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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第88話 個人的にはトライバル柄は模様によりますが好きです

 朝日と共に起き出し、宿での朝食が済んだ。

 そのままマントを買いに、冒険者向けの服飾屋に向かう。おすすめの店はロットが案内してくれる。


 郊外の大規模服飾店並みの店の大きさだった。2階建てだが、上は事務所兼倉庫のようだ。

 早速店の中に入って、圧倒された。この世界に来て、初めてこれだけの服を見た。有る所には有るのだなと。

 冒険者用と言うだけ有って、肩や急所等が革で保護された服だった。鎧を買う前はこれでも問題無いのだろう。鎧を着ても、関節部は露出するのでそこを最低限でもカバーしてくれるのならありがたい。


 店内は大きく、新品コーナーと古着コーナーで売り場が分かれていた。

 この世界で服は基本的にオーダーメイドだ。高価になるので、普通は古着を探す。ただ、冒険者の場合、返り血等で汚れる傾向が有るので好みは分かれる。

 個人的には日本でも古着は買っていたし、洗濯さえきちんとしていてくれれば古着でも気にしない。

 しかし、見ていて安いなと思う物は大分着古され、所々補修されていたり解れたままだったりする。


 今日の目的は別なので、服はまた今度と言う事で、マントだ。布や革、加工も色々施されている。

 ゲームや漫画ではおしゃれ装備と思っていたが、厚手の布のマントを羽織ってみると予想以上に温かい。コートを着るのと同じなのかと実感した。


 中古は加工が劣化していたりとあまり品質が良くないので、新品を探す事にした。撥水を期待しているのに、水を弾かないマントなんて意味が無い。

 色は森や平地での魔物戦を想定して、地味目の色をチョイスするように、皆には指示した。


 私はテントと同じく、帆布に蝋引きの撥水加工が施されたマントを選択してみた。

 ボタンが裏地に着いていて、寒い時は綿入れみたいな布を装着出来るようだ。これから寒くなるので一緒に購入する。


 ロットは、薄手の革のマントを選択していた。前の物が大分傷んできたので今回一緒に購入するらしい。

 斥候職は森の中を縦横無尽に走り回る事も有る。そういう意味では装備の消耗が激しい。そこもパーティー資金で考えるべきか悩む。

 ちなみに裏地には大きめのボタン付きのポケットや吊りベルト等が付いており、投擲用のナイフや、地図、小物の収納も可能らしい。うん。ますます斥候っぽい。


 女性陣は兎に角きゃいきゃい言っている。色が可愛いとか模様がどうとか、姦しい。マントでこれとなると、服は怖い。

 ちなみに、模様に関しては、縁の縫い目に合わせる形で縁模様が飾られている。


 私のマントは、生成りっぽい生地の色にトライバル柄っぽいのが黒で施されている。生成りも森の中ではそこまで目立たない。夜は若干浮くが元々火を焚き続けるので関係無い。

 ロットのには、直線的と多角形の組み合わせの縁取りっぽいデザインだ。


 結局、リズは鳥をモチーフにした意匠が隅に配置された帆布っぽい撥水加工のマントを選んだ。色は深い藍色だ。

 フィアはリズと材質は同じでイノシシをモチーフにした意匠が隅に配置されている。色は深い緑色だ。

 2人共、綿入れも一緒に購入となった。


 私達帆布組は加工済みと言う事も有り、大体5万ワール前後だった。貨幣価値の差を考慮しても日本で、良いコートを買うとそれ以上はするので妥当かなと思った。

 ロットは一枚革で大きい物が高いので、10万ワール近くなっていた。やっぱりちょっと考えるべきだ。斥候職は何かと出費が多い。

 値引き交渉をして、値段は下がらないがロットのマント用のワックスの甕とヘラを付けてもらった。やっぱり色々荷物は増えるな。


 女性陣の選択に時間がかかり、結局昼前となった。

 ロットに連れられて領主館近くの食事が出来る店に移動した。

 ここもメインは肉料理にサラダとスープ、パンの店だったが、思ったより安かった。

 商店街にも行政設備にも近い立地なのに儲けが出るのかといらない心配をした。ロットが言うには、昼メイン、薄利多売でやっているとの事だった。流石地元。良い店を知っている。


