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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第372話 複合商業施設は有機的に連携しシナジーを生む事により、さらに発展します

 従業員が声をかけて、カーテンを開けると、きらっきらの目をしたリズ達がいた。中は、高級なブティックと言う雰囲気で、並べている服の数自体は多く無い。ただ、開発して間も無いハンガーにかけて、各々のシルエットを強調したインテリアにしているのは現代日本と同じ雰囲気で、そう言う意味では最先端な斬新なディスプレイなんだろうなとは思う。


「ハンガーなんて、良く見つけてきましたね?」


 着いてきてくれた店主に話しかける。


「おぉ、これも領主様の開発された品でしたね。素晴らしいと考えます。従来ですと、畳んだ物を都度開いてお見せするのですが、そもそも選択する際にイメージが湧かないのです。それが明確に提示出来る。これは画期的ですね。フェンさんに温泉宿ですか、そちらに納品している物を頼み込んで分けてもらいました。視察で拝見した時の衝撃は今でも忘れられません」


 やや興奮気味に店主が言う。鷹揚で上品な店主がここまでになるんだから相当の衝撃だったのだろう。業界の人が見たら、喜ぶのかな、やっぱり。


「これを領主様にお話するのは大変失礼なのですが、王都の真逆、東の果ての新興領主の町にどれ程の魅力が有るのか? 正直、色々悩んだ部分は有ります。ただ、フェンさんの話では兎に角面白いと。それだけを強調されましたので、逆に興味が湧きました。来て、見て、はい。私の料簡(りょうけん)の狭さを恥ずかしく思います。この町には、新しい何かがそこら中に埋まっています。この複合商業施設ですか? ここも私共の考えを根底から覆します。ここに来ればお客様の欲しい物が必ず手に入る。何と夢のような話では無いですか」


 店主がにこりと微笑む。


「正式名称が、百貨店ですか。あらゆる物が集う商業施設。お客様は欲しい物だけでは無く、欲しかった物をも見つけるのでしょう。私共も服飾の道では長く歩んできましたが、他業種との連携など考えた事は有りませんでした。しかし、ここは違う。服の次は宝飾も必要でしょう。小物類も必要です。ウィッグの専門店が入る話もお聞きしております。各ギルドと調整し合いながら、色々な物を扱っておりましたが、これからは多店舗と協働し、それぞれの店舗がより特化した販売が出来る。強みのみに特化し、邁進出来る。面白いです」


 あぁ、この人、きちんと未来を見ている。デパートの強みは、トータルコーディネートを各店舗で完結出来る事だ。他の町なら遠い店を延々巡りながら合わすのも、この店ならワンフロア、下手したら店員同士で相談して、決めてくれる。協働とはそう言う意味だ。鎬を削るのは構わないが、足の引っ張り合いは許さない。それぞれの店が有機的に連携し、お客様の満足を満たす。その為の接客マニュアルだし、商工会の方針だ。


「そこまで理解し、先を見てもらえるのなら、安心です。この店も、百貨店も安泰ですね」


「恐縮です」


 お互いに笑顔を交わし、握手を交わす。この人なら、任せられる。


 で、女性陣の方を見ると案の定な状況だ。飾られた最新流行のフォーマル、カジュアルファッションを憧れの眼差しで見ていると思えば、吊るしの服を一着一着愛おしそうに確かめている。

 カビアはこちらの様子見に回ってもらったが、ティアナのどっちが良い?攻撃に翻弄されて、疲労困憊の様子だ。ごめん、カビア。

 ちなみに、カビアに聞いたところ、男爵の正妻の衣装に関してはそこまでうるさい事は言われない。言ってしまえば庶民上がりだ。収入も安定してないのに、そんな物に浪費は出来ない。見栄を張るのは子爵以上になってからだ。リズに贈られたドレスに関しては国王陛下の謁見の際にも使える仕様で作られている。なので、急いでフォーマルドレスを用意する必要は無い。


「リズ、気に入ったのは有った?」


「うん。ちょっと高いけど、これと、これ。どっちが良いかな?」


 ぐは……。きた。これ、二パターンの内、どっちなんだろう。女性のどっちが良い?は大きく二つに分けられる。本当に迷っていて後押しして欲しいパターンと、実は決まっているけど好きな物への好きと言う感情を共有したい為に敢えて囮を用意するパターン。


