表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
299/810

第296話 別に口調がそうだと言って、綺麗に興味が無い訳無いです

本文改稿に伴い、第294話から内容が変更されています。

ご迷惑おかけ致しますが、よろしくお願い致します。

 リズを迎えに部屋に戻る。


 リズのドレスのひらひらした部分がタロを引き寄せるのか、異常に興奮したタロがリズを狙っている。


「あ、ヒロ。助けて、タロが」


 タロをひょいと抱き上げて、箱に戻す。


『まま!!あそぶの!!ままと!!』


 タロが箱の中で小さく、くるくる回る。引っ張り紐で興奮を鎮める。少し遊んだら満足して忘れたのか、ちょこんと大人しく座る。


「良かった。抱き上げるにも毛が付いちゃいそうだから。触れなくて、避けてたら、どんどん興奮するし、どうしようかなって」


 リズがほっとした表情で、スカートを伸ばしてソファーにゆっくりと腰かける。


「ごめんね、話が長引いて。ドレス姿で大変だったんじゃないかな」


「私は大丈夫だけど。ちょっと腰が痛くなってきちゃったかな……。背筋を伸ばし続けないといけないから」


「はは。大変だ。昼の用意が出来たって。公爵閣下もちょっと余裕が無かったからあれだけど、綺麗だからきっと喜んでもらえるよ」


「そうかな……。うん、そうだと嬉しいな。きっと大変だったと思うから、少しでもお慰め出来れば嬉しい」


 リズが微笑みながら言う。あぁ、良い子だ。本当に良い子だ。

 そんなほっとする一時を過ごし、リズをエスコートして、食堂に向かう。


 席に着いた段階では、ロスティーがまだ食堂に現れていない。ベティアスタは相変わらず、髪の毛を弄っている。変な癖がつきそうだが。


「髪の毛、気になられますか?」


「ん?あぁ、すまぬ。そうだな……。ここまで変わると思っていなかったからか。何とも気になってな。ふふ。嬉しい物だな」


 ベティアスタがにこにことする。いつもは結構キリっとした顔が多いので、少し可愛い印象だ。


「石鹸とお酢ですが、少しお湯を多めに沸かせば、流す事も出来ます。持ち帰られますか?」


 そう言った瞬間、瞬間移動か!?と言う勢いで、目前にベティアスタの顔が迫る。勢いに押されて、腰を残し、仰け反る。


「え……えぇと……?」


「良いのか? と言うか、そんなに数は有るのか?」


「村に戻れば生産しておりますので。ただ、香油入りの物は数が少ないですが……」


「ふぅむ……。トルカだったか……。あのような村に存在するとは……」


「あ、いえ。開発したのは私ですが……」


「そうなのか!! ふむ、帰りの際に寄る事にしよう。是非、買い求めたい」


 鼻息荒く、ふんすと言う顔で、ベティアスタが席に戻る。何を考えてか、にまにましている。まぁ、お客様1名様ご案内と言う感じだろうか……。買い占め無いよね?

 何か、詳細をリズに聞き出している。凄い迫られているけど、百合百合しい。美味しいです……。眼福。


 そんな感じで時間を潰していると、旅装を解いたロスティーがややゆったりとした格好で食堂に現れる。


「待たせたな。さて、食事にしよう」


 ロスティーが席に着き、宣言した瞬間、給仕が食事を並べ始める。


 流石に、疲労が蓄積しているのか、ロスティーはメインに手を付けず、スープと軽くパンをゆっくりと食べている。一段落したのを見計らい、声をかける。


「ロスティー様。御贈り頂きましたドレスが出来ました。ご覧頂けますか?」


 そう言うと、ロスティーがリズの方に改めて向き直る。


「おぉ、やはりか。見違えた、綺麗になったのぉ……。立ってくれぬか、しかと見たい」


 にこやかにロスティーがリズに告げると、リズがゆっくりと立ち上がり、くるりとその場で回る。


「おぅおぅ……。よう出来ておる。我が孫娘は美しいのう……。ふむ、その首の石は?」


「こちらは、ヒロが用意した石になります。南の海、人魚よりの献上品になります」


「ほぉ……。何とも言えぬ柔らかな輝きだ……。石と言えば色に合わせたきつい光を放つが、何とも言えず儚い……。まるで夢の中を揺蕩うような光よのう……」


「南の海の貝が長年をかけて作り出した美です。幾重にもその身を石にまとわりつかせた結果ですね。厳密には宝石とは違いますが、負けず劣らずかと考えます」


 フォローを告げるが、ロスティーの目は真珠に釘付けだ。


「まだ、残余は有ります。ネックレスと言わず、耳元や指輪などの加工でも美しいかと思います。奥様の為、ご用意致しましょうか?」


「お……おぉ……。そうか。いや、すまぬ。あまりに変幻する光に心が奪われておった。これは、美しくも儚い。何とも言えぬ思いが心によぎる……。美しいのう。よう似あっておる。大切にせよ」


 ロスティーが夢から覚めたように、呟く。


「ふむ。お嬢も随分と感じが変わったな? この短期間で何が有ったと言うのか?」


 ロスティーが食卓周りを見回し、不思議そうに言う。


「アキヒロ殿より、お風呂と言う物を体験させてもらいましたが、それが要因かと。私も変化には驚いていますよ」


 ベティアスタがロスティーに答える。


「ふむぅ。特許の件でも四苦八苦させおったが、まだまだ引き出しが有るか。我が孫は多才よのう」


 ロスティーが高笑いをする。腹に物が入り、少し落ち着いたのか、憔悴の色は引き、血色も良くなってきた。若干険のあった瞳もいつもの柔和なものに変化している。

 初めは静かに進んでいた食事もロスティーが落ち着き、話し始めたのを切っ掛けに、賑やかなものに変わる。その雰囲気に合わせ、ロスティーも徐々に穏やかな雰囲気を帯びていく。


 話を聞くと、湯たんぽとクッションは使ってもらえたようだ。


「湯たんぽは良いな。流石にこの歳になると、寒さが堪えてな。馬車での移動の際は節々が痛むが、暖かいと言うのは本当にありがたい。クッションは馬車の折もそうだが、もう寝る時は欠かせぬな。本当に助かった」


 ロスティーがリズに向かって、クッションの礼を述べる。少しはにかみながらリズが頭を下げる。リズが嬉しそうに、顔を向けてくるので、頭を軽く撫でる。それに合わせてリズが瞳を閉じる。ふふ、タロみたいだ。


 食事が終わり、席を立つ段になった時、ロスティーより声がかかる。


「我が孫よ、偶には一局付き合わぬか?」


 リバーシのお誘いか?親子でよく似ている。若干の苦笑が浮かびながら首肯する。リズにはドレスを処理してからタロの世話を頼んだ。さて、どのような話をしたいのやら……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、感想、評価を頂きまして、ありがとうございます。孤独な作品作成の中で皆様の思いが指針となり、モチベーション維持となっております。これからも末永いお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます。 twitterでつぶやいて下さる方もいらっしゃるのでアカウント(@n0885dc)を作りました。もしよろしければそちらでもコンタクトして下さい。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