表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第一章 異世界に来たみたいだけど如何すれば良いんだろう?
55/810

第52話 疑惑

 気付くと、結構な時間が経っていた。

 もう朝食の準備は済んでおり、急ぎ席に着く。


「氷の上を滑るみたいに動いていたの!」


 リズが大分興奮している。スケートの概念はまだ無いようだ。

 冬は氷が張る程度に寒いので、氷の上を移動した経験は有るようだ。子供達が冬場、靴に板を括り付けて滑ったりするらしい。

 似たような遊びが流行るんだなと、過去の遊びを広めたら流行しそうだなと思った。


 食事を終え、皆が部屋に戻ったの確認し、ティーシアに何時もの奴をそっと手渡す。

 苦笑はしたが受け取ってくれた。まぁ、マナーだ。お世話になるからには最低限としての対応だ。


 ちなみに、9等級になったので家を出る話をしたが、2人から猛反発を食らった。

 リズが冒険者になるのは許すが、直ぐに家を出るのは、やはり寂しいらしい。

 まぁ、家賃は払っている形なので、もう少しお世話になる。

 お兄さんが帰ってくる前に考えないと。

 リズ?超、家を出たがった。と言うか、必死で2人が宥めていた。

 理由は分かるが、私の身ももたない。流石女の子。どこか肉食系なのだろう。


 と言う訳で、ギルドに雑談しながら向かう。

 この雑談が非常に重要だ。常にコミュニケーションをしなければ、不安になる。話題を必死に探す。好感度は維持しなければ下がるのだ。


 ギルドのエントランスにフィアが待っていた。流石農家の子。朝が早い。


「おっはよー」


 挨拶もそこそこに先程のスケート体験を、リズが興奮しながら話し始めた。

 余程楽しかったのか、かなりのヒットだったみたいだ。


「そんなに楽しそうなら、私もやりたいー。ねぇ、良いよねー?」


 リズが睨んでくる。どうもお姫様だっこ辺りにも琴線が有ったようだ。


「おんぶしてでもよければ」


「えー?何か違うー。扱いが違うー」


 子供か、と思いながら、あぁ子供だと思い直した。この子達、日本なら中学生か高校生位なんだよな。

 日本と言うか、子供を戦わせている事の罪悪感にしんみりすると、リズがそっと手を握ってきた。


「大丈夫?やっぱり何か辛そう」


「いや。2人ともまだ若いのに、戦わせるのがちょっと嫌だと思っただけ」


「もう成人しているしー。そんな事思っているの?」


 フィアがあっけらかんと答える。


「そうね。私もこんなに収入が出来て、嬉しいだけよ」


 リズも何を言っているんだという顔をする。


「ねー?」


 2人揃って、声を合わせ首を傾げる。流石、幼馴染。息が合っている。


 取り敢えず、北の森に向かうまでの空き地で、フィアをおんぶでする。

 浮かび上がり、滑り出すと、耳元で叫びだす。


「うわー。何これー!超楽しー。やばい、もっと早くしてー。わー」


 正直うるさい。あぁ、娯楽の少ない田舎でゲーム機渡した甥の喜びを思い出した。確かに狂喜乱舞していた。

 程々で切り上げる。フィアはありありと不満を浮かべていたが、お仕事が有る。

 それに試したい事が有る。


 何時もの沢に向かい、ヴァズ草を採取していると。


「ゴブリン、3匹。こっちの方に向かっているけど、方向がずれてる」


 早速試すか。


「今回、1人で倒すよ」


「それは良いけど、大丈夫なのー?」


 フィアが聞いてくる。


「昨日フィアさんが教えてくれたから大丈夫」


 頭を撫でながら、答える。本人は嬉しそうにしている。妹にしている気分で撫でているが、これってセクハラなのかな?

