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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第382話 リズの教育そのものは重要ではないと言うか、自身の教育は?と思います

「貴族夫人としての教育って、カビアの方で分かる?」


 食事を進めながら、カビアに聞いてみる。本日は葉野菜と蒸し鶏をハーブソースで和えた物が主菜だ。クミンとほんの少しのパクチー、それとニンニクのソースが蒸し鶏とも合う。ただ、パクチーが苦手なフィアは微妙な顔をしている。ただ若干悔しそうな顔でもむしゃむしゃ食べているので美味しいのだろう。慣れも有るかな。


「そうですね……。通り一遍程度の事であれば、はい。分かります。ただ、親しい上役に対してどのような内容を削るのか、仲の悪い相手に対してそれとなく否を提示する方法など、細かい部分に入ると分かりません。その辺りは、侍従ギルドの人間の方が詳しいでしょう。私も貴族の補佐をするという視点で覚えた物ですので、夫人の礼儀作法までは完璧には覚えていないです」


 カビアが申し訳無さそうな顔で答える。


「いや。男爵夫人にそこまですぐには求められないとは思っている。それにここに貴族の職務として来るのはノーウェ様とロスティー様だろう。その他の貴族は私が面会する事は有ってもリズ含めて夜会までと言うケースはそうそうには無いと見ている。なので、まずはその通り一遍を教えて欲しいかな」


 そう言うと、リズも頷く。この子、きちんと理由を提示すると頑張る子なんだ。ただ、ティーシアの場合は、色々焦っていた事も有り、何故の部分を疎かにしちゃったが故に反発された部分も有るだろう。リズももやもやしたものを抱えたまま覚えたいとは思わないだろうし。ただ、家を取り仕切ると言う感覚は大分古いとは思う。侍従ギルドと言う外部委託に任せられる範囲までにシステム化されていると言うのも有る。正直男爵なんて、元々ただのその辺りの人間だ。それをフォローする立場になるから、かなり融通が効くし、そう言う意味で人を舐める人間だと侍従としてやっていく事は出来ない。それが執事や使用人と話した感想だ。


「分かりました。私が覚えているのも基礎の部分です。どちらにせよ執事、侍女達から教育される事です。なので、先に覚えてしまうのも良いかと考えます。基礎はほぼ変わってはいません。後は応用だけですので」


 カビアがリズに向かって言うと、リズも不敵に微笑む。ふむ。これくらい気概を見せてくれるのなら安心かな。ティーシアの時のように嫌がらず立ち向かってくれるようなので、そこは助かった。


「と言う訳で、カビアを借りちゃうけど、ごめんね、ティアナ」


 そう言うと、ティアナが振られると思っていなかったのか、口に含んだワインを吹きだしそうになり、慌てて飲み込む。


「な、わ、私は何も関係無いわよ。何故私の名前が出るの!!」


 いや、若干羨ましそうな顔をしていたので少しだけ意地悪しただけだ。カビアがきちんとフォローしてくれればそれで良い。カビアの方を向いて、ティアナに視線を送ると、カビアも分かったのか頷く。後できちんとフォローしてくれるだろう。


「で、補充の方は順調と聞いたけど、大丈夫そう? あの飯場だから全然心配していないけど」


「はい。食料品に関しては問題無いです。前回の動きを見ている限り若干多かったのでひと月分を目安にしました。ただ、小麦粉や植物油などの材料を別途で増やしていますのでふた月以上分は有ります」


 最悪土魔術でパン窯でも生めば良いか。しかし、道沿いに廃棄されて朽ちていくパン窯……。ある種ホラーになりそうだな。


「装備の補修用の鉄材や革も補充出来た。質も良いしな。炉は向こうに着いたら有るだろう。材料さえ乗せておけば、最悪往復の際には手は入れる」


 ドルが装備の補修の件もフォローしてくれている。


「質の良い革材が有ったならありがたいね。炉に関しては小さな物だよ。日用品の補修が目的だし。水車も無いから砥ぎも手作業だよ」


「構わん。元々そうやって生きてきたしな。炉に関しても投擲用の短剣の補充や釣り用の鉄片の加工が主だ。小さくて構わん」


 欠けても基本的には叩いて磨いての対応になる。重装や盾が大幅に削り取られる事態なんて想像も出来ない。ただ、フィアの剣はそろそろ寿命な気もする。


「フィア、剣の方、そろそろ小さくなってきていない? 大丈夫?」


「んー。そう見える? 振っていて何と無く、振り心地がおかしいなって感じる事も有るから。僕でも感じるくらいだから相当なんだろうね。帰ってきたら、買い替えて慣らしちゃうよー」


