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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第432話 競馬のジョッキーは集まりましたが、デッドヒートと言うよりスマートに競う感じです

 温泉宿の駐車場まで進み、テスラにお願いして、競馬場まで馬車を走らせてもらう。ざっとカビアに測量した平地とそこに生えている牧草量を計算してもらったが、馬も牛もまだまだ運用は可能だ。将来的に飼料を生産出来るようになればより増えていく。ただ、あまり急激に牛馬を増やし過ぎても歳を取ってからの運用が面倒な為、きちんと世代管理をして子供を作ってもらって増やしていく方が良い気はする。その為の予備を持つ程度だろうか。結局騎兵はそこまで持たないにしても、ゲリラ戦用の斥候部隊の移動や、偵察、伝令等、馬が必要な機会も多い。騎兵として出なくても馬に乗れるようになってもらうのは重要な事だ。そう言う意味では、今回の衛兵からの競馬のジョッキーへの転換は私的には望ましい。伝令としての働きは最低限期待は出来るだろう。元々、騎兵をやっていた人達だ。その辺は引退したと言っても、さくっとこなしてくれるだろう。


 競馬場に着き、馬車から降りる。駐車場に止めて馬は厩舎の方に預けに行く。競馬場なので、お世話とお昼も一緒にお願い出来ればと思う。

 後、そろそろ競馬場の軽食スペースの稼働も確認しなければならないのでお昼は厨房の方に顔を出してみようかとテスラと相談して、決めた。


 競馬場の入り口で衛兵と話し、従業員通路から馬場の方に出て行く。騎士団の団員がいたので手を振るとこちらに来る。


「当直かな?」


「はい、男爵様。本日の当直をしておりますオーディスです」


「ガディウスはいるかな?」


「はい、呼んで参ります」


 そう言うと、駆け足で、馬場の奥の方に走り始める。周辺警護役じゃ無いのかな?しょうがないので、その場で待機して『警戒』を全開にしておく。暫くすると、ガディウスが馬に乗って近付いてくる気配と共に馬の駆け足の音が聞こえ始める。


「お疲れ様、ガディウス。調子は大丈夫?」


 緩やかに速度を落とし、目の前で止まる。颯爽と馬から降り、ガディウスがにこやかに近付いてくる。


「おはようございます。男爵様。調子は良いですね。今日のご用件はどのような事でしょうか?」


「前に競馬の際に人員不足を指摘してたから。レイを防衛軍最高指揮官に任命したから、人事権も付随して付いた筈だしね。辞令自体はもう出ているかと思って来てみた」


 そう言うと、ガディウスが苦笑を浮かべる。


「はい。レイさんに関しては軍としての系列が違いますので、請願と言う形ですが、人員の確保は頂きました。ロスティー公爵閣下、ノーウェ子爵様の軍でも名立たる乗り手ですよ。正直、一介の騎士の身では、頭が上がりません」


「もう引退している身だし、その辺りはきちんと出来る人間を選別している筈だけど、何か問題は起きそう?」


「いえ。良い方ばかりですので、これに関しては私の心の弱さなのでしょう」


「衛兵や警察機構等、都市内の防性軍事機構はレイが治めるけど、騎士団として攻性軍事機構の長はガディウスが治めるんだから、しっかりして欲しい。今後予定されているだけでも東の森のオーク殲滅の総指揮とか大きなネタは有るんだから」


「ノーウェ子爵様のオーク討伐には参加致しましたが、またあれをやるんですね……」


「いや。同じようにする気は無いけどね。結界を濃くして補給を完全に断って干上がらせる。どれだけの人数が存在しているかは確認中だけど、寡兵で当たる気は無い。最終的に攻め込むにせよ、ノーウェ子爵様に援軍を要請するしね」


