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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第337話 色々と偶然が重なって良い形にまとまったので良いと考えます

 肩口に顎を乗せている所為か、べったりとくっ付いている所為かは分からないが、タロもヒメも兎に角耳の後ろ辺りに鼻をくっ付けてふんふんと嗅いだり、首筋をぺろぺろと舐めて来たり忙しない。後、大変申し訳無いんだけど、生肉を食べた後と言うのも有って、首元が生臭い。あ、ヒメの歯磨きをしていない。流石にティーシアもそこまで面倒は見てくれないので、タロもか。後で歯磨きしないといけないな。


『まま、まま!!』


『ぱぱ』


 どうも、抱かれている状態が好ましいのか、頻りに双方から『馴致』で快の思考が流れてくる。ちょっとくらくらする。引っ切り無しに処理するのは脳みそが辛い。

 ふりふりとしっぽを振っている内に徐々にずれて落ちてくる二匹をひょいっと元の位置に戻しながら、夕暮れが世界を赤く染める中を家の玄関前まで戻る。


『ヒメ、散歩終了だよ。楽しかった?』


『さんぽ、たのしい!!』


 ウォンみたいな短い鳴き声で快を表す。それぞれの足の裏を拭いて家の中に入れる。ヒメも一度匂いを嗅いで安心したのか、廊下をカツカツと歩いて、部屋まで戻る。タロは開けてくれーと言う感じで扉をかりかり掻いている。扉を開けて、タロとヒメの首輪を外し、箱に入れる。皿に水を生むと二匹共急いで飲み始める。何度か生み直し、満足したところで、二匹が毛皮の中で丸まる。少しだけヒメがタロに寄り添う形になっていて、心を開いてくれたのかなと嬉しく思う。タロも他者の温もりが嬉しいのかじりじりと近寄って密着していく。


 さて、時間的にはそろそろ夕ご飯の準備も始まっている。眠り姫も起こさないと夜眠られなくなる。


「リズ、起きなよ、リーズー」


 耳元で囁くが、逆サイドにごろりと転がり、そのまま眠ったままだ。この子は本当に……。しょうがなく、優しく耳にふっと息を吹きかける。


「ひゃっ……。もう、ヒロ、また!!」


 ばっと上体を起こし、リズが寝起きの若干不機嫌な眼でこちらを睨む。


「そろそろ夕ご飯の支度の時間だよ。ティーシアさんも流石に怒るよ?」


「え、もう、そんな時間。あー、でもちょっと疲れが取れたかも。うん、起きる」


 手を差し出すと、それを握り、ベッドから、抜け出す。床も真冬に比べればそこまで冷たくは無い。リズがそのまま、ぺたぺたと歩いていく。


「あ、お風呂、今日入るよね?」


「そのつもりだけどどうして?」


「うん、やっぱり鼻の奥に微かに臭いを感じちゃう。ヒロには手数なのは分かるけどお願いしたいかな」


 あぁ、死臭か。どうしても人の死骸の臭いは鼻に残る、いつまでも。風呂で気分転換も含めて出来れば良いだろう。


「いや。手数でも何でもないよ。入ろう」


 そう返すと、リズがにこやかに微笑みながら、扉を開けて出ていく。お手伝いが過酷になりませんように。そう祈りながら、箱の方を見ると、二匹共丸くなって「休憩です。動きません」みたいな感じの顔でぽへーっと休んでいる。可愛いなと頭をそれぞれ撫でて、燭台の獣脂蝋燭に火を灯す。まだまだ書類は残っている。今すぐでなくて良いと言うだけで、いつかは読まなければならない。さっさと読んでしまおう。そう思い、1枚1枚めくっていく。


 暫く書類を読んでいると、キャンとタロの鳴き声が聞こえる。珍しい。散歩の後はゆっくりと休むか寝ている事が多いのに。呼んでいるようなので、箱に近付く。


『どうしたの?』


『たのしいの、ほしいの』


 ん?玩具か?散歩を途中で止めちゃったから、元気が有り余っているのかな。そう思いながら、骨の形をした木と、咥え紐を箱の中に、入れる。すると咥え紐を咥えて、ヒメの眼前で揺らす。ヒメがハテナと言う顔をした後、カプっと噛みつくと、引っ張り合いが始まる。双方がグルグルと唸りながら結構な力で引っ張り合っている。若干の間は拮抗していたが、後脚で踏ん張り切れないヒメが負けて引き倒される。タロが勝ち誇るのかなと思ったら、そうでも無く、顔をペロペロと舐めると、また紐をぽいっとヒメの方に渡す。ん?これ、タロが遊びたいだけだ……。


『まま、だめなの、ひめ、あそぶの』


 私が仕事をしている最中は遊んでもらえないのを学習したのか、タロはヒメを相手に遊ぶ事にしたらしい。ただ、ヒメはヒメで負けても負けても再挑戦権を与えてくれるタロに尊敬の感情を持っているっぽい思考が流れてくる。んー。何と言うか、天然な男子の行動に翻弄される女子の図みたいになっているけど、まぁ、仲が良い限りは良いか。


 眺めていると、ヒメも楽しいのか、唸りながら頭を振り、なんとか勝とうとしているがやっぱり足が踏ん張れないので、負けてしまう。ただ、ちょっと足に負担が大きそうなので、そろそろ止めさせた方が良いかな。


 勝負がついた瞬間を狙って、咥え紐をヒメに渡して、タロを抱き上げる。


『まま?』


 タロを床に下ろし、木の骨を投げる。タロの目がキュピーンと輝き取りに行く。ヒメはヒメで咥え紐を前脚で押さえて、噛み千切ろうとうーっと唸っている。うん。楽しんでいる。あれなら後脚に負担はそれ程かからない。


『まま!!』


 タロが目の前に玩具を落とす。はっはっと荒い息で、次を待っている。また、ぽーんと投げるとタロがたーっと駆けていく。何度か繰り返していると、箱の中のヒメがじっとこっちを見ている。


『どうしたの?』


『したい』


 うーん……。足に負担がかからないかな。ちょっと不安だ。


『脚がもう少し治ったらね』


『うー』


 ヒメから残念、無念と言う思考が流れてくる。諦めてまた咥え紐を引っ張るのに夢中になる。


 そうやって遊んでいると、リズからの声が聞こえてくる。夕ご飯かな。取り敢えずまた、タロがヒメに無理をさせないように玩具は回収し、二匹を箱の中に戻す。タロも遊んで満足したのか大人しく箱の中でヒメのグルーミングを始める。食事をもらって、引っ張り合いにも負けたのが影響しているのか、大人しくグルーミングも受け入れている。慈愛に満ちた目でタロを見つめている。信頼し合えるなら良いかな。足のリハビリが終わっても、一緒に仲良くやってくれれば嬉しい。


 微笑ましい物を見たなぁと思いながら、部屋を出る。アストはもう帰ってきているのだろう。ヒメの事も紹介しないといけない。まぁ、タロも家族と言ってくれたんだ。ヒメも家族と認めて貰えたら良いな。そう思いながら、リビングに入る。

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