「リズは、どの辺りが気に入っているの?」


「んー。ふふふ。内緒」


 嫌だー!!これ、後者のパターンだ……。視線を必死で追い、今までの癖を思い出しながら、考える。


「これから少しずつ暑くなってくるし、こっちの薄手のシャツとか良いよね。清潔感も有るし、髪の色が映える。清楚な感じがリズに似合っているよ」


 どうだ……。刹那緊張の面持ちでリズの瞳を凝視するが、歓喜の色が湧き上がる。良かった、正解だ!!


「そう? ふふ。薄手のシャツって中々手に入らないの。だから嬉しくて。買っちゃおうかな?」


 どうしても、古着で薄手のシャツと言うのはくたびれるので、流通しにくい。しかも、薄手のシャツを作るには綿の紡ぎの段階から調整しなければならないので品質も求められる。聞いてみるとカジュアル扱いなのか、予想より大分安い。


「この価格で大丈夫なのですか?」


「はい。針子の質を上げる為に、裾野の商品として作っております。最終工程できちんと処理はしておりますので、品質にも問題はございません。気に入って頂ければ幸いです」


 あぁ、庶民向けの商品の方なのか。広げて、蝋燭の明かりに透かして見るが、布の品質も良いし、裁縫も丁寧だ。値段もブティックでシャツを一枚買ったらこんな物だよねと言う値段に収まっている。


「リズ、出来れば、プレゼントしたいな。受け取ってくれる?」


「え? 良いの? でも、最近ずっとプレゼントされているけど、良いのかな……」


「私が贈りたいから。いつもリズにはお世話になっているし、後」


 耳元でこしょこしょと下着の件も言ってみる。偶には可愛い下着姿も見てみたい。そうするとリズが少し頬を赤らめて、こつんと叩き、店員の元に向かう。奥にもう一枚カーテンに仕切られた空間が有るみたいでそこに誘導されていく。ロットと話していたフィアが興味を惹かれたのか着いて行く。それを見たロッサも同じくで一緒に向かう。ロッサがそう言う事に色々興味を持てるようになったのは良かった。


 暫く、カビアを除く男性陣で談笑をしていると、女性陣も買う物が決まったらしい。物は色々見せたくない物も有るので、店員さんが別で包装してくれているようだ。カビアは……ティアナに捕まりっぱなしだった。


 女性陣の方はそう高価でも無かったので、その場で支払いを済ませる。


 店主に再度の訪問の旨を約束し、店を後にする。


「いやぁ、買った。超買った。僕、新しい服とか初めてだけど、超嬉しい」


 フィアがにこにこと叫ぶ。会計はロットが支払っていたけど、双方機嫌が良いので良い事だと思おう。ロッサも同じくドルに支払ってもらった荷物を幸せそうに抱えている。

 他の面々もにこにこしているが、リナだけはちょっと平然としている。色々サイズが規格外なので、直しが必要と言う事で後日配送してくれると言う話だ。脅威の胸囲とか色々とね?


 さて、デパートの視察もこれで終わりかな?


「取り敢えず、入っている店舗は見たし、満足?」


 そう聞くと、皆が頷く。色々店の印象を聞いてみたが、非常に高評価だった。庶民でも頑張れば手を出せる価格帯で高品質な物を店舗丸々まとめてで売ると言うコンセプトは斬新だし、目を引きそうと言うのが総評だった。


「さて、そこそこ遅くなってきたし、歓楽街の視察に向かおうか?」


 激しい同意を背後で感じながら、階段を下りる。


 エントランスホールを抜けてガレージに入り、馬車に向かう。馬車の前でレイに声をかけると、少しだけ嬉しそうなレイが座席側の出口から出てくる。タロ達の面倒を見てくれていたのかな。


「おかえりなさいませ。男爵様。次は歓楽街ですね」


 頷きを返し、馬車に乗り込む。さて、どうなっているのか。楽しみと一抹の不安。やり過ぎになってたら、どうしよう……。

 皆の期待のざわめきを乗せて、馬車が歓楽街に向かう。

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