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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第292話 輝くお姉さんは好きですか?

 目を覚ますと、体のだるさは大分取れていた。変な体勢で寝ていた所為かお風呂上りでも若干体がだるかった。リズを起こさないように注意しながら窓を開けると、晴天が広がっている。25日は晴れか。ロスティーが戻るのならば好都合だろう。

 暖炉に薪を足して、部屋を暖める。昨日早めに寝た所為か、タロが起きて箱の中でちょこんとお座りをしている。体全体から構ってオーラを出している。

 箱からタロを出すと、足元に擦り寄ってくる。


『ねないの……ねたの……あそぶの?』


 昨日の晩、お風呂で寝たのを覚えているのか。少しずつ賢くなって記憶も残るようになってきている。暖炉の前で胡坐をかき足の中にタロをすっぽりと入れる。


『あんしん、まま』


 膝に顎を置く感じで、ちょっと丸くなる。部屋が暖かくなるまでとブラシで全身の毛を整えて行く。元々銀の強い毛並みだが、()くとキラキラと輝く。ブラシの刺激が心地良いのかうっとりした顔になる。


『まま、きもちいい』


 犬ってブラッシング好きだったなと思いながら、細かい部分も含めて梳いていく。背中周りが終わると器用に体を半回転させて脚を曲げてお腹を出す。腹もブラッシングしろと。優しくブラッシングしているとはっはっと口を半開きにしてしっぽがぴくぴく動いている。

 おしまいとブラシを置くと、きょとんとした顔で固まり、ブラシを咥え、差し出してくる。


「全身終わったよ?おしまい」


『まま、もっと……』


 何度かブラシを咥えて目の前に落とすが、拾わないと諦めたのか再度膝の上に戻る。背中を撫でると安心するのか目を細めてうっとりした顔つきになる。マズルも伸びて、表情も豊かになってきた。


 部屋が暖まった頃合いでタロを下すと、リズを起こす。


「リズ、そろそろ起きよう」


 揺らすが、目を覚まさない。身じろぎはするが、逆方向に転がっていく。ふむ。耳元に口を寄せる。


「朝だよ、起きよう」


 ふっと軽く息を吹きかけると効果覿面のようで、ばっと上体を起こす。


「ヒロ! また耳を……。もう、おはよう……。舐めたりはしていないのね」


「ちょっと息を吹きかけたくらいだよ。さぁ、暖まってきたから用意しちゃおう」


 そう言って、タライにお湯を生み、洗顔と歯磨き、髪の毛のセットを行う。朝日を浴びて、金の糸が独立し、輝いている。


「いつも綺麗だけど、今日は特に綺麗だね。昨日のお風呂の効果かな?」


「え、そう? ありがとう、嬉しい。でも、指通りも気持ち良いし、やっぱりお風呂って大事だね」


 リズが嬉しそうに、髪の間に指を通す。その度にさらさらと流れ落ちる髪が艶っぽい。


「ベティアスタさんはどうなっているだろうね?」


「昨日の晩でもかなり綺麗になっていたよね。蝋燭の明かりだからはっきりとは分からなかったけど。喜んでくれるかな?」


「折角だから、喜んでくれると嬉しいね」


 そんな話をしていると、扉がノックされる。侍女が朝食の旨を伝えてきた。タロの方を見ると、暖炉前に丸くなって、待機状態になっている。素早い……。


 食堂に向かうと、椅子に腰かけたベティアスタがニコニコ顔で出迎えてくれる。


「おはよう、2人共。昨晩は手数をかけた。本当にありがとう」


「おはようございます。美しくなられましたね。姿見は確認されましたか?」 


「おぉ。朝日が昇ってすぐに確認したが、全身からくすみが取れた感じだな。驚いた、あの短時間でここまで変わるとは。それにこの髪だ。朝起きて指を通した時の感動は忘れんな」


 ベティアスタが珍しく興奮して話している。リズと手入れに関しての話に花を咲かせ始めたので、私も席に座る。


「おはよう、皆。今日も良い天気だね。あれ? お嬢、何か変わったかな? 印象が違うけど」


「ふふふ。リズさんより、綺麗の秘訣を教えてもらったのだ。見よ? 違いが分かるか?」


「全体的に輝いているけど、髪は随分変わったね。はは、魅力的になったよ」


「世辞では有るまいな?」


「誓って。でも、ここまで変わる手段なんて有ったんだ? 君、まだ色々隠している?」


 ノーウェの矛先がこちらに向かう。


「隠しているも何も、村の方ではもう流通していますよ?」 


「え?」


「リズの実家で生産していますし、村内では流行中です。需要に供給が追い付いていないので、村内で完結していますが」


「自分の足元でそんな事が動いているなんて、気付いても無かったよ。でも、お嬢の様子を見ると、確かに違うね。これ量産的にどうなのかな?」


「そうですね。材料の入手難易度的には難しくは無いですが、配合等は秘密ですね。村の分は今後も猟師の家で続ける予定ですし、『リザティア』の方でもっと良い物を扱うつもりですよ」


「良い物と言うのは、他にも種類が有ると言う事か?」


 ベティアスタが食いつく。


「今ですと、若干臭いが残りますが、それも無い物を量産出来ればと考えています。香油の香りだけに包まれる感じでしょうか?」


「おぉ、それはますます楽しみだな。ふむ。向こうでも風呂文化と言うのは広めねばなるまい。引退した水魔術士の再雇用先にもなるだろうしな」


 ベティアスタが一人納得したようにうんうんと頷く。


「えっと、話が見えないんだけど……。量を作れそうなら、町にも卸してもらえるかな?」


「大量の湯が必要になりますので、薪の問題が発生します。その辺りをどうするかですね。水魔術士と言うのも選択ですし」


「湯が必要? 汚れを洗い流す感じの物なのかい? 良く分からない。んー。侍女を何名か付けるから、試してもらっても良いかな? その報告を聞くよ」


 ノーウェが頭の上にハテナマークを浮かべながら、要望を出してきた。リズの方に確認するとOKっぽいので了承しておく。


 そんな感じでがやがやと騒がしく、朝ご飯が進んで行く。ベティアスタは一人満面の笑顔だ。ノーウェは良く分からないなりに褒める方向性で攻めている。


 さて、政務話が終わる頃にはロスティーは戻ってくるのかな? 無事な姿を見られるのは幸せだな。そんな事を考えながら、楽し気な食卓を囲んだ。

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