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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第279話 お辞儀一つ取っても意味が有ったりと、実は面倒臭いのです

 食堂に着くと、リズがちょっと憔悴した顔で座っていた。


「疲れた?」


 聞くと、リズが顔を上げて、首を横にふるふると振る。


「嬉しいから頑張るけど、型紙合わせと、体の寸法を測るのと、どう言う形にするかを細々聞かれるから、もうドキドキし続けているよ」


「まだ、時間はかかりそうなの?」


「もう、終わりかな?あ、そうそう。タロの朝ご飯、あげたよ。お昼はどうする?」


「打ち合わせは終わりの予定かな? 私が後であげておく。後、ちょっと耳を」


 そう言って、リズの耳にこしょこしょと呟く。


「あ、それ良いね。こっちももう少しで終わるから、終わったら一緒に手伝うよ。喜んで下さるかな?」


「長旅だからね。有ると便利だと思うよ。沢山作って渡してあげよう」


 2人で笑い合っていると、ロスティーが声をかけてくる。


「我が孫娘よ。どうだ? 気に入った物は出来そうか? 慣れぬ事で辛いかと思うがもう少し辛抱しておくれ」


 ロスティーがにこやかと言うか、ちょっとデレデレとした顔で言う。まぁ、心理的に辛い事が有るんだ。少しくらい楽しみが無ければやっていられないだろう。


「はい。良くして頂いています。完成図を見ている限りは大丈夫だと思います。でも、本当に私なんかがよろしいのでしょうか?」


「構わん、構わん。我が孫はあまりそう言うのは好まん故な。孫娘に服を贈るなど初めてだからな。心が躍る」


 良く見てらっしゃる。若干覆っていているように見えた暗い気配も払拭されている。そう言う意味では良い気分転換か。


「さぁ、料理が冷めちゃうよ。食べよう」


 ノーウェが言って、食事が始まる。午後に関してだが、方針部分は明確になったし、細部に関して話は終わったので私は一旦お役御免らしい。散歩がてら買い込みに行くか。

 リズはもうちょっとかかるらしい。後の手伝いの方をお願いしよう。


 そう思いながら、食事を進める。


「リナ、レイ、警護の方もそうだけど、大体の日程が読めた。後13日程度はこちらでいないと駄目だ。今なら大きな影響も無い。半月程滞在する旨を村に伝えてもらう事は可能かな」


 そう言うと、リナとレイが顔を合わせる。2人で色々と相談し、結論としてはリナはこのまま残し、レイだけで村を往復して伝えるとの事だ。


「私だけなら、行って帰るだけですので、ご心配なさらず。ご家族の皆さま、お仲間の皆様にはその旨をお伝え致します」


 レイが目礼をしながら言ってくる。リナは護衛として残るか。散歩の時とかもいつの間にか警護に就いているしな。まぁ、妥当か。


「分かった。寒い中で申し訳無いけど、お願い出来るかな。色々有って子爵様の伝令を使うには都合が悪い。よろしく頼む」


「畏まりました。荷物の方は今日中に揃えますので、明日、明後日との移動になります。ご留意下さい」


 レイが言ってくるのに、頷きを返す。


 食事を終えて、リズと部屋に戻ると侍女がタロの昼ご飯を渡してくれる。部屋に入ると、部屋の中でトタンパタンと転がりながら玩具で遊んでいたタロがこちらを向き、しっぽを振り出す。


『まま!!さみしい!!』


 だっと飛びかかって来て、ぺろぺろと顔を舐めてくる。確かに、寝ていたので昨日の晩以来か。一匹でこの部屋でいるのも心細いか。家ならティーシアが相手をするだろうし。


 侍女から預かった昼ご飯をタロにあげる。イノシシ肉にモツ、それに鳥の頭を煮た物か。良くご存じだ。モツも胃袋等も含まれている。敢えて洗っていないのは内容物がそのまま栄養に変わるからそうお願いした。腸は洗ってもらった。部屋が汚れそうだから。


『まま!!イノシシ!!シャクシャク!!うまー!!』


 タロ的にはもう、豪華なラインナップだ。予想通り、イノシシを噛みちぎりながら喜び、モツのコリコリを噛んでは喜び、鳥の頭をシャクシャクしては喜んでいる。嬉ションしないと良いけど。


「体は大きくなっているけど、本当に子供だね。可愛いけど、ちょっと大きくなっているから、手加減はさせないと子供とかに同じ勢いで飛びかかると怖いわ」


 リズが食べる様を見ながら言う。


「うん。その辺りは少しずつ躾けているけど、自分の体のサイズの把握、認識ともズレが有るんだろうね。この時期は凄い勢いで大きくなっているから。きちんと教えたら大丈夫だと思うよ」


