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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第95話 湯上りの女性は綺麗です

 休養日と思っていたが、濃い一日だったなと振り返って黄昏てしまった。

 あぁ、その上に、ティーシアの件も有ったか……。結局忙しい1日になったなとより落ち込んだ。


 てくてくと家に戻ると、既にリズが何か満足げな顔をしながらキッチンで夕食の手伝いをしていた。


「あ、ヒロ。おかえり。石鹸の効果、凄い評判良いよ」


 ドヤっと言う顔で言ってくる。うん、可愛い。

 どうも奥様ネットワークに情報公開したようだ。


「洗うのに、大量のお湯が必要なのは伝えた?」


 そう聞くと、きょとんとした顔をする。

 

「そうなの?皆、どうやって綺麗になったか聞いて来るから、ヒロの作った物使ったら綺麗になるって伝えただけ」


 その言葉に血の気が引く。あの奥様連中が大挙して押し寄せて来ても、対応出来ない。

 手洗いの推奨辺りから始めるかと、諦めた。

 アストもまだなので、食事まではまだ時間が有る。納屋で石鹸の型抜きでもしようと、納屋に向かった。


 ヘラで塊を切り取り、小さい方の型に詰めて上下の板で押し込んでいく。押し込み切れなくなったら、追加で石鹸を入れ再度押し込む。

 後は型の縁まで詰め込んだら完成品として抜く。大体ホテルや旅館のアメニティグッズの石鹸の2倍の厚さの塊だ。

 出来れば、削って縁を丸くしたり使いやすさを追求したいが、サンプルと割り切り、そのまま紙に包んで荒い紐で括って行く。

 鍋一杯分の油を石鹸に変えたが、それなりの量になった。ただ、アスト家だけで使うのであれば十分だが、村規模となると全然足りない。

 リズを止めれば良かったとちょっと後悔した。だが、いつかは宣伝する必要も出て来るので、まぁどうにかなるかと諦める。


 紙で包んだ物を風通しの良い乾いた場所に置いておく。取り敢えず、ある程度量産しておくかと、獣脂蝋燭用の油を確認する。

 こちらも私が作った時の手順をティーシアが踏襲してくれたようで、腐敗臭は無く使用済み油の臭いが漂う程度だった。

 前に貰って来た樫材がまだ残っているので、小枝から火を移し、風を送り火の勢いを強める。取り敢えず燃え尽きるまでは風を送りながら待つ事にする。


 燃え尽きるまで暇だった為、今日の出会いを振り返る。

 しかし、ディアニーヌもチャットも個性的だったな……。この世界に来て個性的な人間には良く出会うのだが、極め付けな感じもした。

 まぁ、チャットは訛りの所為だから、そう言う印象を持つのも悪いか。


 後は『探知』か。毎回スキルを貰う度に思うが、ありがたいけど、正しい使い方が分からないのが難点だ。贅沢な話だと思うけど……。

 対象物が何処に存在するか……。一番分かりやすい、リズでテストを試みるか。

 リズの詳細な情報を頭の中でイメージして、何処にいるかを考える。すると、何となくリズがいる方向が曖昧には頭に浮かんできた。

 ただ、これだと使い物にならない。ゲームとかの感覚でも、ぱっと思いつくものが無い。うーむ……。


 それならばと仕事で使っていたCADの画面を想像し、各xyz軸に1m幅の格子が描かれた立方体をイメージする。

 中心に自分を置き、リズがいる場所を置く感覚でイメージしてみる。

 すると3Dの自分とリズが頭の中の格子に浮かぶ。ふむ。これなら、方向、距離、高さが分かるか。

 取り敢えず、この使い方で練習して行こう。格子の幅を調整すれば、詳細な情報を得られるようになるだろう。


 しかし、この世界の人はどうやってこのスキルを使いこなしているのだろう。『警戒』の時もそうだが、感知系のスキルは個々人での捉え方が千差万別だ。

 まぁ、感覚なんて曖昧なものだし、考えても無駄か。自分の使いやすいように使うしか無いだろう。


 そんな事をしている内に樫材は完全に燃え尽き、真っ白な灰になっていた。材料と水の量を調整し攪拌する。後は落ち着くまで待って上澄みの採取か。

 そう思っていると、リズが納屋に訪れ、食事の準備が出来たと言って来た。待たせないよう急いでリビングへ向かう。


 食事をしながら、本日のリズの武勇伝を聞く。余程嬉しかったのか、聞けば聞くほど多方面に話を広めたようだ。胃の上辺りが重くなってきた。

 生産量もそうだが、正しい知識を広めるのは難しい。まずは手洗いと洗顔辺りから始めるべきかなと考えた。


