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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第491話 戦時体制の調整

 食事を終えて、改めてハーブティーを片手に今後に関して、話を始める。


「ドル、正確にオークがいつ頃動くかは分からない。仮に十日弱と見た場合、重装の配備はどうなりそう?」


 ドルが腕を組み、虚空を睨みながら口を開く。


「衛兵から抽出した三十人分は元々の重装を整備済みなので、そのまま運用は可能だろうな……。大盾に関しては試作は完了したが、試験は終わっていない。試験を抜きにして、職人を並行で使うなら……全員分は配備出来るか。ただ、鍛冶仕事に影響は出るぞ?」


「そこはネスに泣いてもらうしかないか。商工会側にも支援は要請する。金で雇っている兵に傷でも負わしたら、今後が面倒臭いよ。少なくとも今は忠誠なんて金の分しかないだろうし」


「名目上は正式な兵として編入していても難しいなそこは。新兵を育てる暇も無かったしな」


「引退までに育ってくれればなんて甘い計算だったよ。三十は前衛に出せるか……。クロスボウの方は?」


「そっちは量産を開始している分を回せば百五十は用意出来るな。魔道具は用意出来るのか?」


「チャット次第かな。核の供給は大丈夫?」


「はい。トルカの方から回してもらってますんで、百や二百程度は在庫は有ります。やけど、リーダーは大丈夫なんですか?」


「あー。うん。頑張る……」


 うんざりする思いを抱きながら、頷く。あの単純作業を百近くやらないと駄目かぁ。でも大体の作業時間は分かるから良いか。


「何にせよ、百五十のクロスボウ兵は確保可能か……。習熟訓練もなんとか間に合いそうかな。今訓練中の五十名をそのまま教官役に回そう。ロッサ、管理を任せても大丈夫そうかな?」


「大丈夫です。五十人も途中からは自分で訓練していました。あたしが必要なのは最初だけです」


「分かった。ちょっと忙しいけど、任せるよ。実際のオーク戦の際もロッサにクロスボウ兵は任せるつもりだよ」


「はい。綺麗に元の階級を調整してもらっているので、兵にお任せする形で、指揮……指示は可能だとは考えます」


「その程度の考えで十分だよ。必要な時に撃ってもらえれば大丈夫。重装部隊は前進の際の盾になってもらうから、ドルとリズに任せたい。こちらの指示に合わせて動きを伝えるだけで問題無い」


「分かった」


「うん」


 ドルと、リズが頷く。


「ロットはティアナと一緒に斥候達の指揮を頼みたい。向こうの出方が分からないから、生命線になると思う」


「分かりました」


「分かったわ」


 ロットとティアナが頷く。


「僕は?」


 フィアが自分を指さしながら、聞いてくる。


「騎馬隊がいないから、追撃が出来ない。最終的に、軽装部隊で殲滅しないといけないからそっちの指揮をお願いしたいかな」


「分かったー」


 フィアが手を上げる。


「と言うのが正攻法で攻めた場合の話だけど、ちょっと作戦は考える。相手の出方も分からないし、使うか使わないかはその場にならないと分からない」


 そう言うと、皆が真剣な表情でこちらを向く。


「兵とは訓練の際にある程度交流は有るだろうけど、もう少し連携を取る必要が有ると考える。指揮系統の明確化と指示の出し方かな。レイにその辺りは一回授業してもらおう。その上で、正式に辞令を出すよ。元々兵の指揮をお願いするつもりだったから、ちょっと早まったと思って欲しい」


 そう言いながら、立ち上がる。


「ドルはネスと早速調整をお願い出来るかな。私は商工会の方を調整して来る。他の皆は、レイが戻ってきたら一緒に指揮のお勉強をしようか。それまでは通常通りの訓練で。問題は?」


 そう聞くと、皆、首を振る。


「じゃあ、動こう」


 そう言って、皆で食堂を出る。


 私はリズと一緒に部屋に戻り、装備の手伝いをする。


「ヒロ……さっきはうんって言ったけど、指揮なんて出来るのかなぁ……」


「その事? 大丈夫、指示は出すから、部下の人にそれを伝えてくれれば良いだけだよ。その為に私がいるんだから」


「そっかぁ……。そうだよね。うん、頼りにしているよ」


 背面装甲のベルトを通していると、リズが振り返り、にこりと微笑む。


「ほら、歪むよ。前向いて。不測の事態は起こるかも知れない。それでも……リズを傷つけないよう、動く。それは最優先」


「でも、他の人もいるよ。皆もいるし」


「うん。分かっている。それでも、優先順位は決める。そうしないと、判断がぶれる。私の腕はそこまで広くないよ……」


「ヒロ……」


「うん。分かっている。本当にもしもの場合だよ。仲間を、民を死なせたくはないよ」


「でも、だからって、無理はしないでね」


「無理はしないよ。無理しても破綻するだけだから」


 そう、日本でも無理して良い事なんて無かった。計算上、無理をしなければいけない場面は有ったし、そこはパワープレイで乗り切った事もある。それでも、やっぱり後で無理が祟るなんてしょっちゅうだ。結局、きちんと考えて実施しなければどこかが歪む。それに戦場の霧かぁ。昔の人はどうやって、このどうしようもない物を打ち払ってきたんだろう……。


「ヒロ?」


「あぁ、ごめん。はい、後ろは済んだよ」


「ありがとう。じゃあ、行ってくるね」


「うん、頑張って」


 軽く口付けを交わし、リズを見送る。タロとヒメの方を見ると食事はもらったのか、食休みと言う感じで丸くなっている。また帰ってから相手をしたら良いかな。

 レイも衛兵達の調整で出ているし、しょうがない歩きますか。


 うとうとしている二匹の邪魔をしないようにそっと扉を開ける。商工会議所まで歩きますかと廊下に出ると、袋と布の束を持った侍女が前から向かってくる。


「あぁ、タロとヒメの世話かな。いつもありがとう。今、食休みでうとうとしているみたいだよ」


「領主様、ありがとうございます。分かりました、起こさないよう対応致します」


 にこりと笑った顔が印象的な侍女が部屋の中に入っていく。最近、二匹共機嫌が良いけど、侍女の人のお蔭なのかな?


 そんな事を考えながら、館を出る。雲は尚厚く立ち込めている。マントは羽織っているけど、帰りは雨かな……。面倒な話をしに行く上に、雨までか……。すこしきついなぁと思いながら、さっと駆け出す。部下を介していたらいつまでかかるか分からない。早めに済ませる話は早めに済ませてしまおう。

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