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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第83話 ファンタジーの世界の人ってニュースをどうやって知るのか疑問です

 一泊目の宿泊地に着いたので、皆が馬車を降りる。

 休憩を挟むと言っても、基本は座ったままだ。もう体がバキバキだ。35歳のメタボにこれはきつすぎる。

 後、馬車酔いはしないのだが、クッションが無い所為でお尻があれな事になりそうだ。ぢぬしですか?とか聞かれたくない。地主にはなりそうだが。


 そんな中でラジオ体操をしながら体を解していると、周囲から奇異な目で見られる。


「座りっぱなしだったので体を解しています」


 そう声をかければ、視線は散る。でも、何時の間にか目線が向けられる。もう、気にしない。そう決めた。


 料理は乗客各位で調理だ。3人に周辺から食材と薪を集めて貰う。私は荷物の番をしていたが、周りの皆は保存食をもそもそと食べた後は、毛布に包まり寝る準備だ。

 余裕が無く観察出来ていなかったが、本来こんなものかと、どこか納得してしまった。


 宿泊地だけ有って、川が少しすると、有る。リズは鳥を数羽確保出来たようで、捌きに向かっている。

 ロットも薪をフィアは野草の類を取って来る。ニラなど香りの高い物が有ったので、鳥鍋にしようかなと。


「フィアさんはニラとかも食べるの?」


「お母さんが食べられるって言ってたから食べてるけどぉ。あんまり美味しくないよね?」


 ふむ。農家の知恵か。リズは食べた事無いって言ってたしな。


 鍋吊りの環境を整えていると、ロットが薪を持って来てくれた。薪と小枝を組み直し、枯れ葉を中心にまとめる。

 火口箱に火打石で火を付け、息を優しく吹きかけ火種を大きくする。そのまま縒った捨て紙に火を移し、枯れ葉に火を灯す。

 後は、ゆっくりと空気を吹きかけながら、小枝に火が移るのを促し、薪へ火が移るのを確認する。


 鍋を吊り、かなりの温度のお湯を水魔術で出し、鍋に注ぐ。

 余裕な状態で、鍋分の水ならそろそろ70度は超えれるようになった。地道な努力が実を結んでいる。


 徐々に、火が大きくなり、鍋の底を赤く染めて行く。


 その頃には、リズが鳥を捌いてくれているので、木皿の上で包丁で叩きニラと一緒に、ミンチにする。

 保存食を砕き、ミンチと合わせ、匙で丸めながら沸騰した鍋に投入して行く。内臓も適度に刻み入れる。

 暫し待つ間に、80度程度の熱湯で木皿を洗いタワシで擦り、再度熱湯で濯ぐ。

 鍋から香りが立つ頃に、刻んだ野草を入れて、ゆったりとかき混ぜる。

 スープの味を見て、塩で仕上げをする。


 各自にカップを出させて、スープを取り分ける。鳥の量が多かったので、身の一部は明日朝に回す。

 保存食をスープに浸し、少しずつ温かさを噛みしめる様に啜る。


「あぁー。絶対に、リーダーなんかずるい!!なんで店より美味しい物を屋外で作るかな!?」


 フィアが理不尽に叫ぶ。


「確かに、店を開けますよね、この味は」


 ロットも同意する。

 リズは幸せそうな顔で、黙々と食事を進め、自分でお代わりを注いでいる。


「あーリズ、ずるい!!」


 フィアも慌ててペースを上げる。まぁ、2杯程度ずつは十分有るさ。

 ふと気づくと、周りの視線が、気になる。まぁ、これだけ匂いをさせていればしょうがないか。


 立ち上がり、乗客達が集まっている方に進み、騒がした迷惑に対しての謝意を伝える。

 特に否定的な感じも悪意も感じず、ただただ興味が有るだけの様だった。

 まぁ、中々屋外で凝った料理を作るパーティーはいないだろな。

 しばし談笑し、集団から離れる。まぁ、何か起きない為に動くに越したことは無い。


 戻ると、きれいさっぱり鍋は空だった。フィアが満足そうにしている。


「はぁー。超満足。寒い時に温かい物食べられるの、幸せだよねぇ?」


 犯人はこいつか……。まだ、一杯しか食べていないのに。


 少し切ない思いをしながら、全ての食器と鍋を熱湯で流し、タワシで擦り、濯ぐ。

 水を切りながら、清潔な端切れで拭いて行く。それぞれに自分用のカップと匙を渡して行く。

 カップに関しては、割れるのを恐れて木製だ。

 各自が好みの物を買っており、リズは意匠化された鳥が、フィアは意匠化されたイノシシが、ロットと私は無地だが、形が違うのですぐに分かる。

 匙に関しては、見分けがつかないので、諦めている。マークでも付ければ良いが、そこまで気にしてもしょうがない。


 乗客の面々も火を絶やさないと分かると、周囲に近づいて来た。

 訓練の為、野営として対応するつもりだ。危険は無いと思うが、まぁ訓練は出来る時にやっておく方が良い。


 周りが談笑していると、中に楽師がいたのか、リュートっぽい楽器を取り出し歌い出した。

 始めは神の優しさを称える静かな歌、秋の収穫を祝う明るい歌、ある町での魔物の恐ろしさを感じさせる激しい歌、聞くともなく聞いていた。

 吟遊詩人と言う職業が明確に有る訳では無いが、情報拡散の手段が乏しい為、こう言う楽師がニュースを面白おかしく広げて行く。


 最後のつもりなのか楽師が大仰な礼をした。

 勇壮なメロディが流れ、大きな災厄に晒された村を助ける英雄の歌が始まった。

 最初は特に何も感じず聞いていた。

 村の危機を感じ、森のゴブリンを英雄が美しい乙女2人と殲滅していく。

 それでも無数のゴブリンはあらゆる場所から湧き出す。

 集結した後、首魁が姿を現し村を殲滅しようと攻めて来る。

 最後の平野の戦いでは相手の首魁が乙女達を倒し、あわやのところで英雄が助けに入る。

 そのまま首魁を一騎打ちに葬り、国から称賛を得た所で歌は終わった。


 乗客たちは拍手喝采で称賛の声を上げていた。


 私?前の話かよ!!と心の中でずっとつっこんでいた。話を大きくし過ぎ。嘘ばっかり。

 うわぁ、周囲の評価ってこれなのか?流石に気恥ずかし過ぎて途中から挙動不審になった。

 リズの方を見ると熱い視線でこっちを見ていた。フィアは倒された一人にされ、納得のいかない顔だった。ロットはうんうん頷いていた。


 マスコミの歪曲報道も怖いなと日本で思っていたが、この美化された英雄視は酷過ぎる。何かの問題が起きたらどうしよう。

 今日は中番の為、さっさと毛布に包まり寝ようとするが、恥ずかし過ぎて寝れない。ごろごろと悶えながら、なんとか眠りに落ちて行った。

 

 少なくとも次の日の朝は最悪の気分だったとだけは言っておく。

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