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7 ミドルとアズ

ちょろいヒロインはちょろイン。ではちょろい主人公はちょろ主?

 セルシオがパーティーに入り、探索を始めて三日目。今日と明日はダンジョン探索に行かない日となっている。

 休憩に二日取っているのではなく、お金のためにオルトマンが一人で探索を進める日があるのだ。オルトマン一人ならば五十階でも余裕で探索できる。いまだそこまで行ってはいないが、パーティーを組んで進むよりは先に行っている。

 こういう実力が上の者に資金調達をしてもらうやり方は、ほかのパーティーでも見られることだ。

 

「親父が一人進んでいる間に、俺たちも仕事をこなすってわけだ」


 傭兵ギルドの前に立ち、ミドルが今日やることの説明を終えた。

 資金調達という理由のほかに、オルトマンは二人に様々な経験をしてもらいたいという理由も持っている。

 挑戦者として今ここにいるが、将来なにか大怪我をするようなことがあり、それが治療できなかった場合、挑戦者でいられなくなる可能性がある。そんな時に、戦うだけではなくほかのこともできるようにと考えていた。

 できることを増やすだけでなく、様々な人との触れあいも望んでいる。立ち直ったとはいえ、二人も人に少なからず隔意があるし、完全に癒えたわけでもないのだ。

 以前の手紙運びをオルトマンが手伝っていたのは、セオドリア経由の傭兵ギルドからの依頼で、オルトマンが行うことを指定されていた。本当ならば追われるのはオルトマンだったのだ。流される情報に手違いがあり、二人が追われることとなった。


「ついでに俺は文字読めないから二人で探してくれ!」


 胸をはっていうことではないが、なぜか自信に満ちた表情でいる。

 オルトマンとアズが読むことができ、読み書きできないことを不便には思わなかったので今まで勉強しなかったのだ。一度勉強したのだが、自分には向いていないと放り出したのだった。

 将来のためにならないとオルトマンから、名前の読み書きと簡単な四則演算だけは教え込まれている。覚えないと剣の扱いを教えないと脅されてなんとか習得したのだ。


「もう少し覚えてよ」


 呆れたように溜息を吐いたアズに、ミドルは笑いを返すだけだ。覚える気がないとよくわかる態度だった。セルシオはどうでもよいと二人のやりとりを見ていた。

 さっさと入ろうとミドルが歩き出し、その後をセルシオとアズが追う。

 以前は読めなかった依頼の紙をセルシオは眺めていく。条件は一日で終わるものと危険ではないもの。


(倉庫整理、これはいい思い出がないからパス。治癒薬製作の助手、やり方わからないからパス。夜警の手伝い、次の日に影響出るかも? でも明日は休みっていってたし保留)


 探すセルシオにミドルが近づく。


「なにかよさげなもの見つかった?」

「夜警の手伝いを保留にしてる」


 ちらりとミドルを見て、すぐに依頼紙に視線を戻す。セルシオと同じ理由でそれもいいなと頷く。


「参考にしたいから、これまでどんな仕事を請けたのか教えて」

「参考って言ってもな、それほど多くはこなしてないよ。手紙運び、犬の散歩、掃除手伝い、引越し手伝い。こんなところか」

「そっち方向で探してみるか」

「俺としては夜警でもいいけど」

 

 むしろ乗り気だ。今までやってきたことがお手伝いレベルのものばかりで物足りなかったのだ。


「なにか見つかった?」


 一枚の紙を手にアズが近寄ってくる。


「こっちは夜警が候補になってる」

「夜遅いのはちょっと」


 ミドルと違いアズは渋る。


「そっちはどうだった?」

「この前と同じ犬の散歩でいいかなって」

「俺はそれでいい」


 セルシオは特になにがやりたいという希望はなかったので、野犬と違って襲われることはないだろうとアズの持ってきた依頼に頷く。

 なにかを考えていた様子のミドルも、それでいいと頷いた。

 手続きしてくると言って、アズが離れていく。


「なあなあ」

「なに?」

「夜警の依頼ってどんな条件だった?」

「午後十時から午前五時半までの外壁回りと、同じ時間の街中見回り。報酬は八百コルジ。レベル五十以上の者。武具は持参。軽い怪我なら治療はする。集合場所は北入り口の警備所。こんなところ」


 受ける気なのかと思いつつ、条件を口に出していく。


「そっかそっか」

「なにを頷いてるの?」


 手続きから戻ってきたアズが不思議そうな顔で聞いてくる。それにミドルはなんでもないと答えてギルドを出て行く。ミドルを追って二人も出る。

 犬の散歩は複数の飼い主からまとめて依頼されたもので、連れ歩く犬の数は十頭になる。報酬は三百コルジ。大型犬と中型犬がいて、人に慣れた彼らの相手は中々楽しいものだった。一時間も散歩させれば十分で、犬の好きにさせたこともあって少し時間は超えたが大して疲れることはなかった。

