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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第一章 異世界に来たみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第59話 リーダー会議

 休憩を挟み、再度同程度の群れをトレインして、試す。

 連携に慣れてきたのか、先程よりも殲滅速度は上がった。

 防具の隙間への、若干の軽傷は有ったが、神術でさくっと治す。風魔術自体も、数発しか使っていない。許容範囲だ。


「わー。始めの方とは全然違う。超楽?」


 余裕が出てきたのか、フィアの表情は明るい。


「お父さんの指示で動いていた時とは違う。自分で判断して、自分で動かないと駄目なのね」


 リズも思案しながらも、嬉しそうだ。


 連携のイメージは大体ついてきた。

 疲労の兼ね合いも考え、ここからは急襲に切り替える。

 明日も、何回か同じ規模で訓練すれば良い。


 何度か、急襲を繰り返していく。

 その中に集団で狩りをしていたゴブリンがいたので、何度か腑分けをする。


「やっぱり少ないな」


「うん」


 リズも頷く。

 原始的なヒエラルキーが存在し、トップが餌を集めさせている。そんな印象を受けた。


「と言う事は、今回の親玉は権力者として君臨している様だね」


「400を腕っぷしだけで抑えるのも凄いわ」


 リズが言う。


「まぁ、思案しても仕方無い。今やるべきは数を減らし、騎士団到着までの時間稼ぎだ」


 その後はいつも通り、殲滅して行く。

 余裕が出たのか、切の良い100匹で今日は終了とする。正直、足がパンパンだ。

 幾らフィットする靴とは言え、若干靴擦れの感触も感じる。慣れていない証拠だ。

 2人?今日も元気いっぱいだ。少し、その元気を分けて欲しい。おじさん、敵わない。


 『警戒』を駆使し森を出て、村に戻る。


 帰る途中の平野の隅に、工兵と思わしき部隊が簡易陣地を構築している最中だった。まぁ、言っても幕舎とテント、それと簡易な柵だ。

 その周りを歩哨が警護していた。先遣隊が到着したのだろう


 その柵を村の防衛に使ってはと言う話も出るだろうが、あれは軍の備品だ。

 公共物で利用用途も明確だ。村の防衛として恒常的に流用は出来ない。また、再利用を前提とし、使えなくなれば薪にする。用途が徹頭徹尾決まっている。


 村の防衛は単純だ。作物の略奪を諦め、教会に逃げ込む。

 ただ、あの石壁。石壁と言うより石垣なので、登れる。私でも越えるのは可能だろう。

 ただ、遅滞としては使える。最悪登ってこられても、長柄の棒で突き落とすか、アストが弓で迎撃するだろう。

 こう言う時、日常的に戦いに携わっている人間は強い。


 ギルドに戻り、受付に向かう。


「達成料は、ゴブリン100匹で300,000です。よろしいですか?」


 達成数は、上限になった。何時でも8等級に上がれるが今は無理だ。


 75,000ずつを皆に渡していく。4等分のパーティー資金は20万を超えた。

 農家の年収の5分の1だ。ボーナスが乗っているとは言え、数日の稼ぎとしては異常だ。


 フィアは、喜びを超えて、頬をつねっている。

 農家での数日の稼ぎを考えれば、有りえない。自家栽培の野菜を売っても、日に数百だ。

 リズも、喜びとこれからの事を考えての複雑な表情、半々だ。


 受付を去ろうとすると、話しかけられた。どうも、今集まっているパーティーのリーダーでミーティングを行うと言う。

 急な話と思ったが、朝には告知されていた様だ。最近森に直行していたのが裏目に出た。

 時間としては、まだ余裕が有る。エントランスで今日の反省会を行う。


 話し込んでいると、背後から声をかけられた。そろそろ時間との事。2人に連携強化を含めて訓練をお願いする。


 部屋に入ると、13人が待っていた。見回すとディードがハーティスと共に、上座で待っていた。

 私が最後のようで席に座るのに合わせ、ディードが立ち上がる。


