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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第456話 ベーゴマは売れています、塩の流通が開始されました

「あーそーんーだー!!」


 扉が開き、上機嫌のリズが入ってくる。書類の処理もかなり進み山もかなり裾野まできていた。


「楽しめた?」


「うん。やっぱり新しい人が入ると、感じも変わるから面白いよ」


 身振りを交え、いかに楽しかったかをリズが熱弁していると扉のノックが聞こえる。食事にしては少し早いかと思ったが、返事をするとカビアだった。


「お忙しいところ、恐縮です」


 追加の書類の山に少し顔が引き攣る。


「ご心配なく。殆どが町開きに関わる書類ですし、こちらで決裁可能な書類ですので、目を通して頂くだけで結構です」


「でも町開きって、何もする事無いよね」


 リズはカビアが入ってくると、ちょこんとタロとヒメの傍に座ってでろーんと持ち上げている。ちょっと眠そうなタロとヒメも遊んであげるかと、ぺふっとリズの頭の上に肉球を乗せたりして、コミュニケーションしている。


「はい。通常であれば、王都に出向き国王陛下に面談し男爵位を下賜され、認可証を以って、町の開設を喧伝する。後は貴族として親に独立を宣言して親が祝福すると言う流れですが……」


 カビアがちょっと苦笑を浮かべる。


「『リザティア』に関しては、既にロスティー公爵閣下の代行により町の開設は王都に申請されています。男爵位に関しても同様です。そう言う意味では町を開設すると宣言した時点で町開きです。親が祝福すると言う部分も……」


 そこでさらに苦笑が深くなる。


「仰られた個人資産と町の収益を分離しましたが、個人の収益を考えればノーウェ様を超えています。もう親を超えてしまっていますしね。祝福も何も無い気はします。それにこの収益を町に還付した場合、今年度の税収は余裕で支払い可能です。ロスティー公爵閣下のリバーシの収益は前にご報告致しましたが、同じような流れで物凄い勢いで個人資産が積み上がっています」


「個人資産って言っても、まだトランプとか表に出していないんじゃないのかな? 何か個人的に収益になる物って有ったっけ?」


「石鹸の利権分が有りますし、ベーゴマが爆発的に売り上げを伸ばしています。鍛冶場でもわざわざ工房一つを量産に充てていますし」


 ベーゴマ、そんなに売れているの? 首を傾げてみる。


「ノーウェ子爵領から西に伝播している最中ですね。テラクスタ伯爵領もそうですが、現在リバーシよりも低年齢層に爆発的に売れている商材です」


 あぁ、流石に子供にリバーシはちょっと難しいか。ベーゴマなら適当な紐と布と桶が有れば遊べる。


「各貴族の方の略式紋章ごとに性能が違うと言うのがまたずるいですね。お金の無い子はまずはロスティー公爵閣下の略式紋章のベーゴマから始めているようですが」


 あぁ、少し重さと重心に細工をしている。ロスティーのは重めで重心が低く初心者でも回しやすくコンスタントに強い。ノーウェのは中心に重心を置いて安定性を上げて長く生き残る仕様にしている。私のは重心を高めにして、少し重心をずらしている。場を掻きまわして弾きまわるタイプのコマだ。


「一個一個の儲けが小さいと言っても、コストがかからない物ですし、量産も容易です。売れれば売れる程儲けが跳ね上がります。輸送も容易ですし、商家連中の中でもかなり上位の商材になっているようです。金額を一定にしたというのも売れている理由でしょうね。どこでも同じ価格で買えると言うのは強いです」


 商家連中には売る予定の場所を先に聞いて、輸送コストを割り引いて販売している。元々、子供達の手慰みに作った物だ。そんな物が高価に売られるなんて許せない。


「東側にも徐々にですが、輸出されているようです。最近の商家の『リザティア』の評価としては何でも集まるが、何にしても面白い町だと言う物だそうです」


「良いねぇ。折角国の玄関口になったんだ。何でも集まるのは当然だけど、そこに面白いと言う評価が乗るのは嬉しい」


「温泉宿が開けば、遊戯室の遊具も解禁ですか。サービスで売り上げをと仰っていましたが、もうそれだけで町としての税政は十分潤っております。これは南の村の税政も含みますが、試算上、十分黒字ですね。しかも、塩ですか……」


「そう、塩。どう、そろそろ南から荷物は届き始めた?」


「食糧輸送の馬車が空荷から昆布や塩を持ち込み始めましたので、一気に財政状況は改善しました。塩は現在問屋と調整中ですが、塩ギルドに変わる仲買をフェンさんと調整中ですね。流石にいきなり塩を販売しますと言うのは難しいです」