 人相手と違い裏切りなど考えなくてよく楽しむことができ、セルシオにとってまたやりたいと思える仕事だった。

 散歩中、ミドルとアズはセルシオの笑みを初めて見た。


「楽しそうだったね、セルシオ」

「楽しかった」


 アズの言葉に頷く。


「好き勝手動くからめんどうなんだけどな」


 昼前に終わり、宿に戻ってきた三人は昼食を食べた後好きに行動する。

 

「俺はここでのんびりしてるけど。二人は?」

「資料庫に行って本読んでくる」


 部屋にいても何もすることが思い浮かばず、本を読むことにした。

 

「私も資料庫に行ってくる」


 そう言うアズの声は僅かに弾んでいる。


「アズは知ってたけど、セルシオも本が好きなのか? また親父に本読めって言われそうだぁ」


 やだと言いつつベッドに寝転ぶ。そのまま目を閉じた。昼寝するつもりなのだろう。

 資料庫に行く二人は財布を持って、部屋を出た。

 六時まで本を読み、ダンジョン管理所の一階に上がると、タイミングよくオルトマンも戻ってきたところだった。


「父さん」

「アズにセルシオ、迎えか? ってそんなわけないな」

「資料庫で本を読んでいたんだよ」

「セルシオもか?」

「うん。本が好きというわけじゃなくて、いつかのために知識を溜め込むんだって」

「それは悪いことじゃないな」


 感心したように頷く、ミドルも本を読むようになればと思いつつ。

 今日得たものを換金してから、宿に戻るとミドルがオルトマンに駆け寄ってくる。


「おかえり」

「ただいま。夕飯は食べたか?」

「まだ、その前に頼みごとがあるんだ」

「なんだ?」

「ギルドの仕事で夜警ってのがあるって聞いたんだよ。それをやってみたい!」

「夜警か、そんな楽しめるものじゃないけどな。それに一人で行かせるのはちょっと心配だ」


 視線をアズとセルシオに向けて、少し考えると口を開く。


「すまないがセルシオ、一緒に行ってやってくれないか? 俺が同行しようとも思ったが、さすがに疲れた状態だとな」


 疲れたというのは嘘ではない。今日探索したのは二十六階だ。敵はまだ問題ない強さだが、罠が厳しくなってきていて余裕をもっての探索はできていないのだ。疲労困憊といった状態でもないのだが。

 同行者にアズではなく、セルシオを選んだのはこれを機にもっと自分たちに馴染めばと思ったからだ。


「セルシオが一緒なら行ってもいいんだね? セルシオっ頼む!」


 両手を合わせてミドルは頼んでくる。

 セルシオは夜警に興味はない。

 悩む様子のセルシオにオルトマンはこういった誘いは少し早かったかと考える。

 考えた末、次のツールのためにお金を貯めておくものいいかと思い、セルシオは頷いた。

 既に文字ツールは外していて、トレジャーハンター用の構成にしているので、無理に買う必要もないのだが。

 承諾の返答にミドルは嬉しげにガッツポーズをする。


「よしっ」

「じゃあ、夕飯の後二人は九時まで寝てろ。少しだけでも寝た方が楽だ」

「俺は昼寝したけど」


 夜警参加のために寝ておいたのだ。

 セルシオは寝ることにして、さっさと食事をすませ部屋に戻る。眠れるかはわからなかったが、目を瞑って休んでおくだけでも多少は違うとオルトマンからアドバイスを受けたのだ。

 結局眠ることはできず、九時になる。


「じゃ、行ってきます!」

「いってくる」


 ハイテンションなミドルと通常どおりのセルシオを、残る二人は宿の玄関まで見送る。


「大丈夫かな」

「大丈夫だろ。俺も夜警の経験はあるが、そうそうアクシデントなんか起きないさ」

「それを聞いたら、なにか起きるような気がした」

「気のせいだろ」


 そう言って風呂に入りに行くかと銭湯に向かうオルトマン。アズは二人の向かった先を心配そうに一度見てから、宿に入っていった。 

 アズに心配された二人は、九時半には警備所についていた。そこにはほかにも挑戦者がいてのんびりと夜警が始まるのを待っていた。

 ついたばかりの二人は警備兵に用件を聞かれ、それに答える。


「レベルは足りているか? 五十以上なんだが」

「俺は五十」

「俺は五十四」


 前者がミドルで、後者がセルシオだ。


「足りているな。だが外には回せないから、街中の見回りだな。この紙に名前と泊まっている宿と前衛後衛のどちらかを書いてくれ」


 セルシオが受け取り、さらさらと書いていく。

 あと十五分で説明が始まるので、それまで自由に過ごしてくれと言い警備兵は新たにやってきた挑戦者に近づいていく。


「何が起こるか楽しみだな!」

「そう?」


 心底不思議そうに首を傾げるセルシオ。

 そんな二人に夜警に来た挑戦者の一人が近づいてくる。顔には苦笑が浮かんでいる。


「何か起こると困るんだけどな。それに何事も起こることなく終わるのが大半だ。あっても酔っ払い相手」

「夜警を何度かやってるんですか?」

 

