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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第一章 異世界に来たみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第45話 魔術の入り口

 取り敢えず、リズ第一、それ以外は考えられない事を伝える。

 全然納得いっていない顔をしているが。

 はぁ、なんだこれ。日本の時には考えられない。


 あぁ、リズが言ってたか。メタボは富貴の象徴って。その上、6等級を相手に出来るんだ。

 収入目的かよ。


 まぁ、この世界は生きるのに厳しいので、その気持ちも分からなくは無い。

 ただ、その対象に私を選ばれても困る。私はリズ一筋だ。


 早い内に男をパーティーに誘おう。デコイが必要だ。


「今日はどうすんの?僕、予定入れて無いけど」


 フィアが聞いてくる。


「リズの冒険者登録と武器選びかな?」


「え!リズも冒険者になるの?猟師どうすんのよ?」


 フィアが驚いた口調で叫ぶ。


「お父さんに兄さんもいるもの。どうにかなるわよ。そもそも嫁に出るのよ?何時までも猟師は出来ないわ」


 個人的には家にいて欲しいのだが、リズは意外と頑固だ。


「じゃあ、一緒にパーティー組むの?」


「そう考えているわよ」


「またリズと一緒かー。よろしくね、リズ」


 嬉しそうに2人が抱き合っている。

 言ってもしょうがないので、そのまま登録窓口に向かい、いつもの受付嬢に規約の説明と登録を任せる。


 しかし、この世界は休みが無い。年末年始に数日休むだけだ。


 神様が星をコピーしたと言うが、暦も時間もほぼ地球と同じだ。

 来た時と、現在で日付と季節のずれは有るが、端末を移動させる時に何かあったのだろう。日付は手作業で修正した。時間は適当に決めている。

 時計に関してはどうも、神様が国単位で幾つか渡したらしい。それを基準として、各領主は水時計等の狂いを修正するらしい。行った時に時計を合わさせてもらおう。

 皆、感覚として、何時間、何十分辺りは把握出来るらしいが、時計の無い生活など送った事が無いのでどうやって把握しているかは謎だ。

 ちなみに、神様のアイテムはアーティファクトと呼ばれていて、魔道具と厳密に分けられている。間違い無く意訳だろう。私の元は無色のあれだと思っている。

 ガラスは有るし、レンズも有るらしい。望遠鏡の話も聞いた。ただ、天体観測が可能かは謎だ。

 後、星が丸い事は共通認識だった。そう言う物だと言われたので取り敢えず納得した。


「お待たせ。ごめんね、ヒロ」


 考え事をしていると、リズが戻ってきた。

 無事登録も完了し、嬉しそうにカードを見せつけて来る。何か可愛い。


「じゃあ、武器を見に行こうか?」


「あ、それだけど、先にさー。アキヒロさん?の魔術見たい」


 フィアがニヤニヤしながら言ってくる。


「どんな魔術で6等級の魔物を倒したのか見てみたい」


「言い難いなら、同じパーティーになるんだから、アキヒロでもい……」


「ヒロ?」


「アキヒロさんで良いです。どうしよう、見せるのは良いけど、どこで見せたら良い?」


 いつもの場所はやや遠い。


「村外れで良いよ。素振りとかしてるけど怒られないし」


 まぁ行ってみるか。

 2人と連れ立って、村外れの練習場所まで移動する。一旦開拓を止めたのか木々が生えている中に空き地が有った。

 地面を見ると、かなり踏みしめられているのか草も生えていない。


「ここでいっつも練習してるよ」


 まぁ的も有るか。聞いてみると木刀で練習として使っているとの事で、傷が付いた木が散見される。

 試すだけだから、良いか。

 ダイアウルフを倒した時の構成を思い出す。


 適当な木の中心を狙う。


 直径10cmの球体の風の塊を5mm位まで圧縮するイメージを浮かべる。


「属性風。圧力定義。形状は半径5mm高さ1cmの円錐。右手人差し指前方10cmに固定。前方に向かい錐もみ回転を加え射出、速度は時速150㎞。実行」


 バヅッと音が鳴り、対象の木の中心が歪な円錐に抉れる。うん。問題無い。

 フィアの方を向くと、胡乱な顔をしている。


「アキヒロさん、初心者さん?」


 初心者ではあるが、どういう意味だろう。


「初心者だけど、どうして?」


「だって、そんな迂遠な術式を詠唱しているのって、学校の始めの方だよ?」


 詳しく聞くと、学校は基本6年で、初等・中等・高等のクラスに分かれるらしい。

 飛び級も有るが基本的には2年毎に上がって行く。勿論少なくない人間が留年するらしい。