 ちらっとリズを見るが、特に何も感じていない様だ。良かった。セーフだ。


 ゴブリンの発見ポイントに誘導して貰い、藪を静かに移動する。

 いた。3匹だ。


「じゃあ、行くね」


 呟くと共に、レティクルをゴブリン達の見える範囲の胸と背中に合わせ、何時もの撃つイメージを浮かべ実行する。

 と同時に、ゴブリン3匹の胸元や背中がほぼ同時に破裂し、ゆっくりと倒れる。

 良し、成功だ。


「あれ?昨日、詠唱してたよねー?何で変わったの?」


 フィアが不思議そうな顔で聞いてくる。


「色々考えたら出来るようになったよ」


 答えても、微妙に納得いかない顔をしていた。まぁ、大きな問題では無い。

 ここからは、延々繰り返しだ。何時もの様に狩りを繰り返して行く。

 私の魔術は緊急用とし、リズの訓練を主体に、フィアがフォローに入り順調に狩っていく。


 ただ、違和感を感じる。昨日の20匹を超えた辺りで、それはより強くなる。


「うわー。もう昨日分じゃん。実は直ぐに金持ちー?」


 フィアは無邪気にはしゃいでいるが、違う、これはそうじゃない。

 あまりに早い。まだ、10束も組めていない。


「ヒロ?顔が怖いよ?」


 リズが心配そうな顔を向けて来る。


「いや。ちょっと気になっただけ」


「そう?最近無理しているから……」


 心配をかけた様だ。フォローをしておく。

 その後も狩りを続け、30匹、40匹、50匹と増えて行く。おかしい、これはおかしい。

 心で警鐘が鳴る。獲物が濃い?そんなレベルじゃない。

 それなら、9等級は皆大金持ちだ。私の魔術が有るとは言え、この成果はおかしい。


 ヴァズ草が30束になり、切り良く60匹となった所で村に戻る事を提案した。

 この状況はおかしい。ゴブリンをこれだけ狩った。なのに、他の獲物に遭遇していない。

 それなりに移動もしたのだ。どこかでテリトリーに踏み込んでいたとしてもおかしくは無い。

 違和感が、警鐘がマックスに鳴り響く。この手の状況をゲームとかでよく見た……。

 氾濫だ。同一種の氾濫……。

 その瞬間ぞっとした。今日1日で60匹も狩った。じゃあ、この森にゴブリンはどれだけいる?それが一度に襲い掛かってきたら?


「ヒロ。やっぱりおかしいよ?」


 フィアと一緒にはしゃいでいたリズが問いかけて来る。

 顔から血の気が引いているのが分かった。


「あぁ、気になった事が出来た。戻ったらギルドで聞いてみる。リズ達は一緒に訓練するんだろ?」


 2人が同時に頷く。仲が良い事だ。おじさん百合物も好きだったのでほっこりする。レズ物はちょっと好みではないが、百合百合しいのは好みだ。


「やばいー。大金持ちー。うっはー」


 まだ騒いでいるフィアを宥め、村への道を急いで戻る。『警戒』も全開にして一切相手にしない様にする。

 森の出口付近でも、フィア曰くどうも、それなりにひっかかるらしい。

 嫌な予感がどんどん膨らむ。


 ギルドに着く。

 取り敢えず、鑑定を依頼し、受付嬢にハーティスを呼び出して貰う。少々の所要との事でエントランスで待つ旨伝える。


「達成料は、ゴブリン60匹で120,000。ヴァズ草が30束で24,000ワール。合計で144,000ワールです。よろしいですか?」


 いつものお兄さんから、受け取り、36,000ずつ手渡す。

 達成数でリズが9等級に上がった。試験は免除された。これだけ9等級の仕事をこなしているのだ、当然だ。

 繰り上げを含め、等分に割った。端数は私が貰った。


「凄い……よ?2日で9等級。しかもこれ1日の金額よね?」


 リズが呆然としている。フィアはもう喋らず、お金を握りしめプルプルしている。

 だが、私はそんな事に構っていられない。


「じゃあ、まだ早いから、訓練しておいで。怪我には気を付けて。もし怪我をしたら言ってね」


 流石にこの数だ。無傷では済まない。何度かかすり傷を負ったが、神術で直した。

 2人は驚いていたが、神様のお蔭と言ったら怪訝な顔をされた。

 まぁ、最終的に納得していたので、問題は無い。

 2人が揃って、何時ものフィアの訓練場に向かう。


 手を振り、エントランスに向かう。

 開いていた席に座りながら、いらいらして来る。

 しばしの時間待ち、ハーティスが階段を降りて来る。

 その手に数枚の資料と思しき紙を持って。


 組織が資料を用意して、話をする。


 疑惑は確信に変わった。

 何か、有る……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、感想、評価を頂きまして、ありがとうございます。孤独な作品作成の中で皆様の思いが指針となり、モチベーション維持となっております。これからも末永いお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます。 twitterでつぶやいて下さる方もいらっしゃるのでアカウント(@n0885dc)を作りました。もしよろしければそちらでもコンタクトして下さい。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