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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第269話 問題が大きいと処理が面倒ですが、細かくすると結構簡単な話です

 目を覚ますと、窓から光がほのかに漏れ入っている。窓を開けると、冷たい空気が入ってくる。若干雲は有るが2月10日は晴れだ。ロスティーも移動中なので、良かった。 

 暖炉の調整をしてベルを鳴らすと、昨日と同じく侍女がタロの食事と朝ご飯の旨を伝えてくれる。


 タロに声をかけると、すぐに起きる。鳥をあげて、リズを起こす。耳元は駄目らしいので、普通に揺さぶるが、昨日早かったのも有ってか、すぐに起きる。


「おはよう、リズ」


「んー。おはよう、ヒロ。あー、今日は楽かも。寝た感じがする」


「最近、お疲れが続いたからね。今日は予定通り、公爵閣下との話が有ると思う。申し訳無いけど、その際はタロの事、頼めるかな?」


「分かった。散歩でも一緒に行っておくね。色々見て回ったけど、まだ回り切れていないし。中も見ていないから」


 ノーウェの町だけあって、治安は良い。女性の一人歩きでも問題は無い。


「うん。念の為、装備だけはしっかりとね」


「ん。ヒロも大変だけど……頑張ってね。ヒロしか出来ない事だと思うから」


 リズがそう言うと、すっと抱きしめてくれる。


「リズと生きる幸せな世界を作るって決めたんだ……。その為には頑張るよ」


 髪の間に唇を寄せて、安心させるように抱擁する。少しずつ強張りは解ける。リズも手出し出来ないから、少しストレスが溜まっているかな……。昨日はゆっくり出来たけど、村に戻ったら少し休みを取ろう。働き過ぎだ。


 タロの皿に水を生んでいると、ノックの音が聞こえる。


「さぁ、朝ご飯にしよう。皆待っているよ」


 タロに待機をお願いすると、大人しく骨の玩具を齧り始める。


 食堂には、皆がもう着席していた。少しして、ベティアスタ、そしてノーウェが入ってくる。


「さぁ、今日は長丁場になる可能性が高いよ。大変かと思うけど、皆、頑張ろうね」


 ノーウェの挨拶で食事が始まる。

 私は、リナとレイに日程調整の旨を告げる。予定よりは長めになるが、この世界、何が有るか分からないので1日2日の遅れは気にしない。もっと延長するようなら動くと言う形で話はまとまった。

 カビアは引き続き、建築中の領地で膨大に発生している新規の特許の処理に奔走してもらう。歴史を進め過ぎるのもあれなので自重はしているけど、必須の部分だけでも膨大な量になっている。若干カビアが憔悴しているのは……。まぁ、しょうがないかな……。どうせ、最終報告は私も見ないといけないので、辛いのは私も同じだ……。ノーウェの政務官も処理が滞っているので困っている……。爺ちゃん、嬉しいけど、重いよ……この作業……。


 ベティアスタも書類関係は粗方書き上げたらしく、少しほっとした顔で食べている。荒んだ眼も少しは和らいできている。話すだけでも少しは違うのだろう。


 朝食を終えて、部屋に戻る。リズは、髪の毛を結って髪飾りを着けて姿見とにらめっこをしている。どこの世界の女性もこう言う所は変わらないのかなと苦笑が浮かぶ。

 私は、タロと一緒に暖炉の前でのほほんとしている。若いのに、大人しい。外が寒いのを分かっているのか、暖炉の前で丸まって撫でられるままだ。後でリズに散歩を頼むつもりなのだが……。


 そうやって、雑談混じりに時を過ごしていると、玄関側が騒がしくなる。侍女を呼ぶとロスティー達が到着したようだ。まぁ、ノーウェとの話し合いが先だろう。思ったより早かった印象かな。