 落ち着いた雰囲気の男にミドルが聞く。


「うん。十回以上はやってるね」

「なにか注意することはあります?」


 今度はセルシオが聞く。


「そうだね……眠気に負けて注意が逸れることがあるし、それに注意すべきかな。お金のでる仕事だからきちんとやらないと。あとは何か問題があったら一人で突っ走らないで周囲の人と解決に動くこと。ここら辺は警備兵からの説明でも聞かされるよ」

「ありがとうございます」

「あなたはどうして十回も夜警に参加してるんですか?」


 少し気になったのだろうミドルが再び聞く。


「仲間が探索で大怪我してね、その回復に時間がかかっているんだ。その間少人数で探索に行くのは危険だし、仕事でも請けてお金を稼ごうってことになったんだよ。まあ、それも今日で終わりなんだけど」

「明日か明後日からまた探索?」

「そうなるね」


 そうやって話していると十五分経ち、警備兵からの説明が始まる。

 集まった挑戦者の数は五十人ほど。その半分は外壁を回り、セルシオたちは街の中を歩く。

 なにかあった場合は大声を出すか、渡した笛を吹いて知らせる。ハプニングがあり、その解決に動くと追加報酬が出る。

 このほかの注意は雑談した男から聞いたものと変わらない。

 二人から三人一組となり、夜警が始まる。


「よろしく頼む」


 セルシオとミドルの組には警備兵も入り、三人で見回ることになった。警備兵は五十手前で、夜警は何度も経験があるらしい。金属補強のされた革鎧を身につけ、鉄製の槍を持っている。

