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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第72話 知識系チートの人って、どうやって知識を得ているんでしょうか?

 私が町で一泊する事を前提に、本日は完全休業だ。


 食事が終わると、リズはかなりしぶっていたが、アストと一緒に狩りに出た。頑張れ。

 フィアは、ロットを連れまわしているらしい。流石、肉食系。ただ、それがメンバー間の友情に結びつくのか愛情に結びつくのかは知らない。

 それは神のみぞ知る。いかんいかん、婚姻を司る神辺りから、何かが来そうだ。


『ちっ……』


 ほら、舌打ちみたいな幻聴が聞こえた。


 と言う訳で、私は大工の所に向かっている。

 公爵への挨拶を早めにして、地盤固めをしたいのだ。

 将を射んと欲すれば先ず馬を射よでは無いけど、予算の決定権は国王が持っているし、寄親の子爵だけではちょっと弱い。

 公爵なら侯爵と並んで最大勢力だ。多数派工作も出来るだろう。ポンプの利権は子爵の手柄にすると言う事で話を進め、こっちは別の手段を講じないと。


「いらっしゃいませ。本日のご用件は?」


 木工屋に来るのは初めてだ。壮年の男性が出迎えてくれる。


「すみません。ちょっと新しい玩具を考えているんですが」


 そう言いながら、紙を差し出す。紙に関してはギルドから安く卸してもらった。羊皮紙は高いのと、ペン先が引っかかる。まぁ、紙の質もそこまで良くないので、引っかかるのだが。


「塗料は有ると聞いていますので、指定色に塗り分けて下さい。この線の部分は墨塗りで大丈夫です。あ、この丸いのの円周はマスよりちょっと小さめで。サイズは揃えて下さい。後、この丸いのを半分ずつ入れれるケースもお願いします」


 何かと言うと、ド定番、リバーシだ。どうもこの世界、遊戯関係はとことん弱い。チェスでも有るかなと思ったが、軍事演習用のコマ程度までだった。それも自軍とモンスター達みたいな、超単純なのしかなかった。

 チェス、将棋、トランプ、色々考えたが、定番だけ有って、開発の手間がとことん少ない。それにちょっと一工夫を入れれば贈答用になるかなと。

 後、チェスは対人戦がほぼ演習しかないので、楽しみが伝わるか、疑問だ。駒を彫る人を探すのも大変だし。


「んー。この丸いのは厚みも揃えますか?」


「はい。一枚板を上下で塗り分けて型で抜く方が早いと考えます」


「そうなると鍛冶屋とも相談ですね。時間は長めに見ておいて下さい」


「どの程度ですか?」


「鍛冶屋次第ですが、一週間ですね」


「価格は?」


「んー。鍛冶屋の機材次第ですね。ざっと2万はかからないとは思います」


「では、今後依頼もしますので、一旦2万をお支払いしておきます。余りは次回の発注の際に引いて下さい」


「分かりました」


 その後、仕様について詳細を決め、切れ端を加工して完成イメージを固める。

 双方が納得いった頃には、そこそこの時間が経っていた。


 別れを告げ、鍛冶屋に行こうかと思ったが、疲れたのと昼も近いので、休憩を挟んで昼を食べて、鍛冶屋かなと考えた。


 ぼけーっと、木の木陰にもたれかかり座りながら考え事をする。


 色々と先は考えているが、取り敢えずは地球への帰還に関してだ。

 自由に出来ると言われているが、だからと言っても戻ってもする事が無い。


 何故かと言うと、私も過去に異世界に飛んだ場合にどうするんだろうと、色々知識を得ようとした頃が有る。

 これが不毛なのだ。


 例えば、今喫緊として欲しいのは石鹸だ。学校の理科の実験でも作った。開発は容易だろう、そう考える。

 その時に使ったのが、油と苛性ソーダだ。この苛性ソーダが曲者なのだ。

 苛性ソーダは水酸化ナトリウムだ。じゃあ、水酸化ナトリウムの抽出って如何すれば良いのか?

