第百三十七話 ポークチャップバーガー
今日は137話と138話更新です。
フェルもドラちゃんもスイも起きて飯を待っている。
飯を食ったらいよいよボス部屋突入だ。
昨日のテンペストのみなさんの状況を見たり話を聞いたら、不安が無いと言えば嘘になる。
だけど、今は腹を空かせたみんなに飯を用意するのが先決だな。
今日は何にしようか……。
朝から揚げ物は却下だろ、うーん、ポークチャップでいいか。
俺はポークチャップサンドにするつもりだけど、みんなはどうするかな?
聞いてみたら、フェルは肉だけがいいってことだから皿にポークチャップを山盛りにして出してあげた。
ドラちゃんとスイはパンに挟んでポークチャップサンドがいいってことだから作っていく。
丸い黒パンを水平に切ったら、下の黒パンの上に千切りキャベツを挟んでその上にポークチャップを載せて、ポークチャップサンドの出来上がりだ。
これはポークチャップサンドっていうよりポークチャップバーガーか。
それをとりあえず5個ずつ作ってドラちゃんとスイに。
ドラちゃんは器用に前足で持ってかぶりついてるよ。
『この少し酸味のある味付けの肉が美味いなー』
『ホントだね。美味しいね~』
ドラちゃんもスイもポークチャップバーガー気に入ってもらえたようだ。
さて俺も食おうかと思ったところでフェルの『おかわり』が。
フェルの皿にまた山盛りポークチャップを盛ってやったよ。
フェルは肉だけがいいっていうからポークチャップだけだけど、ガツガツ食ってる。
本当に肉好きだねぇ。
さて、俺も食うぞ。
ガブリ。
黒パンとキャベツとポークチャップって案外合うね。
やっぱこのケチャップベースのたれが美味い。
それに黒パンが噛み応えあるからこれ1つで十分腹一杯になりそうだってのもいいね。
もう一口と、ポークチャップバーガーにかぶりつこうとすると熱い視線を感じた。
視線の先を見ると……。
「「「「「「ゴクリ」」」」」」
テンペストのみなさんが俺をというか、ポークチャップバーガーを凝視していた。
えーっと、何か食いにくいんだけども……。
「ダンジョンの中で食い物がどれだけ大事なもんかは分かってる。だが、もし、もしも余裕があるなら……代金は払うから、俺たちにもそれを分けてくれないか?」
テンペストのリーダーの男がそう言った。
「それはいいですけど……」
「そ、そうかっ。ありがたい。それで代金はいくらになる?」
そうなんだよ、代金払うって言われてもいくらにしたらいいだろう。
銅貨5枚くらいか?
いや、バーガー1個で銅貨5枚は高いかなぁ?
「ダンジョンの中ってことを考えて、銀貨1枚でどうだろう?」
「え?」
「やはり銀貨1枚では安すぎるか……では」
「い、いえいえっ、ぎ、銀貨1枚でいいです」
安すぎるとかじゃなくって、バーガー1個で銀貨1枚って言うもんだから驚いてたんだけど。
「それじゃ、すまんがこれで6人分お願いする」
リーダーの男がメンバーから銀貨1枚ずつ徴収して、銀貨6枚渡してきた。
いいのかなぁ、バーガー1個で銀貨1枚もとっちゃって。
うーん、あ、そうだコーヒー飲もうと思ってお湯をアイテムボックスにしまってあるし、確かインスタントのコンソメスープがあったから、それをおまけでつけてやろう。
それでもちょっと高過ぎるような気もするけど、そこはダンジョンの中ってことでいいかな。
6人分のポークチャップバーガーとインスタントのコンソメスープを作ってテンペストのみんなに出してやった。
もちろんコンソメスープは見えないようにこっそり作ったよ。
「ああ、ウメェ……」
「ダンジョンの中で温かいもんが食えるって最高だな」
「今までは固いパンか塩辛い干し肉だけだったんですもの……。それに比べたら天と地の差だわ」
「確かに。ダンジョンに潜ってて何が1番辛いかって聞かれれば、食いもんだもんな……」
「久しぶりにまともなものを食べた気がするわ」
「やっぱアイテムボックス持ちはいいな。ダンジョンの中でこんな美味いもん食えるのは羨ましいぜ」
テンペストのメンバーはポークチャップバーガーを食いながら、そんなことを口々にしている。
見えちゃいけないものが見えていたダミアンさんも、すっかり元気になったみたいで、がっつりポークチャップバーガー食ってるよ。
回復早いな。
というか、うちのスイちゃんが作ったスイ特製上級ポーションの効果がすごいのかもしんないけど。
『おかわりをくれ』
『あるじー、おかわり』
あ、フェルとスイのおかわりだ。
ってもうポークチャップなくなっちゃったぜ。
「あー、さっきのポークチャップはなくなっちゃったから、牛丼ね」
『何でもいいから、早くしろ』
『あるじが作ったのはみんな美味しいから何でもいいよー』
フェルとスイにブラッディホーンブルの牛丼特盛りをだしてやる。
牛丼特盛りを二度ほどおかわりして、フェルもスイもようやく腹いっぱいになったようだ。
「それじゃ、世話になったな。俺たちは地上に戻るとするよ」
いえいえ、こちらこそ。
ダンジョン内でなぜか小遣い稼ぎが出来ちゃったよ。
「お気をつけて」
そう言うと「あんたもな」と言ってテンペストのみんなが去っていった。
『おい、我らも行くぞ』
い、いよいよか。
フェルの声を合図に、俺たちは22階層のボス部屋へと向かった。