 挑戦者ではないが、腕輪をつけておりツールを使っているようだ。レベルは聞いていないが、身のこなしから二人よりは強いだろうとわかる。

 経費節約ということで、明かり粉ではなくランタンを渡され、それはセルシオが持つ。真昼のように照らしはしないが外灯もあるので、ランタンの重要度は高くはない。

 バンフと名乗った警備兵に先導され、酒飲みの声が響く夜の街を歩く。

 四時間経過して酔っ払いに少し注意した以外は何事もない。今はほとんどの者が寝ていて、夜警を始めた頃に比べるとずっと静かだ。


「今日も無事終わるだろうな」

「少し残念だけど、平穏ならそれが一番か」

「そうだな」


 ミドルの言葉にバンフが頷く。

 静かなセルシオは眠気を感じていて、しきりに頭を振っている。


「つれは眠そうだな。少し休憩するか、飲み物でも飲めば少しはすっきりするだろうさ」


 近くにあったベンチに座ると、リュックから水筒を取り出し、二人に渡してくる。

 中身はコーヒーで、コップから湯気が立ち上っている。寒い中での温かい飲み物は助かるもので、二人はありがたく飲んでいる。

 苦味が眠気を飛ばしてくれるのをセルシオは感じていた。


「ん? なにか聞こえたか?」


 飲んでいたコーヒーをベンチに置いて、バンフが立ち上がる。

 二人もコーヒーを飲むのを止めて、耳を澄ます。小さく笛の音が聞こえてきた。緊張で体に力は入る。

 正確な場所はわからないが、東から聞こえてきたのではと推測する。


「遠いな、行くか行かざるべきか」


 今から行っても他の者が対処しているだろうと考えたのだ。

 ミドルは行きたそうにしているが、判断はバンフに任せるようで動かない。セルシオも動かず、どうするか待っている。


「行かなくていいか。大変なことなら何度も吹いているだろう。見回りを続けよう」


 セルシオは頷き、ミドルも残念そうにだが頷く。

 そうして三十分ほど歩き、再び足を止める。再び音が聞こえてきたが、笛の音ではない。


「なにか運ぶ音か?」

「そこの角から聞こえてきます」


 ミドルが指差す。今は音は止んでいる。なんだろうなと念のため調べることにした。バンフはすぐに吹けるように笛をくわえている。

 ランタンをセルシオから受け取り、バンフが照らす。その直後、ランタンを持った手に暗闇から刃が襲い掛かる。

 腕は斬られ、血が空中に飛ぶ。斬られた拍子に落ちたランタンが地面に落ちて音を立てる。

 なにが起こったか詳細を知る前にバンフは笛を力いっぱい吹き鳴らした。耳に煩いほどの音が周囲に響く。


「囮を無視したのか」

「相手は三人だ。やっちまおう」

「仕方ない」


 暗闇にまぎれるよう、黒い衣服を纏い、さらに鎧を黒く塗った者たちが角から勢いよくでてきた。気配を抑えていたのだろう、セルシオには察することができなかった。

 その数は四人。皆、手に短剣や剣を持っている。暗いため三人は気づいていないが、刃は血で塗れて外灯の明かりを受けて鈍く反射している。


「勝つことを考えるな! 待てば救援が来る!」


 斬られた手を押さえたバンフが助言を二人に飛ばす。

 反射的に剣を抜いた二人に、黒尽くめたちは襲い掛かってくる。

 セルシオには女が一人、ミドルには男が一人、バンフには男が二人。バンフを手強いと見たか、手負いなためさっさと倒すことを優先したかは不明だ。


「さっさと死んでもらうよ」


 そう言って女はセルシオに向かっていく。

 約一ヶ月ぶりの対人戦に、セルシオは身を硬くして迎え撃つ。

 同時にミドルも戦い始めたのだろう、気合の入った声が聞こえてくる。

 セルシオはバンフのアドバイスに従い、防御を中心として戦っていく。腕が相手の方が上なので、反撃できないと言った方が正しいか。

 一方のミドルは果敢に攻めている。飛ばし過ぎだと思われるほどに。その気迫に押されて、黒尽くめは後手に回っている。

 バンフも片手が使えないので防ぐことで手一杯だ。むしろ一対二でよく粘っている。


「しぶといね!」


 話す余裕のある女に、余裕のないセルシオはなにも答えず短剣を盾で受けていく。

 いくどか受け損ねて、腕や頬に浅い傷がある。レベルが上がり、オルトマンの指導を受けたおかげで粘ることができていた。

 救援はまだかとセルシオとバンフが考えていると、黒尽くめの大きな悲鳴が上がる。

 相打ち覚悟のミドルに脇腹を深く切り裂かされたのだ。ミドルは運がよかったのか、こめかみ辺りに刃を掠らせるだけですんでいる。

 黒尽くめたちは仲間の悲鳴に思わず、注意が逸れる。

 その隙をセルシオとバンフは見逃さず、反撃に出た。

 セルシオは短剣を弾くことで精一杯だったが、バンフは一人の太腿に深い傷を負わせた。

 重傷者が増えたことでここは退くと決めた黒尽くめたちだが、ようやく救援が集まり逃げ道を塞いでいく。

 その様子を見て気を抜いたセルシオを女は見逃さず、殺してでも逃げるともう一本持っていたナイフを抜いて襲い掛かる。


「危ないっ」

 

 迫る短剣に対処できなかったセルシオを、ミドルが突き飛ばし代わりに短剣を肩に受けた。

 痛みに顔を歪めたが歯を食いしばり耐え、剣の腹で女の横面を叩く。折れた歯から血を出しつつ女は気絶する。


「あ、ああっ、だだ大丈夫?」


 死の恐怖に震えつつ、ミドルの安否を気遣う。どもってはいたが、気持ちが篭っていた。

 ミドルは血が流れ出る肩を押さえて、安堵させようと笑みを浮かべる。


「大丈夫っ。我慢できないほどじゃない。治癒薬持ってたら肩に塗って」

「わ、わかった」


 あたふたと体中の探り、治癒薬を取り出す。リュックから水筒とコップも取り出して薬を水に溶かしていく。

 

「塗るよ」

「ん」


 服を握り締め、目を閉じて迫る痛みに備える。

 薬をつけた指が肩に触れるとビクンっと反応するが、怪我が治り痛みが治まってきたか、体から力が抜ける。


「ありがと」

「こ、こっちこそ助けてもらった。でも代わりに怪我させちゃって。あ、まだお礼言ってなかった。ありがとう。おかげて怪我せずに助かった」


 いつもの素っ気無さはなく、心の底から心配し礼を言う。動揺しているせいなのか、ミドルの行為がセルシオの警戒を解いたのか。どちらかなのかはわからないが、以前のセルシオが現れていた。


「元はといえば俺が夜警に誘ったことが原因だし」

「それでも助かった。本当にありがとう」


 和やかな雰囲気を漂わせる二人に、治療を受けたバンフが近づく。


「よう、無事だったか」

「そちらも」

「怪我は大丈夫でしたか?」


 セルシオの言葉に大丈夫だと斬られた方の手をぶらぶらと振る。


「ん? ああ、治してもらった。それにしてもミドルはすごかったな。でもあの場で攻める必要はなかったんじゃないか?」

「今になるとそう思うけど、あの時は頭に血が上ってて。前に盗賊や山賊とかとちょっとあって」

「なるほどな。ま、あの勢いに助けられたもの事実だ、とやかく言わんさ。二人とも治療してもらってこい。その後少し休んだらまた夜警の続きだ」


 続けるのかとセルシオは思うが、夜警の仕事を受けてまだ終了時間ではないのだ。当然続けられる。

 治療魔法を使える警備兵に治療してもらい、休憩した三人は移動を始める。


 三人が休憩している間に、黒尽くめたちは警備兵に縄で縛られ警備所に連れて行かれる。そこでなにをやっていたのか尋問され、白状していく。

 やっていたことは泥棒だ。この日のために一ヶ月の下準備をしていた。

 夜警に紛れ込んだ仲間の一人が、見回りの様子を調べる。それで見回りが少ない箇所を調べて、そこにある商店を狙う。犯行当日は、夜警を行っている仲間が離れた場所で笛を吹き、注目を集めて夜警の数をさらに減らす。そして目をつけた店に押し入る。こんなところだ。