 食事が終わり、休憩を取りながら、リズと話していると、うずうずとしたティーシアさんが現れた。


「ねぇねぇ。お風呂、入らないの?」


 そこまで我慢の出来ない話なのかと愕然としながら、リズと一緒にキッチンのお風呂スペースに向かう。

 事前にティーシアに教えるから、きちんと洗い方を覚えてほしい旨はリズに伝えた。

 今回は並行してお湯が必要になるので、お湯は沸かして貰いつつだ。


「リズで入り方をお教えしますので、覚えて下さい」


 取り敢えず、ティーシアは一旦見学とする。樽に熱湯を出し、水で薄める。そのまま服を脱いだリズに浸かってもらう。


「まずは、汚れをふやかす為に、お湯に浸かります」


 リズが、気持ちの良さそうな猫みたいな顔で、縁に顎を乗せてうっとりしている。

 体が温まった頃を見計らい、頭からお湯に浸かってもらい、すのこの上に出てもらう。


「ここが体を洗う場所です」


 石鹸を泡立てて、頭を洗う。


「髪の毛は特に繊細ですので、このように柔らかく擦って、細かい泡で洗って下さい」


 頭皮、髪の毛と順に優しく洗っていく。

 洗い残しが無い事を確認して、樽のお湯で流す。


「体は端切れで洗って下さい。あまり擦らず、優しく洗って下さい」


 首元から始まり、上から下へくまなく洗っていく。

 石鹸お化けみたいなモコモコになった状態で、お湯をかける。


「最後に、再度体を温める為に、お湯に浸かります」


 減った分を再度熱湯と水で埋めて、リズが浸かる。


「あぁぁぁぁ……。なんだろう、勝手に声がでるぅぅぅ」


 リズが幸せそうな顔をしているが、気にしない。


「体が温まったら、入浴完了です」


 リズに樽から出てもらい、体を拭いて服を着てもらう。


「ここまでが一連の流れです。ティーシアさんは髪と体が汚れている状態ですので、洗浄工程を繰り返して下さい」


 後は、一回目に樽に浸かって体を洗った後に沸騰させているお湯に入れ替える事をお願いした。


「お湯を入れ替えるのは何故なの?」


 ティーシアが疑問を投げて来る。


「体や髪についた汚れが溶け出すからです。初回は特に酷いのでお湯を入れ替えます。次回以降はそこまで考えなくても大丈夫です」


 後は、リズの髪の毛がやはりきしきししているので、お湯を混ぜた香油を優しく馴染ませ、風魔術でブローする。

 静止の声がかかったので、風を切り、髪の毛をふんわり持ち上げる。昨日よりもサラサラな感じだった。


「うわぁ、やっぱりサラサラぁ……」


 うっとり顔で呟く。この後、ティーシアの手伝いをするのに、大丈夫なのか?

 そう思いながら、樽に残ったお湯を外に捨てに行く。流石に土間にぶちまけるのには抵抗が有った。

 樽を戻し、再度お湯で埋める。


「じゃあ、リズ。後は任せたね」


 うっとり顔のリズをティーシアが飢えた顔で引っ張っていく。人妻の肌を見るのは躊躇われるので、髪を乾かす際に呼んで欲しい旨を伝え自室に戻る。

 ぼけっと考え事をしながら待っていたが、キッチンの方から色々歓声が上がっている。やっぱりティーシアも女の子なんだなとは思った。


 程無くして声がかかったので、キッチンに向かう。そこには美人では有ったがくすんだ感じが取れた超美人になったティーシアが上気した顔でいた。

 髪に香油を優しく馴染ませ、ブローする。


「すーごく気持ち良かったわ。これは、もう、戻れないわね」


 ティーシアが呟くと、リズが激しく頭を振り、同意していた。

 髪の毛を乾かすと、指通りを確認したティーシアが感極まった表情で、握手してきてブンブン振り回される。


「もう、別人みたいだわ。ありがとう、とっても嬉しいわ」


 その場でくるくる回りながら、幸せを表現した後は、主寝室に突進して行った。アストに見せるつもりなのだろう。


「お世話大変じゃ無かった?」


 リズに聞いてみる。


「お母さんの方が髪の毛が長いし量も多いから、2回洗わないと泡が出なかったの」


「まぁ、その程度では問題無いよ」


 そんな話をしながら、リズを先に部屋に戻らせる。

 私?折角なので、今のお湯を再度捨てて、お湯を張る。自分も入浴したい。


「はぁぁぁ……。やっぱり日本人は入浴しないと落ち着かないな」


 そんな独り言を漏らしながら入浴し、必死で井戸から補充の水を汲み続けた。


 外の虫の声はそろそろ本番なのか大合唱だ。後は寒くなって来る。本格的な冬の到来だ。

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