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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第384話 タケノコの刺身とお爺ちゃん、ご飯はさっき食べたでしょ的なボケ

 二匹が凱旋を果たし皆に戦果を伝えると、我が事のように喜び、ちやほやする。二匹も気心が知れている相手に撫でまわされるのに興奮してしっぽを振り続けている。


『まま、なでられるの!!』


『ぱぱ、うれしい』


 狩りをして戦果が有ったら喜ばれると言うのを感じたら、また狩りをしようと思うだろうし、これも飴なのかな?そう思いながら、二匹を撫でる。

 二匹はそのまま預けて、料理をしているチャットとティアナの様子を見に行くと、昼に狩った鶏をソテーしてる。皮を別にカリカリにして油を出して、その油で揚げるように焼いている。レシピは伝えたので、その応用だろう。皮は皮で細かく切ってサラダに振りかけるだけでボリュームが出る。


「もう少しかかるわよ。散歩の方はもう終わったのかしら?」


 ティアナが熱した油をお玉でかけながら、言う。


「うん。二匹が初めて狩りを成功させたから。今日の分はもう良いかなって。後、ウサギ一匹を分けて食べたみたいだから、夕ご飯は抜きにしようかなって。1日分で考えるとちょっと多くなっちゃった」


「分かったわ。捌いた鳥はそのままだし、モツは明日でもまだ大丈夫でしょう。朝、食べさせてあげて」


 そう言うティアナに手を振り、テントに戻る。

 テントではリズが何か、書き物をしている。


「あれ? リズ、どうしたの?」


「うん。色々カビアに聞いたでしょ? 忘れない内にメモしておこうかなって。書いたら覚えるし」


「頑張り屋さんだね」


「ヒロに恥をかかせたくないし」


 リズがメモをしながら、嬉しい事を言ってくれる。


「ありがとう。でもあまり根を詰めると体に悪いよ。程々にね」


「うん。そろそろ暗くなるから、もうお終い。ふぅ。今日の分はまとめられたよ」


 そう言いながら、にこりと微笑むので、そっと体を引き寄せて、後ろから抱きしめる。


「お疲れ様。私の為って言ってくれるのは嬉しいけど、無理は駄目だよ。リズは、リズのままで十分だよ」


「ん。ありがとう。でも、甘やかし過ぎるのも駄目だよ。私もヒロの足は引っ張りたくないから。だから、頑張らないと駄目な事は頑張るよ」


「そっかぁ。嬉しい。まぁ、程々にね」


 そう言って、リズを掻き抱く。愛しさと嬉しさが吹きだして、少し制御出来ない。


「ヒーロー? 外では無しだよ?」


 リズが身も蓋も無い事を言うので、ちょっと台無しだ。でも、私の奥様はそれを含めても、私には勿体無いくらいだ。

 そうこうしていると、チャットが夕ご飯の用意が出来た旨を伝えてくる。


 焚火の周りに集まり、今日一日のまとめを挨拶すると、食事が始まる。ティアナが調理しただけあって、火の通りも問題無いし、味付けもきっちりしている。ただ、少々油で流れる分の塩胡椒が薄かったかなと感じる。流れた肉汁と脂でソースを作ると言うのも手かなと思うけど、そこまで考えての調理はまだ無理かな。もう少し自分の料理を誰かに食べさせたい、美味しい物を食べて欲しいって動機でも生まれれば一皮剥けそうな気もする。それがカビアになるのかな。領主館だと食事も出ちゃうから、その辺りの意識が希薄になっちゃうんだよね。それは少し問題かな。


 そんな事を思いながら、食事を終えて、樽風呂の準備をする。流石に春と言っても晩は冷え込む。もう四月も近いと言うのに。でも、徐々に南に行くにつれて気温は上がっている気はする。

 お湯を生んで、女性陣から順番に浸かってもらう。ちなみに、モチモチ肌は皆まだ続いているようで、かなり評判は良い。昆布の入荷をしないと渡した分だけだとすぐに足りなくなりそうな気もする。


