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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第365話 お役所も結局は整理整頓と効率化が重要です

 長閑な春の晴れをゆったりと馬車で進む。暫く走ると、背の高い建物が見えてくる。中央政庁と各ギルドの支部の集合だけど、どこも優先的に建てたので、あそこだけ町になっているのがちょっと変な感じがする。まぁ、心臓部が動かないと指示命令と言う血流が巡らないから、計画通りだけど。


 現状は『リザティア』と歓楽街の建設に関わる政務団が詰めている筈だけど。邪魔をするのもあれなので、カビアに先触れを頼む。建物と書類の状況が確認出来ればそれでまずは良いのだけど。変に歓待とかされると、業務に支障が出る。ちりめん問屋の隠居爺扱いで良いんだけど。


 政庁前で待っていると、カビアが帰ってくる。


「お帰り。どうだった?」


「はい。まだお顔を知られていませんので。ノーウェ子爵様の関係者の視察と言う形にしてもらいました。政務長には話が通っています」


 責任者には話が行っちゃうのは仕方ないかな。忙しいところ申し訳無いけど、こっちも視察をしておかないと後の動きが分からない。そこは我慢してもらおう。

 早速馬車を降りて、政庁の中に入る。

 一階は完全に日本の市役所とかのああ言う雰囲気にしてしまった。あれが一番便利だし、呼び出しも楽だ。待ってもらうにしても中央にベンチを大量に並べているので、そこで座って待ってもらえば良い。

 各受付ごとに親番号が割り振られ、整理番号が記載されて、その番号順に呼ばれる、あの形だ。

 各受付に政務団が引っ張って来てくれた事務系の受付員が各業務ごとの対応を研修している。大変かと思うけど、皆楽しそうに和気藹々とやっているので良いかなと。受付員に関しては結構給料は高めにしているし、休みもきちんと用意している。辞められると困ると言うか、内情を知っている人間が辞めたり、引き抜かれたりすると面倒なので、待遇はかなり良い。


 そっと横目で観察して、まずは政務長の所に向かう。一気に最上階の三階まで上がり、奥の部屋に進む。扉を叩くと応答が返る。あぁ、懐かしい声だ。カビアに扉を開けてもらい、一気に部屋の奥まで進む。


「お久しぶりです、ペルスさん。調子は如何(いかが)ですか?」


「お久しぶりです。男爵様。すこぶる快調ですよ」


 一緒に『リザティア』の建設予定地を見学しに行った政務団の取りまとめ役、ペルスがそのまま政務長に就いている。あの時に同行したメンバーはほとんどが政務官としてもう現場に入っている。それに足してロスティーやノーウェから人を貰っている状態だ。人好きするにこやかな笑顔は変わらない。


「お忙しいかと思いますが、過剰な労働にはなっていないですか?」


「はい。そこまでは大丈夫です。適度に休みは取っておりますし、元々余裕は持って計画しておりますので、そこまで酷いものでは無いですよ」


 ペルスが苦笑いを浮かべながら答える。


「町の立ち上げと、建設系の処理が重なっているので、そこはかなり心配しているのですが」


「私共政務団に関しては、町の立ち上げからの運用が主業務です。町の建設に関してはロスティー公爵閣下及びノーウェ子爵様より建設に携わる政務官が出向しておりますので。資料の確認はしますが、業務が被る事は無いので、ご心配には及びません」


 その資料の確認が膨大な量になると見ているから、心配しているんだが。まぁ、大丈夫だって言うんなら取り敢えずは現状維持かな。


「政務庁舎は如何(いかが)ですか? 使いにくい所は有りませんか?」


「いえ、私共も本格的に業務としての運用はまだ日が浅いですが、使いやすいです。痒い所に手が届くと言うか、色々な物がよく考えられていて、驚きの連続です」


 オフィスファシリティーは業務効率を上げる際には非常に重要なので、運用も含めて、開示している。それで効率が上がってくれるならありがたい。


「今までは書類の整理にも統一性が無かったと言うか、羊皮紙時代の管理方法がそのまま流用されていたので、不便だったのです。束にするのは良いが、何処に何が有るかを司書に聞かなければ分からない状況です。この木の板と、業務番号と通し番号のお蔭で整理が飛躍的に楽になりました。また、都度一覧を更新する事によって資料の精度も上がります」


 フォルダ管理とインデックスの作成、インデックスの更新を導入してみたが、概ね好評のようだ。インデックスの管理がちょっと面倒なので難色を示されるかと思ったが杞憂だった。資料の管理は古今東西難問なのだろう。