 紛れ込んだ仲間は、セルシオたちが仕事前に話した男だ。


 空はまだ暗いが街に人の活気が現れだした頃、三人は警備所に戻ってきていた。

 お疲れ様と警備兵たちに温かいお茶を貰い、皆のんびりしている。


「お疲れ様でした! 報酬を配るので皆さんこちらに並んでください」


 三人の警備兵がこちらですと挑戦者たちを誘導する。

 すぐにセルシオたちの番が来て、名前を告げる。


「あなたたちは追加報酬があります。賊の捕縛お疲れ様でした。では腕輪を出してください」


 差し出された腕輪に、警備兵は自身の腕輪をくっつけて報酬を支払う。

 二人は列から離れて、いくら入ったのか調べる。


「二千四百だって」

「俺もだ」


 驚いた顔のセルシオに、同じようなミドル。

 三倍もの報酬が支払われるとは思っていなかったのだ。だが当然だろう。命のやりとりをしたのだ。むしろ少ない。

 まあ今行っているダンジョンの階層よりも多い収入なのだから、勘違いしても仕方ないのかもしれない。

 やったねと笑みを浮かべて、二人は軽く拳をぶつけあう。

 そんな二人の距離は昨日よりもたしかに近づいていた。オルトマンが願ったようにこの仕事がきっかけにはなったのだ。戦いが起きるとは想像していなかったが。


 宿に帰った二人は、まだ寝ているオルトマンとアズを起こさないようにベッドに入る。

 朝食を食べてから寝ようかとも思ったが、あまり体によさそうではなかったのでサンドイッチ一人分を分け合いすませた。

 二人が寝た四十分後にアズが起きて、その十分後にオルトマンも起きる。熟睡しているセルシオたちを起こさないように、二人は静かに部屋を出て行った。

 セルシオたちが起きたのは、十二時三十分頃だ。少し眠気を感じていたが、疲れは取れているので起き出した。


「親父たちはいないな」

「休みだし思い思いに過ごしてるんだろうね。お腹空いてるし昼食べよう」

「そうだな」


 昼を食べた後、二人はこれからの行動を話し合う。

 ミドルの予定は報酬が入ってから決まっている。


「俺は管理所に行って操縦ツール買ってから、外に行って馬に乗ってくる。セルシオは?」


 ようやく騎士ジョブへの道がひらけたと嬉しげな様子だ。これから休みの日や時間が余れば、馬に乗り続ける日々が続くのだろう。


「俺は……特に予定ないし、また資料庫に行ってくるよ」

「わかった。じゃあ、早速行ってくるな」


 行く場所は一緒なのだから共に行けばいいのに、楽しみなせいかテンション高く走って管理所へと向かっていった。

 セルシオはのんびりと歩き向かう。その途中でアズが六才ほどの少女と歩いているのを見つけた。なにかを探しているようで、あちこちに視線をやっている。その視線がセルシオを捉えた。

 近づいてくる二人を、立ち止まって待つ。


「おはよう」


 近づきセルシオの顔を見たアズは少しだけ驚いた表情となる。なぜそういった表情になるのかセルシオには想像つかない。


「おはよ」

「セルシオが起きてるってことは、ミドルも起きた?」

「起きたよ。もらった報酬で操縦のツール買うんだって管理所に走っていった」

「嬉しそうな顔で走っていったんだろうねぇ」


 付き合いの長さからミドルの現状を正確に読み取る。


「当たり」

「やっぱり。セルシオはこれからなにか用事?」

「いや特に予定ないから資料庫にでもって。アズはなにを?」

「私は迷子になったこの子の飼い猫を探しているの」


 それで見知らぬ子と一緒にいるのかとセルシオは納得する。


「別に資料庫には行かなくてもいいし、手伝おうか?」

「え? いいの?」


 予想外の提案にアズは一瞬呆けた表情となった。


「邪魔になるなら遠慮するけど」

「助かるからお願いしたいくらい。さっきも思ったけど、セルシオちょっと変わった? 顔つきが緩くなってるし」

「そう、かな?」

「昨日までだったら、手伝うとか言わなかったんじゃないかな? これからもっと仲良くやれていけそうで楽しみだよ」


 セルシオは思い返してみて、話を聞いた後資料庫に向かっていた可能性があると頷いた。

 