「結局仲買は付いちゃうか。値段に上乗せはするの?」


「元々薪代と輸送費だけです。同量の岩塩の比では有りません。商工会側で食料品系の代表が集まって分配、販売を執り行うそうです」


「売れそう?」


 カビアの目の奥をどこまでも覗き込みながら聞く。岩塩が塩で有ると言う常識と海水塩は不味いと言う常識は根強いはずだ。そうそう一般受けするとは思っていない。


「はぁぁ……。分かっているでしょうに。売れます。食料品系の代表が率先して、自分の商会で使いたいと言う引き合いで荷が消える始末です。美味しい物ならなんでも良いんですよ、彼等にとっては。しかも、安いんですから。かなり利益は上乗せしていますが、これも爆発的に売れています」


「んー。塩ギルドみたいにあくどい事はしたくないけど。そんなに利益上乗せしている? 書類で見ている限り岩塩の半値以下でしょ?」


「『リザティア』内ではそうですね。ノーウェ子爵領内でもその価格でいけるでしょう。テラクスタ伯爵領も同様です。それ以降になると、輸送コストが乗り始めます。王都では輸送量にも寄りますが岩塩の七割五分辺りですね」


「それなら仲買を通さない程度の金額か。十分戦えるな」


「王都方面に関しては援護してくれる物が無いのでまだ戦うのはきついですね。まずはロスティー公爵閣下領、ノーウェ子爵領、テラクスタ伯爵領を席巻してから十分に認知されてからの戦いになると考えます」


「まぁ、塩の客なんていくらでもいるし、焦る必要は無いか。身近なところから置き換えていってもらおう。『リザティア』内の利用率は八割は超えたいかな」


 そう言うと、カビアが眉を顰める。


「比較的弱気な数字ですね」


「海水塩には海水塩の利点、岩塩には岩塩の利点が有るからだよ。全てを置き換えられるとは思っていない。ただ、あの馬鹿高い塩をこれ以上無駄に使うのは嫌だ。そんな物に大事な金を使ってもらうくらいなら、もっと美味しい物や娯楽、必要な物を買って欲しい」


「ふふ……。そう言うところは変わりませんね。畏まりました。塩に関しては置き換え可能な箇所に関しては急ぎ置き換えていきます。また、前のご指示の通り各家庭にも試用品として配っております。これがどう効果を発揮するかですね」


「しかし、ロスティー公爵閣下の略式紋章が打たれた物が無料で配られるんだから、驚くだろうね」


 そう言うと、二人で笑い合う。


「後、南の村の増員の件ですが、ノーウェ様よりの人員が到着しましたので、南の村に送りました。設備の増設の方は先に送っていますのでそろそろ着手かと思います。人員が着く頃にはラインが増やせますね」


 やっぱりノーウェ行動早ぇな……。逆算してぎりぎりの日程で処理している。


「無限大に金を生む物だ。さっさと流通を掌握して、岩塩を駆逐する。この儲けで再投資して一気にインフラ整備と町の建設を加速させる。どうせ東側の道作りは遅延しているんだろう?」


「はい。遅々として進んでいないですね。ベティアスタさんは自信満々でしたが、東側はまだ重要性を理解していないでしょうから」


「あっちに関しては売れば売る程儲けになる。さっさとこっちで人員を確保して東まで通しちゃおう。後は、ちょっと先の話だけど、トルカまでの道とフェイゼルまでの道に一日単位くらいで宿場町を設けたい。試算をして置いて欲しい。儲けが出るなら、実施して構わない」


「補給を前提にしてですか? 騎士団と衛兵の訓練と並行して、ですね。ノーウェ様とも調整致します」


「そっちはそこまで急いでいない。ただ、今のままだと大分不便だ。今後普通の人間が気軽に行き来出来るように整備はしなければならない。ノーウェティスカ、『リザティア』、フェイゼルだけで物流が完結するくらいまで密度を上げる。それ以降は各商家に頑張ってもらう。まずはここの流通を濃密にする」


「畏まりました。対応を検討します」


 そこまで話をした際に、扉がノックされる。話し込んでいる内に夕ご飯の時間らしい。私とリズ、カビアで顔を見合わせて、少し笑い合い、食堂に向かう事にする。

 さて、塩が現実に流通を始めた。ロスティーもノーウェも塩ギルドから守るとは言ってくれたが、無理だろうな。オークの件も面倒臭いが人間同士の足の引っ張り合いも面倒臭い。どういう手を打ってくるかは見ないと分からないけど、喧嘩を売ってくるのなら、買うまでだ。命を盾に肥え太った豚共だ。さぞや料理されたがっているだろう。

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