第47話 パーティー活動始動
10等級と9等級を上げるなら、この前に行った沢が丁度良い。
ヴァズ草を集めながら、ゴブリンも探す事が可能だ。
時間は遅めだが、目的地を伝え皆の了承を得る。
ちなみに、達成数だが依頼1つに付き、1だ。例外は無いし、何人で受けても1は1だ。
だから、兎に角ミドルから下位層が厚い。個人で受けられる依頼は1人で受け取れる。
パーティーだと、都度調整が必要だ。大概リーダーを優先に低い者に割り振っていく。
ちなみに、パワーレベリングは推奨されている。と言うか、先達が説明しながら、後進を育てて行くのを後押しする為だ。
要は、等級の高い人間が依頼を達成し、等級の低い人間に達成数を稼がせる。
ただ、これも、9等級中の話だ。ゴブリン程度殺せないと、この先やって行けない。
沢に着き、役割分担を決める。
リズは、目標を指示し、装備の訓練をする。盾は帰ってから木刀か何かで仮想敵を私がこなすので、まずはハンマーをどう使うか、体に覚え込ませる。
フィアは、『警戒』を上げさせたいので、周辺を巡回させ、ゴブリンを見つけてもらう。2と矢印を刻み、周回してもらう。
私は、ヴァズ草を採取する。お金稼いでポイント稼がないと。
「リズ、ゴブリンがこういう感じで来た時に、頭、胸、足を殴れる様に振ってごらん」
「こう言う感じ?」
「そうそう。それを繰り返して、体で覚え込むんだ。後は色んな方向から来た場合を想定して行こう」
仮想敵役をこなし、ヴァズ草を採取していく。
それから数度、リズに指示を出していると、フィアが足早に戻ってきた。
「ゴブリン2体が移動中だよ」
「場所は?」
「こっちに向かってる」
「よし、移動して、隠れて先手を打とう」
フィアを先頭に小走りに、なるべく音を響かせ無いように進む。
藪に隠れ、しゃがみ込み、指さす。
ゴブリンが2匹ゆっくりと歩いている。
「フィアさんは他が来ないか周りを警戒して。リズは左側を頼む。左の方を走り抜けつつ、ハンマーを胸元に当てて。右は私が叩く。私の実行の発生を合図に、行動を開始しよう」
指示を出し、頭に仮想ウィンドウを浮かべる。気持ち悪さを噛み殺しながら、前にゴブリンの胸元に当てたイメージをシミュレーションする。
間違い無く胸元が爆散している。圧縮と速度を調整する。前のイメージはかなり過剰だった様だ。速度は一緒で圧縮規模を下げる。OKが出た。
右手人差し指を、ゴブリンの胸元に向ける。準備は整った。首を縦に振り合図を送る。
「実行」
声を上げた瞬間、右のゴブリンの胸元が爆散し、背中から倒れ込む。
その瞬間、リズが藪を飛び出し、そのままの勢いで、左のゴブリンの胸元に若干振り下ろし気味にハンマーを叩き込む。面の部分が綺麗に胸元に入る。
引っ掛け気味に振りぬくと、ゴブリンが左側に鈍い音を立てながら、滑り、止まる。全身がピクピク痙攣しているが、胸元は陥没している。肋骨は折れているだろう。
リズが腰の鉈を抜き、首の血管を切る。しばし痙攣を繰り返し、動かなくなった。
リズと私で鼻を削ぎ、急ぎ元の場所に戻る。
「何あれ!?初めてでしょ!?何であんなに手際良いの!!」
驚きの顔で、フィアが言う。
「狩りでお父さんの動きは見ていたから」
リズがにこりと微笑む。
忌避感は無い。達成感だけだ。流石、生き死にを見ていた人間は違う。
「見てたよリズ。凄い。誇らしいよ」
褒め言葉は忘れない。囁くと、リズが誇らしげな顔をした。
この後もヴァズ草を採取しながら、ゴブリンが見つかり次第、急襲する。
3匹の場合は、フィアも前に立つ。だが、魔術の先制攻撃で混乱しているゴブリンは相手にならない。
本当に危なげ無く、30束が出来上がる頃には鼻の数は20個になっていた。思ったより獲物が濃い。今まで見つからなかったのは僥倖だったのだろう。
そろそろ日も落ち始める頃だろう。
「そろそろ戻ろうか?」
「分かったー。でも、超楽だった。何これ?今までの苦労って何だったの?」
フィアが嬉しそうにはしゃいでいる。
「ヒロの役に立てて、嬉しい」
リズも上機嫌だ。
帰りも私が殿で、警戒しながら道を進む。『認識』先生で見てみると、フィアの『片手剣』が微かに上がり、リズに『槌術』が生えていた。
ギルドに到着し、鑑定してもらう。いつもの職員だった。
「達成料は、ゴブリン20匹で40,000。ヴァズ草が30束で24,000ワール。合計で64,000ワールです。よろしいですか?」
「はい。達成数はこちらにお願いします」
これでリズの達成数が50だ。
達成料は4等分し、1人分はパーティー資金としてプールする。一旦私が預かる事にする。暫定リーダーらしい。絶対に暫定消えないだろう、これ。
「うわ、4等分しても16,000とか、一日で稼げるとか。やばい。ありえない」
フィアが狂喜乱舞している。
「1人だと、1日回って良くてもゴブリン3匹。駄目な時は収入0だし。偶に薬草見つけて集めておくけど定数になるまでに傷んじゃう」
「計画性が無いのよ」
「リズにーいーわーれーたーくーないですー」
漫才が始まる。
「でも、パーティーって良いね。1人だといつも孤独で怖かった」
フィアがそっと静かに囁いた。