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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第461話 町や町開きに関わる政務とカビアとティアナの状況

「元々、男爵なんて、金が無くて当たり前です。限られた予算の中で何とか町を作り上げて、政務を始める。それが男爵です。そんな余裕の無い状況で町を開く際に何かをすると言う発想は有りません。どちらかと言うと、色々と周辺から援助を貰う立場なので、実物を見てもらい、そのお願いをするのが基本ですね」


 カビアが、執務室で書類を広げながら、中々辛辣な現実を口にする。何と言うか、男爵って慎ましいと言うか貧乏くさい……。


「えっと、それは私はお金が有りません。もっと手伝って下さいって親に無心するって事かな?」


「はい。有り体に言ってしまえばそうです。通常、町が本格的に機能する前から物流が回るなんて稀ですし、商家の連中が統制されているのも稀です。大概は慣れていない領主相手に有利な条件を取り付けようと入り込んでくるのが基本ですね」


 まぁ、海千山千の商家の連中にしてみれば新米貴族なんて、獲物にしか見えないか。


「そこは早めに商工会作ったから関係無いかな」


「フェンさんの方で全て押さえつけていますから、不心得者はいないですね。それに道中の食料品だけでは無くベーゴマ等の輸出品があるのが大きいです。どちらかと言うと、商家側の方が頭を下げて来ていますから」


 街道途中の町なんて、補給目的程度にしか映らないだろうけど、『リザティア』は根本的に違うか。


「東側は兎も角、西、国内を巡る商家への塩の試供品の調子はどうかな?」


「商家の連中も何か有った場合に助けてもらうために、行動計画は大きめの町に提出します。その中でノーウェ子爵領、テラクスタ伯爵領、ロスティー公爵領を巡る商家に関しては試供として、積載可能な分を売っています。まぁ、商工会の縁故が有る商家からですが」


「あぁ、そこは信用の有るところからで構わない。人間欲をかくと碌な事にならない」


「塩も供給が始まったと言っても、まだ貧弱です。補給人員分が動き出して初めて輸出分が生産可能な分量ですか? ただ総量の八割と仰っていたのでもう少し早い段階で外に出せるようになると思いますが」


 カビアが、塩の生産予測と町の各家庭で利用する塩の分量をまとめた資料を出してくる。その中で町での利用予測量と生産予測量の部分を指さしてくる。


「でも、夏場は雨が降るんじゃないのかな? あまり湿度が高いと塩の輸送も難しいよ?」


「ご安心下さい。そろそろ南の森でも薪は生産可能になってきています。炭窯も建てておりますので、その炭と一緒に持ち帰れば湿気対策にもなります」


「ん? 炭って、現場で使うんじゃないの?」


「いえ。男爵様も薪を焚いてらしたでしょう。あくまで炭は南の村の輸出品目です。塩作りを隠している状況では塩の生産地と言ってしまっては話が合いません。まずは、薪炭の生産地として。将来的には塩漬けの魚なども合わせて品目に加えます」


「一旦は海の恵みで生活しながら、農業に従事してもらう。その上で、建材、薪材の余りを炭にして町に納品して糊口を凌ぐと言う印象を植え付けるのかな?」


「はい。景気の良い海沿いの村など、テラクスタ伯爵領の造船所程度です。基本は汲々としていますので、そのような細かい儲けで凌いでいる姿をお見せした方が良いと考えます。本質は湿気対策になりますが」


「分かった。ちなみに、この地方の天気の流れが分からないんだけど、この雨ってどの程度続きそうかな?」


 そうカビアに聞くと、首を傾げながら、答える。


「そうですね……。大体、三日から四日降っては少し休みが続きます。で、完全に止むと夏の始まりですね。夏は殆ど降りません。冬場の方が雨は降りますね。今年は北の方は降っていたので安心ですが、全体的に雨が少なかったかと思います」


 安心と言うのは、水源としてと言う意味か。


「雨の件に関しては分かった。塩の件に関してもその辺りの機微は私には難しいので、任せる。他に急ぎの案件は有るかな?」


「町開きに合わせて、色々やりたいと言ってきている人間が多い事でしょうか。町の中で回っている金額が通常の町の金額とかなりかけ離れていますので、余裕が有るのでしょう」


 そう言いながら、何枚か企画書を持ってくる。


「あー。見た、見た。朱雀大路に屋台を用意して、皆でわいわいと楽しもうって話だったっけ。んー。小麦の収獲っていつ頃だったっけ?」


「牛鍬が間に合いましたので、春小麦は蒔けました。なので、七月の終わりから八月の頭にかけてが収穫ですね。その頃に一般的に徴税官が訪れ、収穫祭の流れになります」


「町の人間としては、楽しい事は多い方が良いか。今後町開きの日と収穫祭を休みにして、商業側に花を持たせると言うのも有りかな」


 そう言うとカビアが頬に指を当てて、天井を睨む。


「そう……ですね。町の為に忙しく働いてもらっていますので、この辺りで慰労と言うのは有りかと考えます」


「皆、自分が作る美味しい物を食べて欲しいって言うのが狙いでしょ。酒もちょっと多めに買い込んで振る舞っちゃおうか」


「ははは。領主様の振る舞い酒ですか。喜ばれそうですね。分かりました。西に向かう商家の方と調整して、ワインの流入を増やすようにします」


「後は酒精を上げた酒も造りたいんだけどね。味噌の後かな」


「何ですかそれは?」


「味噌蔵の横に倉庫作ったでしょ。あそこに保管しようかなと思っているけど、新しい酒を造るのも面白いなって」


「はぁぁ……。男爵様は、色々とまぁ、やるのがお好きで。分かりました。予算上は問題無い形にしますので、お好きにお願いします。間違い無く儲けに直結するのは目に見えていますので」