 で、この詠唱。初等のクラスが過剰帰還までの感覚と術式の構成及び威力の確認の為に使われるらしい。

 中等以降になると、内容が変わる。


「頭の中でエミュレータ環境を構築して、シミュレーターでシミュレーションするの。問題無ければ、実行するって。前のパーティーの魔術士が言ってた」


 激しい意訳の違和感にくらくらするが、意味は分かった。


「頭の中で強く鮮明に結果をイメージするって言ってた」


 試しにと、先程の術式の結果と構文を鮮明にイメージする。

 するとシェルエやアレクトアと会った時の違和感に似た物を頭の中で感じ、ディスプレイみたいな物が頭の中に強制的に浮かんできた。

 この感覚、気持ち悪い。自分が思った事では無い物を頭に投影させる違和感で酔いそうだ。


 画面には私が斜め後ろから映し出されている。カメラをイメージし移動させたいと思うと、カメラが移動する。ある程度は遠近も可能だ。

 また、画面の中の私も動きと追随して動く。やばい。酔う。激しい3D酔いに近いものを感じる。

 別の木に向かい、指先を向ける。

 画面の中の私が先程の術式を実行したイメージを追加すると、画面の私が木に向け先程と同じ術式を放ち、木を穿つ。画面の端に青色でOKと黒でEnterと表示された。

 その状況を再現するように、構える。


「実行」


 バヅッと音が鳴り、対象の木の中心が歪な円錐に抉れる。シミュレーション通りだ。


 スライム時のイメージだと、木を貫通する描写が映るが黄色のWarningの表示が見えた。

 その辺り全体の木を対象としダイアウルフ時のイメージだと、画面が青くなり、赤でErrorの表示が見えた。


 限界だ。慣れない感覚に吐きそうになる。イメージするのを止める。

 あぁ、気分が落ち着いてきた。

 今までに存在しない概念に思考が混乱する。


 ただ、分かった。これ、あれだ。プログラムっぽいと思っていたけど、どちらかと言うとちょっと違う。

 魔法って、アプリケーションだ。今までの術式はきっとCLI(コマンドラインインタプリタ)の上で、個々の属性魔法と言うアプリケーション名とその諸条件を入力する。

 で、それを実行する。その際、コマンド以外にもイメージが必要にはなるが。この時、構文の中の構成の一部としてまとめられるのだろう。

 それをサーバに通信として送る。一方的な送信だけだ。


 今のは違う。イメージとしてはサーバの上で動いている3Dゲームに接続している気分だ。

 そのゲームのキャラクターを自由に動かして、魔術を使わせて、その結果をシミュレーションする。

 言わば魔術ゲームとそこに接続するゲーム端末、オンラインゲームをゲーム機やPCでやっているイメージだ。


 私達と言う端末はGUI(グラフィカルユーザインタフェース)的な環境を処理出来る程、性能が高くない。

 だから、ゲームの環境はサーバに処理を任せて、端末側は描写された映像を受け取るだけだ。


 詳細としては、エミュレータ環境と言っていたが、実際にはサーバ上の処理を間借りして、ゲーム用のOS(オペレーティングシステム)環境を構築させて貰っているんだろう。

 そのOS上で魔術ゲームと言うソフトを立ち上げさせて貰っている。私達は、このエミュレータ環境にリモート接続しているんだろう。


 神々の気配を感じたのはその所為だ。相互に通信している。これは、サーバ側に通信する概念だ。

 そりゃ、未来予測は出来るだろう。サーバ側は全てのプロパティを参照出来るのだろうから。


 意味が分かった。

 スライムの時、過剰帰還を起こした時にあんなにワティスが熱心に介抱してくれたのも。

 ダイアウルフの時、ワティスがすぐに諦めたのも。

 ディード達があんなに恩義を感じてくれたのも、ダイアウルフの後ワティスが説明したのだろう。


 シミュレーションすれば、結果は分かる。要は過剰帰還を起こすのは馬鹿か、考え無しか、無理無茶をするかだ。

 恥ずかしい。何故こうなった。


 そう考えた瞬間脱力し、手と膝を地面につけて項垂れた。



 あいつ、中退だった。



 そりゃそうだ。留年していたら、初等だ。CLIの概念しか分からないのが当然だ。

 過剰帰還を体で覚える?初歩の基本として過剰帰還の怖さを知る為だ。


 分かった、分かった。根本的に間違っていた。


 この世界の魔術士は因果が逆転している。


 結果が分かるから原因を作るんだ。


 分かった事の理不尽さとこれからやらなければならない事の多さと大きさに潰されそうになりそうだった。

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