 良い時間になったので私は領主館に向かう。ロットがドナドナされる牛の様な目をしていたのが印象的だった。まぁ、売られる訳では無い。フィアの機嫌を取って欲しい。


 領主館に着くと何時も通り、門衛から執事、そして執務室への誘導の一連の流れで進んで行った。

 ノックをして応答が有ったので、執事に扉を開けてもらい、執務室に入る。ノーウェは机で書類を読んでいた。


「こんにちは。ノーウェ様」


「急ぎの書類が入ってね。ちょっと失礼だが読み切る。暫し腰かけて待っていて欲しいな」


 そのまま執務室のソファーに腰かけ、すかさず運ばれてきた紅茶を軽く口に含む。香りが毎回違うが、葉が違うのか、産地が違うのか。

 今日の話し合いの内容を予想しながら、益体も無い事を考えつつ待つ。


「いや、すまない。時間を空けておく様に言っていたのだが、どうにも陳情が急に入った」


 すまなそうな顔で、向かいのソファーに腰かける。


「昨日も言ったが、根回しと陳情の山だ。どれも父上案件をこちらに持ってくる馬鹿ばかりだ。子とは言え、政治上は他人だ。意味が無い」


 心底からの長いため息を吐く。


「気分転換でも無ければやってられんよ。まぁ、それでも新規男爵領の件は楽しみだ。是非意見を聞かせて欲しい」


 そう言うと、控えていた執事が書類を数枚渡してくる。

 内容は一般的な『初心者男爵用セット』の内訳とそれぞれの予算額が記されている。


「増額は確定しているが、額は決まっていない。一旦は一般的な予算内容で叩き台を作ろう」


 ざっと読んで行ったが、良く出来ている。経験が無いので何とも言いきれないが、10年で村を築き、小麦の収穫で税収を治められる予算としては妥当だろう。

 当初は農民で100人程度とその家族達とその家。薪炭類の移送料。初期食料の代金と移送料。河川から生活用水の引き込み、その他インフラ設備等々だ。

 その他のギルドに関しては各ギルドが予算を立てている。

 後はもう一村分だが、こちらはかなり小さな規模の村だった。


「開拓民の比重がかなり高いですね?」


 そう、見て一番目立った支出が初期開拓民の数と家の数だった。


「一からの開拓だからな。人手はかかる」


 この世界の開拓は、基本的に人の手だけで完結している。家畜は食料源としてしか認識されていない。


「牛の価格はどの程度ですか?」


「牛……?うーん、冬の度に潰すので、肉の効率は悪いが……」


 予算の中で説明されると、家を2件ほど潰せば、牛は8頭は入れられる。住民は10人程減るが。


「冬越しさせたいので畜舎を別途で建てたいです。それは増額分で補填出来そうですか?」


「その程度は十分に付く。父上も言っていたが、あの人が決めたら、本気でやる。そう言う物だ」


 ふむ。それはありがたい。取り敢えず、早々に牛鍬を開発して人力開拓から脱却したい。


「そう言えば、ロスティー様は如何ですか?」


「その詳細も話さなければならないね。まぁ、あの人だ。昨日の晩には早速領地に君から受け取った物を早馬で送っていた。そう時間がかからずに量産体制は整うだろう」


 設計書に今後の量産体制に関しての覚書も書いていたが、流石に反応が早い。良い政治家の条件の一つが即断即決だが、あまりに早い。


「昨晩は父上が遅くまで君の事を語っていたが、あれ程の喜びようは珍しい。余程気に入ったのだろう。それにあの人は信用した人間には寛容だ。少々の過失には目を瞑る。裏切りは許さないが」


 思ったより高い評価だったようだ。


「鉄鉱床の件は正式に後回しで話は決まった。ただ、他の貴族の目が有るので分かりやすい収入源の確保は重要だ」


 不明な所から、金が湧き出ると目をつけられると。


「海への進出も、勝算が有るとの君の言葉を信じる」


 執事に合図を送り、新規男爵領を中心にした詳細な地図を持ってくる。

 どうも、こちら方面の開拓も視野に入れていたのかかなり詳細な情報が載っている。

 見てみると、海までは森を大きく迂回して馬車で7日だが、森を掠める程度なら最短で5日かかるか、かからないかだ。


「この南の森ですが、脅威度としてはどう見てらっしゃいますか?」


「魔物は出ないよ。ただ、薪としても使えない使いにくい森なんだ」


 ん?気になる話を聞いた。


「どの様な森なのですか?」


「木々は疎らだが、強度が弱くすぐにしなる。建材としても使えないし、薪にしようとしても破裂して危険なんだよ」


「木の色は緑で、節が有る、細長い植物ですか?」


「うん。そうだ。知っているのかい?」


 竹か笹だ!!やっと見つけた。こんな所に有ったのか。確かに生き物が住むには適さない。

 それ以上に、揚浜式か入浜式の塩田を想定していたけど、竹か笹があるなら流下式塩田まで一気に持って行ける。

 それに海までのアクセスも大分良い事が分かった。これは大きい。


 そこからは海側の詳細の話に移った。

 最短距離で南に下った場合、かなり長い砂浜が続く海に出るそうだ。

 少し東西に移動すれば、一気に深くなるらしい。そこならば港も作れそうだ。

 将来を知っている人間に取っては、夢の様な場所だった。


 その辺りを含めての新規男爵領の領地だが、かなり縦長で広大なものになっていた。縮尺は依然曖昧だが、大体日本の何県分とかの世界だ。


「さて、少し話し過ぎた。軽く甘い物でも摘みながら休憩でもしよう」


 執事に合図すると、お茶と菓子が用意された。


 さて、クールダウンの後は、最終の詰めだ。

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