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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第94話 関西弁のエルフって需要あるのでしょうか?

 思いがけない出会いをしてしまい、何となく本日の予定が浮いてしまった。

 時間が有れば訓練でもと思っていたが、訓練所に出向いてまでの時間を考えると微妙だった。


 昼食として軽く食事を取り、町に行っていた為、最近ご無沙汰だった冒険者ギルドに顔を出す。

 取り敢えず、町からの帰還と明日からの遠征の報告を入れておこうと思った。


 受付嬢に伝えてすぐに戻ろうとすると、後から呼び止められた。

 話を聞いてみると、どうも私のパーティーへの参加希望者がこの村に来ているらしい。


 募集はしていなかったが、何故だろう?

 今日は休養日として宿で待っているとの事なので、職員が迎えに走って行った。

 詳しい話を聞いてみたが、後衛職で魔法学校の卒業後、冒険者としてやって来た女性らしい。

 ギルド側の調査でも、9等級としての任務達成率は高く、かなり信用はされているようだ。

 良く分からないけど、後衛はどこかで探さないといけなかったので、向こうから信用出来る人間が来てくれるなら、ありがたい。

 会うだけならただなので会ってみようかと、小会議室で待つ事にした。


 ぼーっと、今後の男爵領の事に関して考えて行く。この頃考える事がこればかりなのは、なんともならんなとは思う。

 しかし、温泉か……。領民の衛生向上を考えれば影響は大きい。それに温泉保養地なんてこの世界に来てから聞いた事も無いので、富裕層の集客を望めるかもしれない。

 まぁ、捕らぬ狸の皮算用にならないように、計画はしっかりと立てて行くべきだ。


 そんな事を考えていると、扉がノックされた。声をかけると、職員が声をかけて来てくれたので了解の旨を返す。


 開いた扉の前にいたのは、職員とエルフの女の子だった。


 エルフ!?話には聞いていたが、ここでか!?正直、驚いた。ただ、確かに耳は笹穂耳なのだが、その他は普通の女の子だ。

 強いて言えば髪と瞳が深緑と言う所に驚いたが。この世界の人間の遺伝子はどうなっているんだろうなとは思った。

 背の高さは、私とほぼ同じ165cmくらいだろう。全体的に華奢な印象だった。装備は胸など重要部のみの軽装な革鎧だった。

 何と言うか、顔の印象を含めて、深窓の令嬢と言った感じの綺麗な女の子だ。


 正直、エルフと言えば物語で自由騎士について行っていたエルフや有名な物語のエルフを想像していたので、思った以上の普通さに拍子抜けした。


「いやぁ、初めまして、英雄はん。エリュチャットと言いますぅ。チャットとお呼び下さい。よろしゅうに」


 挨拶を聞いた聞いた瞬間、頭が真っ白になった。英雄と言う単語と、関西訛りの部分にだ。関西弁のエルフ……。想像もしてなかった。


「んん?あぁ、喋りですか?森で育ったさかいに、まだ訛りが抜けて無いんですわ。申し訳無いですけど堪忍して下さぃ」


「あ、はい。初めまして、アキヒロです。ちなみに英雄と言うのは何なんでしょうか?」


「あぁ、それはあれですわぁ。元々町で冒険者をやっとったんですけど、楽師の歌を聞いて恰好えぇなぁ思いまして。それで、パーティーに空きが有るなら是非にも参加させてもらわれへんかなぁと」


 意訳なんだろうけど、この色々な地方の訛りが混じった関西弁はきつい。私も兵庫県民なので関西弁は色々な訛りの坩堝だが、京都弁も混じるとかなり違和感を感じる。


「楽師の歌は、ほとんど誇張か嘘ですよ?私は英雄でも何でも無い、ただの人間です。ご期待に沿えず申し訳無いですが」


「嫌やわぁ。嘘ばっかりて。ギルドの職員さんにも話は聞きましたけど、ほとんど真実やないですかぁ。謙遜も行き過ぎると嫌味ですよってに」


 職員もどんな話を聞かせたのか……。一度きちんと話をした方が良い気がしてきた。


「それに、まだ表向きには公表していませんが、今回男爵を叙爵する事が決まりました。冒険者は兼業で続けますが、パーティーの自由度はかなり制限されます。そんな条件ですよ?本当に良いんですか?」