 そう言うとガディウスがほっとした顔をする。


「おいおい、その指揮官はガディウスだよ。私の騎士団団長は君なんだから。しっかりしてくれよ。もう、ノーウェ子爵様の下の騎士じゃないんだから」


 少し苦笑しながら告げると、顔を引き締め直し、ガディウスが答える。


「申し訳ありません。名だたる勇士を前に、些か弱気の虫が騒いでいたようです。以後、心を入れ替えて邁進致します」


「頼む。防衛はまだ手は有るけど、攻めるにはこの町は少し弱い。そう言う意味で君達は本当に私の剣なんだ。どこまでも鋭利であって欲しい」


「畏まりました」


 頭を下げてくるガディウスの肩をぽんぽんと叩く。


「さぁ、初めの話題に戻ろう。競馬の件だけど、どうかな。人数的には大丈夫そう? 一日六ゲームは出来る?」


「十頭立てでの競技ですよね。はい。馬の方は全力で走っても、三試合は出場出来ます。補充員を合わせて、一日二試合に出れば良いので、そう言う意味では楽になりました」


「と言う事は馬と騎手は結構ばらけるか。馬と騎手の相性も有るから、きちんと全組み合わせで、速度は確認して欲しい。時計のアーティファクトはノーウェ子爵様に預かったから貸し出す。秒単位で確認しておいて欲しい」


「こんな事にアーティファクトを使いますか?」


「秒が必要な事象なんて早々無いしね。オッズを作るにせよ、正確な記録が必要になる。ちなみに、馬達は馬群で走るのは大丈夫? 怖がったりしない?」


「そうですね、元々群れる習性が有りますので、全力で馬群で走るのは慣れています。そこから指示を出して抜け出すにせよ、馬同士が調整をして無理なら道を開けます。そう言う意味では怪我が起こる余地は無いでしょう」


「全組み合わせと、馬群での全組み合わせもきちんと記録しておいた方が良さそうかな。気の弱い馬が道を開けちゃう場合も想定しないといけないのかな」


 そう言うと、ガディウスが首を振る。


「いえ。余程の力の差が無い限りは道は譲りません。後脚近くに相手の頭を感じて、それが続くようなら抜かれる可能性を感じるので譲ると言う感じですね。これなら、怪我も起きません」


 日本の競馬みたいにぶつかり合いそうになるようなデッドヒートは無いか。でもスマートに速度を楽しめるのはそれはそれで楽しそうだ。


「分かった。町開きも近くなった。騎士団として見世物になるのが第一の仕事と言うのも遺憾かと思うけどよろしく頼む」


 そう言うと、ガディウスが真剣な顔に戻る。


「いえ。騎士など裏方の身です。戦う事でしか存在意義を示せない我々が表舞台で町の運営の一端を担えるのです。誉と思い、邁進致します」


 敬礼して来るので、答礼を返す。

 本当にこの世界の人達は真面目で、人を思って……。良い人ばかりなんだよなぁ。なんで、あんな薄汚れたのが生まれるのかが分からない。はぁぁ……。


「期待している。日はあまりない。すまないが調査の件、よろしく頼むよ」


「はい、分かりました」


 仕事の話が済むと後は近況の雑談を進める。先達がぁとか言っているがどうも気さくな人達らしくて、馬術に関してもどんどん教示してくれているらしい。なのでますます頭が上がらないと言う状況との事だ。まぁ、相手は軍で上り詰めて引退した身だから、騎士程度なんてひよっ子なんだろうなと思いながらもきちんとひよっ子をひよっ子として守り育ててくれる先達に心の中で頭を下げる。

 状況を聞いていると時間も経ち昼も過ぎそうになってくる。話を切り上げて、厨房の方に向かう事にする。中々競馬場の軽食まで確認出来ていなかったので、ちょっと楽しみだ。カビアの報告だとノーウェ資本の王都で出している軽食チェーンが一手に切り盛りしてくれているらしい。ノーウェ直轄じゃ無い人間と言う事でちょっとだけ今までと違い楽しみだ。ワクワクしながら、テスラと一緒に厨房に進む。

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