 一番簡単なのは、海水と純水の電気分解なのだ。機材も海も無い。無理だ。


 大体、この辺りで検索サイトも図書館も知識の経路がストップする。

 苛性ソーダを使わない石鹸作りとか見て、目を輝かせると、市販の無添加石鹸を崩してとか書いてあると凹む。


 他にも重曹や米糠を使うパターンも有ったが、結局材料を揃えるのが難しい。


 材料の持ち込みも考えたが、数量の限定も有るし、量産も出来ない。

 一足飛びは出来ないのだ。


 で、古代石鹸の作り方にシフトする。

 正直、南の森を探索すればオリーブは見つかるかも知れない。綿の生産をしている村から種を貰い綿実油を作るのも良い。

 それに木の灰汁を混ぜて行けば、その内出来る可能性は有る。

 ただ、その生産コストが物凄いかかるのだ。植物油のコストはとんでもない。

 よっぽど領主生活が成功しない限り、難しい。

 かと言って動物脂がベースだと、匂いがきつい。


 本当の知識チートなんて、金が有り余っているか化学系の知識が有る人間しか無理だとやさぐれた。


 取り敢えず、機会を見て、イノシシの脂を貰って試してみるかと思いながら、立ち上がった。


 お昼は軽く済ませ、鍛冶屋に向かう。

 挨拶を交わし早速手押しポンプの状況を確認する。


「木型で稼働実験をしたが、吸い上げは確認出来た。研究員も納得いっていた」


 おお。正直現状では期待していなかったが、実験も成功か。


「後は、手作業で青銅製のを作ってみる。まぁ、先は見えた。もう少しだ」


 頼もしいお言葉が出る。


「研究員側は何か言っていましたか?」


「いや。この発想が出来るなら、他にも有るだろうって言ってやがったから、完成させてから言えくそがって答えてやった」


 いつものガハハ笑いが続く。いや良い性格している。


「後、お願いが有るんですが」


 公爵の略式紋章の焼き印を1cm角で後は数字の焼き印を5mm角で揃えて貰う。


「それは構わんが、公爵様の紋章なんて何に使う?下手したら、国に睨まれるぞ?」


「あぁ、そこはご心配無く。公爵様への贈答品に押したいだけです」


 ざくっと事情を説明し、大工との連携も頼む。


「んじゃ、道中何も無かったですが念の為確認お願いします」


 槍を2本渡す。


 何故2本かと言うと、指揮個体戦の際に使った槍が結局見つからなかったのだ。

 しょうがなく、代わりのを買おうと思ったが、改造分の時間がかかる。3日もグレイブもどきは辛いので、2本買って、交互に改造してもらった。

 今は予備として持っているが、正直邪魔だ。どっちかは置いておきたい。


「んあ?どれどれ……。あー。弄ってないなら大丈夫だ。刃も問題無い。そのまま持ってけ」


「ありがとうございます」


 刃の状態とバランスの狂いを見て、返してくれる。


「まぁ、ほとんど新品だから問題無いが、巻き革傷んだら持って来いよ」


 いつも通り、細かい確認もしてくれる。


 別れの挨拶をして、鍛冶屋を出る。

 中途半端な時間が残った。リズがいればデートでもするのだが、狩りに出ていてはしょうがない。

 娯楽も無い。


 しょうがないので、修行でもするかと、北の森側の開けた空き地に向かう。


 まずは槍かと、延々素振りと、牽制の訓練をする。

 流石に腕の筋肉がついて来たのか、『剛力』の影響が有るのか、振り回される機会は減った。

 ただ、持久力とお腹の脂肪は相変わらずだ、ちょこっと下を覗き、視線を上げる。

 凹む前に訓練、訓練。


 1時間強を使い、息も絶え絶えになりながら小休止を入れる。

 流石に持久力は一朝一夕にはつかないな。と、お腹の脂肪との差にげんなりした。

 しかし、本当に腹回りが変わらない。これだけ食生活も運動も増やしたのにとお腹を突くと、奥の方に筋肉を感じた。

 やばい、やっぱりお相撲さんみたいになってる!?

 戦々恐々としながら、休憩を止め、魔術の訓練に移行する。


 風に関しては、正直成長が鈍化し過ぎて、何をすれば上がるのか謎だ。過剰帰還ぎりぎりで撃ってなんとか上がる感じだ。

 もう、最大値を放って規模を拡大するしかないのかと、辟易とはした。


 水に関しては、より高い温度で同量を発生するだけで、現状は上がる。

 出現場所等、座標を気にしながら、射程範囲を確認して行く。

 術式制御はじりじりと何を使ってもまだ上がる。現状で歩測20mをちょっと超えたかな位だ。些細な差だが、致命的な瞬間も有る。射程の延長と把握は生命線だ。


 過剰帰還が出始めるまで繰り返していると、夕方も暮れて良い時間となった。


 さぁ、家へ帰ろう。

 いつの間にか、何の躊躇も無く家って思ってたなと、皆の顔を思い浮かべながら、少し幸せな気分に浸った。

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