「まぁ、貴族様になられるんですか。それやったらますますご一緒しとぉ思います。うちも元々研究者から冒険者への転向ですよってに、冒険そのもんが目的とちゃいますし」


 研究者?良く分からないので詳細を確認した。

 どうも、魔法学校の教育だと初等は基礎、中級は応用で、高等は発展か研究の選択になるらしい。この辺りの話は初めて聞いた。

 で、チャットは研究、それも魔道具の研究を2年間メインでやっていたらしい。


 ちなみにこの魔道具に関しても聞いてみたが、スライムの核が魔力のストックの蓄積を担当するらしい。

 後は、スライムの核を砕き特殊な接合剤で回路を描き、魔術の構文をインストールする事によって、疑似的に魔術を発動するらしい。

 スライムの核なんて何に使うのかと思っていたが、確かに魔素を蓄える性質を考えれば、有り得ない事でも無いか。

 回路に関しては魔法学校の秘匿技術らしく、詳しい事を教えてもらえなかった。

 ただ、魔道具が有れば術式制御を持たない人間でもキーワードだけで、魔道具に登録された魔術を行使出来るらしい。

 また、魔道具には、鑑定書が必ず付属されており、そこにインストールされた魔術の詳細とキーワードが記載されている。


「将来的には研究を優先したいと言う事ですか?」


「うちもエルフですさかい、寿命は長いですぅ。冒険者として仕事はしといて、将来は研究に没頭出来たらえぇなぁとは思っていますぅ」


 聞いてみると、エルフの寿命は通常で人間の倍は有る。大体120歳以上は生きるとの事だ。

 ただ、若返りの手段が比較的容易に有るこの世界では絶対的なアドバンテージでは無い。

 ちなみに、歳の取り方も普通の人とは違う。20歳辺りまでは普通に成長するが、そこで外見上の成長は止まる。

 その後、80歳辺りから徐々に老化が始まるとの事だ。どんな遺伝子なのか凄い気になる。


「短期的には、パーティーの方針に沿って行動する事は問題無いですか?」


「それはもう。10年でも20年でも、大丈夫ですぅ。これでも、何組かはパーティーの経験も有りますよって」


 何と言うか、長いスパンの話だ。取り敢えず一番気になっていた年齢を聞いてみたが、18歳との事だ。エルフも15歳で成人なので、大人は大人だ。

 自分が歳を取っている所為も有るが、若い子ばっかりのパーティーになっていく。おじさん寂しい……。


「他のパーティーメンバーもいますので、明日面談と言う事でも良いですか?」


「はい。えぇですよ。是非お会いしとぉ思いますぅ。あれでしょ?歌に出て来はる戦乙女のお二人やと思うと、もう、感動ですわぁ」


 あー。本人に会って幻滅しなければ良いけど。


「後、後衛とお聞きしましたが、今まではどの様なスタンスでパーティーに参加されていましたか?」


「魔術士ですさかい、魔術がメインですぅ。風と土は適性が有りますんで、風で体勢を崩すか土で直接攻撃するかですわ」


 後衛と言うだけ有って『認識』先生で見てみたが『術式制御』も1半は有る。『属性制御(風)』は2を超えているし、『属性制御(土)』も1を超えている。

 後、気になったのが『罠感知』と『罠解除』、『開錠技術』が1近い。これって、ゲームとかだと盗賊とかが持ってそうなスキルだ。

 何だこれ?


 <告。スキル『罠感知』の能力は周囲の自分及び自分が仲間と認める対象に対して、害意が有ると判断される物質、罠と定義された対象を感知します。>

 <スキル『罠解除』の能力は罠と定義された対象を無効化する技術となります。>

 <スキル『開錠技術』の能力は施錠された対象を破壊、非破壊問わず開ける技術となります。>


 『識者』先生が即座に説明してくれるが、ますます意味が分からない。何故、この子がこんなスキルを持っているのか?

 犯罪者とかなのか?でも罠を解除すると言うのがしっくりこない。


「ちなみに、冒険者としてはどの様な活動をされていましたか?」


「フィールドでの活動はあまり無いんですぅ。今までのんメインは学校時代の友達とダンジョン攻略でしたわ」


 ダンジョン?この世界、そんな物が有るのか?ゲームのソースと言っても意味が分からん。


「ダンジョンですか……。すみません、私に知識が無いので、ダンジョンが何か分からないのです。お教え頂いても良いですか?」


「ダンジョンですかぁ?昔の研究者さんや賢者の先生が、根城として作った迷宮ですぅ。学校の方から探索の依頼が出ますよって、中の確認と使えるもんを回収するんです」


「ほぉ……。その場合、使える物が出たらどうなるんでしょうか?」


「基本的には学校に買い取ってもらうんですけど、あまりに高価なもんやと、一旦国に預かってもらって有力者でオークションにかけられるんです」


 あー。あれか。何と言うか、自然発生なダンジョンじゃなくて、遺跡的な物を攻略していたのか。トレジャーハンターみたいなものか。


「後衛と罠の解除とかがお仕事だったんですか?」


「よぉ分かりましたね?えぇ。罠や鍵の解除もやってました。魔物との戦いもそこまで頻度がたこうないので、兼業になってしまいますぅ」


「私達のパーティーだと、フィールドでの魔物狩りがメインになりますが、その辺りは大丈夫ですか?」


「はい。その辺りは気にせんとって下さい。ダンジョンまでの行きしなに狩りをするケースも有りますよって、慣れてますぅ」


「分かりました。予定としては明日から7日間の遠征を予定しています。状況によりますが、参加の方向で考えてもよろしいでしょうか?」


「予定は有りません。大丈夫ですぅ。野営の経験も有りますよって、あまりお気になさらずに。是非参加させて下さい」


 大分疲れたが、話は終わった。その後は細々とした内容を確認し、宿に戻って貰った。

 あー、久々の関西弁にくらくらする。イントネーションがそのままなので、余計にきつい。


 話し込んでいた所為か、ギルドの外に出ると、村はもう夕焼けに染まっていた。

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