「はは。信用が有るのは嬉しいね。じゃあ、後はデパートへ新しく入る商家と、少しずつ増えている職人街と農家街のスーパーの出店の件かな。まだまだ規模が小さすぎるし、早めに大きくしちゃいたいかな。特に職人街は独身男性が多い。惣菜として持ち帰って食べられる物を販売する店を増やした方が良いかも知れない」


「男爵様、情報が遅いです。政務官の事務系の女子達の嗅覚を侮り過ぎです。最近、東側の店で、職人と政務事務の女性との小規模なパーティーが数多く開催されているのはご存じないですか?」


 カビアが目を眇めながら言ってくる。


「そんな細かい話、報告にも上がって来ないよ。何、何の話!?」


「この町の職人のレベルは異質ですし、今でも大忙しです。まず食いっぱぐれは無いでしょう。なので、政務系の目端が利く女性陣がこぞって職人達との交際を希望して色々画策しています。農家は忙しいのでちょっと敬遠されていますが、職人であれば別々に仕事も出来ますので、将来も安泰と見ていますね。後、歓楽街の温泉宿の従業員は給与の件も有って高嶺の花として狙われています」


 ぎゃー。この世界も肉食系女子の動きは素早い。そんな事になっていたか。


「で、実際に効果は出ているの?」


「噂レベルですが、陥落した者もいるみたいですね。職人の世界だと女性に免疫が無いですから。ネスさんも妻帯者ですし、上が結婚していたら、自分達もとは思ってしまうのでしょうが」


 まぁ、独身家族より結婚して家庭を築いてくれる方が為政者としては将来が安泰なので嬉しい。


「と言う事は、家を用意しないと駄目なのかな」


「そうですね、申請は上がってきていますが、まだまだ建築系のギルドの委託業者は残っています。評判の良い所に片っ端から、お願いしている最中ですね。これで町の中心から東にかけては家が埋まり始めます」


「あの辺りちょっと寂しかったしね。と言う事はあそこらへんのスーパーは早めに進めないと駄目か」


「はい。農家は自家栽培で食料を作る事も出来ますが、職人街の方は早めの方がよろしいかと」


「分かった。計画の修正は任せる」


 そんな話をしながら、これを進める、これはいらない。みたいな話を進めていると、段々と暗くなってくる。


「うわ。もう、夕方か。早いな、しかし」


「大分、日も伸びましたけどね」


 カビアと並んで窓から外を眺める。雨はまだまだ本降りのままだ。


「そう言えば、ティアナとはどう? 上手くいっている?」


 そう聞くと、カビアが顔を真っ赤にして、後退る。


「また急な話ですね」


「いや、直臣。しかも、家宰と斥候の中核とのペアだし。気になるよ」


「私は昔から政務の家系で政務一筋です。ティアナは貴族の子と言っても、没落貴族ですし、冒険者生活の方が身に着いた生活でした。そう言う意味では接点はあまりありません」


「ふん、ふん」


「興味本位ですよね? 男爵様。まぁ、良いです。ティアナとしては安心したいと言うのが有るのでしょうね。帰る場所を求めているようなそんな雰囲気を感じます。一緒に冒険をしていたドルさんもロッサさんと一緒になりましたし、寂しかったと言うのも有ると思います」


「そう言うところ、寂しがり屋だよね」


「はい。私はこう言う性格ですから、完全に包み込んであげると言うのは良く分かりません。ただ、お互いに気持ちの良い距離感を探りながら、将来を見越して色々考えあっているのが今でしょうか。基本的に長く続けるためにどうすれば良いのかと言うスタンスは崩していないので、問題は無いかと考えます」


「そっかぁ。いや、順調そうなら良かった。焚きつけた責任も有るしね」


「そうですね。男爵様が最終的には焚きつけましたから、責任は有ります。なので、早めに結婚の許可は頂きたく思います」


「分かった。それは申請を出してくれれば受理するよ。家は取り敢えず、領主館で良いよね」


「お互いの仕事がこれですからね。はい。それで結構です。今後ともよろしくお願い致します」


「うん。こちらこそ、よろしく」


 そんな話をして、苦笑いを浮かべながら、書類の処理を進めていく。日が完全に落ちて、燭台に火が灯って少しした頃に扉がノックされる。

 侍女が夕ご飯を告げてくる。


「さて、今日の政務も終わりかな。そろそろ人魚さんの件も連絡が来るだろうし、ロスティー様もお戻りになられる。忙しくなるよ」


「畏まりました」


 そう言いながら、カビアは一旦自室の方へ戻るらしい。私も同じく自室の方に向かう。さて、アレクトリアの自信作はどうなっているのやら。楽しみかな。

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