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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第317話 まぁ宝くじの高額当選の衝撃が近いでしょうか?

 窓から差し込む柔らかな光に促され、目を覚ます。冷たい床に足を下し、窓を開けると清冽な冷たい空気が流れ込む。少し風は有るが空は澄みきっている。2月28日は晴れか。

 体を伸ばし、軽く柔軟体操をしているとタロが目を覚ます。昨日十分遊んだのを覚えているのか、箱の中でちょこんとお座りしている。はっはっと息をしながら何をするの?と言う目で見ている。


 キッチンに向かうとティーシアが朝ご飯の支度を始めていた。


「おはようございます。リズ、起こしましょうか?」


「悪いわね。あの子も自分で起きてくれないと困るんだけど……。あぁ、はい、これ」


 そう言うと、皿にイノシシ肉とモツを乗せてくれる。


「いつもすみません。ありがとうございます」


「いいのよ。アストも言ってたでしょ。家族なんだから」


 ティーシアが微笑みながら、手を振る。


 部屋に戻り、タロの皿に食事を盛る。待て良しをして、タロが皿に飛びつく。イノシシ肉を噛みちぎり、モツを頬張りハフハフと噛み砕く。


『イノシシ!!こりこり!!』


 嬉しそうに食べる。その間に、リズを起こしてしまう。軽く揺するが、起きない。疲れているのかな。叫ぶがやはり起きない。しょうがないので、耳にそっと息を吹きかける。


「ひゃぅ!?」


 リズが飛び起きて、きょろきょろとする。


「もう……ヒロ。また? 耳は駄目だって言ったよね」


「少しだけ息を吹きかけただけだよ。さぁ、ティーシアさんが待っているよ。行っておいで」


「嫌だー。一日が始まるー。寝るのー。寝て暮らしたい」


 どこぞのニートみたいな台詞だなと思いながら、布団を引き剥す。


「朝ご飯が終わったら、皆と集合なんだから、それまで頑張ろうよ」


「うー。辛い……。頑張る……」


 そう言いながら、もそもそとベッドから下り、嫌そうに部屋を出て行く。嫌そうと言うより、布団ラブって感じだったが。


 箱の方を覗くと、タロが皿を舐め終わり、伏せて食休み状態だった。水を生むと美味しそうに飲む。満足すると、休みたいのと遊びたいの半々なちょっと悩まし気な表情でこちらを見る。