「実際の現場と保管資料を見たいのですが、よろしいでしょうか?」


「はい。ご案内致します」


 そう言うと、ペルスが先導を始める。


「いえ。政務長となればお忙しいでしょう。教えてもらえれば、自分で見ますが」


「忙しいと言っても限度が有ります。この程度の時間を捻出するのは可能です。それに態々(わざわざ)このような事にお手を煩わせる事は出来ません」


 ふーむ。そう言われてしまうと、しょうがないか。


 ペルスの後を追って、各所の確認をしていく。三階に関しては、各部署の政務室となる。静かに扉を開けて中を見ると、偶に前に同行した見覚えの有る政務団の人がいる。もう本当にお役所のオフィスって感じで設計したが、特に問題は無さそうだ。


「業務がしづらいと言う事は無いですか?」


「今のところはそのような話は来ておりません。責任者を中心に配置される机と言うのも効率が良いので、評判は良いです」


 この世界の常識だと、延々横に並べて、適当に座る感じだ。組織上、上下関係が有り、上司の権限が結構大きいので、島での管理をした方が効率が良い。


「分かりました。書棚の方も問題無く使って頂いているようで、良かったです」


 木製のキャビネットも導入した。紙のサイズの規格がある程度揃っているのでフォルダの規格も合わせた。それに合わせて、キャビネットのサイズも合わせている。


「はい。あれはありがたいですね。兎に角、この手の政務は散らかりがちになりますが、それもなく、すっきりと仕事が出来る。女性陣からは非常に好評です。机が広く使えるのも嬉しいですね」


 ふむ。好感触なら良かった。整理整頓清掃と効率は直結するケースが多い。そうやって、効率が上がってくれればありがたい。


「二階は全て書庫ですね。今後の保管書類を全て二階に収めて行きますが、今はまだ収められている書類が無いので、見ても意味が無いですが……」


「司書の配置と書棚の配置に関しては確認したいです。見せてもらっても良いですか?」


「分かりました。ご案内致します」


 そう言って、ペルスが階段を降り始める。


 二階の扉を開けると、秘書室みたいな部屋になっている。その奥に扉が有る。

 そこを開けると、図書館のように延々と書棚が並んでいる。書類の生産予測に合わせて、業務番号が割り振られている。後は通し番号順で格納して行けば、インデックスの管理だけで何処に何が有るかは追えるだろう。書棚のバランスはある程度の期間を決めて適宜変更して行けば良い。

 しかし、がらんとしていると、圧巻だな。まぁ、ここもすぐに埋まってしまうのだろう。インデックス化するので、過去資料はある程度の塊でまた別に倉庫を作っているのでそこに格納してしまえば良い。基本的に廃棄出来ない書類ばかりなので、貯めていくしかない。


「設備としては以上かと思いますが、この程度で大丈夫でしょうか?」


 ペルスが少し心配気に聞いてくる。


「はい。ありがとうございます。貴重なお時間をもらって助かりました。また、書類自体に関しては運用が本格化した際に確認するようにします。書式の再整備も考えていますので」


「なるほど。書式に関しては、ロスティー領とノーウェ領の物が入り混じっているので、どこかで統一が必要ですね」


「そうですね。それか、新たに作ってしまうかですが、その辺りも考えます」


 出来れば活版印刷と同じくガリ版でも良いので、書式やフォーマットを規格化した物を大量に刷ってしまいたい。ガリ版の方はすぐにでも開発出来そうかな……。ネス来たら色々やってもらう事増えるな……。


「では、せめて下までお見送り致します」


「いや。元々お忍びで来ていますので、ここまでで結構です。ありがとうございます」


 二階の階段の所で、ペルスの見送りを断る。ただでさえ暇では無い筈だ。これ以上時間を奪っても勿体無い。こっちの方がある種暇なのだから。


「また、動きが有れば教えて下さい。政務回りを見るのはもう少し資料を読み込んでからになるかと思いますので」


「はい。まだ住民が多くは有りませんので、領主決裁の書類は発生しておりません。大丈夫ですよ」


 領主決裁となると、結婚や住民の土地の売買、領地への転入、転出辺りが主だが、住民自体がまだほとんどいないし、初期に関してはロスティー領、ノーウェ領の人間が主だ。向こうで決裁してくれるし、一旦は賃貸住居に入るので、土地の売買も発生しない。


「では、もう少しの間、のんびりと町の開発を見守る事にします。本日はありがとうございました」


「いえ。何も出来ず恐縮です。何か有りましたら、お気軽にお立ち寄り下さい」


 ペルスの会釈を後に、外に向かう。書類周りの記載を見ていたが、やはり書式のフォーマットを作り直すのは急務かな。日本で使っていたフォーマットを思い出しながら、全部当てはめていくか……。それをガリ版にしてしまうか……。


「……、……、……男爵様!」


 考え事をしていると、もう馬車の前まで辿り着いていた。カビアが横で声をかけてきてくれている。


「ん? どうした?」


「いえ、行き過ぎてしまいそうな雰囲気でしたので。お呼び致しました」


「あぁ……ありがとう。ちょっと考え事をしていたよ」


 そう答えながら、馬車に乗る。さて、鍛冶屋に戻って皆を拾って、食事かな?

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