表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
427/810

第424話 初めてのミソスープ

 甕から、アルコール消毒したお玉で軽く掬い、小さな甕に移す。厨房に向かい、アレクトリアを探す。


「おーい。アレクトリア、いるー?」


「あ、男爵様。どうされました?」


 洗い場の方から、ひょこっと顔を出す。洗い物をしていたらしい。


「新しい調味料を手に入れたけど、試す?」


 そう言った瞬間、瞬間移動のように目の前にたーっと走ってくる。


「調味料と……今、そう言われましたね? どのようなものですか。お持ちなんですか? さぁ、早く出して下さい」


「ちょ、まっ……アレクトリア、キャラ変わっている。そんな所に入っていないから。出す、出すから」


 危うくパンツの紐まで引っ張られるところだった。誰が股間に味噌なんて入れるか……。もう、この子怖い……。

 背後に隠していた小さな甕を差し出す。

 アレクトリアが蓋を開けて、匂いを嗅ぐ。


「発酵系の調味料ですか? その割には刺激臭は少ないですね。植物系……マメ科の甘い香りがします」


 凄いなこの子。匂いでそこまで分かるか。洗い物をしていた為か、甕に直接小指を入れて、少量を掻き出す。少し眉根に皺を寄せて、ペロと舐めて舌を回す。


「やはり、豆系……。でも、何でしょうこれ……。元が分からないですが。それを発酵させたものですか……。でも発酵したにしては変質が行き過ぎている気もします。それにこの塩含めてのうまみは海水塩ですか……。熟成に時間がかかる筈なのに、いつの間にこのようなものを?」


「内緒」


「男爵様はずるいです……。こんな面白そうな物を……」


「塩漬けにしていたワカメって有る?」


「はい。風通しの良い冷暗所で保管しています」


 そう言って、アレクトリアが竈の逆方向の棚の方に向かう。甕を開けると緑のワカメさんがちょっと萎びて細くなった状態で塩漬け保管されている。上がってくる匂いも磯の匂いだけだ。水分は乾燥させてそこそこ抜いたので、腐敗は大丈夫だろう。


「ネギ用意してもらえるかな。後、小さな鍋を」


「はい」


 アレクトリアが動いている間に、ワカメをボウルに取り出し、水を生み、塩を洗い流す。再度水を生み、少し浸けておく。浸透した塩気を抜くのと、膨らませる為だ。あまり浸けていると歯応えが無くなって美味しく無い。

 鍋を取り敢えず貸してもらえたので、乾燥昆布を敷いて、汁茶碗二杯分強の水を生み、火にかける。


「何と言うか、材料少ないですね」


「試作品の味見に豪勢な材料いらないでしょ」


 竈にかけた鍋に沸々と小さな泡が立ち始める。急いで洗ったネギを刻み、ワカメを刻む。あまり細かく切っても歯応えが無いので、適当にちょっと大きめくらいが目安だ。


 沸々が大きくなったくらいで、昆布を引き上げてワカメを投入する。鮮やかな緑色になった瞬間に大匙一杯程度の味噌を入れて丁寧に溶く。ふんわりと味噌の香りが周囲に漂い出す。


「ん。香りは良いですね。発酵系の食品が苦手な人間でも大丈夫そうな香りです」


 アレクトリアがくんくんと香りを嗅ぐ。


 沸々と再度沸騰してきたところで、ネギを投入し、完全に沸騰する直前に、鍋を上げる。


「火の始末、よろしく」


 そう言いながら、土魔術で汁茶碗を二個用意する。お玉で注いで、アレクトリアの前に差し出す。すると、胸元から箸箱を取り出してマイ箸を持ち出す。頼み込まれたから持ち方を教えた。どうも、菜箸が便利だったらしく、どうしても使いたかったようだ。


「では、味見をしようか」


 一口含む。量産品の味噌のような味では無いが、面白い味になったとは感じる。何と言うか自家製味噌を作り続ける人の気持ちが良く分かる。大豆由来のほのかな甘みと発酵した味噌の香りが鼻を抜ける。後から昆布の優しい出汁の味が残って抜けていく。うん、自家製味噌にしては美味しい。ワカメもしゃきりとした歯応えを残しつつ、海藻由来のうま味を残す。最後にネギのさっぱり感を感じる。うん、味噌汁だ。


 アレクトリアの方を見ると、物凄い難しい顔をしている。


「何ですかこれは……。調味料を入れただけのスープ、しかも具材もこれだけ、作る時間もあれだけなのに、この完成度ですか……。ほのかな甘さに美味しさ。どこかほっとさせるこの香り……。男爵様、これ、ずるいです!!」


「何がずるいの……」


「調味料だけで、スープが出来たら、料理人いりません!!」


「いや、バランスとか結構重要だからね。具材はどう?」


「ワカメでしたか。これも美味しいです。歯応えが気持ち良いのと、少しぬめっとした感触が官能的です。ネギの香りも良いです。合います」


「と言う事は、成功?」


「むー。調理人泣かせですが、良い調味料だと思います」


「んじゃさ、今日、イノシシ狩れたでしょ。あれの骨で出汁を取って……」


 今晩の夕ご飯のレシピをアレクトリアに説明していく。


「むー。なんだか、聞くだけで美味しそうです……。はぁぁ、味見だけで我慢します。用意はしておきますね」


「悪いけど、よろしくお願い」


 そう言って、飲み終わった汁茶碗をアレクトリアに渡す。毎回適当に作っているが、どうもそれを基礎にして、色々食器類を製作して行っているようだ。汁茶碗もあのサイズで木彫りの物が何個も出来るのだろう。


 さて、次はデパートに行って、商工会に顔を出して、大工と言うか、ネスに頼んで釘の製作依頼かな。あぁ、真球用の井戸の調子合わせと組み込みをお願いしないといけないか。

 午後からは忙しくなりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、感想、評価を頂きまして、ありがとうございます。孤独な作品作成の中で皆様の思いが指針となり、モチベーション維持となっております。これからも末永いお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます。 twitterでつぶやいて下さる方もいらっしゃるのでアカウント(@n0885dc)を作りました。もしよろしければそちらでもコンタクトして下さい。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