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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第422話 現代日本に暫しの別れと、やっとリズとの寝床

 明けて月曜からは、もう必死だった。仕事が分からない。と言うか、分かるけど忘れている物は忘れている。TODOを必死に漁りながら、各所と連絡を取りつつ、何とか凌ぐ。昼休みにはもうぐったりと垂れながらコンビニ弁当を頬張る。午後も必死で色々思い出しながら、こなしていくが、何故か丁寧な仕事だと言う事で妙に評価が高いのが謎だ。TODO細かく作ったのが功を奏したのか?終業間際に次の日のTODOをまとめ、そのままディーラースクールに向かう。

 学生や社会人に混じり、授業を受けるのだが、結構座学も多く、歴史や背景なども説明してくれて面白い。休み時間は、一緒に受けている人達と一緒に話したりもするがこれが、中々凄い人が多い。何と言うか、学生さんはそのままディーラーとして海外で食べていきたいらしいし、社会人の人は延々ホストをやっていて真面目な仕事ととしてディーラーを選んだらしい。いや、真面目な仕事なのかと心の中で忙しくツッコミを入れながら、会話を展開していく。


 現代日本の生活はもう、これの繰り返しだ。クリスマスになり、正月も明けたが、生活に変化はない。津川、藤川、安藤からは、偶に進捗の連絡が入る。まだまだ始まったばかりと言う事で材料に関する要件の調整とかが主だ。


 私は延々仕事とディーラースクールが終わると、味噌がどうなっているか気になりながら、農作業の本を読む毎日だ。味噌の作り方は、帰ってから量を増やした時に詳しく追っていくつもりだが、麹ってあんな増え方するんだ……。


 後、クリスマスと、正月はあまりに寂しくてリズの元に戻った。相手側からすれば、いきなりメリークリスマスと呟いたかと思えば、あけましておめでとうと呟く変な人だろう。寝ていたから良いや。ふにゃっとした顔を見ていると、頑張ろうって気力が湧いてくる。


 一か月ほどが経過し、津川から頻繁に連絡が来るようになった。機構の部分が完成したのと、釘の打ち方の指導がしたいと言う話だった。土日は講義を調整出来るので、日程を決めて工房に向かう。元々スマートボールの開発や初期のパチンコの釘師をやっていた人なので、工房自体も自分で所有している。東京なのになんでこんなに大きな土地を持っているのかと聞いたら、相続だったらしい。金持ちさんなのかな。


「役としては、この色が着いた穴、それぞれに玉が入れば留め金が外れて中に落ち込む。その際に、役に合わせた玉が下から皿に排出される」


 津川が色付きの穴に玉を嵌める。最後の一つを嵌めるとかつんと言う音と共に、玉が飲み込まれて、下からコロコロと玉が皿に転がり出てくる。


「上の方のは釘の調整次第だが甘めの設定だ。早い段階でここに嵌まっちまう感じだな。見せ玉だ。実際は、ここを潜り抜けて、下の穴を目指さないと大きい役にはならない」


「これ、嵌まっている穴に玉が行った場合はどうなるんですか?」


「あぁ、ほれこんな感じで弾かれて、下に落ちる。上を揃えつつ、下に送り込むのも攻略法だな」


 そう言って津川が玉を上から落とすと嵌まっている玉に弾かれて下に落ちていく。


「で、こことここの釘。こいつが肝だ。玉が跳ねてこう落ちてきた場合、このルートかこのルートがほぼになる。それを弾くのがこの釘だ。あまりに嵌まらないと客も飽きるんでな。三対七辺りの割合で嵌まらすくらいで良い。難しいと感じながらも狙いたいと思う割合だ。その割合を上手く出すにはこの釘が命になる。ミリ以下の狂いで玉の動きは変わるからな。見て覚えろ」


 玉の動きを見ながら、この辺りだろうと言う当たりを付けながら釘の位置を確認していく。見ていると確かにミリよりもズレただけで動きが大きく変わる。


「これ、一発勝負なのに、難しいですね……」


「慣れの問題だからな。その辺の木端に上釘は打ってやるから、試して体で覚えろ」


 そう言って、延々釘打ちをさせられる。一か月も続けると手でミリ以下の感覚が掴めたんだから人間って大したものだなとは思った。


「筋は良いな。昔なら良い釘師になったかもしれんが。今となっては仕事も無いしな」


 そう言いながら、津川がからからと笑う。


「機構と設計図、型、それに釘の打ち方。望みの物は揃ったか?」


「はい。大丈夫です」


「んじゃ、梱包して送るわ。分解は可能にしているが、天板部分はどうしようもない。デカいが、ドア抜けるか?」


「横にするんで大丈夫です。本当にありがとうございました」


 津川と握手を交わし、御礼を言い、辞去する。


 藤川、安藤達からもサンプルと型紙、それにマネキンの設計図と出来合い十体、組み立て前の素体を一体提供してもらった。これに関しては、球体関節の鋳型を作る為の物と言う事なので、良く見てくれている。結局追加で三百万程支払っておいた。また御贔屓にと言われたが、機会が有れば頼もう。


 嵩張る物は、領主館の個人用の倉庫にどんどん仕舞っていっている。後は津川のバガテルが来たら、荷物の移送は終了かな。種籾や麹も移送済みだ。


 仕事を続け、ディーラースクールに通いながら、味噌を作り、農業書を読む毎日を送っていたが、遂にディーラースクールの卒業となった。もう、桜も蕾になっている。誕生日は迎えたがどっちにしても年齢不詳なので、このままで良いかと思う事にした。


 卒業生の打ち上げに参加し、それぞれの門出を祝いながら、家路についた。


 ちょくちょく帰っては寝顔を覗いていたが、やっとリズの元に戻れる。やっと熟成した自家製味噌と農業書を選択し、向こうの世界に移動する。自家製味噌を入れていたプラスチック樽と蓋は木製に変更された。蓋を開けて中の匂いを嗅いでみたが、こっちに変化は無い。それにはほっとした。農業書は物凄い分厚い紙の束になったし、手書きっぽい状況になっている。やっぱり凝っているな……。


 ちなみに、服やバガテルに関しては、ほぼ変わった点は無い。その辺りは要望通り作ってくれたのだから、三人が凄いと言う話だ。


 長かったが、思い直すとあっと言う間の四か月だった。リズにとっては、十分にも満たない出来事なんだろうな。そう考えると、少しおかしくなってきた。

 お味噌だけ、倉庫でも冷暗所に置いて、そのまま布団に潜りこむ。愛おしいリズの寝顔を見ながら、久々に抱きしめて、目を瞑る。安心感に意識が蕩かされて、ふわっと眠りについた。

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