第百十四話 ヴェノムタランチュラの報酬とドランのギルドマスター
今日は114話と115話更新です。
朝も早いうちに俺たちは冒険者ギルドへと出向いた。
ヴェノムタランチュラの依頼報酬やら買取代金やらを受け取ることになっている。
受付でギルドカードを見せると「ギルドマスターをお呼びしますので少々お待ちください」と言って受付嬢が席を立った。
少しするとロドルフォさんがやって来る。
「おう、早いな。んじゃ、倉庫へ行くぞい」
ロドルフォさんに付いて倉庫に向かう。
倉庫にはこの間の解体担当の青年がいた。
「チーッス。この間のばっちり終わってるっすよ」
青年の前の作業台の上にはヴェノムタランチュラの足が山積みになっていた。
うう、ちょっとグロいな。
「じゃ、これがヴェノムタランチュラの足っすね」
俺はヴェノムタランチュラの足をアイテムボックスにしまった。
「それじゃあ儂の方から内訳を説明するぞい。ブルーノ商会にもがんばってもらったからの、今回の依頼の報酬は金貨320枚じゃ。それから買取の方がヴェノムタランチュラ8匹分の糸と毒袋で金貨440枚とジャイアントセンチピードの殻と魔石で金貨230枚じゃな。〆て金貨990枚じゃな。よいしょと、ほれ受けとれい」
ロドルフォさんがドサッ、ドサッ、ドサッと麻袋を俺の目の前に置いた。
何かもう驚かなくなってきたな。
俺は金貨の入った麻袋をアイテムボックスに入れた。
「それで、この後はどうするんじゃ?」
「すぐにドランへ向かおうかと思ってます」
「そうかぁ、残念だのう」
ロドルフォさんがすごく残念そうな顔をしている。
俺としては、この街にもうちょっといてもいいんだけど、みんなダンジョン行きを望んでるみたいなんですよね。
俺としてはダンジョン都市の方こそさっと通り抜けたいところなんだけど。
「フェルたちがものすごく楽しみにしてるみたいで、早く行きたいって言ってるもんで」
「フェンリルにピクシードラゴンにべらぼうに強いスライムか。こりゃお主たちが初攻略ってことも考えられるのう」
いやいやいや、さすがにそれはないでしょ。
…………だよね?
「そうそう、お主には言っておかねばならんことがあるんだった。ほれ、この間話した儂の昔の仲間のこと憶えておるか?」
「ああ、ドラゴンに詳しいと言っていた方ですよね?」
ロドルフォさんの昔の仲間で、ドラゴンスレイヤーに憧れてドラゴンについてあれこれ調べ尽くした人がいるんだって話だった。
その人はドラゴンについていろいろ調べ尽くしたのが高じて自分でドラゴン図鑑を作っちゃったとも言ってたな。
「そうだ。其奴なぁ、今はドランのギルドマスターやってるんじゃ」
へー、昔の仲間って言うんだから同じパーティーだったのかも。
ロドルフォさんもその人もギルドマスターにまで上り詰めたんだから、相当優秀なパーティーだったんだろうな。
「それでなぁ……」
ん?豪快なロドルフォさんにしては歯切れが悪いね。
「あいつは話したとおり、ドラゴンについてあれこれ調べ尽くした奴じゃ。ドラゴンと聞けば、いろんなところへ出向いて行ったような奴なんじゃ。そこにお主の……」
ロドルフォさんの視線がドラちゃんに。
ああ、そうか。
そこまでドラゴンにこだわりのある人ならドラちゃんを見たらね……。
「ピクシードラゴンを見たらってことですか」
「うむ。あいつがこのピクシードラゴンを目にしたらと思うとな……。間違いなく狂喜乱舞するはずじゃ。一応事前に連絡は入れておくがのう……。はぁ、念のために言っておくが、悪い奴ではないんじゃぞ。ただ、ドラゴンのことになると見境がなくなるっちゅうかなぁ」
ロドルフォさん、苦労したみたいですね。
うーん、そういう人なのかぁ。
ちょっと面倒な人っぽいね。
ドランのギルドマスターだから無下にもできないし。
ドラゴンのこといろいろ聞かれても俺はわからんよ。
ドラちゃんの通訳くらいならやってあげるけどさ。
「まぁ、そこはなるようにしかならないと思うんで……」
冒険者ギルドに行かないわけにもいかないしねぇ。
行ってみて本当に面倒くさい人なら、どうしても必要なとき以外は極力冒険者ギルドには近寄らないように過ごすしかないよな。
「お主に迷惑はかけるなということはよーく言い聞かせとくからのう。すまんがよろしく頼むぞい」
ちょっと不安ではあるけど、行ってみないと何にもわからんしね。
あ…………地竜もいるんだった。
ドランなら解体できるかもしれないからって、確かカレーリナのギルドマスターがドランのギルドマスターに連絡しておくって言っていたような気が……。
だ、大丈夫か?
ドランのギルドマスター(どんな人かはわからないけど)が手薬煉引いて待っている姿が頭に浮かんだぜ。