 ドルの方を見ると、首を横に振られる。ちびっているとかそう言うレベルでは無く、根本的にガタがきている感じなのだろう。今回は問題が起こるとは考えにくいけど森に行くとなっていたら問題になっていたかもか……。その辺は、もうちょっと気にしておいた方が良いかな。


「そう言えば、エルフの受け入れの件、進める事になったけど。チャットに聞きたいけど、何か問題って有りそう?」


「特には有らへんと思います。町の中でも住むのは抵抗有りませんし、仕事は猟師とかでしょ? なら今までと変わらんと言う話になると思います」


 エルフ本人が言うなら、特に問題無いのかな?


「後、ご両親とかはどうなのかな? 連絡とかどう取るのかは謎だけど……」


「うちの家族は皆、王都ですぅ。前に『リザティア』に移る旨は手紙で送りましたんで、その内遊びに来るか、移住希望で来るやもしれません」


 まぁ、家族なら諜報の可能性も低いかな。態々エルフを諜報に育てる意味も良く分からないし。


「その時は出来れば先に教えてもらえたら、対処も考えるよ。同じ部屋でも良い? 別に部屋を用意した方が良い?」


「あー。父も研究者ですんで、その辺りは大丈夫です。仮に移住目的で来たとしても、町の方で家を建てると思います」


 研究者として成功していると言う事はある程度お金持ちさんなのか。なら大丈夫か。まぁ、研究者でふらふらしている娘なんて余程裕福な家の子か。


 他のメンバーとも明日の出発で問題無いかを確認したが、特に問題無いとの事だ。


「数日は問題無いですが、この時期ですので雨の可能性は有ります。その辺りはご理解下さい」


 レイが忠告を入れてくれる。あぁ、春の雨か。厄介だけど、本降りって感じでなければ大丈夫かな。でも布は多めに用意しておいた方が良いかな。一番濡れるのはレイだ。


「その場合は申し訳無いけど、よろしくお願いするね」


 もう少し開発期間が有れば傘も開発出来たかも知れないが、流石に数日では無理だ。


 レイの目礼に合わせて、食事も終わったので、それぞれ部屋に戻る。私は、お風呂にお湯を生みに行く。

 部屋に戻ると、にこにこしたリズがお風呂セットを持って待っていた。


「どうしたの?」


「ん。脱衣所に鏡有るでしょ。あれを見るのが楽しみで」


 そんなのいつでも見れば良いのに、可愛いな、こんちくしょう。ふっと衝動的に抱きしめてしまう。


「ちょ、ヒロ、いきなり、何?」


「そんなの見なくても、リズが世界一可愛いのはもう決まった話だから。リズが一番だよ」


「あーもう。ヒロは。分かったから、ちょ、ちょっと離れる。はぁはぁ……。ヒロがそう思ってくれるのは嬉しいけど、私が私で確認したいの。ちょっと、大人しくしなさい」


 リズが、ぜーぜーと息を吐きながら言う。


「でも、お昼の方が良いんじゃないの?」


「朝見たから。夜でも変わっていないかは気になるよ。どの程度の期間この状態が続くのかって言うのも知りたいし。だから、楽しみにしていたの」


「そっか。ん。行っておいで。十分可愛いよ」


「はいはい。ありがとう。お風呂の方も、本当にありがとう。じゃあ、行ってくるね」


 そう言うと、リズが部屋を出て行く。


 食堂で渡された食事をタロとヒメに分ける。待て良しで食べさせて、水を飲ませる。皆でお風呂に入る時に一緒に連れて行っちゃって良いかな。タライでちゃぽちゃぽ洗うだけだし。