「おねえちゃん」


 早く猫を見つけたいと少女がアズの手を引く。


「あ、ごめんね。あとは歩きながら話すってことでいい?」

「いいよ」


 少女、アズ、セルシオと横に並んで歩き出す。

 探す猫の特徴は、アイスブルーの目、体毛は黒地で尻尾と耳の先が白い。首に白のリボンを巻いている生まれて五年のまだまだ元気な猫だ。

 聞いた特徴の猫がいないか視線をあちこちにやりつつ、話の続きをする。


「どこまで……あそうそう、少し変わったって聞いたんだっけ。昨日の夜になにかあった? 原因ってそれくらいしか思いつかない」

「ミドルに助けてもらったんだよ。その影響かな」


 昨日あったことを簡単に話していく。


「ほんとにアクシデント起きたんだ。予感的中だよ」


 思わず乾いた笑みが漏れる。オルトマンの話だと夜警をやって十回に一回アクシデントがあるかないかということだったが、その一回を引き当てた二人の運にアズは呆れるやら感心するやらだ。


「まあ大きな怪我がないようで良かったよ」

「いやミドルが肩に怪我したんだけど」

「ちゃんと治ったんでしょ? なら大丈夫」


 これからの生活に響く怪我ならば心配もするが、そうでなければこれまでも負ったことがあり大して心配はしない。

 大げさに心配されるのも困ると知っているのだ。それでも一度本人に確認はするつもりだが。


「変わった理由がそれなら納得できるよ」

「できるの?」

「うん、私たちも父さんに助けられて変わった口だからね」


 二人は日々の生活で少しずつ変わっていたのだが、助けられて心を開いたということに変わりはない。

 

「ミドルは嬉しいだろうね。父さんと同じことができたんだから」

「尊敬してるんだねオルトマンのこと」

「うん。それに私もね!」


 満面の笑みを浮かべた表情からは嘘偽りは一切感じられなかった。

 その笑み見て可愛いなと思うと同時に、弟と妹も似たような笑みを向けてきたことを思い出す。村を出て三ヶ月も経っていないが、二人のことがとても懐かしく思えた。

 自分の顔を見て懐かしげな顔をしたセルシオに首を傾げるも問うことはせず、猫探しのため視線をそらす。

 雑談をしつつも猫探しは続く。だが午後三時になっても見つかることはなかった。


「どこに行ったんだろ?」

「ほんとにね」


 スラム方面に行ったかと少しだけ近づいてみたが、それらしき姿はなかった。

 喉が渇き、三人でジュースを飲んでいると見覚えのある人がすぐ近くを通る。


「ん? お! セルシオじゃないか。夜警お疲れさん」

「バンフさん? お疲れ様です」

「こんなところでなにしてるんだ? ちなみに俺は夕飯の買い物を頼まれたんだ」


 ほらと言って買い物籠を持ち上げる。


「俺はこの子の飼い猫探しを手伝っているところです」

「そっちの小さい嬢ちゃんのか、だとするとそっちの大きい方は?」

「同じパーティーなんです」

「アズと言います。昨日はミドルとセルシオがお世話になったようで」 


 アズは深く一礼する。フードから出ている髪がさらりと揺れる。


「礼儀のいい嬢ちゃんだな。助けられたのは俺も同じだ」

「あ、そうだバンフさん」


 ふと思いついたことがありバンフ呼ぶ。


「なんだ?」

「猫が集まりそうな場所って知りませんか? 俺はこの街に来てそれほど時間は経ってなくて、そういったこと知らなくて」

「猫な……」


 少し考えて思い当たるところを三つ上げる。だがそこには既に行っていた。

 それを言うとまた考え込む。


「それなら猫タイプの獣人に話しを聞いてみたらどうだ? 獣人は自身と近い動物との会話ができるらしいから、そこらの猫から小さい嬢ちゃんの猫の話を聞けるかもしれんぞ」

「獣人ってどこかにいたかな?」


 これまで他者に関心を見せなかったセルシオには覚えはない。

 

「たしか宿に猫獣人がいたはず。バンフさんありがとうございました」

「早く見つかるといいな」


 そう言って少女の頭を軽く撫でて、買い物の続きへと去っていく。

 ヒントを得た三人は早速宿に向かって歩き出す。少し進展したことで三人の足取りは軽くなっている。

 セオドリアに事情を話して、猫獣人のいる部屋を教えてもらう。帰ってきたばかりで部屋にいるといった情報も教えてもらった。

 部屋をノックするとすぐに探している人物が出てきた。男で年の頃は二十半ばほどだ。

 人間種族とほとんど同じ姿で、違いは耳の部分に獣耳があり、腰からは猫と同じ尻尾が生えているということ。靴を履いて見えないが、足の形も猫と同じだ。尾が今もゆらりゆらりと揺れている。


