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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第434話 塩析出来そうな石鹸が誕生しました

 程々に食べて満足したのか、ニコニコと微笑みながらテスラが先導して駐車場に向かう。私は馬車の中で待機し、厩舎から馬を引いてくるのを待つ。馬達も食事をもらったのか機嫌良く歩いてくる。テスラが馬車に馬をつなぎ、御者台に上がる。


「ご視察は終わりですか?」


「ちょっと領主館で試したい事が出来たから戻ろう」


 そう言うと、テスラがゆっくりと馬車を出す。ポクポクといつもよりもゆっくりとしたリズムで馬車を進める。


「酔っていない? 大丈夫?」


「ピケットを割った物ですし、特に酔いは感じません。念の為、ゆっくりと進めているだけです」


 テスラが振り返り告げる。


「なら良かった。テスラはお酒は飲めるの?」


「瓶一本程度なら大丈夫です。それ以上は気持ち悪くなりますね」


「あぁ、酔わないで、気持ち悪くなっちゃうんだ」


「はい。酔うのもほんの少しの間ですね。すぐに意識が戻ります」


「諜報とか斥候で、そう言う訓練とかは無いの?」


 そう聞くと、テスラがうーんと首を傾げる。


「無い……ですね。個人差が有りますので。基本的に仕事中に飲む事は無いですし、泥酔する量は把握していますので、そこまで飲む事も有りません」


 あぁ、職業倫理が徹底している。これ、神様の手が入ってそうな気もする。まぁ、きちんとしてくれるのならそれに越した事は無いか。


「分かった。安心した」


 そんな雑談をしていると、領主館に戻ってくる。顔を出して手を振ると衛兵が門を開けてくれる。

 玄関前のロータリーで降りる。テスラはこのまま馬の世話をして訓練に出るとの事だ。


「何か有りましたら、練兵室におりますのでお呼び下さい」


 そう言って一礼して馬車を裏側に進めていく。

 

 皆は町で訓練かな。そう思いながら、倉庫の方に向かう。持ち帰った海藻と貝殻と廃油で試したい事が有る。と言うのも、今の石鹸に関して不満が有る。幾ら乾かしてもやっぱり柔らかいし、溶けるのが早い。樫材の灰を使って石鹸を作っているから、炭酸カリウムから石鹸を作っている事になる。その製法を変えたい。


 買っておいた安物の鉄鍋に持ち帰った海藻を入れては温度を上げた火魔術で一気に真っ白になるまで焼いていく。塩生植物を焼けば炭酸ナトリウムが抽出出来る。


 <告。『属性制御(火)』が1.00を超過しました。>


 ぉ。久々の識者先生。やっと火魔術も1.00超えたか。何が出来るんだろう。もっと大魔王ごっこ出来るだけとかだと、何かをはっ倒しそうだけど。


 <解。上限温度の上昇及び効果範囲の拡大となります。>


 ……。結局、大魔王ごっこか。でも温度も上がるのか。どの程度上がるんだろう。普通に千六百度くらいは過剰帰還を覚悟したら出せたけど……。


 海藻を焼き尽くす。ワイン樽で一個分をかなりみっちり詰めて持って帰って来たので結構な量になった。一旦樽に戻す。


 次は貝殻の方だ。真水で綺麗に洗って乾かしてを繰り返したので、海水成分はほぼ無い筈だ。鉄鍋に入れて温度を上げて焼いていく。

 確か密閉状態で、八百五十度くらいまで上げて煆焼(かしょう)させて二酸化炭素を吐き出させれば酸化カルシウム要は生石灰(きせっかい)になる筈だ。火魔術で貝殻全体を覆い、九百度程度で焼いていく。あぁ、継続時間も伸びてる。全然過剰帰還の気配も感じない。暫く燃やしていると真っ白になって来たので金槌で叩くと脆く粉々になる。これこのまま置いているとまた二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムに戻ってしまう。


 鍋に入れた状態で水を少しずつ生んでかけると、ぶちゅぶちゅと言いながら湯気を出す。反応が無くなるまでゆっくりと水をかけて反応をさせていく。これで消石灰(しょうせっかい)が出来た。水酸化カルシウムだ。


 水酸化カルシウム溶液と炭酸ナトリウム溶液を反応させれば、炭酸カルシウムが沈殿して水酸化ナトリウムが作られる筈だ。ここまでが長かった。海までの経路が欲しかった理由の一つはこれだ。炭酸ナトリウムか水酸化ナトリウムで石鹸を作った場合、塩析が出来る。


 ただ、厳密な分量に関してはトライアルアンドエラーしかない。反応が収まった消石灰を風魔術で乾燥させる。廃油を軽く熱して、消石灰と海藻灰を少しずつ混ぜた溶液を入れて反応を探る。アルカリが強すぎるので失敗した物は廃棄用の樽に詰めていく。少量なのでこのまま川に捨てても希釈されるけど、環境負荷はなるべく下げたい。

 分量をメモしながら、何度か繰り返していると、理科の実験の時に水酸化ナトリウムを油に混ぜた時のあの反応によく似た反応を確認出来た。分量の配合は大体確認出来たので再現も可能だろう。

 そのまま油に混ぜてマヨネーズ状になるのを待つ。タライを作って移す。これも二週間程度熟成して、塩析しながら、水酸化ナトリウムを抜かないと使えない。


 他の石鹸の作り方も有ったので、何種類か試しに作ってみる。ちょっと、実験しないと分からないのと危ないので、当分倉庫は出入り禁止にしておこう。作った消石灰も炭酸ナトリウムも土魔術で作った箱で密閉しておく。消石灰が目に入った場合、失明も有り得る。


 取り敢えず、水酸化ナトリウムは完成した。後は調合と塩析の結果を見て判断かな。パッチテストも有るし、結構色々やる事は多そうだ。でも、固い石鹸は作りたいし、良い匂いの石鹸も作りたい。


 消石灰は三和土を作るのにも使えた筈だし、その辺りも試していくか。


 ふと気づくと、太陽も大分赤くなっている。夢中になり過ぎた。粉末類が服についていないか確認して、倉庫を出る。実験用の服は別に作る事にしよう。普段着で劇薬を弄るのは怖すぎる。

 さて、皆は帰っているかな?

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