 男性陣含めて、浸かり終わった後にタロとヒメをタライに浸ける。でも不思議そうな顔で見上げられる。


『まま、たべるのは?』


『ぱぱ、しょくじ……』


 狼は食べた分を溜め込めるので、量を食べられる。でも、成長期と言っても定期的に食事は与えているので必要以上に与えると、太る。


『ウサギ、食べたでしょ』


『たべた!!』


 二匹がキャンとウォンと高めの鳴き声で答える。納得がいったのか、タライでぷかぷか浮く。もう、昔、家の犬も食事をあげた後に皿を隠して食べて無いよってやってた。あのノリなのかな。ふにゅふにゅと揉んでスヤァさせていく。眠ったタロとヒメを抱えて、テントに戻る。リズは気を遣い過ぎて疲れたのか、もう半分うとうとしている。


「もう、寝たら。危ないよ」


「ふにゃ? 寝ないよ? 寝ないよ」


 寝ないよと言っている傍から、寝そうだ。宥めて、布団に潜りこませる。


「ごめんね……。まだ、仕事しているのに」


「気にしなくて良いよ。ゆっくりお休み」


 頭を撫でて、最後に樽風呂に浸かる。移動そのものは順調だ。ただ、空の調子が怪しい。明日は雨を覚悟しないと駄目かなって感じだ。後はタロとヒメが狩りが出来るようになったのは大きな前進だ。このままきちんと狩りが出来るなら、二匹でも生きていける。野生に戻す事は出来ないけど、もしもの時に全然生活が出来ないのは困るので、そう言う意味では安心した。後はやっぱりリズの頑張り過ぎがちょっと出始めている。あの子も加減が下手くそなので、ちょっと危ない。気を付けるようにしよう。


 そんな事を考えながら、程々に温もったので、上がる。後始末をして、テントに戻り、リズの隣に潜り込む。さて、明日はタケノコかな。『探知』が有るから、小さいのを探すのは大丈夫だろう。アラームをいつもよりかなり早めにセットして目を瞑る。湿っぽい風がテントを渡るのを感じながら、ゆっくりと意識を失っていった。


 アラームのバイブを感じて、目を覚ます。テントの入り口を開けるとむっと感じる程の湿気と共に、細い雨を感じる。本当に霧雨って感じだけど、レイは濡れるな……。湯たんぽ抱えてもらって体温を下げないように調整してもらおう……。三月二十四日は若干の雨。でもこの程度だと先に進んだ方が良いだろう。周りは真っ暗で焚火に照らされた空間だけがほのかに赤黄色く明るい。


「おはよう。雨はいつ頃からかな?」


「おはようございます、リーダー。早いですね。雨は、私の番からです。降り始めたのは一時間程前でしょうか」


 と言う事は本当にさっきなのかな。夜番のロットはマントを頭から被って濡れないようにしている。薪を湿らして焚火を消してしまう程の勢いは無いので、そのまま焚火を維持しているようだ。朝食もこのまま作れるかな。


 ランタンを片手に、竹林に向かって歩き出す。


「採取ですか?」


「うん。丁度旬だし、面白い物を持って帰ってくるよ」


 タケノコの刺身は昔、友人の里山で食べたけど、美味しいって程の物でも無かった。ただ、爽やかな香りと瑞々しさ、歯応えは気持ち良かったのを覚えている。そう言う意味ではこの時期しか食べられない物だし、食材を生で食べると言う事に耐性を付けてもらう意味でも必要だ。出来れば、海の幸を刺身で食べたい私がいる。その予行演習としてタケノコの刺身と言う訳だ。


 『探知』で孟宗竹のタケノコの小さいのを探す。実物は昔見た記憶が有るのでイメージは容易だ。奴らは地面の中にいるので、素人では見つけられない。ぽぽっと光点が頭の中の周辺図に浮かぶのでじりじりと近付き、短剣で掘る。本当に小さな親指くらいのタケノコを見つけては先の方だけを切って袋に詰める。それを繰り返し、ざっと人数分を集める。


