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リアデイルの大地にて 作者:Ceez
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幕間 子供達の会合

主人公出ません。

 ―――王立学院

 これはケーナが丁度カータツと出会っていた頃。

 練金科教授室に今現在、一人の女生徒が呼び出されていた。 理由は授業の一環であるポーションを遅れて提出した彼女に問題はあったが、それよりも重要なのは提出物にあった。 練金科の教授、ボサボサ頭にヨレヨレの教員用ローブと白衣。 前髪で顔の半分が隠れて無精ひげも目立つ、ロプス・ハーヴェイ教授。 やる気のない肘を付いた姿勢で、脇に立つ女生徒を見上げた。

「おう、お前が出した事になっているこのポーションだがな……。 本当にお前が作ったのか?」
「は、はあ……」
「本当か? これをお前が作ったとなれば、俺はお前を王宮に推薦してやれるんだが……」
「え! 本当ですか!?」

 途端に目の前に広がる出世コースに喜色満面になる女生徒。 しかしロプスは昼行灯な態度を崩さずに、机にあったポーションをつまみ上げ、先を続けた。

「そこでお前はコイツを作らされるだろうぜ。 コイツのレシピ、お前はちゃんと知っているか?」
「あ、は、はい。 カジュの根に……」
「はい、アウト。 コレはそんなチャチな材料で作られた代物じゃねえ。 既に誰も知り得ない製法で作られた、古代の遺物(アーティファクト)級だ」

 前髪の間から覗く鋭い眼光に女生徒は真っ青になって後ずさった。

「……で、コイツを作ったのは誰だ?」

 再び最初に戻り、姿勢はダルそうだが(みなぎ)る気迫は別物なロプス教授の詰問に、とうとう女生徒は半泣きになって頭を下げた。

「ご、ご免なさい! 材料がどうしても揃わなくて、それで、ぼ、冒険者ギルドに依頼して、作ってもらいました!」
「そうか、分かった。 お前には後で別に追加の課題を出す。 行っていいぞ」

 手でシッシッと追い出す仕草に、再び頭を下げた女生徒は零れ落ちる涙を拭いもせず、逃げるように教員室を退出した。





 赤い液体瓶を前にしばらく考えていたロプスは、扉のノック音に顔を上げた。

「はぁ~い、お邪魔するわよ~?」

 入って来たのは典型的な金髪碧眼のエルフ。 腰まで届く髪は三つ編みにして、赤い足元まで届くローブに身を包んでいた。 王立学院長マイマイ・ハーヴェイ、ロプスの妻である。

学院長(オマエ)か……、練金科まで足を運ぶなんて珍しいな」
「今そこで泣きながら走っていく女子とすれ違いましたもので。 昼行灯の上に生徒虐待なんて査定に響くわよ?」

 悪戯を問い詰める楽しそうな顔を近付けた学院長をスルーして、その鼻先に赤い液体瓶を押し付ける。

「つれないわねぇ。 ……ナニヨコレ?」
「課題で提出してきたポーションだ」
「ふーん、誰が作ったの? 貴方にも作れるような代物じゃなさそうじゃない」

 チャポチャポ振りながら、内容物を一瞬で見抜く。

「流石に解るか……、冒険者、だそうだ」
「なあんだ~冒けn……、ってはああぁ!?」

 言われた意味を脳内でシミュレート、してその非常識さに絶句した。
 その様子を見て大袈裟な溜息を吐いたロプスは、元宮廷魔導師マイマイ学院長の手から赤い液体瓶を取り上げると、机に置く。

「こんな物を世の中に出回されちゃあ市場が大混乱になっちまう。 とりあえず明日、ギルドまで行って作った奴に釘を差しておく」
「ものぐさな貴方が動くなんて相当よね。 どうせならその作った人、連れて来ちゃってよ」

