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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第431話 バガテルとルーレットの運用開始

 トドから早めに回復すると、皆はレイと一緒に練兵室に向かった。午後は町に繰り出すし、レイも正式に衛兵管理の委任状が交付されたので、全衛兵の管理権を持っている。午後は組織作りや訓練の調整で潰れそうな気がする。


 私は日本から持ち帰ったバガテルとルーレットの筐体を持って馬車に乗り込む。テスラにも手伝ってもらう。ルーレットテーブルの天板は私が持たないと無理な程に分厚く大きい。本体の鋼材の部分は全て鉄に変わったようだし、玉は象牙のような緻密な骨材に変わった。流石にまだルーレット一式を大工に出すのはちょっと無理が有る。求められる精度が高すぎる。


 ぽくぽくと一旦朱雀大路を中央まで出て、そのまま西に向かう。歓楽街の方に向かって進み、手続き後、温泉宿に進む。

 温泉宿に着くと、ちょっと大きな物ばかりなので、手が空いている使用人に出て来て貰って搬入の手伝いをしてもらう。量も有る。

 テーブル用の天板やルーレットの回転盤(ウィル)に関しては、私が『剛力』でそっと持ち運ぶ。特にウィルは歪むと大きな問題になるので大切に抱える。

 遊戯室に入ると中央の方に正体不明のコンクリートの台座を用意してもらっている。スマホの水平器で水平を確認し、極限まで表面を削ってもらった。これでも現代日本だと湿度とかで角度が付くので調整をしたりする。そこまでは不可能なので、一旦はこれで運用してみる。あまりに出目が片寄るようなら、ルーレットそのものを廃止しても良いかもしれない。

 テーブルも台座の高さに調整して作ってもらったので、台座に嵌めて天板を置き、ウィルを乗せると、それらしい、ルーレット台っぽくなった。雰囲気が一気にカジノっぽくなる。


 バガテルは壁際をカーテンで区切り、玉の供給と、外れ玉の回収を裏側で行うようにしている。何と言うか、昔の水洗トイレのタンクと給水器を彷彿とさせるが、まぁ、しょうがない。


 そんな用意をしていると、ブラックジャックなどの練習をしていたディーラーの卵達がわらわら集まってくる。大体男女半々で百人程だ。実際に稼働が始まれば二交代でやってもらう。もう少し人数が増えれば三交代でいけるようになる。そうなれば楽だが、まだ海の物とも山の物ともつかない扱いの遊戯室なので、人員を大量につけてくれる程、財務が甘く無い。良い事だけど、儲けが分かっているだけに、この子達が忙しいのは不憫だなとは思う。きっと温泉宿で一番忙しくなるのは間違い無く、こことエステサロンな気がする。


「領主様、なんなのですか、これは?」


 バガテルとルーレットを指さして聞いてくる。皆も同じように興味を持ったのかうんうん頷く。


「どっちから説明するか……。バガテルの方が単純か。んじゃ、手の空いている人間は集まって、あ、そこのカーテン開けて。動きを見えるようにしよう」


 そう言いながら、皆がバガテルの前に群がる。


「まず、この玉をお客様は買う。これが持ち玉になる」


 六センチメートル程の大きさの木の玉を見せる。


「この玉を、この右手の部分に入れて、棒を引っ張って、放す」


 板バネが圧縮し、手を放した瞬間、棒が玉を弾き、勢いよく、盤面の左上の弾きに当たり、中央付近に落ちてカンコンと音をたてながら下に落ちていく。最終的にはどこにも入らず、下の回収穴に入る。回収穴に入った玉は管を通って、背後の回収箱の方に流れていく。


「これがまず一連の流れ」


 そう言うと、皆が何が楽しいの?と言う顔をする。

 なので、そのまま玉を持って当たり穴に嵌める。


「何度か弾いていると、当たり穴に嵌まる。ここだね。でこうやって一列嵌まると……」


 カコンと小さな音を立てて玉が飲み込まれ、下側の配給口からごろごろと玉が出てくる。その動きを見て、皆が目を輝かせる。どうも玉が自動的に飲み込まれる動きが珍しくて楽しいようだ。


「で、上の当たり穴に嵌まると、下のここの板が開くでしょ。そうしたら、下の穴にも玉が入るようになる。下の穴に玉が揃うと……」


 実際に玉を嵌めて、呑み込ませる。すると、配給口からごろごろと先程とは比べ物にならない程の玉が出てくる。


「領主様、この玉は一個幾らでどの程度の数が出てくるんですか?」


 ディーラーの卵が聞いてくる。


「一個一万の台と、十万の台かな。出玉の調整は出来るけど、上の当たりで五十個、下の当りで三百個出てくるように取り敢えず調整している」


 三千万ワール……?ぼそぼそと後で驚愕の声が聞こえてくる。それぐらい当たらないと、貴族は遊んでくれないだろう。毛皮一枚に二千万以上出す人間だ。別に一個百万にしても良いけど射幸性が高すぎる。