 袋を抱え直し、しゃがみながら移動していて固まった腰を徐々に逸らし、伸ばしていく。ふと髪の先から水がぽたっと頬に垂れる。うーん、やっぱり濡れるのは濡れるのか……。どうしようかな、レイだと強行を選択するだろうし……。暖だけはきちっと取ってもらうしかないか……。


 そんな事を考えながら、焚火まで戻る。


「目的の物は取れました?」


「うん、大丈夫。見つかった」


 そう言って、ロットをテントに戻す。体を拭いてから休むのは伝えた。『警戒』を意識しながら、タケノコを薄く削いで、熱湯を生み、軽く湯通しして、冷水で締める。

 そんな準備をしていると、皆も起き出してくる。朝はフィアとロッサが順番なので、残りの鳥をフライパンに蓋をして蒸し焼きにし始めた。雨が降っているので、そのくらいしか方法が無い。


「あれ、リーダーも朝食の準備? 今日は当番じゃないよね?」


 フィアが不思議そうに聞いてくる。


「うん。まぁ、この辺りで朝しか採取出来ない食べ物が有ってね。それを食べようかなって」


 そう言うとフィアが目を輝かせる。


「僕らも食べられるの?」


「用意はするよ」


 凄い期待した顔だけど、そこまで期待する程の物じゃ無いと思う……。


 そうこうしている内に、皆が起きて朝食となる。レイとも相談したが、やはりこの程度の雨なら進むと言う話になった。


「雨が降っているので出発の延期も考慮しましたが、レイは問題無いと言う話ですので、このまま進みます。あまりに雨が酷くなった場合は馬車でそのまま一泊も考慮します。では食べましょう」


 と言う訳で、孟宗竹モドキの刺身に軽く塩を振る。皆がこちらの挙動を見ているのが分かる。食べた事の無い物だからしょうがないだろうけど。ただ、この世界の孟宗竹と言う事で味が変わっていると良いなとは思う。

 ぱくっと薄い一切れを口に含む。昔はこの時点で灰汁が舌をぴりっと刺激した記憶が有ったが、全く無い。あれ?と思うと、竹の香りを薄くした本当に爽やかな香りが鼻を抜けて、さくりとした歯ごたえと、瑞々しい水分が溢れる。味そのものはタケノコのうまみそのものだが、これはこれで美味しい。灰汁抜きのつもりで湯通ししたけど、これが要因なのかな、普通に美味しい。あぁ……わさび醤油がやっぱり欲しい……。


 私の様子を伺っていた皆が、食べられる物と判断し、それぞれ塩を軽くかけて食べ始める。


「これは……爽やかです。それにほのかに香る青っぽい香りと奥の底から出てくるうまみ。一枚食べるとまた一枚と手が進みます」


 野菜スキーのロットが絶賛している。他の皆も生っぽい食べ物を食べると言う習慣が無いので、恐る恐る口にして食べられると言う事に安心してぱくつき始める。あぁ、元々の量が無いのにそんな勢いで食べたら……。


「あー、僕三切れしか食べてない……」


 フィアがしょんぼり顔で言う。


「私も三切れよ……。誰、たくさん食べたのは?」


 ティアナも気に入ったのか、ちょっと本気で犯人を捜している。


「まぁ、また帰りでも時期は時期だから大丈夫。今度は違う料理にしよう」


 出来れば、ワカメを見つけて、昆布だしと一緒に炊くと言う辺りで攻めよう。タケノコとワカメの炊いたんとか凄く好きだ。


 そんな感じで、朝食を済ませて、後片付けと準備を済ませて馬車に乗り込む。


「じゃあ、レイ。申し訳無いけど、よろしく頼むね」


「畏まりました。この程度の雨は従軍中も経験は有ります。ご安心下さい」


 にこやかに長いマントをフードのように被り、御者台に乗り込む。湯たんぽは渡したので、後は休憩を多めにしてもらう程度しか方策は無い。


 大丈夫かな?心配だなと思っていると、レイの出発の声が聞こえて、緩やかに馬車が進みだす。もう、ここまで来たら、レイを信じるしかないか……。風邪引かないでね。

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