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おめでとう、俺は美少女に進化した。  作者: 和久井 透夏
第5章 昼ドラバレンタイン
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第31話 かーわーいーいー

 どうやら、優司と優奈はバレンタイン当日、どうしてもすばると会いたいらしい。

 連日チョコレート菓子を作ったとツイッターで報告しているし、二人も実物食べてみたくなったのかな、とは流石に考えない。


 年末の二人の相談の内容を思い出せば、なにかしらの下心があるとしか思えない。

 すばるには一応好きな人がいるという事にしてあるが、相手は彼女持ちの設定である以上、相手が彼女と別れない限りはすばるがそいつとくっつく可能性は今の所低い。


 なので今のうちにアプローチをしておこうということなのだろう。

 単純に義理でもいいから好きな相手からチョコレートを貰いたいという理由なら、まだ微笑ましいが……。


 帰省した時、朝倉すばるという人物について、興奮気味に熱く語っていた優奈と優司を思い出す。

 二人から告白とかされたらどうしよう……。


 正体を明かせない以上、付き合うことなんてできないが、それでせっかく仲良くなった二人と気まずくなるのも嫌だ。

 俺は今みたいに二人と一緒にイベントに参加したり、プライベートでもたまに会って遊んだりしている位が一番好きなのに。

 

 本当は、朝倉すばるという嘘をつかずに、本当の俺が二人とそんな風に仲良くなりたい。

 だけど、今まで自分から友達を作ったり自分から相手に歩み寄ろうとした経験の乏しい俺は、結局いつも受身に回ってしまう。


 そうだ、今後優司と優奈がすばるに告白して気まずくなったとしても、本当の方の俺が二人と仲良くなれれば、きっと俺は寂しくない。


 すばるとの接触が減れば、今のように二人に嘘をついている罪悪感に苛まれる事も、いつ嘘がバレやしないかと冷や冷やする事もなくなるだろう。


 そう考えれば、二人がすばるに告白するというのも、無理に止める必要は無いかもしれない。

 むしろ、優司と優奈がすばるの事を諦めるまでの間、恋愛相談の相手をすれば、二人との距離も縮まるだろう。


 なんだ、そんなに悩む事無かったじゃないか。

 自分の中で結論を出してすっきりしたところで、再び優奈からメールが来た。


 直接会って相談したい事があるので、今度の土曜か日曜日、実家に戻って来れないかとの事だった。

 優司や優奈の相談には積極的に乗ろうと決めた直後だった事もあり、俺は二つ返事でその申し出を了承し、今週の土曜日に実家に戻る事にした。

 こんな時、実家が同じ都内で良かったと思う。


 そして約束の土曜日、俺は優奈の部屋で優奈と優司の迷推理とトンデモ作戦に絶句していた。

 まず、なぜかすばるの片思いの相手は俺という事になっていた。


「すばるさんが言ってた好きな人の特徴は、可愛い系で、すばるさんより少し背が低くて、人見知りっぽいけど打ち解けると話しやすい、同じ大学に通ってて多分同い年の男の人……つまり、お兄ちゃんよ!」

 自信満々に言い切る優奈に、なんでだよ! と、俺はつっこみを入れた。


「だって、身長はすばるさんより少し低めだし、同じ大学だし、私も初めてお兄ちゃんに会った時はちょっと引っ込み思案な感じかな、と思ったけど、話してみるとそうでもなかったし、多分同い年って事は同学年ってことでしょ? すばるさんもお兄ちゃんも今年一年生だし」


 優奈は得意気にカーペットの上に胡坐をかいて座っている俺の周りをうろうろしながら説明をする。

「それですばるさんと面識があるなんて、もうお兄ちゃんで決定じゃない!」

 参ったかと言わんばかりに俺を指差し力強く優奈が言い切る。


「いやでも可愛い系じゃないだろ俺……」

 そもそも、同じ人間なんだから身長が違うわけあるか! と、心の中で更に付け足すが、それは単にすばるの時にヒールの高い靴をよく履いていたからかもしれない。


「確かにお兄ちゃんはかなり目付きが悪いけれど、それ以外は女の子みたいに華奢だし、童顔だし、肌綺麗だし、身長低いし、確かに言われてみれば可愛い系と言えなくもないかも」

 俺との間に手をかざして目を隠しながら唸るように優奈が言う。


 呆れる俺を他所に優奈は続ける。

「目はカラコンとか付け睫毛とかでどうとでもいじれるし、声もハスキーな女の人と言えばいけそうだし……ねえお兄ちゃん、今度ちょっと私の高校の制服着てみない? メイクとヘアアレンジ次第で結構いい線行くかもしんない」

 妙にそわそわした様子で優奈が言う。


「確かに、兄さん最近髪伸びてきたから、目をどうにかすれば、ショートヘアの女の子でもいけるかも……」

 最近は伸ばしっぱなしでそろそろ結べそうになってきている俺の髪を見ながら、優司まで優奈の言葉に同意する。


 だんだんと話がまずい方向に来ていると気付いた俺は、慌てて絶対に着ないからなと声を上げる。

「大体なんだよ、さっきから人の事背が低いとか貧相とか女みたいとか頼りないとか言いやがって、なんだよ、優司だけじゃなく最近は優奈まですくすく育ちやがって……」


 なんとか話をそらそうと、膝を抱えてわざといじけたフリをしてみる。

 あくまでフリである。言っている事は本心ではあるが、実際そこまで卑屈にはなってはいない。

 ……と、思う。


「そこまで言ってないけども……え、なになに、お兄ちゃん実は身長の事気にしてたの?」

 優奈はおもしろいおもちゃを見つけたとばかりに、

「なにそれ~、かーわーいーいー」

 と、俺の肩をゆすりながら囃し立ててきた。

 まるで水を得た魚である。


「そういえば、お兄ちゃんって身長何センチだっけ?」

「16……5」

 ……センチあったらよかったのに。と心の中で優奈の質問の答えに続ける。


「え? 私164センチなんだけど、お兄ちゃんちょっと立ってみてくれない?」

「……断る」

 優奈がそっぽを向いた俺の顔を覗き込むように回り込んでくる。

 俺はまた反対方向に顔を背けながら断る。

 というか、ノリノリすぎだろう優奈。


「……でも、すばるさんは兄さんみたいな人がタイプなんだよね」

 そんな俺達二人のやり取りをずっと黙って見ていた優司がポツリと呟いた。


「つまり! お兄ちゃんと背丈が同じ位で可愛い系の私は、望みありということね!」


「自分で言うのかよ! というか、今の流れでその結論になるのかよ!」

 なぜか自信ありげに言い出す優奈に、もはや俺はそれ位しかつっこめなかった。

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