「俺はディード。7等級だ。今回、7等級は俺達だけだ。取り敢えず頭につく。文句が有る奴は言ってくれ」


 全員が頷く。


「じゃあ、今回の顛末の説明はギルドの方から行ってもらう」


 ディードが座るのに代わり、ハーティスが立ち上がり、説明を始める。


 やはり7等級に関しては護衛任務や別途依頼の為、間に合わない様だ。

 今回の顛末、箝口令に伴う守秘義務の説明、連携強化の為の演習の話が進んでいく。


 8等級の人間は慣れているのか、報酬や連携、自分達の立ち回りの方針などを中心に質問を重ね、イメージとのすり合わせを行っている。

 若干青い顔をして、逃げを打とうとしているのは9等級のリーダー達だろう。この場に来ては、もう遅い。


 報酬に関しては、討伐したと認められるゴブリンの数と、指揮個体は参加人数分の現在の等級より1つ上位の達成数が付くとの事。

 また、討伐したゴブリンは鼻を削ぐか、特定の場所に特定のマークを刻む事で話はついた。

 獲物が被った場合は応相談だが、大体は止めをさした者が優先権を持つ。

 鼻だけ削ぐ行為やマークだけ入れる行為、通称ハイエナ行為はマナー違反として忌み嫌われる。これをやったと噂されると、冒険者はまず廃業だ。

 大体、双方が獲物を主張しないケースの方が、多くなる。

 職業上、荒くれ者のイメージが有ったが、皆仕事に真摯だ。まぁ、命がかかっている場所で背中を預け合うのだ。最低限の信用が無ければやって行けない。


 実際の演習方針の話が出た段階で、私も手を上げる。


「9等級のアキヒロです。ギルドより話を受け、対策を行ってきました」


 ここ数日で数百単位でゴブリンを狩っており、その際の詳細を説明する。集団に対する、個々のパーティーの連携に関しては前後の幅が必須だと言う事も話した。

 経験の多い8等級は流石に頷き、納得している。

 9等級はピンと来ていない者が多い。経験の差は、イメージする能力に直結する。

 そこに若干の不安を感じた。ただ、戦場で逃げる事は出来ない。噂は残るし、ギルド側で証拠も残る。どんな仕事に就こうとしても、ギルドの評価が付いて回る。


「前後10m幅を想定して、横隊を組みます。合図に合わせ、10m単位で動く事を前提にして下さい」


 引き続き、ハーティスが説明を進める。


「今回の合図は鐘と太鼓です」


 長い鐘の合図で前進、短い鐘の合図で後退、長い太鼓の合図で左に移動、短い太鼓の合図で右に移動と言う流れだ。

 これは10mで一旦止まる。音が止み、時を置いてから再度合図を行う。並行してギルド員が背後で基準を伝令してくれる。

 職業軍人では無いのだ。これ以上の連携は無理だと感じた。


 後は諸注意が続き、突っ込むべき所は突っ込んだ。

 連携訓練は明日との事。遅滞行動は犠牲になるが、止むを得ない。


 会議が終わり、皆バラバラと出て行く。

 最後に残った、ハーティスを捕まえ、話を聞く。


 期日に間に合いそうなのは、後4パーティー程と、8等級、9等級のパーティー未満が数十名との事。

 最前線は、予定通り50強を前提とし、予備戦力は役割毎に分けて、待機するらしい。

 怪我等で動けない人間は、ギルドの指示に従い、戦力に入らない9等級が後送し、人員補充の指示を出す。

 配置に関しては、ディード達と8等級の上位で左右を固める。後ろに回り込まれない様に徹底する為だ。

 また中央は、私達のパーティーと8等級の実力者が着く。正直激戦区だが、他がいない。その間に8等級、9等級を実力を見て挟んでいく。


「正直、周囲の面倒は見れませんよ?」


 ハーティスが頷く。


 後は、指揮個体が討伐された後で良いので、斥候に特化した人材を探して欲しい旨を伝える。

 これだけ人が集まるのだ。誰かは引っかかるだろう。

 それにも了承を貰った。


 話が終わり、ギルドを出ると薄暗かった。

 

 家路を急ぐ。


 草むらから聞こえるほのかな虫の音が心地良さを感じさせた。

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