『まま、あそぶの?』


 お前が遊びたいなら遊んでやるみたいな顔だったので、頭と顔を撫で繰り回して、食事に向かう。何か、満足していたし。


 リビングに向かうと、既にテーブルに食事が並んでいた。


「では、食べるか」


 アストの声で、食事が始まる。今日も狩りに出るとの事。リズはやっと解放されるとにっこにこだが、ティーシアに睨まれてちょっとしょんぼり顔だ。

 保存の効く根菜が中心だが、野菜がごろごろ入ったスープは嬉しい。この家に来た当初を考えると、格段の差だ。余裕が出てきたなと少しだけ笑みが零れる。


 食事を終えて部屋に戻り、出る準備を進める。リズは鎧かけから各パーツを外して着込んでいるがちょっと面倒臭そうだ。


「鎧かけ、不人気?」


「そう言う訳じゃ無いけど。ちょっとだけ面倒臭い」


 この子……。実は片付けられない子気質なのか?でも部屋は片付いていると言うか物が無い。ちょっとだけ動向は注意して追うようにしよう。


 と言う訳で、準備が終わったリズと一緒に冒険者ギルドまでてくてく歩く。予想通り、宿組は全員集合していた。


 朝の挨拶が終わった後に、そのままギルドの会議室に誘導する。


「え? 何か有ったの? なんで朝から会議室?」


 フィアがハテナが浮かんだ顔で首を傾げる。


「大分前にダイアウルフを狩ったでしょ。あれのオークション料が支払われた」


 そう言うと、ロッサとリナ以外がおぉと言った顔で驚く。


「正直、結構な金額になった。で、大変申し訳無いけど、ロッサとリナはパーティーに入る前の話だから、受け取りの権利が無い。これは了承して欲しい」


「支払時期がずれても、その時のメンバーが得るべきお金です。気にしません」


 ロッサが言う。それにリナも頷く。


「じゃあ、受け取ってくる。ちょっと待ってて」


 受付嬢に受け取り証を渡す。にこやかだった受付嬢の顔が引き攣り、奥に引っ込む。ですよねー。

 暫く待つと、重そうな巾着を持った受付嬢が恐々と差し出してくる。受け取り証に署名し巾着を受け取る。


 会議室に戻り、期待に目を輝かせる皆の前に、巾着を置く。何と言うか、ドスっとかに近い音が鳴った。これ、100万ワール金貨だよな。怖えよ。


「……それ、100万ワールよね?」


 ティアナが何かを疑う顔で言う。


「その筈。怖くて下では開けられなかった。確認も出来ていない。ここで確認しようかなって」


 そう言いながら、パンパンになった袋を引っ繰り返す。じゃらじゃらとこれでもかと金貨が零れ落ちてくる。この前のノーウェの時の比じゃない。皆も唖然とした顔をしている。


「さて、内訳の説明かな。まずオークショントップ。王都中央の侯爵だね。1800万ワール」


 18枚の金貨を横に避ける。


「ば……馬鹿じゃないの? 高が狼の毛皮よ? 何を考えているのよ……」


 ティアナがわなわなと口を震わせながら呟く。


「次点が王都中央の財務系の伯爵。1600万ワール」


 16枚の金貨を横に避ける。


「お金て、有る所には有るんですねぇ」


 チャットが呆れ顔で言う。


「傷が有った奴だけど、軍務大臣が競り落とした。ジャケットには十分だって。600万ワール」


 6枚の金貨を横に避ける。


「あれ、僕が傷付けたやつだよね? 600万って……。何それ、怖いよ」


「で、1匹丸ごと持ち帰った奴。研究所が張り込んだ。2800万ワール」


「2800!?」


 ロッサもリナも合わせて、皆が唱和した。うん。私も怖い。意味が分からない。


 28枚の金貨を横に避ける。


「後4匹分の核も研究所が直接買っていった。1個400万ワール。なので1600万ワール」


 16枚の金貨を横に避ける。合計は合っていた。金貨84枚。8400万ワール。1億が近い。なんだこれ、怖いよ。


「1億ワールなんて、領地経営でも中々決裁しないわよ……。何よ、その金額」


 ティアナが切れる。


「うん、私もびっくり。聞いた瞬間耳を疑った。あぁ、これ揉めるかなと思ったけど……」


 ロッサとリナの方を見ると、二人とも首を振る。権利が無いのを納得しているらしい。


「まぁ、でも出来ればパーティー資金の方には入れたいかな? その程度は許してもらって良い? 最終また分割する時一部でも分けられるし」


「ええですよ。うちらでは使い道に困ります。有れば良いって物でも無いですし。またの機会に期待も出来ますよって」


 チャットがちょっと冷静に戻り、答える。正直、今の金額でもこの村では持て余している。下手したら堕落しそうなのだ。


「1050万ずつだけど、1000万ずつで良い? 残り、パーティー資金に入れちゃうけど」


「たったあれだけの狩りで家が建ちますか……。いや、ありがたいですが、少し怖いですね……」


 ロットがかなり低い声で囁く。分からんでも無い。宝くじででかいの当てた気分だ。


 他の皆も、10枚ずつの金貨の重さにほくほくとげんなり半々の顔をしている。うん、現実味が無いよね。分かる。


「前の子爵様の時もそうだったけど、結局、ある一定以上の金額が手に入ると嬉しいとかじゃ無く困惑しかしないわね……。」


 ティアナが呟くが、まぁ、真理だろう。


「んじゃ、これは一旦預けるとして。ドルとロッサにちょっと話が有る。後ティアナはリズと話をして欲しい。他は自主訓練かな。レイがやる気だから、そっちに教わっても良いと思う。思う存分吸収して」


 そう言うとリナが頷く。フィア、ロット、チャット、リナはそっちに回ってもらう。チャットも場所取りとか皆の動きに合わせたフォーメーションを考えないといけないので、十分以上に勉強になる。


「先に預けちゃおうか。ドルの方が話は先かな。このまま会議室は借りるから。ロッサはちょっと待っていて欲しい」


 ドルとロッサが頷く。皆でがやがやと階下の受付に向かう。手に持つのは家を買える程の金だ。もう、ちょっと金銭感覚麻痺していないか?私もだけど。現実味が凄い薄い。はぁぁ、怖いよ。

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