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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第一章 異世界に来たみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第28話 おもいやり

 明日の予定は決まってしまった。

 取り敢えず、TODOリストに追加。


 □明日朝からギルドに行く。

 □ヒュージスライムを退治する。


 さて、当初の通り鍛冶屋に向かうか。

 大きめの煙突が立った建物が鍛冶屋か。

 看板に剣と鍋が紋章化されている。日用品の鍛冶も担当しているのか。

 村なら、日用品の方が主流だよな。


「こんにちは」


 店のカウンターには誰もいない。


「こんにちはー」


 声を上げる。

 反応は無い。


「こんにちはー!」


 大分大声を上げると、店の奥から人の動く気配がしてきた。


「おう。らっしゃい。客かい」


「はい。武器を見たいのと、1つ作って頂きたい物が有ります」


 赤茶けた髪色と髭面の50代くらいの男性だった。がっしりした体格と意志の強そうなぶっとい眉が暑苦しい。


「武器は……。グレイブか?」


「いや、これは取り敢えずで。槍を探しています」


「ふむ。個人で使うんだろ?その恰好なら冒険者か。その背丈なら……この辺か」


 150cmくらいの槍を出してくる。


「短槍だが、槍頭は鍛造で40cm。柄の中40cmは埋まってる。使い込んでも歪まんよ」


 手に取ると、予想以上に重い。


「素振りを試しても?」


「おう。裏庭使え」


 庭に出て半ばを持ち、半身に構える。

 石突側も鉄でコーティングされ、重りが埋められている。半ばを持った方が逆に軽く感じる。


 正中線を振り抜く。グレイブもどきが比べ物にならないくらい切っ先が下がる。


「うわ。実物は初めてだけど、重いなこれ」


 こんなもの、初見で振り回す奴が信じられない。

 よく転移物の小説や漫画で高校生が剣やら槍やら振り回しているけど、竹光じゃないのかと。

 米の字を描くように素振りを続けて行くが、止めようとした地点の遥か彼方まで持って行かれる。

 突いても、大分下側に切っ先が落ちている。

 正直、本物の槍を舐めてた。これで短槍か。

 確かに、鉈でも30cmの刃だし。その2倍以上の鉄の量か。そりゃ重いわ。


「柄の木も樫の良いのが入ったんでな歪みも無い。巻皮も良いの使っているから、滑らんし馴染むぞ」


 うーん。欲しいな。


「幾らですか?」


「70,000だな。穂鞘はサービスしてやる」


 やっぱり結構するな。地球なら最新機材マシマシのPC1台組むくらいの値段だな。

 3年償却位で考えれば有りか。


「申し訳無いですが、本日手持ちが有りません。明日以降でも良いですか?」


「おう構わんよ。取り置いといてやるよ」


 うん。臨時収入予定されているし命に直結するものだから、買う方向性で。


「で、作って欲しい物ってのは何だ?」


 槍を手渡すと、聞いてくる。


「あー。羊皮紙を頂いて良いですか?後、何処か書き物出来る所は有りますか」


「おう、部屋使え。ごちゃごちゃしてるがな」


 部屋に通されると、設計図や帳簿などで雑然とはしているが汚い感じはしない。見た目にそぐわず几帳面な性格なのか。

 机を借り、スマホの百科事典を見ながら、ざっくりとした第三角法と断面の設計図と縮尺、長さを記載する。

 利用イメージのポンチ絵と材料に関する説明も記載する。


「これなんですが」


「ふーむ」


 設計図を確認しながら、唸る。


「この弁の働きはふいごの応用か、これを梃子で水を上げる……。単純な構造だが、思いつかなかった」


 どうも基礎的な動作は理解して貰えたようだ。


「おい、こいつはすげぇ。正直うちだけの話にするのは惜しい。領主様まで話を持って行きたい」


 話が大きくなった。


「この辺りを実質治めているのは子爵様だ。その親父さんは公爵様だ。そこまで話が上がれば国王陛下まで話が上がる」

 

「特許は有るんですか?」


「おう。国王陛下の報償として独占販売権が下賜される。でかい商会なら販売製造まで自分の所でやるだろうが、お前さんだけじゃ無理だろ?信用出来る商会を介して、売り上げから幾らか受ける形の方が良いだろう。俺も鍛冶ギルド長の伝手は有る。悪いようにはしねえ」


 後は、この男が信用できるかだけど。


「うちの母ちゃんも、毎日井戸汲みに苦労してんだ。特にうちなんか鍛冶屋だ。どんだけ水使うか。痛ぇ程分かる。出来れば、さっさとこいつを使わせてやりてぇ。それが俺の本心だ」


 ふむ。信用してみるか。


「構造が単純だから、鋳造でいける。ちっと時間を貰えりゃ試作を持って行く」


「アストさんの所でお世話になっているので、そちらにお願い出来ますか?」


「おう。あー……」


「アキヒロです。冒険者10等級です」


「アキヒロか。俺は、ネス。こいつぁ、母ちゃんを助けてくれるもんだ。今日から俺の事は家族と思え」


 思った以上に熱い兄さんだった。


「んじゃ、早速鋳造の試作を始める。こいつは寝てる暇なんてねぇぜ」


 ネスは叫ぶだけ叫ぶと、さっさと店の奥に引っ込んでいった。


 まぁ、特許はともかくとして試作品が貰えるならありがたい。

 周辺の統治システムを考えながら、アスト宅に戻る事にした。

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