 あぁ、このディーラーの卵達は元々商家の次男坊や娘さんがほとんどだ。客商売には慣れているし、計算も出来るのでディーラーとして雇っている。給料も高いし、『リザティア』で一旗揚げて新たな商売をとか野心を燃やしているようだけど、ここで住んでそんな事が思えるんだったら、逆にパートナーとして迎え入れたくなる。頑張って欲しい。


「皆はお客様が付いたら、手で穴に入れないように不正等を監視しながら、やり方をそれとなく教えてあげる事。練習はしていいから、力加減とかは自分で掴んでお客様に説明出来るようになって。ちなみに」


 先程の配給口から出たのを後の供給タンクの方に戻す。大当たり二回分くらいは入る。


 一発弾き、上部の当り口に入れて下の板を開かせる。もう一発弾き、逆サイドの板を開かせる。二発弾き、それぞれ下の穴に嵌める。上部の真ん中に嵌めて小役を成立させて、玉を出させる。再度上部の真ん中に嵌めて、下の真ん中の板を開かせる。もう一発弾いてかこかこと落ちていって、下の当り穴に嵌まる。その瞬間下の玉が飲み込まれドザーっと当たり分が排出される。


「慣れるとこんな感じになっちゃうから。お客様の動きを見て、あまりに上手いお客様の場合は別の遊戯か、飲みの方に誘導しちゃって。これも練習で何とかなる類の遊びだし」


 そう言うと、卵達が唖然とした顔でコクコクと頷く。


 正直、延々釘を打ちながら玉の動きを追い続けて居た為、大体の動きは読めるようになった。ここまでなるのに相当の練習が必要だったから、こんな客は来ないだろうけど、スキルが有る世界なので、何が起こるか分からない。念には念を入れておきたい。


「で、次はルーレット。こっちは定石は有るけど基本運の世界だから監視はそこまでしなくても良い。ただ、計算がややこしいから、そこはきちんと覚えて」


 役を書いた紙を皆に配る。ヨーロピアンスタイルを選んだのでちょっと役が多いが基本的にアメリカンスタイルと変わらない。配給率も良いから、客側も増えながら減りながらで遊べるだろう。


「一テーブルで処理出来るのは八人まで。八人分で種類も変わっているから。チップの置く場所それぞれが意味を持っているよ。お客様が指定した場所に指定された役のチップを置いて」


 紙に書かれた役に合わせて、実際に置いていく。5目がけ、フィナーレ等は無しにした。計算がややこしいのと見た目で分かり辛い。


「ここまでで質問は?」


 そう言うと、皆が首を横に振る。


「じゃあ、実際にタイミングを確認してもらう。ベルを1回鳴らしたら、賭けの開始。ベルを二回鳴らしたら賭けの終了。これ以降はお客様にチップを触らせない事。触った場合は不正扱いになるのは先に説明してあげて」


 席にテスターが八人並んだのを見て、ベルを一度鳴らす。銘々が役を見ながらディーラー役の二名に指示を出す。慣れてない二人は席の色を確認しながら、指定された役と金額をレイアウトの上に置いていく。少なくとも聞いている内容と違いは無い。優秀だ。ウィルを回転させて、玉を逆回転させる。


「この時点でまだ賭けるのは可能だよ。追加で賭けたいならもうちょっとの間だよ」


 そう言うと、数名が追加で賭ける。殆どの人間が2倍役か3倍役に一目がけというのがちょっと笑う。堅実に生きながらも狙えるチャンスは狙いたいと言う感じなのだろうか。でもそれだと、じりじり負けるだけなんだけどな。

 玉の勢いが徐々に弱まっているのを見て、ベルを二回鳴らす。

 カンコンとウィルに弾かれて飛びながら最終的に、赤の十九に落ちる。

 RED、ODD、2nd12、19to36に賭けていた人間は喜びをそれ以外は落胆を見せる。一目賭けの当りも無かった。ディーラーは紙を見ながら、一人がレイアウトの外れチップを回収しつつ、一人は当たりの配当を手渡していく。んー。慣れるまではディーラーが四人はいるかな。捌けるようになったら、減らしたら良い。回転盤(ウィル)は持ち込みしか無理だろう。思ったより平行は取れていたけどそのものの精度を出すにはこの世界の工業力だと甘すぎる。


 取り敢えず、回転盤(ウィル)の平行の状況を確認したいので、出目をメモするようにお願いして、一旦遊戯室から出る。出る際に振り返ると、皆懸命にバガテルとルーレットの動きを確認し、実務に落とし込んで指示し合っている。これなら、両方共遊戯対象として運用出来るかな。大丈夫そうな気配を感じて、安心しながら遊戯室を出る。次は競馬の方かな。人は増えそうなのかな。

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