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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第305話 下働きと言っても立派な職業です、就業環境の改善も訴えます

 少し痺れを感じて目を覚ますと、右腕を枕にリズの顔が最接近していた。額に口付けて、そっと腕を引き抜く。窓を開けると曙光が徐々に差し込み始めている。

 若干の薄雲は有るが、概ね晴れ。2月26日、村に戻るには問題無いかな?


 昨日寝つきが良かったので、床に降りて窓を開ける音で目が覚めたのかタロがお座りでじっとこちらを見てくる。動くと追ってくる。若干トリッキーな動きをしてみるが、目は合う。ちょっと嬉しそうにしっぽを振る。

 遊んで欲しいのか、少しずつボルテージが上がってきた。咥え紐を渡すと、いつものように噛みちぎる感じで噛みながら、楽しんでいる。箱から出して、床に下ろすとダイナミックに紐と戦い始めた。


 暖炉の世話をして、部屋を暖める。十分に(ぬく)もったところで、リズを起こす。昨日は早めに寝た所為か、すんなりと起きる。


「おはよう、リズ。今日はお早いお目覚めで良かった」


「おはよう、ヒロ。いつも悪戯されているから、今日は無くて良かったよ」


 そう言いながら、ベッドから下りる。支度を済ませ、タロと一緒にソファーで遊んでいると侍女の声が聞こえる。朝ご飯かな。扉を開けるとキラキラした美少女が立っている。昨日の二人目のちょっとクールな侍女さんだ。少しだけ表情と言うか浮かべた笑みが優しい。


「昨日は、お世話頂きまして、ありがとうございます。今朝、鏡を見ましたが、驚きました。これが私だと思えなかったです。感謝致します」


 リズに深々と頭を下げているが、リズはあわあわと両手を振っている。ふむ。大分印象は変わった。くすみが無いだけで、華やかさは増したし、髪の効果が大きいのか全体的に気品と自信が漂っている。良い変化だと思う。

 心なしか、姿勢も歩き方も変わった侍女に連れられて、食堂に向かう。こちらの面々は既に席に着いている。ベティアスタは席に着いているが、若干煩悶している。


「ベティアスタさん、何か有りましたか?」


「いや、な。ここを出ると風呂が無くなるのかと考えると、切なくてな。父上をどう説得しようかと悩んでいる」


 あぁ、この人、初見の印象はあれだったけど、風呂に関しては……。面倒な物教えちゃったかな……。苦笑を浮かべながら、席に着く。


 暫くすると、廊下の方から少し賑やかな声が聞こえる。


「おぉ、我が孫よ。お風呂と言うたか? あれは凄いのぉ。昨日の晩はぐっすりよう寝た。朝起きても、体が軽い。痛みも無い。良い、良いぞ」


 好々爺と言う顔のロスティーと苦笑を浮かべたノーウェが一緒に食堂に入って来て、席に着く。ロスティーの開口一番がそれだった。


「良かったです。湯たんぽと合わせれば、冷える機会も有りませんので。お体の不調も心労と冷えが原因でしょうし」


「ふむ。部屋に戻ってもかっかと汗が湧いてな。心地良い倦怠と共に寝て見れば、これだ。ははは。十は若返ったぞ」


 ノーウェが合図を送り、食事が出される。昨日までの小食は嘘のように、ロスティーもきちんと食事をしている。

 心労と冷えで食欲含めて、欲求と身体機能が低下していたのだろう。ゆっくりリラックスして、きちんと寝れば人間回復するものだ。


「いや、侍女2人に話を聞いたけど、聞いたと言うか、嘆願が来たよ。常設運用して欲しいって。薪は建材の端材を回すから良いけど、そんなに良いのかい? すごい剣幕で言われてこっちもへとへとだよ」


 逆にノーウェの方は若干しょんぼりと呟いてくる。ふと廊下の方を見ると、昨日の侍女が2人、フンスと言った顔で澄まして立っている。あぁ、美に対する欲求か……。怖いな……。


「石鹸の件は、昨日の通り。実際の特許は父上名義にして、運用をこっちで引き受ける形にしたよ。うちの略式紋章だけど、実際は父上の利権扱いと対外的には公表するよ」


 ノーウェが食事を進めながら、昨日の石鹸の話を進めてくる。ふむ。あの後にロスティーとも話をしたか。と言う事は東の国側の話もしているか……。


「伯爵の内定も決まったし、テラクスタ卿にも挨拶はしたいからね。父上をトルカまでお送りして、南に向かう。お嬢も一緒に来るかい?」


「ふむ。馬車は回収してもらったが、あれも処分だな。新型が欲しいが、まだ高いしな。父上と相談か……。家まで同乗させてもらう」


 ノーウェの問いに、ベティアスタが頷く。


「じゃあ、ちょっと込み入った話もしたいし、君の馬車に父上と一緒に乗せてもらおうか。お嬢とリズさん達はうちの馬車に乗れば良い。今回の外務団は父上の馬車に乗るしね」


 ノーウェが提案すると、皆が頷く。


「ふむ……トルカか……。楽しみだな」


 ベティアスタが若干表情を崩して言うが、目的石鹸だよね?公私混同じゃね?あの剣幕で逃げ込んできたのに、何と言うか目的がずれているんだけど……。


「東の国の件は大丈夫ですか?」


 ベティアスタに聞く。流石に釘を刺しておかないと、ふわふわしたままいられても困る。


「ふむ。ざっくりとした報告はもらった。正直、父上に行く報告を聞かんと判断も出来ん。ただ、陛下が崩御する程の政変が起こったのだ。ワラニカ王国側もそれなりの対処はしよう。それを信ずるしか無い。実家に戻ってから最終的に判断はするがな」


 ベティアスタが真剣な表情で話す。あれだけ隠されたら判断のしようも無いか。まぁ、このタイミングでしゃしゃり出られても面倒臭い。向こうの伯爵の問題が片付いてから息子と一緒に頑張って欲しい。亡国だが、位置的に立ち回り次第では美味しい思いも出来る領地だ。この先の手腕に期待しよう。


「リズ、申し訳無いけど、ノーウェ様の馬車にベティアスタさんと皆で乗ってもらって良いかな?」


「分かった。リナとカビアさんだよね。一緒に遊んでおくよ」


 こくこく頷きながら答える。丁度皆リバーシにはまっている感じだから、今日一日は潰れるか。良い感じかな。


 食事を終え、荷物をまとめて行く。最終的にトルカで馬車は止まるので、荷物は私の馬車にまとめて積めば良い。チェスはその場で作れば良いか。ロスティーにも伝わっているかな?


 リズと一緒に荷物をまとめ終えて、使用人に渡す。積載の最終確認はレイが担当してくれる。タロは朝ご飯をたっぷり食べて、うとうと気味だ。どうも、侍女にもなでなでされてご満悦らしい。良いなぁ、狼……。


 リズはお風呂2人組と何か話している。酢リンスの話題が聞こえたので、お風呂話だろうか?侍女達も鼻息が荒い。と言うか、見た事の無い使用人の女の子達も混じっているんだが……。ノーウェの館の薪炭代が凄い事にならない事を祈ろう。


 そんな感じで部屋で待っていると、執事が顔を出してきた。出発の用意が整ったようだ。さぁ、トルカ村に帰ろう。

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