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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第一章 異世界に来たみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第67話 小さな決戦の後日と子爵の呼び出し

 馬車に揺られながら、ぼけーと過去を思い出す。

 今日は、ゴブリンの集団との戦いから、2週間程度経った晴れの昼間。


 あまりに暇な為、あの時を鮮明に思い出して行く。

 指揮個体を倒し、安全が確保された後、辺りからかな。


 リズが生きている事を喜んでいたが、痛みに呻く姿を見て、ぞっとした。

 やはり肋骨か?と思ったが、地面に投げ出され、そこそこの距離を滑ったのだ。

 革鎧と服が有ったので大事は無いが、打ち身と後頭部の傷は有った。過剰帰還が有る程度収まった段階で治した。

 その後、フィアも混じってお互いに無事を喜んだ。


「僕達、達成料出るよね?出るよね?」


 フィアの台詞には、何となく同意したくない雰囲気を感じたが、3人での成果だ。パーティー資金含めて頭割りにした。


 冒険者の皆に関しては、奇跡的に死者はいなかった。正直、最後の突撃の際に危ないとは思ったし、事実重傷者は出ていた。

 後遺症が残った人もいる。現在の力ではそれが限界だった。


 過剰帰還が収まる度に延々治療班に混じり治し続けた。あの頭痛と吐き気の世界に帰りたくない。

 ギルド職員や極一部の冒険者の神術士が延々と休憩を挟み、頑張っていた。スキルが有るので文句は言えなかった。

 

 騎士団側はそのまま掃討作戦を進めていた。それがお仕事なので特に何か言う事は無い。

 一度、今回の責任者である騎士の人が様子を見に来た際に少し話をした。40代前半の印象ではあった。

 指揮個体との戦いを話すと、面白がったり悔しがったり、忙しい人だった。まぁ豪快な印象は有ったが、人を率いるのだからそう言う部分も必要なのだろう。


 バタバタと忙しく動き回り、帰宅の呼びかけが出たのは夕方も大分暮れてからだ。

 3人でへとへとになりながら、家に戻る。村には先発して報告が行っている。無事は確認しているだろうから、アスト達も含めて宿辺りで祝勝会を考えていた。


 帰宅の挨拶をして扉を開けると、ティーシアに抱きしめられた。微笑んでいたけど、少し泣いた痕が残っていた。アストも安心したのか、笑顔だった。

 食卓を見ると、かなり豪華で大量の食事とお酒が用意されていた。


「3人で帰って来るって思って、用意しておいたわよ」


 母親の勘と言うのは凄いなと思った。フィアも家で肉を食べる機会はほとんど無い。食卓を見た瞬間、目を輝かせていた。

 リズもフィアも、大盛り上がりで今回の顛末を誇張して話していた。私は指揮個体との一騎打ちなんてした覚えは無い。

 余程盛り上がったのか、リズもフィアもかなり酔っていた。酔っぱらったリズ、可愛い。何か、子供返りしていた。外ではそこまで飲まさない。そう誓った。


 流石にぐでんぐでんのフィアを放って置く訳にもいかない。お開きの段階で、家の場所は聞いていたので、背負って送り届けた。装備込みの重量は半端じゃ無かった。

 腕をパンパンにしながら、フィア宅に着く。扉を叩くと、泣き腫らしながらも嬉しそうな母親が出迎えてくれた。軽く顛末を説明して、フィアを預けた。


 家に戻り、部屋で身を清めていると、リズが飛びかかって来た。酔いは若干冷めた様子だった。

 興奮しながら、今回の件を行きつ戻りつ話していた。


「指揮個体が襲って来た時、前に出た時は驚いた。死んでも守るとか思っていたらどうしようって考えた」


「死ぬつもりなんて無かったわよ?足を止めさえすれば、ヒロが何とかしてくれる。2人で帰る。それだけしか考えていなかったわ」


 その言葉が印象的だった。前夜の言葉を実践している姿に尊敬を覚えた。

 一頻り話すと、舟をこぎ始めたので、そっと布団をかけた。

 色々な物に感謝を祈り、私も就寝した。


 次の日からは、事態収束に向けての奔走の日々だ。

 騎士団の追撃で数は減らしていても、相当数のゴブリンが森に逃げ込んでいる。また、分布も森の入り口側に偏っている。

 冒険者ギルドの考える収束の条件は森の入り口側がある程度まで落ち着く事の様だ。それまではボーナスを付けて、ゴブリンの討伐を推奨している。


 個人的には8等級に上げる事を目的にしたいが、入り口の状況と森の奥側に行くまでの実力が無い為、もう少し足踏みだろうとは考えている。

 森の奥まで行くなら、日帰りは無理だ。野営を前提で考えなければならない。野営道具を買い揃え、森の入り口で野営の真似事を始めた。

 野営道具と食料が増えるだけで、荷物が一気に何倍にもなった。荷車みたいな物を早急に開発したいと切実に思った。


 報酬に関してだが、結局国側と冒険者ギルドが話をつけて、一時報酬金を得た様だ。

 過去の異常な発生タイミングに際しても国は一時金を出したようで、それを踏襲した形だ。その際は、死者の数が多かった為、金額もそれなりに大きかった。

 後遺症が残りそうな人間には厚目に渡された様だ。また同じ様な事態になっても、こうした対応を取って貰えるなら参加を検討する。そう言うモチベーション維持の為には有効だ。


