地をドロップ品を回収しながら階層主目指して進んでいった。
『前方から強い気配がする。階層主だろう。思ったよりも早く着いたぞ。日暮れまではまだ少し時間がある。このまま階層主と戦うぞ』
フェルがそう言い終わると同時に、階層主が姿を現した。
「グオオォォォッ」
砂が集まって出来た全長20メートルはありそうな人型の魔物だ。
【 ジャイアントサンドゴーレム 】
Sランクの魔物。
26・27・28階層に続いてここの階層主もやっぱりSランクか。
『ドラ、スイ、行くぞッ』
フェルの呼びかけに応えるように、ドラちゃんが体に赤々燃える炎をまとっていく。
革鞄の中にいたスイは、フェルの呼びかけに飛び出していった。
俺はもちろん後方で待機だ。
『ヒャッハー、行くぜーッ!』
ドシュッ―――。
火魔法をまとったドラちゃんがジャイアントサンドゴーレムの胴体に突っ込んでいった。
ジャイアントサンドゴーレムの胴体に穴が開いたが……。
すぐさま穴に砂が集まり穴を修復してしまった。
『あれー?』
もう一度とドラちゃんがジャイアントサンドゴーレムに突っ込もうとした。
『ドラッ、無駄だ。彼奴は砂で出来ている。穴はすぐに修復されるぞッ』
あのジャイアントサンドゴーレムは砂の集合体だ。
欠損部分が出来てもすぐに修復してしまう。
確かにドラちゃんの突っ込んで風穴を開けるような攻撃は不利だろう。
「水だッ! ドラちゃんッ、スイッ、ジャイアントサンドゴーレムにたっぷりと水をかけるんだッ!」
俺はそう叫んだ。
水を含んだ砂ならば、乾いたサラサラの砂のようにそうやすやすと修復は出来まい。
『おうっ、水だな』
『あるじー、分かったー』
ドラちゃんとスイがジャイアントサンドゴーレムに向かって水魔法で放水。
ジャイアントサンドゴーレムが水をたっぷり含んだところで……。
「フェルッ、雷魔法をぶちかませッ!」
『分かっておるわッ』
ドーンッ、バリバリバリバリィィィッ―――。
ジャイアントサンドゴーレムの脳天に稲妻が走った。
「グガァァァァァァァァァァッ」
ドッシーンッ。
ジャイアントサンドゴーレムが砂を舞い上げながら倒れる。
砂煙が巻き上がりみんなの姿が見えなくなった。
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ。フェル、ドラちゃん、スイ、大丈夫かー?!」
『フンッ、大丈夫に決まっておろう』
『おうッ、大丈夫だー』
『あるじー、スイいるよー』
砂煙が収まりみんなの姿が見えてくる。
砂をかぶって少し白っぽくなっていた。
「あはは、みんな砂かぶって白くなってるぞ」
『ぬ、そういうお主だって砂だらけではないか』
確かに砂っぽいね。
俺はジャンプして体についた砂を落としていった。
フェルもブルブルと体をふるって砂を落としている。
ドラちゃんは空中をアクロバット飛行して体についた砂を落としていた。
スイもブルブルブルブル体を振動させて砂を落としている。
俺たちが体から砂を落としている間に、ジャイアントサンドゴーレムは消えていた。
後に残ったドロップ品は……。
デカめの魔石、それから大小合わせて5個のダイヤモンドだった。
さすがSランクだな。
『あるじー、ここに何かあるよー』
スイが何かを見つけたみたいだ。
ポンポン跳ねるスイの近くまで行く。
そこにあったのは、半分砂に埋もれた宝箱だった。
「スイ、よくみつけたな」
『えへへ~』
とりあえず宝箱を鑑定してみる。
【 宝 箱 】
開けると同時に毒ガスが噴き出し、その直後に風魔法が放たれるよう仕掛けられた宝箱。
また毒ガスが仕掛けられてるわ。
ここの宝箱って何でみんな毒ガスが仕掛けられてるんだろうね。
意地悪いっていうか何というか。
たまにはすんなり開けられる宝箱があってもいいと思うんだ、ダンジョンさんよ。
この宝箱は風魔法が放たれるよう仕掛けられてるってことは、毒ガス拡散させるのか、ウィンドカッターみたいな風の刃が飛んでくるのか……このダンジョンだと両方ってのも考えられるよな。
まぁ、いいや。
俺には完全防御と状態異常無効化があるし。
いざ、開けるぞ。
カチャ、キィー。
ブシュー。
宝箱を開けた途端に赤黒い煙が噴き出して来た。
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ……」
煙の多さに咽ていると、ボワっと風が吹きあがる。
カキンッ、カキンッ、カキンッ、カキンッ、カキンッ―――。
風の刃が俺の完全防御によって弾かれたようだ。
…………はぁ、毒ガス拡散と風の刃、両方だったわ。
気を取り直して、宝箱の中身だ中身。
宝箱の中を覗き込むと、ネックレスと布の袋、それから宝石が入っていた。
1つずつ鑑定していく。
【 解毒のネックレス……ありとあらゆる毒を無効化するマジックアイテム 】
【 マジックバッグ(中)……麻袋(大)が20個入る大きさのマジックバッグ 】
【 イエローダイヤモンド……涙型にカットされた大粒のイエローダイヤモンド 】
……微妙だね。
解毒のネックレスって、俺ってば状態異常無効化持ってるし。
マジックバッグ(中)だって、俺ほぼ無限のアイテムボックスあるし。
ま、まぁ、おそらく買取してもらう方向になると思うけど、地上に出て他のドロップ品やらを確認してどうするか決めるときにゆっくり考えよう。
『おい、確認はいいか。早く下に行くぞ』
「はいよ」
岩に描かれた魔法陣に魔力を流し、俺たちはこのダンジョンの最下層の30階層へと転移した。
明日いよいよ最下層30階層です。
これでダンジョン内での話は終わると思います。