 今で大体若い中型犬くらいは有るのかな?マズルは伸びて、もう狼っぽい。あぁ、あの丸っこいタロがいないのは寂しいが、成長は喜ばしい。

 食べ終わり、皿を舐め終わったのを確認し、水を生み皿に満たす。ペロペロと舐めて飲んでいる。


『うまー、まま、ねゆ?』


 食い気が満たされたら、ちょっとご休憩か。獣らしくて笑える。箱に戻してあげると、毛皮に潜り込む。丸くなり、ひょこっと頭を出す。じっとこちらを見るので、頭を撫でてあげると、徐々に頭を下げて、うとうとし始める。


『ままー、すきー』


 タロがそんな事を思いながら、スヤァと寝息を立て始める。まぁ、少し経てば食休みも終わり、遊びをせがむだろう。その時に散歩に連れて行ってあげるか。


 リズは背後で立って、こちらを眺めている。


「見てて楽しい?」


「うん、きっとヒロって、良いお父さんになるんじゃないのかな? 私より子供の扱いが得意そう」


 リズがうんうんと頷きながら答える。


「そんな事言って、子供の面倒を任されても困るよ、奥様。リズの愛が子供にとっては重要なんだから」


 そう言って振り向きざまに唇を奪う。


「手伝える事は手伝うよ。でも、お母さんはリズだから。頑張ろうね」


「はーい」


 にこにこと笑いながらリズが手を挙げる。


 食休みと言う事で、リズは暖炉前のソファーで物語を、私は引き続き特許関係の書類の処理を進めている。


「リズ、さっきの話の件だけど、服飾屋が来ているのならついでに話をしたい。構わないかな?」


「私は良く分からないけど、町の服飾屋さんだから大丈夫じゃないかな?」


「じゃあ、一緒に行こうか」


 書類の内容を確認しながら聞く。あ、これ駄目だ。舞台装置に関わる特許だけど、装置の全体が一式で特許にされてる。各部の構造に意味が有るのに、一式だとちょっと違う形で真似される。注釈を付けてカビアに差し戻す。


 そんなゆったりした時間を過ごしていると、扉をノックする音が聞こえる。侍女が、リズのドレス作りの続きをと告げて来る。私も服飾屋に用が有ると言うと、そのまま一緒に誘導された。


 部屋に入ると、向こうが挨拶をしてくる。前に見た店員さんでは無く女性でもそこそこのお婆ちゃんだ。でも背筋はピンと伸び、凛々しい。


「男爵様ですね。初めまして、テクァンテシアと申します。以後、どうぞお見知り置き下さい」


 そう言いながら、優雅にカーテシーに近いお辞儀をする。うわぁ、この手の儀礼的行動もこの世界に有るのか……。カビアに資料を貰っておこう。


「はじめまして。妻のドレスの件、ご尽力ありがとうございます」


「いえ。素晴らしい体形ですので、私共(わたくしども)も遣り甲斐が有ります。男爵様はご見学ですか?」


 テクァンテシアがにこやかに聞いてくる。


「いえ。少し、布と綿の在庫を緊急で欲しくて、その確認が出来ればと思いまして」


「そうですか……。どの程度が必要でしょうか?」


 そう問われたので、前の設計図を差し出して、説明する。8個も有れば部下の分も何とかなるだろう。正直1日でそれ以上作るのはきつい。


「なるほど……。そうですね。もう綿の時期も終わりですので、在庫は御座います。店に人を走らせますので、布と一緒にすぐにお持ち致します」


「お代の方なのですが、こちらでお支払いしても良いですか?」


「どう致しましょう? ドレス作りでお預かりした額が大分余りそうですので、そちらに合して頂いても結構ですが」


「それは避けます。その支払いをした人間に贈りたい物ですので。では、こちらをお納め下さい」


 そう言って、10万ワール金貨を握らせる。大体1個1万なので釣りが出る程度だろう。持って来てもらったりの手間賃だ。


「まぁ……。分かりました。急ぎ対応させます。マーシア、貴方この分の在庫を急ぎ領主館にお持ちするよう手配を。宛先は男爵様で。布の裁断はイクシアに頼みなさい。運ぶのは男衆に。急いで」


 テクァンテシアが若い女性に紙を渡すと、若い女性が飛び上がらん勢いで動き始める。


「ご主人様は奥様のドレス姿を見られますか? ざっとしたイメージは掴めるかと思いますが」


「私は、楽しい事は後に取っておく趣味ですので。出来上がったのを愛でます」


「まぁ。分かりました。では、ここからは私共の領分です。殿方はご遠慮願えますか」


 テクァンテシアがそう言うので私は軽く頭を下げて、辞去する。


 部屋を出て、今日の予定を確認する。湯たんぽはもう町に在庫を流し始めているとネスは言っていた。ならばこっちで買えるか。雑貨屋かな。まぁ、回ったら良いか。タロが起きるまで待っていたら在庫を届けてもらえるだろう。うん、部屋で待つか。

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