 後、ギルドに打診していた追加人員の件だが、見つかった。ロットと言う名前の25歳の青年だ。斥候職を担当している8等級で『認識』先生で確認しても、そんな感じの構成だった。

 今向かっている町の商人の3男で特定のパーティーには加わらず、都度でパーティーに参加し、渡り歩きながらここまで来たらしい。本人は商才が無い為、冒険者を目指したと、あっけらかんとしたものだった。

 任務の達成率も良く、ギルド側の信用も厚い。正直、このパーティーには不釣り合いな青年なのだ。

 どうもギルドと本人の話を聞くと、今回の顛末を身近で見て、パーティーに参加したいと思った様だ。

 詳しく話を聞いて行くと、何となく話が読めてきた。この子、副云々とか参謀職とか、そっち方面向きの性格なのだ。明確に意見も出せるし、作戦も立案出来る。でも、先頭で音頭を取って実行させるのが苦手な子だ。

 待望の男性と言う事も有って私に異論は無く、即座にパーティーと面談してみた。リズもフィアも特に問題無かった為、採用となった。

 まぁ、商人の家の子だけあって頭も良いし、合理的に物事が考えられる。性格も堅実だし、支出の管理もしている。ざくっと現在の所持金を訊ねたが、思った以上に貯めていた。

 フィアの視線が熱くなったのは、予想通りだった。堅実に稼げて浪費をしない子だ。顔も良いし、物腰も良い。ギルドの評価も義理堅い人間とのお墨付きだった。

 年齢差は関係無いのか、フィアの積極的なアプローチが始まった。私は良いデコイが出来たので、安心だ。


 この4人で、森の入り口を陣地に奥側へのアタックを図っているのが現在だ。

 ロットには最初の戦闘の際に、大分驚かれた。8等級でも達成数を稼いでいないパーティーではこの練度は出ないとの事だ。訓練の結果が出ていて良かったと思った。


 野営の際は、3交代で1人は完全休息と言う扱いでローテーションしている。1名が寝た場合のリスクを懸念して、2名2交代を始めに提案したが、疲労の蓄積が予想以上に大きい。

 3交代なら真ん中は辛いが、疲れて居眠りをする事も無く、完全休息も有るので無理がきく。全員賛成で最終的にその形に落ち着いた。


 村に戻りギルドに報告して荷物を補充、そして森に戻る生活が最近の流れだ。リズといちゃいちゃする機会が減ったのが寂しい。休日の提案をしようと心には決めてある。

 まぁ、今は稼ぎ時だし、パーティーとしての練度を上げる必要も有る。無理をする時だなとは考えている。

 ロットもパーティーの考え方、戦術に、直ぐ順応した。基本的に合理性を追求するだけなので、本人としても意見を出しやすいのか、色々提案も受けた。

 パーティーを渡り歩いて来たと言う事は、渉外能力も有る。コミュ障な私には無理だが、その部分も補ってくれる。良い人材だと思っている。


 そんな最近の色々を思い浮かべていると、馬車が止まった。


 3日前に、冒険者ギルドより、子爵の呼び出しの旨が伝えられた。対象は私一人。色々やっているので、どれが呼び出しの理由かは分からない。

 何時もの様に、鍛冶屋に槍の整備をお願いしに行くと、主人から鍛冶屋ギルドの報告が子爵に上がっている事を確認出来た。ポンプの件も上に上がっているのか。


 ちなみに、武器、防具の修繕は各自払いだ。フィアもリズも訓練が終わると、鍛冶屋で修繕して貰っている。私も槍を使った時は出来る限り出している。

 研ぎはフィアが得意なので、外での生活が増えた分はフィアに任せている。


 馬車を降り、石壁に覆われた町の門に向かう。石壁の高さは4m超だ。石垣と違い、何かで固められている。

 地球でもローマン・コンクリートの開発は有るのだ。そう考えれば、材料さえ有れば可能だろう。風呂と言うか、小さな規模の浴場の作成も期待できる。夢が広がる。


 門衛に今回の訪問の旨を伝えると、子爵まで伝令を出してくれる様だ。まぁ、馬車で2日の距離だ。何時着くかも分からない評価不明の人間に足を用意はしないか。


 初めて見る、この世界の町に目を輝かせながら、迎えを待つ事にした。

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