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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第348話 ヒメは美味しい物、好きな物から先に食べます

 淡い光を瞼に感じて目を覚ます。窓を開けると、薄曇りの空から柔らかな光が降ってくる。三月十五日はちょっと曇り。雨までは行かない気がするけど、これが厚くなってくると分からないかな。出来れば数日間は移動を考えると降って欲しく無いなぁと思いながら窓を閉める。曇りの所為か、気温は少し寒い感じで、昨日の感覚だと風邪をひきそうだ。


 キッチンに入ると、ティーシアが朝ご飯の準備をしている。本当に早い。寝るのが早いと言っても勝てた試しが無い。いないと思っても、納屋に何かを取りに行っていたり他の作業をしているのだから、凄い。


「あら? 早いわね。おはよう。リズはまだ寝ているのかしら」


「おはようございます。はい。まだ寝ていますね。春ですし、布団が恋しいですよ」


「もう……あの子ったら。また、適当にお願いね」


 ティーシアが額を押さえながら首を振り、ふぅと小さな溜息を吐く。『リザティア』に入ると、ティーシアも中々叱ったりが難しくなる。そう言う意味では不安でしょうがないのだろう。なるべくフォローするようにはするが、リズの自覚も必要な話なので、長い目で考える事にする。


 ティーシアからタロとヒメの食事を受け取る。今日はイノシシのモツに鳥頭の水煮も足されている。


「昨日の晩、一緒に炊いていたから気にしないで。どんどんタロちゃんもヒメちゃんも大きくなるでしょ。大きくなるのに必要だって聞いちゃうと、どうしてもね」


 ティーシアが慈母の顔で微笑む。狼と言えど、家族の成長は嬉しいものなのだろう。


「お手数おかけします。ありがとうございます」


「良いのよ、ついでなんだから。さぁ、早くあげてきて」


 ティーシアがにこやかな笑みに変わり、背中を押してくる。本当に、チャーミングだよなぁ。リズもこんな風になるのかな。なったら嬉しいな。


 部屋に戻ると、二匹はまだスヤァと丸まっている。それぞれの皿に食事を移す。タロの頬を軽くツンツンと押すと、嫌がるように逆サイドに顔を向ける。ふふ。野生が無い。可愛いけど、ちょっとだけ心配。まぁ、守る範疇に入っているから良いんだけど。ヒメの方はどうかなとツンツンと押すと、パッと目を覚ます。食事の匂いを確認したのか勢い良くお座りの体勢に移行する。絡まっていたタロがコロコロと転がる。前に見た時とは逆かな。タロは何が起きたの!?と言う顔をして、きょろきょろしていたが、こちらの顔と食事の匂いを確認するとお座り状態になる。二匹がシンクロしてしっぽをパタパタ振っているのが可愛い。待て良しで食事が始まる。


『しゃくしゃく!?こりこり!!しゃくしゃく!!』


 タロは目の前に有る物から順に食べていく。好き嫌い的にはモツが好きみたいだけど、食べる順番はあまり関係無い。


『ぱぱ、しゃくしゃくしたの、おいしい』


 ヒメは鳥頭の水煮から食べ始める。野生の頃に好きな物、美味しい物を先に食べないと取られると分かったのか、好きな物を先に狙っていく。渋いのが好きだなと思いつつ見守る。


 食べ終わり水を飲み終えると、私は食休みです、キリッみたいな顔で二匹が並んで伏せているのが可愛くて、頭を撫でる。


 さてリズを起こさねばと思い、色々考える。今日はあれで行こうか。布団の中を探り、そっと両腕を広げた状態で手をそれぞれ握って固定する。そのまま口付けて、舌を入れてみる。その感触に驚いたのか、目を見開くが逃げられない。そのまま蹂躙していると、けしけしと蹴られたので解放する。足が有ったか……。


