表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
96/810

第93話 のじゃロリって需要あるのでしょうか?

「ふはははははは。初めましてじゃな、客人。ディアニーヌと言う。統治を司っておる者じゃ」


 将校用礼装なのか、豪奢な軍服に精緻な刺繍が施された赤のマントを肩に羽織った、小学生くらいの綺麗な顔をした少女が仁王立ちで浮いていた。


「あ……。初めまして、アキヒロです」


 正直、いきなりすぎて展開についていけなかった。誰も彼もエキセントリックな性格だし、統治を司るのに、子供で少女なのかと言う驚きが先に来た。


「まぁ、今回は男爵叙爵と言う事なので、儂が赴いたのじゃ。色々伝えんといかん事もあるのでな」


 うわぁ、のじゃロリとかリアルで初めて見た。


「ん?この姿か?お主の世界でも、古来統治の系譜は女系が主流じゃったじゃろう?その名残じゃ。年恰好は省エネじゃな」


 かかかと笑いながら、ディアニーヌが続ける。


「王国の貴族に列すると言う事で諸注意に来た。王国法は読んだじゃろうな?」


 お土産にノーウェから渡された王国法の書籍はざっと読んだ。何となく貴族と言うより、会社の社則を読んでいる気分にはなった。


「まぁ、今後一番気になるのは、税収とその利用に関してじゃろう?」


 説明を聞くと、税収周りが何となく分かって来た。書籍で読んでも理解し辛いが、話を聞くとすぐ分かる。


 税収の基本は、畑毎に収穫量の目安が決められ、そこから4割を国に、1割を領主に、5割を農家に分けるのが基本だ。

 この、1割の部分で不作対策や予算外の時の余剰金としてプールして行く。

 その他の開発に伴う利権は、ギルドが絡む物はギルドの税が、それ以外は無税となり領主の資産となる。


 ただ、領主は年度毎に定められた税収を納める義務が発生する。足らなければ説明責任も有るし、下手したら免職も有る。


 逆に領地を豊かにして小麦を増産する事は推奨されている。想定された税収を超えた分は国に申告した上で領主が自由に使える。

 これが国の評価につながるし、その資産を使って領主が贅沢をする事も可能だ。

 無駄遣いと思いがちだが、金持ちが金を使わないと経済が回らない。経済活性化の意味でも積極的に使うべきだ。

 それに貴族への憧れも促進させる事が出来る。未来の有力者の確保は大切だ。

 また、インフラ側への再投資も可能になる為、積極的に回している貴族がほとんどだと言う。


「その辺りは、お主の世界の会社経営と変わらん。あまり難しく考えるな」


「はい……」


「まぁ、現状も立憲君主制までで精一杯じゃ。王国法を国王の上位に置き、暗君が発生した場合でも、力を持つ貴族が対応出来る」


 ここで、若干顔色が曇る。


「お主の世界の共産主義と言うのか?あんなものは理想じゃ。理想で腹は膨れんし、夢は醒める物じゃ。民主主義に関しても民がここまで汲々の生活では政治にまで意識は回らんのじゃ」


