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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第一章 異世界に来たみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第51話 高機動型メタボ……機動じゃないけど

 ティーシアがお湯を用意してくれたので、それぞれの部屋で体を清める。

 一度は一緒の部屋でした行為でも、やっぱり恥ずかしいらしい。まぁ、そう言うものか。

 洗濯を終え、服を着替えた辺りで、リズが訪れた。


「寝よっか?」


 ベッドに共に入る。

 先程までの魔術の事を考え、ちょっとした悪戯の気分で試してみる。


 蝋燭を吹き消すイメージで、蝋燭の火の付近で魔術を行使する。

 詠唱は無しだ。頭の中で結果をイメージし、その実行を意識する。


 ふっと蝋燭が消え、辺りが暗くなる。

 よしっ。これが、無詠唱か。

 イメージ出来てしまえば、容易な事だった。


 プログラムの勉強の時も、始めは徹底的に各コマンドや変数、パラメータ等の意味を叩き込まれる。

 そして、大きな処理、複雑な処理へと移る。それを延々繰り返す。延々だ。正直、今となってはありがたいが、当時は辟易とした。

 そこまでやれば、プログラムを書く時も、完成イメージさえ明確であれば、構文の記述は手段だ。無意識に書ける。


 魔術も同じだ。初等の頃に兎に角、構文を実行するのは、やった事に対してどの様な事象が発生するのかを体で覚える為だろう。

 中等はそこで得た知識、経験を元に、結果に対する明確なイメージを教え込むのだろう。

 高等はそのイメージを使い、具体的にシミュレーター上で実践を繰り返すのだろう。

 行った事は無いが、これまでの経験、特に学生生活と社会に出てからのシステム系のお仕事を鑑みると、大体想像はつく。


「ねぇ、もう寝ちゃうの?」


 話している内にうとうとしだしたので、そのまま寝かしつける。

 寝入ったのを確認し、スマホのアラームをいつもより早めにセットし、バイブに変えておく。


「おやすみ、良い夢を」


 再度、額に口づけて、眠りについた。


 朝、手元のバイブで目が覚めた。握っていたスマホを操作し、アラームを止める。

 リズは気づいていないのか、すやすやと眠っている。

 頬に口づけ、静かに着替える。外はもう、仄かに明るい。気づかれない様に槍を持ち、静かに家を出て、庭に回る。


 昨日の件で、実験がしたかったのだ。


 足裏から風が出て、体が浮くイメージを浮かべる。


 ふわっと、体が浮く。


「やっぱりだ」


 イメージを解くと、すとんと体が落ちる。結果としての運動エネルギーは残るのか。


 同じく、体が浮き、前後左右、旋回をイメージする。

 2本の操縦桿を使うゲームや、ユニットを取り換えてロボットを組み立てて戦うゲームの、ホバーな動きだ。

 スラスターで超低空をホバーで動く、あれだ。


 イメージに沿って、体が程々に圧力を感じながらするすると動く。止まる時は逆噴射の圧力をかけるイメージだ。

 勿論圧力に挟まれて潰れない様にイメージする。


 徐々に速度を上げ、庭を周回する。うん、この新しい感覚に感動する。感覚としては、スケートで滑っている感覚に近い。

 でも、この体形だと、黒い星三つの機体だなとも思う。


 庭に生えた木を敵と見立てて、勢い良く飛び込み、棒を突き立てる。かなりの衝撃が棒から返って来る。

 うん。この程度なら大丈夫か。槍に持ち替え、再度後方に滑り、勢いを付け、木に槍を突き立てる。

 自分で走って突き込んだのとは比べ物にならない程、刺さっている。抉り、槍を抜く。


 そのまま周回しながら、周辺の木にレティクルを貼り付け、強いエアガン程度を想定し射撃する。

 パスッパスッと言う音を立てる。


 木々に近づき、見ていると、確かに狙った場所に軽く傷がついている。


 改めて、周回しながら、曲がった弾道で曲射が出来るか確認する。

 味方が突然現れた事を想定して、途中で止める事が出来るのか、遅い弾速で移動中に消えるイメージをする。

 どれも可能だった。


 心の奥から、感動が込み上げて来る。


「魔術って自由だ」


 かなり慣れるまでに、練習が必要だろう。

 後これだけ使っているのに、『術式制御』も『風魔術』も上がっていない。

 これは裏技と言うか、『術式制御』等の範疇外なのだろう。


 それでも構わない。


「これで高速格闘戦が出来る」


 運動不足かつメタボな身としては、戦闘の時の移動や、勢い良く突っ込む等の行為に著しく不利だ。

 直接的に攻撃力が上がる等の影響は無い。だが、昨日の発見はそれを補って余りある。

 戦いは、個人の攻撃力の高さなんて限界が有る。そんなもの追い求めない。戦場を掻き回せるなら、上等だ。速度こそ力だ。


 拳を握り両手を高々と上げ、跳ね回る。


「どうしたの?」


 起きてきたのか、リズが庭に出てきて、訊ねてくる。


「また、はしゃいで。何か良い事が有ったの?」


 リズの元に走って向かい、抱きしめる。


「有った、有ったよ」

 

 その場で持ち上げ、くるくる回る。

 懸命に抱き上げ、お姫様だっこをする。


「え?え?」


 恥ずかしそうに戸惑う。


「これ、顔近い。恥ずかしい……」


 そんな事聞いてられない、そのままゆっくりと、徐々に速度を上げて滑り出す。


「わぁ、これ何?」


 庭を周回しながら、くるくる回る。


「魔術だよ。昨日気づいた」


 朝日に広がった髪が反射して、キラキラと金色に輝いていた。

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