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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第436話 狼がフライングゲットする

 熱湯を足して、湯かき棒で混ぜる。少し熱いかなと思う温度になったので、これで良いかな。リズに他の部屋にお風呂が入ったのを伝えてもらう。


 私は先に部屋に戻り、タロとヒメを回収する。部屋の隅の方で二匹でじゃれてコロコロ転がっている。首輪とリードを取りに行って、戻ると、真後ろでお座りをしてはっはっと荒い息で興奮している。素早いし、欲望に忠実だ。首輪を嵌めてリードを引く。玄関で体を壁に擦り付ける二匹を眺めていると、リズがやってくる。


「皆に伝え終わった。夕ご飯前にさっぱり出来るって喜んでいたよ」

 

 にこにこと微笑みながらリズが伝えてくる。


「じゃあ、早めに散歩を済ませて夕ご飯にしようか。教会付近で良いだろう。まだ、あの辺りも完全に回った訳でも無いし」


 そう言いながら、二匹に先導させて、玄関を出て領主館の門へ向かう。衛兵に散歩に出る旨を伝える。二匹が何を覚えたのかキャンとウォフとお座りをして短く鳴く。出て行ったり入ったりする際には何かを言わないといけないと学習したのかな?


 そのまま広場の方に出て行く。もうこの時間になると、人もいない。皆、家に戻って夕ご飯の準備か、もう食べている時間だ。リードを解き、二匹を開放すると、たーっと駆けだす。念の為、人には近付かないように伝えている。走って行って、木々を嗅いで、自分達の匂いのしない木には体を擦り付けて匂いを確認する。それをランダムに繰り返しているように見える。ただ、二匹には二匹の中で確たる方針が有って木を選んでマーキングしているんだろうなと思いながら眺める。


 四月の初め、昼間は日が当たれば暖かだが、日が落ちてくるとすとんと一気に温度が下がる。リズが湯冷めしないかが心配だ。


「リズ、寒く無い?」


「念の為、上着は羽織って来たし、ほかほかしているから大丈夫。丁度気持ち良いくらいの涼しさ」


 そう言って、上着の前をきゅっと閉じてアピールする。私も念の為マントを羽織っているので似た者か。ただ、中は蒸しているので、偶に翻して空気を入れ替える。


「あは。楽しそうに走っている。本当に狼って走るの好きだね」


「走るのが快感と言うのも有るしね。足先の肉球に物が触れる感覚が快楽なんだろうね。それに元々餌を捕る為に走り回るから。そう言うのが出ているんだと思うよ」


 リズが少し体を曲げて、肩に頭を乗せて来るので、それを私の頭で挟む。少しだけ嬉しそうに口元が動いたのを感じる。


「温かい……」


「ん。温かいけど、本当に冷えていない? 私は大丈夫だけど、リズは心配だよ」


「ふふ。大丈夫。ヒロがぬくぬくだから触れていると、温かいの」


「そっか」


 そんな感じで雑談をしていると、タロとヒメが近付いてくる。


『まま、走るの、楽しいの!!』


『ぱぱ、一緒に走る?』


 二匹が興奮して如何(いか)に走る事が楽しいかを『馴致』で伝えてくる。


 まだ明るいから大丈夫かな。マントの裏から日本で作ってもらった秘密兵器を取り出す。


『投げるから、取っておいで』


 そう伝えると、骨の玩具と思ったのかはふはふしながら、お座りして、待っているが、手元からひょうと投げられたフライングディスクが回転しながら飛んでいく。二匹は意表を突かれた顔をした後に楽しそうに後を追い始める。


「あれって何なの?」


「元々、広場で投げ合って遊ぶ為の玩具かな。犬とかに投げると、取って来るし、骨の玩具程力を入れなくても遠距離に飛ばせるから楽なんだ」


「あ、飛び上がって噛もうとしたけど失敗した。あれは……タロかな。ヒメはまだ追っているね」


「タロはちょっとタイミング取るのが下手な感じはする。まぁ、狩りの練習にもなるし、丁度良いかな」


 そろそろと高度を下げたのを見計らってかヒメが軽くジャンプして、ディスクに噛みつく。猛烈にしっぽを振りながら、獲物を捕ったと言う顔で帰ってくる。ディスクを受け取り、全身をわしゃわしゃと撫でる。


『まま、もっと!!』


『ぱぱ、もっと!!』


 二匹の意見が一致したので、もう一度、ひょうと投げる。これも真っ直ぐ投げるのにコツがいる。大体、右か左に曲がっていく。程々に回転をかけながら、その回転の逆方向に向けて投げれば大体真っ直ぐ飛ぶ。


 タロとヒメだとやはり体格に違いが出て来始めている。タロはがっしりした感じになっていっているし、ヒメはしなやかな感じになっている。タロの方が身体能力は上なのだけど、圧倒的に予測して何かをすると言う経験が不足している。少しでも野生を経験したヒメの方がその辺りは上手い。ただ、一回投げたので何と無くコツを掴んだのか、今度はタロが大分高い位置のをジャンプしてパクッと銜える。

 たーっと走ってきて、足元にぽてっと落とす。


『まま、もっとなの!!もっと!!』


『ぱぱ、もっと!!』


 二匹がせがむが、流石に残光ももう残り僅かだ。


『また明日ね。今日は終わり』


 そう伝えると、落胆しながらも、明日も遊べると言う事ではしゃぎながら、リードを大人しく結ばれる。中々散歩を二十キロメートルも三十キロメートルも出来ないので、こう言うので運動量が増やせたら良いなと思いながら、領主館へと戻る道を進む。涼しい風に吹かれ髪の毛がさらさらと流れるリズの姿を見て眼福と思いながら、ゆっくりと、家路を歩く。

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