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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第443話 仕事を頑張ると若返った感じになります

「つか、この釘なんだが、大工が欲しがっている」


 ネスが、ひょいっとバガテル用の釘を摘まんで振る。


「大工が……ですか? 何に使うんです。建設用には小さいですし、細すぎます」


「床板の固定に使いたいらしい。重さの兼ね合い上、元々そんなに厚い材木が使えないのに、今までの釘の規格が太すぎてな。板が割れる可能性が高かった。それを防げそうってんで、かなり興味を示している」


 床板は元々そんなに厚い板は使わない。その必要があまり無いし土台にかかる負荷もその分大きくなる。嵌め込み式と言う可能性も有るがそんな精度で家を建ててはいないので、頻繁にずれるだろう。だから、床板は、釘で固定してしまう。でも固定用の釘を打つ前に穴を開けたりしているのかなどの工法の部分が全然分からない。物で解決するべきなのか、対応で解決するべきなのか……。


「使うのは構いませんが、指定数の納品は先にお願いします。温泉宿と歓楽街に設営するバガテルの為なので。一旦定数まで出来れば、大工の方に回して下さい」


「分かった。つか釘なんて、大中小程度が有れば良いって感じだったが、細くて短いと言うだけでも価値が出るんだな」


「用途に応じて使う物を変えるのは建築や製造の基本かと思います。でも鍛冶仕事で釘自体を使う事なんて無いですしね」


「ナイフの柄を留めるとしても目釘だからな。こっちは言われた物を作るだけだしな」


「そうやって種類を増やしていけば、鍛冶の経験にもなるでしょうし、もっと各業種に取っても便利になるんじゃないでしょうか?」


(ちげ)()ぇ。まぁ、手ぇ空いてからの話だがな」


 そんな雑談をしながら、釘の納期を確認するが定数分の作成まで一週間はかからないらしい。また、出来た分をある程度まとめて納品してくれるようなので、バガテルの釘打ちの方は早い段階で始められる。あんな物、延々釘を打たないといけないので、さっさと始めないといつまで経っても終わらない。


「そろそろ町開きをしようかとも考えていますので、なるべく早めにお願いします。と言っても、その辺りは全く心配していないですが」


「そりゃ、信用の有る事で。嬉しい限りだが、まぁ、現実問題手一杯の部分は有る。調整はするが、限界は有るぞ」


「はい。分かっています。本業に差し障りの無い範囲でお願いします」


「はは。こうやって皆で馬鹿話ししながら町を作って発展させていくのは面白(おもしれ)ぇ。差し障りも糞も無く、やるこたぁやる。その上で楽しむ。俺ぁ、今が一番楽しいぜ」


「良かったです。お誘いした甲斐が有りました」


「聞いた時は賭けかと思って悩んだがなぁ。嫁とも話していると若くなったって言われてな。何も変わって()ぇのにな」


 そう言ってネスが顔をぺたぺたと触り出す。


「そうですね。若々しくはなりましたね。楽しそうですし。良い事だと思います」


「そうかぁ? まぁ、何らかの影響が出てんなら良いか」


 そこからは町の発展に関する雑談になった。鍛冶側も色々、こちらの考える器材の改修、改造を模索しているらしい。手押しポンプも取っ手が長くなり、子供でも簡単に水が汲めるようになった。そんな感じで少しずつ改良されて入っている。良いサイクルだなと思う。


「あまり長居してお邪魔するのも問題ですので、そろそろ行きますね」


「おぅ。納品まではちょっと待ってくれ。出来上がり次第持って行くわ」


「楽しみに待っています」


 そう言って、ネスの元を辞去する。工房の隅っこではベーゴマ達が鋳抜かれていたり、ダーツが鋳抜かれていたりと忙しそうだ。ただ、これで遊ぶ子供の笑顔を思い浮かべると何とも言えない気持ちになる。

 トランプの製造もラインを組んでやっているらしい。これからは仕事を効率化して、余暇を作り、遊ぶと言うスタイルが広まるかも知れない。余裕の無さが全てを停滞させていたが、それが無くなる事により、爆発的に発展するかもしれない。それが楽しみでならない。


 てくてくと領主館への道を戻りながら、ネスとの会話、工房の様子、そして、職人街の活気を目の当たりにして、あぁ、この町を、『リザティア』を作って良かったと思う。別に現代日本の文化を押し付ける気は無い。ただ、良い点は取り込みつつ、この世界の利点は伸ばしていく。勤勉で我慢強いのは美徳だろう。過酷な環境がそうさせたと言うのも有る。そこに少しだけの余裕と楽しみを提供する事で、人生の潤いと明日への活力にしてもらえればありがたいな。


 領主館に戻り、チャットの部屋をノックするが、声を聞くと侍女の誰かだった。部屋を開けると、侍女がソファーに座って編み物をしているところだった。


「これは、ご領主様。失礼致しました。このような格好で」


「いや、構わない。続けて欲しい。チャットの代わりに魔道具を確認してくれって言われたのかな?」


「はい。持ち回りで様子を見る事になっております。今は私の番です」


「編み物かい?」


「はい。夏物の目の粗い上着が欲しくて。編んでおります」


 慌てて、編み物を仕舞いながら侍女が答える。


「いや。様子を見に来ただけだから。楽にしてもらって構わない。チャットの要望は叶ったんだね。良かったよ」


「はい。チャット様は政庁の方に出られました。魔法学校の建設に関しての相談との事です」


「そんなこと言ってたね。分かった。面倒だと思うけど、引き続きお願いするね」


「畏まりました」


 侍女が深々と頭を下げるのを見て、部屋を出る。


 さて、日も少しずつ傾いている。明るい内に、タロとヒメのお待ちかねで遊びますか。

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