 食べ終わって伏せて食休みをしている二匹を撫でて、書類の方に向かう。


 今回の森のレポートで気になっているのはやはりオークの件だ。ちりちりと音が鳴り揺れる蝋燭の明かりでレポートを確認する。

 トルカ村の北の森と同じ規模の集落が同じように要塞化されて存在すると言うのがまず、謎だ。それにあの森の魔素はそこまで濃くは無い。奥の方もそこまで濃度が変わる物でも無い。と言う事は魔物にとっては住み難い森の筈だ。何と言うか、実験とかそう言う雰囲気を感じる。集落も、生活の為に必須と言うよりも何かのパッケージ販売のセットのようだ。丁度男爵セットのような……。そこまで考えて、少しだけ嫌な感じが上がってきた。あの集落って何か目的を持って建てられている……。しかも男爵セットのように拡大、拡張を狙ってだ。

 でも、そう考えると、バックに国レベルの何かが無いと運用は無理だ。しかし、無いとも言い切れない……。うーん、監視にオークの出入りを綿密に見張ってもらって意図を知るのがまず先決かな……。


 色々考えていると、リズが帰ってくる。ほかほかなリズの髪に香油を延ばしてブローする。顔の肌はまだもちもちのままだ。


「リズ……綺麗だ……」


「ありがとう……でも、ちょっと恥ずかしい……。もう、ヒロ、パックしてからずっと言っているよ。うん、まだ続いているね。嬉しい」


「何度言っても飽きないからね」


 そう言って、タロとヒメを抱える。途中でロットの部屋をノックし、出てきたロットにそろそろお風呂の旨を伝える。そのまま他の人にも伝えてもらうように頼む。

 私はその間にお湯を生んで、タロとヒメのお世話だ。


 脱衣所で服を脱いでしまい、湯船にお湯を生む。そのままタロとヒメを脱衣所ぎりぎりでもにゅもにゅする。

 タロを揉み洗っている間に皆が来たので、先に入ってもらう。タロをスヤァさせて、乾かす。そのままヒメも同じくスヤぁさせて乾かす。そっと箱に寝かして、ようやくかけ湯となる。


「お疲れ様です」


 ロットが苦笑しながら、言ってくる。


「飼い主だしね。しょうがないよ。その内、獲物とか捕って来てくれるさ。大きくなったらね」


 私は、親扱いなので、獲物を捕っても自分達で食べるかな。その時はその時で喜ぼう。


「領主館の管理含めて、侍従の方との調整は済ませました。貴人の来訪が有った場合は、領主館でもてなすように致します。現状では、温泉宿より領主館の方が完成度も詰めている人間の質も高いです」


 カビアが忘れていた事を指摘してくれる。


「あ、助かった。ありがとう。そうか、もしかすると訪問者って来るかもしれないんだ……。まだ、国内でも無名なのにね」


「男爵様は少しご自身の事を気になさらないのが過ぎます。指揮個体戦を制した英雄と言うだけでも話を聞きたいと言ってくる人間は幾らでもいます。腹は読めませんが」


 そんな者の相手するのは嫌だな。


 そんな感じで、私達がいない間の『リザティア』の対応や、旅に関わる微調整などを済ませて、風呂を出る。


 寝入ったタロとヒメを箱に入れたまま、部屋に戻ると、リズが布団の上で力尽きたのか、寝入っていた。楽しそうに振る舞っているが、今日みたいに期待される事は多い。そう言う意味では精神をすり減らしているのもまた事実なんだよな……。それが分かっているから、無理をさせる気も無い。でも、この子はしちゃうんだろうな……。


 そんな愛おしさを感じながら、そっと支えて、布団の中に入れる。私も布団に潜りこむ。昨日十分愛し合ったし、明日は海に出発だ。このままゆっくり寝る事にする。


 窓からはほのかに星明りが漏れて入ってきている。蝋燭を消すとそれがはっきりとする。うっすらとした暗闇の中、人魚さん達の顔を思い出しながら、意識を手放す。元気だと良いな、人魚さん達……。

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