 眉根が徐々に寄る


「この辺りはゆっくりとでも発展してもらわんと儂が過労で死にそうじゃ」


 また、カカカと笑う。


「今後は度々フォローに入ってやるのじゃ。今喫緊の問題は有るかの?」


 急に聞かれても、ぱっとは思いつかない。

 あぁ、少し気になっていた。


「新領地の水関係が気になっています。井戸で水が出るのかとかは大きな課題ですから」


「ふむ。あの辺りは水脈が濃い。縦横無尽に流れておるし、圧も高いのじゃ。岩盤も数十cm程度じゃ。どこを掘っても数mで噴き出すぞ?」


 そこは安心した。後はあれか、公衆浴場、温泉か……。


「温泉とかも有りますか?」


「ほぉ?」


 にやっと笑った。


「まぁその内手に入れるスキルじゃ。その辺の調査の為に使えるスキルは渡しておくのじゃ。『探知』と言うが、まぁ、俗に言う山師の勘と言う物じゃな」


 少し思案顔で続ける。


「目的物がどこに有るか、何となく分かる人間は良くおるじゃろう?そういう人間は大体このスキルが発動しておる」


 どうも鉱物とか水源を見つける為のスキルのようだ。特定の人間も探す事が出来る。

 『警戒』より対象は特定されるけど、範囲は広い様だ。


 また、額に手を当てられ、温かい何かが頭に入り込む。


「あの辺りは鉄泉じゃな。お主の故郷で言えば、赤湯じゃ。深さも100mちょっとじゃな」


 結構深いな、露天掘りだとどれだけ時間と金と人員がかかるか。

 顔色を見たのか、ディアニーヌが続ける。


「おいおい。お主の世界には便利な物がようけ有るじゃろうて。上総掘りならこの世界でも容易に開発可能じゃ」


 上総掘り?上総掘り……。建築系や建設系は不得意なのですぐに思い出せない。


「お主の国の言う開発途上国にボランティアで井戸を掘る際に、使っておるじゃろうて?まぁ、お主の周りは重機でボーリングが基本じゃからな」


 あー。分かった。前にボランティアのドキュメンタリーの中で見た。

 構造としては、櫓を建てて、弁の付いた鉄杭を落下させて打ち込んで土を取り除いていく。パーカッション・ボーリングの走りだ。


「はぁ。お主の国の文化じゃぞ?何もかも覚えておけとは言わんが、忘れてしまって勿体無い事は覚えておくのじゃ」


 にこやかに微笑む。


「あれならば、人力だけでも1日で3m程度は掘削出来る。30日ちょっとで出るじゃろう。圧も湯量も豊富じゃ。自噴で十分まかなえる。温度も50度を超えとるはずじゃ。冷まさねばならぬがの」


 そこまで言うと、真剣な顔になる。


「ただし、条件が有るのじゃ」


「条件ですか?」


 神様から条件を提示されるのは初めてだ。なんだろう。ちょっと不安だ。


「温泉が完成した暁には、儂らにも楽しませるのじゃ。地球の情報を閲覧は出来るが体感は出来んのじゃ。どれだけ悔しいか……」


 ハンカチを噛みながら、うぐぐと言う顔をしている。私はあっけに取られて何も言えない。


「と言う訳で、温泉は楽しみにしておるし、この情報はもう既に神々の知るところになったのじゃ」


 そこまで聞いて、顔から血の気が引く。どんだけの神様方が来るのか。


「まぁ、無茶はせんのじゃ。早朝や夜中に順番でお忍び訪問じゃな」


 深夜や朝風呂に入ると、神様とばったりの可能性も有るのか。軽くホラーだな。


「これから、為政者としての人生じゃ。儂が出て来る機会も増えよう。今日はこの辺でさらばじゃ」


 あっさりとした感じで、ふわっと消える。そして世界は動き出す。


 瞬間ブツッと言う音が改めて頭の中で鳴る。


 <告。再接続を確認しました。深刻なエラーは復旧しました。不明なシステムの接続ログの確認を行います。…………確認完了。不明なシステムは接続されていません。正常な動作が確認されました。>


 毎度の『識者』先生。


 <スキル『獲得』より告。スキル『獲得』の条件が履行されました。『探知』1.00。該当スキルを統合しました。>


 そして『獲得』先生の声。


 しかし、忙しない神様だったな。国王達おっちゃんが幼女にこてんぱんにされているところを想像して、ちょっと笑えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、感想、評価を頂きまして、ありがとうございます。孤独な作品作成の中で皆様の思いが指針となり、モチベーション維持となっております。これからも末永いお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます。 twitterでつぶやいて下さる方もいらっしゃるのでアカウント(@n0885dc)を作りました。もしよろしければそちらでもコンタクトして下さい。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