「どちらさん? 見覚えはないんだけど」

「少しお尋ねしたいことがありまして」


 そう前置きして用件を伝えていく。


「飼い猫か、五日帰らないのは心配だな。うん、協力しよう。ついておいでそこらを歩いている奴に話を聞いてみるから」


 部屋に鍵をかけると、三人を先導するように歩きだす。

 猫の姿を探し、建物の影などを見ていく。五分ほどして道端に置かれている木箱の上にいた白地に茶ぶちの猫を発見した。


「名前はミルシャでよかったんだよな?」


 少女に確認してから猫と話し出す。ニャゴニャゴと三人にはまったくわからない会話だった。一分ほど話すと、猫は立ち上がり去っていく。


「なにかわかりました?」

「あいつは知らなかったけど、ほかの猫から情報を集めてくるんだってさ」


 少し待つことになり、雑談しながら二十分。去っていった猫が灰色の猫を連れて戻ってきた。

 さっそく話を聞いていく。


「こいつが似た猫を見たらしい」

「ほんと!?」

 

 身をのりだした少女に獣人は頷く。

 灰猫が案内してくれることになり、セルシオたちは獣人と猫に礼を言ってわかれた。

 獣人は二人と猫が去っても、その場に残って考え込んでおり、やがて一つ頷くと歩き出した。

 灰猫の後をついていくと、わりとすぐに到着した。灰猫が連れて来たのは赤鳥の群亭と同じ規模の宿だ。入り口の前で一声鳴くと、灰猫は尻尾を一振りして去っていく。


「ここで見たってことなのかな?」


 セルシオの言葉に、アズはたぶんと答えた。

 三人は宿に入り、近くにいた従業員に事情を話す。


「猫? ああ、四日前から見るようになったね。特徴もあってる」

「なんで宿に留まってるんだろ、なにか事情でもあるのか?」


 不思議そうに首を傾げたセルシオに従業員は理由を話す。


「使い魔だって言ってたよ。猫が出入りするようになるからって店長に話しているの聞いた」

「つかいまってなに?」

「使い魔というのは法術師の配下だね。法術師のスキルの一つで主従契約というのがあって、動物を自分の配下とすることができるの」


 少女の疑問に、アズは本で得た知識を思い出し答えた。

 使い魔は主人の意を受けて動く。視界の共有もでき、いたら便利な存在だ。契約後も使い魔自身の意思はあり、自由に動くこともできる。だが最優先は主人の命令で、行動を縛られることもある。


「ってことはミルシャは見知らぬ人に勝手に連れ去られたってこと?」


 誰にでもなくセルシオは聞く。


「そう、なるね」

「それっていいの?」


 セルシオが抱いた疑問は、アズと店員も同じく抱いた。飼い猫を勝手に奪うのは問題じゃないかと思うのだ。

 返してもらため、直訴しようと店員に法術師の部屋を聞く。

 教えていいものか判断できなかった従業員は店長に相談し、許可をもらってきた。従業員の案内で部屋まで行こうとした時、少女が今宿に入って来た者を見て、立ち止まる。


「ミルシャ!」


 そう言うと入って来た男に駆け寄り、肩にいる猫へと手を伸ばし何度も跳ねる。この男が今から訪ねようとした法術師なのだろう。


「なんだ?」

「ミルシャーミルシャー」

「すみません。その猫を使い魔にしたって本当ですか?」


 アズの問いかけに法術師は顔を顰める。


「そうだが、それがどうした?」

「この子の飼い猫なんですよ。返してあげてもらえませんか?」

「本当にそうか? 猫なんてそこらにたくさんいるだろ。似てるだけの猫じゃないのか?」


 法術師の肩にいる猫は聞いた特徴によく似たものを持っている。しかしもう一つの特徴の首に巻いていたリボンがないのだ。

 

「ミルシャだもん! ぜったいミルシャだもん!」

「うるさいな。見間違いだって言ってるだろう」

「何年も一緒に過ごしてきたんです。見間違いはないと思います。それに宿の人に聞きましたが、ミルシャが帰ってこなくなった翌日にこの宿で見るようになっているんです、それが証拠になりませんか?」

「いい加減にしろよ。偶然だ偶然! じゃあな!」


 少女を払いのけ、法術師は部屋に戻ろうとする。法術師の腕をアズは掴む。

 振り返り睨む法術師の視線を、アズは目をそらさずに受け止める。


「納得できません。猫獣人の知り合いがいますので、その人と会ってもらえませんか? 猫に直接話を聞きたいです」

「しつこいって言ってるだろ! 離せっ!」


 アズを見る目に怒気が込められる。それに怯まず言い返す。


「離しません」

「このっ」


 空いている方の手でアズを顔を叩こうとし、セルシオが防ごうと動こうとした時、新しく宿に客が入ってきて法術師の注意がそれる。

 その隙にアズは手を離して、一歩下がり避けた。勢いのなくなった手がアズのフードを揺らす。


「タイミングとしてはちょうどいいのか」


 やってきたのはわかれた猫獣人だ。隣にいるのはダンジョン管理所の職員だ。


「すまんが猫を借りるぞ」


 猫獣人は法術師に近寄り、ひょいっと猫を奪う。その動きに合わせて少女も移動する。再びニャゴニャゴと会話をしていく。その際に法術師の表情が険しく変化し、猫が怯えるような反応を見せる。それでも会話は終わらなかった。