「はぁはぁ……。ヒロぉぉ……。どんどん巧妙になっていない……?」


「そうでもないよ。ほら、ティーシアさん待っているよ。さっさと起きないと怒られるよ」


「寝込みを襲うのはちょっとどうかと思うよ。もう。はぁぁ、また今日も手伝いかぁ……」


 リズが大きな溜息を吐きながら、着替えて準備を進めていく。暖かくなった所為か布団から出るのはそこまで嫌がらなくなった。


「『リザティア』に行っちゃうと、ティーシアさんも中々叱れないからね。愛の鞭と思って甘んじるしかないかなぁ?」


「ヒロ良いよね。そう言うの無いから……」


 リズがジト目で見てくる。


「私は私で領主教育が有るよ。今から向こうの執事さんに戦々恐々としているよ。はぁぁ、怖い、怖い」


「むー。実感が篭っていない……」


 まぁ、何を教育されるかも分からないし、礼儀作法は逆に教えて欲しい。開幕土下座から始まるコミュニケーションなんて暴力だって言うのは分かったけど、そう言う諸々は聞いてみないと分からない。


「まぁ、こっちが知りたい内容だからね。さぁ、行っておいで。私の可愛いリズ」


「ん。頑張ってくるよ、私の素敵なヒロ」


 そう言いながら、リズが部屋を出ていく。さて、朝食までの暫しの間だ。昨日の帰りに預かった領地開発の最新資料を追っていく。中央官庁系もそれぞれのギルドの責任で建てているだけ有って順調に建っていっている。商会関係も大きな所は問題無しと。農家の人を南西方面に集めたので、そこに早めにスーパーを建てる計画を立てていたが、それも順調にテナントが入っているようだ。後は朱雀大路に沿っての初期開発が完了したら、民家がどんどん増えていくのかな。東側の工場系への朝晩の足に乗合馬車を巡回させる話も現場で了承されたようだし、本格的に実施出来るかな。路線図とかどうしようかな。板に焼き印か何かで焼いて飾っておくのが一番かな。


 ぼけーっと『リザティア』の運用に関して考え事をしていると、リズから声がかかる。朝ご飯が出来たらしい。


 リビングに向かうとアストがいつも通り座って待っている。んー。新聞とか無いとやっぱり締まらないよな、この風景。活版印刷、開発しちゃおうかな。書籍も増やしたいし。でもどこかの国で開発されている気もするんだけど……。それでも一向に情報が入って来ない。諦めて『リザティア』で時間作って開発しちゃうか。紙の値段を考えると、日刊は難しいから週刊辺りなのかな。週刊誌的な物か……。んー。公報だけのペーパーになりそうだな。ジャーナリズムって無いと言うか、楽師なのか?あそこから情報伝達されているようだし。斥候の情報で出して良い情報をまとめて出す物みたいな感じで考えてみようか。


「おはようございます」


 馬鹿な事を考えながら、朝の挨拶を告げる。


「おはよう。領主様との会談は問題無かったのか?」


「はい。報告だけですので。後、そろそろ『リザティア』に赴く旨はお伝えしました」


「そうか……。アテンもそろそろ戻る筈だし、私達も準備はせねばならんか」


 アストが引っ越しの話題を振って来たので、『リザティア』で物を揃えて、アテンに引き継いじゃわないかと言う提案をする。アテンがノーウェから期待されている旨も合わせて告げる。


「領主様がそんな細かい事まで気になさっていたとは……。いや、売り上げを考えれば当然か。アテンにはしっかり引き継がねばならんな」


 アストが考え込む横で、ティーシアの目がきらりと輝く。あー、奥さんかぁ。嫁姑戦争が勃発しないと良いけど。まぁ、その辺りの匙加減は得意なんだろうな。


 そんな感じで朝ご飯を食べ終えて、アストを見送る。リズはティーシアにドナドナされていく。可愛いリズが、悲しそうな瞳で見てくるけど、私は何も言えない。


 部屋に戻り、タロ達に玩具を渡しておく。宿に行って皆の予定を確認しないといけない。その辺りを擦り合わせて、いつ出発するかノーウェに報告しよう。タロとヒメは仲良く咥え紐で引っ張り合いを楽しんでいる。足も大分治って来たので、もう解禁しても良いだろう。


 服と装備を揃えて、家を出る。お昼に関しては外で食べる旨は伝えた。仲間だけじゃ無く、他の皆にも日程を確認しないといけない。あー、ハーティスは別だ。あそこは冒険者ギルドの引継ぎ完了次第だろうし。


 そう思いながら、宿に向けててくてく歩く。仲間とテディにはまず話を通そう。そこからだ。

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