第9話 盗賊の少女 6
結果発表!
国語 23点(+1)
数学 45点(+3)
英語 48点(-4)
社会 16点(+1)
理科 38点(+2)
合計 180点(+3)
「再就職おめでとうございます。期待してますよ」
モルが話しかけてくる。くそっ! テストをすぐに受けないといけないなんて先に言って欲しかった。
「ところでこのあとどうするの?」
メイラが話しかけてくる。本当は次の町に言って情報を収集したかったけど、さすがにバイトのままじゃ厳しいものがある。
「もう少しここに残って生活しようか」
「はい。わかりました」
「あれ? 次の町には進まないのね」
「ま、まあな。色々しないといけないことがあるし」
さて、とはいったもののどうするかな。金を集めないといけない。でもモンスターは狩れない。どうしようかな。壺とか割ってたら金出てこないかな?
とりあえずは寝床の確保。出来れば宿とかじゃなくて家を借りれたらいいけど……。
「セツナさん。何だかとってもいい依頼がありますよ」
ギルドの掲示板を見に行っていたもるが話しかける。もるは手を振って何やら興奮しているようだ。
「え? どんな依頼?」
『友人が岩の下敷きになったんだ。しかもあの固くて重いメテラス鉱の下に。どうか助けてやってくれ。
報酬 別荘の期間無制限の貸し出し』
……ほう。何だかタイミングが良すぎるな。家が確保できるじゃないか。
「いい依頼だけどこのメテラス鉱石ってのはどうやってどかすのか? 結構簡単に壊れるのか?」
「いえ、そんなに簡単なものではありませんよ。この世界には8強鉱石と呼ばれる鉱石があります。それぞれ入手が困難だったり加工が難しい物ばかりです。そしてそのメテラス鉱石というのは8強のうちのひとつで、世界で3番目に固いと言われています」
「世界で3番目に固い? どれくらいなんだ?」
「少なくとも攻撃力が1000を超えてないと壊せません」
「1000!? そんな攻撃力がある人なんてそうそう――」
メイラ 攻撃力 1420 【1448】
……いたな。バカみたいなステータスをもつ奴が。
半端ないわ。何だたった2レベルのボーナスで28増えるって。気持ち悪いもの持ってるな。
「と、いうことでメイラさんに壊してもらおうかと。人を傷つける訳じゃないし大丈夫ですよね」
「え、ええ。まあ」
「決まりですね。では早速このクエストを受けにいきましょうか」
こうして僕たちはメテラス鉱石の下敷きになった人の救出 (僕たちはなにもしない)を受けることにした。
町から東の切り立った山があるところに向かった。遠くで見ていると感じなかったが、なかなか高い。1000メートルを超えるような山々が、ほぼ垂直に立っている。今にも崩れてきそうだ。
依頼があったのは昔、鉱石の採掘に使われていた洞窟だ。今では使われなくなったが、まだレアな鉱石が出たりして時々冒険家や旅人が立ち寄って小遣い稼ぎをしているらしい。
洞窟に入ると、所々にメテラス鉱石が散らばっていた。それもそのはず、メテラス鉱石の埋蔵量は少なくない。しかし、メテラス鉱石はその時代では加工ができず、ほっとかれる存在なのだ。現在でもなかなか加工が難しいため、使われることはなかなかない。
メテラス鉱石は大体10cm~1mくらいのものが洞窟に散らばっていた。重いというのも嘘ではなく、直径10cmくらいのもので10kgくらいはするのだ。
「しかし、ここモンスターとか沸きそうなのに居ないな」
「一応人の手が加わってますからね。野良モンスターなんかはあんまり近寄りたくないんでしょう」
「なるほどな」
しばらく進むと道がだんだん大きくなっていった。それまで少ししゃがんだ状態で進まないといけなかったから、少し楽になった。
するとその奥から何やら声が聞こえてくる。
「誰か! 誰か助けてくれぇ!」
奥に進んでいくと、そこには岩に足を挟まれた人と、頭から地を流している青年。
そして、薄汚い服を見にまとった、盗賊が二人立っていた。
盗賊はこちらに気づき、近寄ってきた。
「なんだぁ? お前ら。ここは俺たちの縄張りだ! さっさと帰れ!」