 法術師と契約した動物の間には繋がりがあり、それを使って無言でも会話ができる。怯えたのは、その繋がりで余計なことを言わないように脅しをかけたからだ。


「ん、飼い主はこの子であっているようだ。ほれ、大事にしてやれよ」

「うん! ありがとー」


 戻ってきた猫を大事そうに抱きしめる。抱かれた猫も少女の頬に頭を擦り付ける。


「少々お話を聞かせてもらいましょうか」


 猫獣人と一緒にやってきた職員が法術師に話しかける。法術師は逃げ出そうとしたのか周囲に視線をはしらせる。それを察して職員は釘を刺す。


「逃げてもいいですが、その場合は探索禁止期間が延びるだけですよ。名前は宿に聞けばいいんですから、あとはこっちで勝手に手続きするだけです」


 その言葉で逃げる気をなくしたか法術師は観念したように、両手を挙げた。

 職員は少女に挑戦者が迷惑かけたことを謝り、セルシオたちに一礼すると法術師を伴い去っていく。騒動が解決したと判断し、宿の従業員も仕事に戻っていく。


「お姉ちゃんたちありがとー!」


 喜びに満ちた少女のお礼に重ねるように猫も一声鳴き声を上げた。そして走って帰っていく。

 そんな様子を猫獣人は満足そうに見て、セルシオとアズも笑みを浮かべて見ていた。


「俺も帰るか」


 そう言い歩き出す、猫獣人の後を追い、職員を連れて来たわけを聞く。


「飼い主のいる猫や犬を使い魔にするってのはわりとよくある話なんだ。普通は野良を使い魔にするか、法術師自身が飼っている動物を使い魔にするもんだ。しかし野良を使い魔にするのは若干めんどくさいらしい。その手間を惜しんで人に慣れている動物を勝手に使い魔にする奴がいるんだよ。あいつみたいにな。んで今回もそれなんじゃないかと思って職員を連れてきたんだ」


 この問題は昔からなくならず、ダンジョン管理所も頭を痛めているのだ。飼われていると気づかず使い魔にする者もいなくはないが、多くはわかっていてやっている。

 あの法術師も探索禁止の措置とともに、説教を受けることだろう。

 法術師と猫の繋がりは、管理所が解除のできる呪術師に依頼することになっている。


「なるほど」

「助かりました。私たちだけじゃ取り戻せなかったです」

「まあ、近い種族が困っているんだから助けたいと思うのは当然だな」


 宿に戻ってきた三人はそれぞれの部屋に戻っていく。

 時刻はそろそろ午後五時前で、部屋にはオルトマンが戻ってきていた。


「おかえり」

「「ただいま」」

「ん? セルシオどこか柔らかく?」


 アズが気づいたように、オルトマンもセルシオの変化に気づいた。

 もう一度夜警の時にあったことを話す。


「ミドルがなぁ」


 どこか嬉しげにオルトマンは頷いた。人を助け変えた子供の行動が嬉しかった。そして強さだけではない成長を感じていた。


「ところで今日はなにをしていたんだ? 二人一緒に帰ってきたってことは、一緒にいたってことか?」

「猫探しをしてた」

「俺はその手伝い」

「猫探し?」


 アズは資料庫に行こうとして少女に腕を掴まれたところから、セルシオに会ったこと、猫獣人に世話になったことを順に話していく。

 そのアズの行動にもオルトマンは嬉しそうな顔となる。ミドルとアズの成長が誇らしかった。


「人助けをしていたのか、よくやったな偉いぞ」

「でも意外だった」


 そのセルシオの言葉にオルトマンとアズは首を傾げる。


「アズって大人しそうな印象だったから、法術師に怯まずにいたのが驚いた」

「ああ、そういうことか。アズの性格はその印象で間違ってはない。だがこうと決めたら退かないところもあるんだ。それが今日出たんだろうな」


 フードの上から頭を撫でられ、若干恥ずかしそうに頬を赤らめ俯く。

 

「そうなんだ」


 セルシオからの称賛の視線にますます恥ずかしそうになる。

 そこにミドルが帰ってきた。


「たっだいまー! 楽しかったよ乗馬! ツールのおかげですんなり動かせたし」


 上機嫌に乗馬のことを語るミドルの影響で場の雰囲気は変わり、アズも元通りとなる。

 昨日今日あったことのおかげでパーティーの雰囲気は良いものとなり、それは結束や連携として現れていく。

 パーティーとしての質はともかく、雰囲気は最上といってもいいものかもしれない。


感想、誤字指摘ありがとうございます


血のつながりは全員ありません。ミドルとアズは同じ村で育った幼馴染です

人の強さは戦いに関連していない人はあんな感じです。群は騎士や兵士や傭兵が頑張って倒しています

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