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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第453話 メイド服、執事服、ディーラー服は出来そうです

「こちらが頂いた型紙を再現した物ですね」


 そう言いながら、上等な布に包まれた服を渡される。

 布を開くと、安藤がデザインしたメイド服がそのまま現れる。細かい縫製の部分も、型紙と一緒に縫い方として記載していたので、完璧に同じ物が出来上がっている。


「これは……。良い出来ですね」


「ありがとうございます」


 店主が破顔しながら、メイド服を広げてくれる。


「頂いた型紙の精緻さ、考え方、そして新しい縫製技術には驚きましたが、何よりもこの出来上がりの完成度。清楚な中にも機能美が隠されている。これぞ、美しい作業着と言うべきでしょう」


 うっとりしながら、広げたメイド服を眺める店主。メイドフェチとかにならないよね……?


「店主の事ですからアレンジを入れるのかと思っていましたが」


「そうですね。考えなかったかと言えば嘘になります。しかしいざ基礎を作って眺めていると、何を足しても引いても、崩れるのです。仰る通りエプロンに紋章を入れる程度でしょうか。私の腕ではこの完成度に何かを足す事は出来ません」


 ふむ。流石安藤。完成度高いなと思ったが、こちらでも高評価だ。


「これは中サイズですか?」


「そうですね。五種類の真ん中です。一般的にはこの大きさで丁度になるでしょう。獣人の方の獣相次第では大きな物が必要になるかも知れませんが」


 あぁ、リナの事を考えると、ちょっと大きいのが必要だろう。背丈的にも胸周り的にも。


「しかし、全身の至る所で紐が内蔵されてシルエットを崩さず大きさの調整が出来ますので、幅広い方に着こなして頂けるでしょう」


 中世の技術でってお願いしたけど、その辺りもきちんと対応出来るようにしてくれたか。本当に助かる。


「同じく、執事服ですか? 従業員服も出来ております。こちらですね」


 別の色の布で包まれた服を広げる。これも良く見る執事と言う感じの執事服だ。


「こちらも上品ですが、あくまで主賓を際立たせる工夫が随所に施されていますね。個性を極力出させないのにも関わらず、滲み出る個性を魅力に変える。そんな一品でしょう。紋章は胸のポケットに刺繍する形で記載されていましたが、それが良いかと考えます」


 黒地の執事服は三つ揃えが美しいシルエットを醸し出している。全く王道的な形態だ。私が着る場合は、色々サイズ調整が必要だろうなぁ。


「こちらは遊戯室用の従業員の為の服でしたか。派手な空間では埋没しがちですが、煌びやかな場所で逆にシックな雰囲気を醸し出しコントラストで目立たせる。嫌味は感じませんし、良く出来ております」


 ディーラー服の男女用ももう、試作が出来上がっている。


「しかし、ここまで再現されるのに結構な手間がかかっているのではないのですか? その辺りは如何ですか? 百着などとお願いした手前、どうなっているのかは心配しておりますが」


「はい。まずはそれぞれの針子が一着を完璧に作れるようになり、それを教えていき、分業制が成り立つようになっております。どうもそもそもそう言う分業を前提として組まれているようで、型紙と手順を確認すればする程、その思想に感心してしまいます」


 あぁ……。藤川の方では一足飛びに工場制手工業を確立させたかったのか。本当に助かる。と言うか、設計でそれを実行する辺り、非凡と言うか、本当に大学生なのか?


「では、お願いしていた分は可能そうですか?」


「はい。材料も順次入っておりますし、針子の質も上がって、生産速度は高まっております。頭打ちはしますが、目途は立っております」


「そうですか。困難な依頼にも拘らず、対応頂き、ありがとうございます」


「いえ。このような新しい技術を教示頂けるのですから、私共の方が御礼を言いたく思います」


 そう言うと、店主が深々と頭を下げてくる。


「初めは無理かとも思いましたが、頂きました型紙、製法を見ていく内に出来るかもと言う思いが強まりました。新しい技術を取り込み、今後作る商品を飛躍的に発展させる事も出来るでしょう。何から何までほんとうにありがとうございます」


「そのような形でご協力出来たのなら嬉しい限りです。今後ともよろしくお願いします」


「こちらこそ、どうぞご贔屓に」


 にこやかに笑う店主と握手を交わす。その後は雑談となった。応接室で紅茶を片手にデパートの状況を確認してみる。


「やはり、給料が良いのが大きいのでしょう。高くとも質が良い物は飛ぶように売れていきます。同じく商家の人間も入り込んでいますが、目敏く売れ筋になりそうなものは買い漁っていっていますね」


「ほぉ。内需の拡大は嬉しいですが、商家の人間もですか? 卸し値と言う訳でも無いのに豪儀な話ですね」


「この町の商品は出元が中々分かりません。この町の工房で作っている物も有れば、ノーウェ子爵領で生産されている石鹸のようにある程度距離が必要な物も有ります。そう言う謎の商材、それも飛び切り珍しく実用的かつ画期的な物が集まる場所として西にも東にも少しずつ話が広がりつつあります。特に東側は戦争の準備と騒いでいたのが、一気に沈静し、商家の人間が活発に行き来するようになりました。その辺りが儲けの原動力になっていますね」


「ふぅむ。という事はロスティー公爵閣下の策は上手くいったのでしょう。しかし、商売敵も増えてきましたが、如何ですか? この店舗的には」


「はは。お陰様で領主様の発注が有りますから全くの黒ですよ。ただ、王都時代からの御贔屓筋からの発注も来ますね。ロスティー公爵閣下やノーウェ子爵様に絡んだ方は特に早馬を出してまで様子見がてら、発注を出されてきます」


「様子見……ですか?」


「体形を見ずに発注が出せるのは殆ど体形の変わらない老齢のお客様です。そう言う方々が新しく出来た町の様子を見に来ていると言う感じでしょうか」


 ふむぅ。結界を通っていると言う事は悪意のある相手では無いのかな。


「元々の御贔屓筋ですし、素性の悪い方とは関わらないようにしておりますので、そう言う意味では上得意様ばかりですね。私共も今回の件で得た技術を生かして新しい服を作る事が出来るのは望外の喜びです」


 店主がそう言うと、にこやかにカップを空ける。


「私共も売り上げとしては莫大なものとなっておりますので、還元をしていく必要が有ります。人を新しく雇入れる事もそうですし、他のめぼしい物を購入し、色々と付加価値を付けると言う流れが出来ています。服飾と宝飾は似ていますが、中々一緒にと言う形にはなりませんでした。どちらもが自店舗の売り上げを最優先にしますので。しかし、このデパートですか? この商形態になってからは、横のつながりが生まれ、総合的にお客様に商品を提供出来るようになりました。私共も新しい知識が増える一方です。ありがたい話です」


 デパートと言う立地、店舗の集積を生かして、トータルコーディネートを考えて販売をし始めたか。思った以上に柔軟に考えてくれてありがたい。それに税以上に売り上げてくれてそれを還元すると言う思想を持ってくれるのは助かる。商売はお金を回してなんぼだ。この辺りはフェンが商工会側からもプッシュしてくれているんだろうなとは思う。


「長々と商売の邪魔をしてすみませんでした。そろそろお暇します」


「いえいえ。いつでもお越し下さい。面白い話を楽しみにしております」


 にこやかな店主に見送られ、店を出る。町開きまでには服装の方は揃いそうか。格好は付くかな。さて、テスラを拾って帰るとしようか。チャットの実験の結果も気になるし。

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