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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第340話 郷土料理も良いのですが、そろそろカレーとか食べたいのですよ

 窓の隙間からほのかに差し込む朝日を感じて、目を覚ます。今日は3月3日ひな祭りか。私の誕生日だけど、年齢をどこで取るかが謎だ。取り敢えず35歳のままで良いか。そう思いながら、裸のままリズが冷えないように気を付けながら布団から出る。タライにお湯を生み、ざっと顔と頭を洗い、全身を拭う。さっぱりしたところで服を着る。箱を覗くと昨日の晩とちょっと違う形で二個の毛玉が絡み合っている。タロがヒメに乗りかかられてちょっと辛そうだ。尻に敷かれるかなと思っていたけど、昨日は結構健闘していた。でも、寝ている姿を見ると、ヒメの方が上っぽいかな。群れの時に、きっと他の子が冷えないように庇うのが身に付いたんだろう。優しい子なんだよなぁ。


 そんな事を考えながら、キッチンに向かうとティーシアがもう朝の用意を始めていた。


「おはよう。あら、あの子まだ寝ているのかしら? 昨日あれだけ寝ていたのに」


「はい。晩が少し遅かったので。すみません」


「あぁ。そう言う事。程々で起こしてあげてね。あまり朝寝の癖を付けるのも問題だから。きちんと起きられる子になって欲しいもの」


 そう言うと、イノシシ肉とモツを用意してくれる。


「アキヒロさんは旦那だから甘やかして良いわよ。その分私達が憎まれ役になるから。だから、適当に起こしてあげて」


「はい。分かりました。朝ご飯ありがとうございます」


「ふふ。良いわよ。家族だもの。ヒメちゃん可愛いものね」


 にこりと微笑み、皿を渡してくれる。


「では、二匹の食事が終わった辺りで起こしてきます」


「お願いね。ごめんなさいね、使ってしまって」


「いえいえ」


 キッチンを後にして、部屋に戻る。箱の中の二匹はまだ目を覚まさない。でもちょっと耳がぴくぴくしているので半覚醒くらいなのかな。身支度の音も聞こえていただろうし。そんな事を考えると、匂いに気付いたのかタロが目を覚ます。


『いのしし!!』


 タロがばっとお座り状態になった瞬間に、上に被さっていたヒメがころころと転がり落ちる。ふぉ!?っとちょっと驚いて身構えた後に、匂いに気付いたのか箱をカリカリする。


「ヒメ、お座り」


 そう告げると、ヒメが思い出したのか、お座りをする。ちょっと寝ぼけていた感じなのかな。いつものお皿にそれぞれ分けて、待て良しで食事が始まる。


『こりこり!!こりこり、ある!!』


 タロが嬉しそうに食べる。


『いのしし、おいしい』


 ヒメもモツの脂の甘みに喜びを露わにしている。でも、ヒメって今まで何を食べていたんだろう。母狼があの森で狩れる獲物って結構限られる。群れでも鹿やウサギ程度か。イノシシはかなり難しい。まぁ、もう過ぎた話か。ヒメも慣れたのか食べるスピードが上がった。双方共に同じようなタイミングで食べ終わったので、水を皿に満たしておく。軽く撫でて、ティーシアの依頼をこなさないと。


 ベッドでは、ふにゅぅっと笑みとも満足ともつかない良い顔でリズが眠っている。これを起こすのは忍びないが、しょうがない。


「リズ、朝だよ。起きよう」


 耳元で囁くが、動じない。ふむ。まぁ、昨日色々してもらったし、優しく起こしますか。綺麗な端切れを熱おしぼりにして少しぱたぱたして温度を調整する。鼻と口を避けて、顔に乗せる。暫し待つと、うにゅぅとか意味不明な声を上げながら、手で顔をぱしぱしし始める。端切れを掴み、上体を起こす。


「おはよう、ヒロ。これ、前もやってくれたよね。気持ち良い」


「おはよう、リズ。何かいつも酷い事しているみたいに言われるから」


「んー。耳を攻めるのは酷い。でもこれは気持ち良いから、嬉しい」


 微笑みを浮かべながら答える。しかし、背中側から冷気が来たのか鳥肌を立てて震える。


「うわぁ……。やっぱりまだ寒い。春もまだまだだね」


 リズが苦笑に変えながら、布団を引っ張り上げて、体に巻き付ける。私は、タライに熱めのお湯を生み、ベッド横に置く。


「体を清めちゃおう。ティーシアさん、待っているよ」


 そう告げると、若干どよーんとした顔に変わりながらも、熱いお湯で体を清め始める。


「あぁ……温かい。結構体、冷えちゃっていたね」


「出来ればお風呂に入りたいけど、大袈裟だしね。リズが風邪を引かないかそれだけが心配だよ」


「悪いヒロが言っている……。もう……。はぁぁ……言っても変わらないから言わない。でも、お湯、ありがとう」


 頭をカクンと下げながら溜息を吐いたリズが、苦笑を浮かべながら答える。


「色々も大事だよ。貸して、背中の方拭うよ」


 そう言って、端切れを借りて、処女雪のような真っ白で染み一つ無い背中を拭う。しっかりとしているのに弾力も有って、触れるだけで気持ち良い。でも、色々していると風邪をひきそうなのでさっさと拭って端切れを返す。

  

「ありがとう、やっぱりさっぱりする、一家に一人ヒロだね」


 なんだそれは。冷蔵庫か何かか?


「さぁ、早く用意して。ティーシアさん怒るよ」


 そう言うと、急いで体を清め始めたので、タロとヒメの様子を見に行く。ご飯を食べてお水を飲んだら、食休みなのか二匹仲良くくっ付いて伏せている。耳の辺りをこしょこしょとしてあげると、気持ち良いのか、二匹共目を細める。首筋などを撫でていると衣擦れの音が聞こえてくる。


「じゃあヒロ、ご飯作ってくる」


「行っておいで。頑張って」


「はーい」


 元気良く、リズが部屋を飛び出していく。さて、ノーウェが帰ってくるまで微妙に日程が余った。ギルドが無茶をしないなら、放置か。レイに頼んで仲間の能力の底上げと重装の完成辺りは必須と。出来れば南の森の産物の一覧も欲しいか。ギルドの資料室に有った気がする。無茶振りされるなら近付く気は無かったが、今なら大丈夫かな。そろそろ色々料理も作りたい。懐かしい味の為にも、今後のノーウェ領からの輸入品強化の為にも少し調べるか。そう思いながら、二匹と心行くまでモフモフした。

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