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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第392話 海老ガラの出汁も好きですし、サヨリと言えばあれですね

 暫く貝を獲っていると、キラキラした目をした子供達が集結してくる。その手には溢れそうな程の貝が詰まった桶が握られている。


「おぢさん、お母さんが良いって。狼見て良い?」


 お母さん方の方を見ると、苦笑しながら頷かれる。

 タロとヒメも大変かもしれないな、これだけの相手だと。そう思いながら、馬車に戻り、二匹を抱えて、砂浜に向かう。タロは慣れているので、何とも無いがヒメが空気の匂いに違和感を感じているようだ。


『ぱぱ、へんなにおい』


『海だからだよ。大きな池みたいな物だよ』


『みず、たくさん?』


『飲んだら駄目だよ』


 そんな事を『馴致』でやり取りしながら、子供達の元に戻る。


「うわー!!狼、増えてる。大きい!!」


 いぢめるの少年がタロを抱き上げようとするが、タロも大きくなっているので、簡単には抱き上がらない。お互いに支え合う感じで、立ち上がる。タロがその顔をペロペロと舐める。


「あは、くすぐったい。やっぱりふさふさしてる。可愛い!!」


 いぢめるの少年を遠巻きにしていた子供達も危険が無いのを分かったのか、徐々に近づいてくる。


『にんぎょ、うまー!!』


 タロは相変わらずだった。ヒメは近付いてきた人魚の子供をクンクンと嗅いで接近する。女の子が撫でると、大人しく伏せて撫でやすい高さに調節する。口元に手を出されると、ペロペロと舐める。


「うわ、舐めた。お母さーん。舐められた。可愛いのー」


 人魚の女の子が嬉しそうにお母さんに報告に行く。


『ぱぱ、おいしい』


 うーん。このままだと二匹共塩分過多になるかもだな。また水を多めに飲ませておしっこで塩分出させないと。

 そう思っていると、興味を惹かれたのか周辺の子供達が急いで桶をいっぱいにして続々と集まりだす。最初にこちらに来た時は数名って程度だったが、今となっては二十名程度どころではない。わらわらと教室一杯分くらいの子供が押し寄せてくる。あまりタロやヒメを刺激しないように、遊ぶ時は一対一で遊んでねと告げると、はーいと言う元気な声が返る。

 骨の玩具は持ってきたので、子供に手渡す。ハテナマークが浮かんでいたが、私がぽいっと玩具を投げると、タロとヒメが競い合って取りに行く。先に取ったヒメが咥えて誇らしげに戻ってきて眼前に落とす。しっぽを振りながらもっとと言う感じで二匹が待つ。この姿を見た子供達は、夢中で骨の玩具を投げる。でも喧嘩はせずに、幼い子順に並んでいるのは偉いなとは思う。タロは兎も角、ヒメには人魚さんに悪さをしないように伝えたが、相手が人間と認識しているのか素直に言う事を聞いている。その辺りを安心しながら、料理の下拵えに戻る。


 女性陣は子供達が可愛くてしょうがないらしく、抱き上げてはすりすりしている。選り取り見取りなのでもう取っ替え引っ替え抱擁している。子供達もキャッキャと言いながら喜んでいるので良いのかな?


 焚火の準備が終わった男性陣には釣竿を渡すと、釣りに出かけた。川釣りの経験は有るので、特に何も教えなくても大丈夫そうなので、そのまま見送った。偶にはのんびり釣りに興じるのも良いかと思う。ロットは結構『警戒』で張り詰めている時間が長いので、ゆっくりして欲しい。


 私はその間に貝を種類別に分けて、綺麗な海水でざりざりと表面の汚れを落とし、五十度程度のお湯に浸けて再度ざりざり洗う。暫く放っておくと、管を出して一所懸命砂を吐き出し始める。これで十五分程置けば砂抜きは大丈夫だろう。ハマグリ、マテガイも同じように処理していく。この辺りは海鮮焼きと、ワイン蒸しにしてしまおうか。ネスに秘密兵器も作ってもらったし。


 潮干狩りをしていた時間が結構長かった所為か、続々と人魚さん達が獲れた獲物を片手に砂浜を上がってくる。

 網の中を見ると、ボタンエビっぽいのやヤリイカっぽいのに混じってサヨリっぽい魚も混じっている。


「毒の有るものは除いています。基本的に生で食べても大丈夫な物ばかりです」


 そう考えると、人魚さん、魚介を生で食べている。前に神様に言われたけど、寄生虫も貝毒もそこまで酷い物では無いのかもしれない。同じ人間だし。ただ、慣れの部分も有るかも知れないので、一概には言えないけど。


