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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第389話 塩作りの準備は終わっているのと、木材の補給について

 村に近付くと、衛兵がこちらに向かってくる。草が結界を張っているので、一定以上接近した場合は通知が行く。それに反応したのだろう。


 レイに指示して、馬車を緩やかに停める。敵対の意思は示さず、向こう側の指示に従う。


「領主様ですか?」


「はい。初めまして。視察でやって来ました。連絡はまだつけられないので生身での訪問です。夕方の忙しい時間帯で恐縮ですが、対応してもらえますか?」


「いえ。こちらこそ初めまして。ロスティー公爵閣下とノーウェ子爵様の指示が出ている為、厳重になっておりますが、領主様とお仲間に関しては通行許可が出ております。馬車もそうですし、冒険者カードの内容も本物です。どうぞお通り下さい」


 全員分のカードを提示し、信用は得た。レイは軍除籍の際のカードを、カビアは家宰(かさい)として私が証明する形で村に入る。

 馬車をゆったりと進めるが、塩の製造工場と塩田に関しては、大きく木壁で覆っている。居住場所としての村に関しては木の柵で囲っている。その中でもひときわ大きな屋敷に向かう。村長宅兼行政の設備として建てた筈だ。各家からは炊事の煙が上がっている。夕飯は昼に狩った鹿が残っているので、そちらで済ますかな。そう思いながら、村長宅の駐車場に馬車を停めて、屋敷に向かう。扉を叩くと執事らしき人間が出てくる。こちらの素性を話すと、にこやかに誘導してくれて、応接間に通される。他の皆に関しては邪魔になるので、村の外の野営場所で野営の準備を進めてもらう。唐突に来て、宿から何まで用意せよなんて横暴は出来ない。出来るけどやる気も無い。


「おぉ、男爵様。お久しぶりです!!」


 出された、少しスパイシーで南国情緒溢れるハーブティーを楽しみながらカビアと話をしていると、初めての視察の時にペルスの補助に就いていた政務団の人間が姿を現す。


「ご無沙汰しています。黙々と準備を進めてもらっているようで助かっています。今回は視察と出来れば製塩の技術供与まで行えればと考えています」


 そう言うと、海の村の村長は涙を流さんばかりに破顔する。


「そのようなお言葉、勿体無く思います。塩田でしたか? そちらの準備は順調に進んでおります。人魚の方々の協力も得られましたので、村の設営も順調そのものです。食料に苦労しないのは本当に助かります」


(かまど)と釜の準備は出来ていますか?」


「はい。薪も規定量を超えて持ち込んで頂いております。揚げ浜式の塩田は二層分の稼働は開始しておりますし、流下式ですか? そちらもお話し頂いた竹を並べて日々濃縮させております。後は領主様が仰っていた釜で炊くと言う工程になるかと思います」


 おぉ。思ったより、進んでいる。流石に流下式までやっていると、一週間くらいの滞在が必要かと思って若干冷や冷やしたが、炊くだけならそう時間はかからない。ここにいる間に第一号は完成出来そうな気もする。


「では、明日設備を視察した上で実際に炊く作業に入りますか。周辺の木々の伐採状況は如何ですか?」


「はい。ロスティー公爵閣下とノーウェ子爵様より樵は送られてきておりますので、徐々に薪は生産出来ると考えております。人魚の方々の家の建材も有りますので、調整しながらですが半年後辺りからは薪も含めて自給自足が可能です」


 木々を輸送するのは結構無駄なので、それがこっちの村で自給出来るのはありがたい。後は小麦等の食料をこちらに送り、帰りの馬車で塩を持ち帰る流れかな。


「植物を司る神の手が入っておりますので、気付けば伐採した筈の木々が増えており、驚きました。実際に見るのは初めてでしたので。そう言う意味では枯渇の心配も無くこのまま進められます」


 村長が嬉しそうに話す。


「あぁ、ヤシの件と良い、この辺りは手が入ってそうですね。住民の方は健やかに過ごしていますか? 慣れない環境かと思いますが」


「はい。気候が良いので、皆健康そのものですよ。魚料理にも慣れましたし、食料に不自由しないと言うのは本当にありがたいです。後不満が有るとすれば……」


「有るとすれば?」


「婚約の腕輪を大量に欲しい感じでしょうか」


 椅子からずるっと滑る。おーい。人魚さん、がっつき過ぎじゃないですか?男性陣の方か?仲良くやっているようで良かったけど、なんだかなぁな感じだ。


「その辺りは欲しい物として上げて下さい。当人達にとっては大切な物でしょうし。では、夕ご飯のお時間でしょうし、また明日の朝にでもお邪魔します。お時間貰ってありがとうございました」


「いえ。お構いもせず。夕ご飯は如何(いかが)致しますか? 少しお時間を頂ければ用意致しますが」


「あぁ、気にしなくて大丈夫です。元々もう一回夜営と言う予定で進めていましたから。では、明日はよろしくお願いします」


「はい。お待ちしております」


 村長と握手を交わし、屋敷を辞去する。村の設計もそうだが、実際に出来てみるとやはりイメージとはだいぶ違う。夕闇に赤く染まった塩田を遠く眺めながら、野営場所に戻る。人魚さんに会いたいと言うのも有ったが、まぁ、明日以降会える機会は幾らでも有る。


 現場では、既に夕ご飯の用意が手早く進められている。携帯食と鹿肉の串焼きと燻製肉と葉野菜のスープが夕ご飯となった。


 お風呂も手早く済ませて、テントに潜り込む。


「村の様子はどうだったの?」


 リズが布団の中で聞いてくる。


「思った以上に建造は進んでいたし、塩の生産も始められそう。予想より早めに帰る事が出来そうかな」


「そっかぁ。温かいからのんびりしたい気もするけど、忙しいものね」


「襲撃の件も有るから。早めに帰った方が良いかなって。まぁ、ゆっくり出来る時はゆっくりしたら良いよ」


 優しく頭を撫でていると、リズがゆったりと眠り始める。それに誘われるように私も意識を徐々に失う。


 微かに聞こえる潮騒の音と潮風が海に来た事を強く感じさせる。あぁ、人魚さんに会えるのは明日かなぁ……。

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