するともう一人の盗賊がなにかに気づいた様子で、もう一人に話しかける。
「兄者! あの小さい少女、うちの盗賊団の者っすよ。何やら逃げてるみたいで。捕まえると褒美がもらえるらしいっす。やりましょうよ!」
「ほう。なるほど。ということがお前がモルか。直接会うのは初めてだな。俺は盗賊団の幹部の一人、レンヨウだ。まあ安心しろ。他の幹部ほど強くはないし、優しいんだ。他のやつらみたいにお前を犯してから差し出しなどはせん。抵抗さえしなければ痛くないぞ」
そういうとレンヨウはモルにさらに近づいた。
ステータスは……
国語 182
数学 96
英語 38
社会 112
理科 115
なるほど国語がずば抜けて高いな。ということは防御が高いのか。攻撃がそれほど高くないのなら行けるのかな。
ちなみにもう一人のほうは
国語 63
数学 46
英語 12
社会 51
理科 48
あ、いうほど大したことないわ。というかこいつすでに盗賊じゃないじゃん。
「まずはそのステータスの低いアホみたいな少年からやるぞ」
「わかったぜ! 兄者!」
おっと。攻撃が始まるみたいだな。この場合はしっかりと指示を出して、上手く力のバランスをつけないと……
「モル! メイラの攻撃力をコピーして! それでレンヨウと戦ってくれ! その間僕はもう一人を押さえとくから!」
「わかりました!」
もるはめいらの攻撃力をコピーするとレンヨウに向かって剣を降り下ろした。レンヨウの腕がとれた。ちなみに、峰打ち。
「お、おい。ヤバイなそれ。『安心せい。峰打ちじゃ』とか言えないじゃん。峰打ちで人死にかけてるじゃん」
「わたしもびっくりです。というかこれ無茶苦茶危険なんですけどどうしましょう」
「ほ、包帯で巻いとけば? 封印された左腕。みたいな」
「まあ、右とかでも発動するするんですけどね」
そんな話をしていると、レンヨウは立ち上がって、
「くそ。ここは一回引くぞ! いいな」
そういうとレンヨウともう一人は立ち去っていった。
メテラス鉱石のほうを見ると、足を挟まれた人と青年。どちらも気を失っているようだったが、命に別状はないみたいだ。
メイラがメテラス鉱石を破壊し、町に連れて帰ると雨のような感謝をされ、別荘の鍵をおいて自宅であろう家に戻っていった。
「ふぅ。これで目的は達成できたな。あとは職を見つけて資金を貯めていくか」
「そうですね。ただ、それもいいですがセツナさんは……来週から学校に通いましょうか」
「………え? 学校?」
「はい。学校です」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
――――――――――――――
町から少し離れたところにある廃墟。そこは盗賊団のアジトとなっていた。
「す、すみません頭! モルを見つけたのですが……。取り逃がしてしまいました」
レンヨウが膝をつけた状態でボスに向かって報告する。
「ほう。取り逃がしたのか……」
盗賊団の頭は静かにレンヨウを見る。
「全く……。レンヨウの言っていることは正しかったのか……。はぁ。あいつの隊のメンバーだろうが。あいつが見つけ出せばいいってのに。なあ。しゅうし!」
そう呼ばれると、盗賊団の頭ではなくただの幹部であったシュウシが顔を出した。
「い、いえ俺たちの隊は皆で力を合わせて捕らえようとしたのですが……バカみたいなステータスを持ってる奴がいて……」
「それでやられたって訳か。まったく。おい! ムスビ!ムスビは居ないか?」
そう呼ぶと奥からローブを纏った人物が現れた。
「お呼びですか? カカリ様」
「レンヨウとシュウシに罰を与えとけ。おい! ミゼン! イゼン!お前らちょっとあの町に行って襲ってこい! なにも得られなくても構わない。あたしの部下が二人やられたんだ。黙ってみてはいられないからな」
そう言うとムスビはレンヨウとシュウシを連れて奥に、ミゼンとイゼンは町に向かって進んでいった。
「いったいどれくらいのちからなんだろうかね」
盗賊団の本当の頭である女は、ちょっと恐怖や怒りを抱きながらも、何か期待していた。