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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第430話 モツ煮も食べたし、本格的に町開きの準備開始です

 目覚めると、薄暗い中だった。窓から差し込む薄い光を頼りに窓まで辿り着き開くと上がり始めた太陽の頭だけが見える。幾ら暖かくなってきたと言っても流石に何も着ないのは寒い。タライにお湯を生み、全身を拭い、部屋着に着替える。タロとヒメは珍しく、ヒメがタロの上でぽてっと乗っかっており、タロが寝苦しそうだ。夜は寒かったのかな。ヒメが庇う形になっているのは微笑ましい。

 リズは私が抜けて肌寒いのか、もぞもぞと布団の奥に潜り込んでいく。まだ、起きてはいないようなので、無意識の行動なのだろう。

 四月八日は晴れだけど、寒の戻りみたいだな。窓を閉めて、部屋着の乱れを直す。


 部屋を出て厨房に向かう。近付くにつれて、濃い味噌の匂いが香ってくる。


「おはよう」


「おはようございます」


 アレクトリアが迎えてくれる。


「煮込みの方は水を足しながら掻き混ぜ、焦げないようにしています」


「パンには少し合わないかもしれないけど、ショウガを刻んで出しておいて。好きな人間が、乗せて食べられるようにすれば良い」


「分かりました。あの……」


「アレクトリアも同席して。どう変わったかは確認したいでしょ?」


「はい!! あ、タロちゃんとヒメちゃんの朝ご飯ですよね。今朝は鳥の持ち込みでしたので、モツが中心ですが」


「あの子達、好きだから、気に入ると思うよ」


「はい。まだ未処理ですので」


「ありがとう」


 そう言って受け取り、部屋に戻る。タロを撫でて起こすと匂いに気付いたのかすちゃっとお座りする。上に乗っていたヒメがころりんと転がり何!?何!?みたいな顔をした後、ご飯に気付いたのかタロの横に何事も無かったようにすちゃっとお座りする。似た者同士で少しだけ可笑しい。待て良しで皿を差し出す。


 布団を剥ぐと、リズが寒いのかくるっと丸まり、パタパタと布団を探して腕を動かす。その頬に口付けて、耳元で囁く。


「リズ、おはよう。朝だよ」


 ふわっと瞳を開けると、にこっと微笑み、両腕を首にかけてくる。まだ少し寝ぼけているのか、現実か夢の区別がついていない感じだ。そのまま口付けて、頭を撫でながら前から背中をホールドして、上体を起こす。


「ふわ……。朝なの? おはよう、ヒロ」


「起きた?」


「もう、ずるい。くたくたになったのに、止めないし。人の言う事、少しは聞こうよ」


「はい、はい。お湯、用意したから、流しちゃおう。私のお姫様」


 そう言いながら、右腕を掴み引き、立ち上がるのを手伝う。


 リズが新しい、下着と普段着を用意する。


「お風呂の方が良かったかな」


「大袈裟だから、大丈夫。でも、少し寒いね」


「最近暖かくなっていたからね。今朝は寒い。風邪には気を付けて」


「ん。ありがとう」


 暖炉に火を入れようか迷っていると、リズが体を清め終わったのか、タライのお湯を窓の外に捨てる。


「うわぁ……本当。寒い」


 タロとヒメに水を生み、リズの髪をブローする。


「ほら、風邪、ひいちゃう」


 くすぐったそうにするリズの髪を乾かしていく。ブラシで梳かすと本当にさらさらと流れていく。


「ん。気持ち良い」


 リズが目を瞑り、ソファーに座って大人しく、梳かされるままになる。


「はい。終わり。乾いていないところは無い?」


 そう言うと、リズが髪全体を確認し、にこっと笑う。朝の準備はOKと。昨日読んでいた本の件など聞いていたら、侍女が朝ご飯を告げてきた。


 食堂で席に着くと、モツ煮とサラダ、パンが出される。ショウガは好きに入れて良いと伝えている。

 後、ドルに竹の小さな筒を渡す。


「なんだこれは?」


「栓が付いているでしょう。中身はトウガラシ。かけ過ぎないようにね」


「ほぉ……。楽しみだ……」


 ドルが男臭い笑みを浮かべる。そこまで好きか、トウガラシ。


 匙でモツを掬い、口に入れる。モニュモニュとした食感から、噛む度に脂と味噌の濃厚なうまみが溢れてくる。トンコツ出汁そのものがベースに有るので、イノシシに合わない訳は無いと思っていたが予想以上だ。昨日の牡丹鍋も美味しかったが、こう言う下品な料理も嫌いじゃ無い。下拵えもきちんとしてくれたのか、臭みも味噌で消しきれている。美味しい。


 他の皆も、モツがこんな料理に化けると思っていなかったのか、夢中で頬張っている。ドルだけ、地獄のように真っ赤な何かになっていたけど、一瓶使っていないよね?結構な量が入るよ、あれ。


「深いです……。どうしてもモツは臭みが出ますが、丁寧な下処理と味噌がここまで効果を発揮しますか……」


 アレクトリアの呆然とした顔が印象的な朝食だった。

 パンのおかわりが続出して、どうも使用人のパンまで食べてしまったようだ。後で買いに行くらしい。申し訳無い話だ。


 と言う訳で、また絶賛トド化している。まだ朝だと言うのに……。


「皆は今日も訓練?」


「そのつもり」


 リズが頷く。それぞれの長所を伸ばす形で訓練は進めている。リズ、ドル、リナは鈍器を、フィアは片手剣を、ロット、ティアナは短剣を、チャットは自習、そしてロッサはクロスボウだ。


「ロッサ。申し訳無いけど、クロスボウの使い方に関して、書面に残してもらえるかな。扱う時の注意点とか、どうやって敵をねらっているかとか。使用人に告げるだけで良いから」


 そろそろマニュアル化しても良いだろう。


「分かりました」


 さて、朝の行動の始まりだ。私は取り敢えず、バガテルを温泉宿の遊戯室に置いて、何台くらい並べるか決めないと。さてさて、町開きまで忙しくなりそうだ。

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