 漁を終えた人魚さんに合わせるかのようにリズとロッサも戻ってきた。川の方の茂みを漁ったのか、髪の毛に枯れ葉などが絡まっている。


「孵っているのも多かったけど、この辺りはまだ卵の筈だよ」


 見ると、二十個ほどの卵を袋に入れて持って帰ってくれた。ロッサの方は、紐で縛った鳥の捌いたのを背負っている。


「ごめん。大変だったみたい。ありがとう」


「ううん。大丈夫。モツはこっちの袋に入っているから、後でタロとヒメにあげようね」


 リズとロッサがにこやかに笑う。頑張ってくれた二人の頭をそっと撫でて感謝の意を表す。


 子供達と一緒に遊んでいた女性陣にもサヨリの下拵えをお願いする。正直、この数のサヨリを一人で捌くのは無理だ。リズに鱗を落としてもらい、フィアに頭を落として肛門から内臓を抜いてもらう。この時、頭側に肉が多めに詰まっているので、真っ直ぐ落とすんじゃ無くて、斜めに落とすのがポイントだ。開いた時も綺麗な形になるし。その後はティアナに内臓の黒い膜をざりざりと掻き出し、尻びれを落としてもらう。ここまで行けば、中骨を落として、腹骨を削ぐ工程なので私が担当する。ここからはちょっと難しい。背骨の際をがりがりと感じながら包丁を通し、逆サイドで同じようにがりがりと通して背骨を落とす。後は腹の方を削いで、下拵え完了となる。新鮮な海水で洗って、氷を下に敷いた石の箱に一枚一枚綺麗に並べる。冷蔵庫代わりに作ってみたが結構便利だ。

 もう、何かに取付かれたようにサヨリの下拵えを済ませて行く。人数が人数なので、かなりの数を用意しないといけない。途中でロッサがティアナの作業を覚えたので交代してもらい、私とティアナで骨を落とす作業を繰り返す。ティアナも始めはかなり肉を削いでいたが、何枚かやっていると慣れたのかそこそこ綺麗に処理が出来るようになった。リナは海水を入れ替えたりと結構ばたばた走り回ってもらっている。途中で洗う作業が面倒なのでチャットに任せた。もう総動員体制でサヨリを捌いていく。

 百や二百じゃない量を捌き、やっと終わる。このまま刺身で食べたいけど、醤油が無いので諦める。塩で食べても良いけどちょっと物足りない。


 次に大量のボタンエビの皮むき作業に移る。これに関しては人魚さんも出来るので一緒にむじりむじりと頭を落としてぺりぺりと殻を剥いでいく。剥いだ殻と頭は鍋に投げ込んでもらう。これはこれでまた後で役に立つ。むき身は背中から開いて内臓を掻き出して、サヨリと同じように冷やして保管する。


 ヤリイカもそこそこの数が有ったので、皮を剥いで、輪切りにしていく。げその方は適当な大きさに切ってこれも冷蔵保管にする。しかし、土魔術と水魔術の習熟度上げていて良かった。超便利だ、これ。


 他の材料達も下拵えをしていくが、十匹程どう見てもアマダイがいた。こいつらは開きにして濃い目の塩水につける。一夜干しにして食べる。何が有ってもこれだけは譲れない。明日の朝ご飯はグジの一夜干しだ。


 作業が佳境になった辺りで男性陣が帰ってくる。案の定、坊主だったが、そのお詫びと言う訳では無いが、野草類を採取してきてくれた。見るとツクシやヨモギ、クレソン等も見える。この辺りも一緒に料理しちゃうか。


 ボタンエビの処理が終わったので、頭と殻の入った鍋に水を生んで火にかける。こっちには、雑魚と葉野菜を入れてスープにしたら良いだろう。これの煮込みが見えてきたら調理開始かな?時計を見るとそろそろ正午に近い。


 昼はそれぞれで取る旨は村長には伝えているが、食べていると予定より遅くなりそうなので、カビアに遅くなる旨だけ村長に伝えてもらう。


 さぁてと、ここからが本番だ。まだ、食べた事の無い物を食べてもらおう。

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