 その発言に呆れた溜息を吐くロプス。

「なんだ教師にでも迎えるのか?」
「先ずは面接が先になるわ、それから結果待ちかしらね」

 手をひらひらさせながら部屋を出て行こうとして、足を止め振り返る。

「あ、悪いけど今日は兄さん達と食事会があるから。 夕食は要らないって言っといてくれる?」
「判った。 しかしよくもまあ、大司祭の都合が空いたもんだな……」

 すすっとロプスに寄り添い、その頬に触れるだけのキスをしたマイマイは、にこやかに手を振って部屋を出て行った。

「ウチの愚弟から緊急報告があるんだそうよ~」













 ―――貴族街高級料理店 “黒兎の白尾亭”


「……てな訳だ」
「な、な、な、なんですってええぇぇ~~」
「成る程、母上殿が……」

 昼間不意にケーナと遭遇し、その一部始終を兄姉へ報告したカータツは、食事の手を止めて鬼の形相で詰め寄ってきた姉。 マイマイに掴み掛かられて、ガックンガックン揺さぶられる羽目になっていた。

「ど・う・し・て・そ・の・場・に・私・を・呼・ば・な・い・の・よぉ~!」
「ふむ、教会を挙げて歓待をすべきなのだろうか?」

 三人の長兄、長身の麗人スカルゴ。 一々動作に『しゃらーん』とか『キラーン』とか音が鳴って光り、薔薇の舞うエフェクトを背負う。 レモン色の金髪に翠に輝く瞳は細い指先を口元に、そして思案した。

 ちなみに音やエフェクトは空耳や錯覚ではない。 これこそが無駄に数ある技能(スキル)の内、掲示板で散々叩かれて運営側の正気を疑われたモノ第一位、【特殊技能(エクストラスキル)薔薇は美しく散る(オスカル)】である。 効果は自分の好きな時に発動出来る耽美効果全般だ。 だからといって覚えさせる母親(ケーナ)にも問題があるのだが……。

 カータツを揺さぶっていた手を止めたマイマイは、長兄の発言に肩をすくめた。

「止めた方がいいんじゃないの? そもそも御母様が人にうんざりして森の奥に引っ込んだのは、何の為よって感じね~」

 妹の言葉にそうだったかと頷き、『さらり』と髪をかき上げる。 弟妹二人はスルースキルを得ているので、今更突っ込まない。

「それにしても御母様が冒険者かぁ……。 ってあれ? まさかあのポーションって?」
「んん? お袋は冒険者今日初日だとか言ってたぞ?」
「ちょーっとね。 製法の絶えたポーションが持ち込まれてねぇ~」

「ふむ、母上殿も来たなら来たと知らせて下されば宜しいものを」
「門前払い食らったと言ってたぞ。 教会には俺ントコより先に行ったらしいがな」

 カータツの説明に額をコツンと小突き、細い切れ長の流し目を無駄に『キラリーン』と光らせ、考え込んだスカルゴ。

「母上殿の訪問を知らせもせずに切り捨てるとは、私の敬愛する母上殿に対する冒涜よな」

 ゆらりと黒い霧を背後に『たぎらせて』黒い笑みを浮かべた彼の瞳は赤く『ギラーン』と不気味に輝く。 それをマイマイはぺしっと叩いて中断させた。

「兄さんも物騒な事を早々口にしない! 御母様に知られたらそれこそ大目玉よ。 あの優しい御母様がそんな事、推奨するはずないじゃない」

 「それもそうか」と呟いたスカルゴは黒い霧を霧散させ『ファサ』と長い髪を手櫛で梳く、そして『シャラン』と流した。

「それでは母上殿がこの王都に腰を落ち着けるのならば、我々の立ち位置を如何するのかが問題であろうな?」
「いや兄貴、今の立場に何か不満でもあんのかよ?」
「決まっていよう、我々にとって主上とは母上殿に他なるまい。 全ての営みを母上殿主流にすべきであろう。 いやそうに違いない!」

 長兄の背後で荒波が『どどーん』と打ちつけられたのを見て、弟妹は溜息を付いた。 どうやら200年経っていても母親至上主義は直っていなかったらしい。 むしろ悪化している。

 こうなってしまった長兄を止める手段は唯一つ。

「御母様に叱って貰わないとダメね」
「こんなのが大司祭で、この国は大丈夫なのかよ……」


 さもありなん。

連続投稿。 実は前編と後編のあいだにこれを入れて「ちょっ、おま、何考えてやがる!」とか言われたかった。
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