 リズが若干不安そうだが、ソファーの上で宥める。


 お昼時だろうか、侍女から呼び出しがかかる。ロスティー達との会談らしい。リズには別で昼を食べてタロの対応をお願いし、応接室に向かう。


 侍女のノックの後、扉が開かれると、懐かしい顔が立っている。


「お久しぶりです。ロスティー様。若干痩せられましたか?あまりご無理は禁物かと」


「おぉ。久しい。はは。痩せもする。いやぁ、此度の予算会議は問題無かったが、その後がな。どの程度話は聞いておる?」


「子として聞ける範囲は粗方かと」


 そう言うと、ノーウェが頷く。


「そうか。お嬢が来る前に陛下の件から話をするか。まぁ、座りなさい」


 ロスティーが席を勧めてくるので、ソファーに腰を下ろす。すかさず配られたお茶のカップを傾け、口を湿らせる。


「あまり良い状況ではないとお聞きしましたが?」


 好々爺然とした表情は崩さないが、目の下のクマや、目の中の光には若干陰りが見られる。きつい状況っぽいな。


「陛下……いや、あの馬鹿兄が、とんでもない……。酒の席とは言え、有り得ん話だ。王家の家宰(かさい)を締めあげたが、東の国は親故に特別に利権をなぞとほざいたらしい」


 あー。何も考えていない。独立した経緯も、その後の歴史も、苦労した人の気持ちも踏みにじっている。国を自分の物とでも思っているのか?


「この一言で、両国外交の力関係が大きく崩れた。もう300年も前から名目上他人だった国家間で親子関係なんぞが再燃している。向こうが言い出した話なら、突っぱねられるが、こちらが言い出した事だからな。収拾がつかんな……。向こうの外交も嬉々と広めておる。苦労せずにこっちに介入出来る機会を得たのでな」


「酒の席でしょう? まぁ、諾成契約とは言え、特別な利権次第かと思いますが。そこまでこじれますか?」


「冒険者ギルドの件は、元々各国の合議制に移行する予定だったからな。そこまでは気にしていない。あくまで議長国として我が国が責任を担保するだけの話だ。問題はそもそも契約できっちりと分けられた国に親子なんて訳の分からない関係が存在し、それを国の主権者が言った事だな。こちらの方が大きい」


 あー。どうせ、冒険者ギルドはワラニカ王国だけで回せるものじゃない。一旦の責任者になるけど運営は各国の合議制にするか。まぁ、最終的にはその責任もゆっくりと移譲して行く筈だったのだろう。

 それに国の主権と言うのはとても重要だ。これが無い国は国じゃない。主権が認められると言うのは、それだけ大きな意味を持つ。その主権者の言葉だ、重い筈なんだが……。むぅぅ、縊りたい。


「向こうの外交官も強かでな。さっさと国に戻って、喧伝に奔走しておる。ワラニカ王国は子としてダブティア王国に組み込まれたがっておると。まぁ、大袈裟な詭弁だがな。外交官の得点になるので誇りたいのだろうが、向こうの貴族連中も困惑しておる。ワラニカ王国全土を管理出来る程の力が有ればそもそも300年前に分かれる事も無いでな」


 現場も上層部も迷惑な話だ。潰せば良いのに、何故潰せない?


「お言葉ですが、両国に対してあまりにも不利益な話ですが、何故そこまで盛り上がりますか? 上層部に都合の悪い話であれば黙殺して潰せば良いだけでは無いでしょうか?」


「ユチェニカの愚物とそれに寄生する商家が一気に広めておる。実効支配、全ての富はダブティア王国の物と過激な事を言うのはあの周辺だけだが、他の貴族も儲けには聡い。日和見に入った馬鹿が多いのだ」


 あぁ、そこで出てくるか。伯爵で根回しも出来ないと言ってもくっついている商家は違うか。あー、面倒臭いのに手足が付いたな……。


「侯爵と違い、儂なら公爵権限で王権に関わる業務の代行は出来る。此度の件は一度ダブティアに赴いて綺麗さっぱりと無かった事にするしかない。下手をすると引責と言う可能性も有る……」


 おいおい。爺ちゃん引責したら、この国潰れるぞ。


「んー。此度の件は陛下の不注意な一言に有ります。それは我が国の失態です。ただ、それを煽って事を荒立てているのはユチェニカ伯爵ですよね?」


「そうだな」


「このままでは、望まずとも両国間に戦端が開かれます。そうなれば泥沼でしょう。儲けの無い話ですから、双方の引き際の無い、永遠とも言える戦乱の始まりです。ダブティア王国は我が国を併合しないと収まりませんし、我が国はダブティア王国が攻めてこないと確定出来るまで終わりの無い戦争です」


「うむ」


 苦々しそうに、ロスティーが頷く。


「では、問題を簡素にしましょう。この話が盛り上がるのはユチェニカ伯爵が利の有るように喧伝するからです。これを両国への騒乱罪、及びダブティア王国への国家反逆罪と認定してしまいましょう」


 そう言うと、ロスティーとノーウェが目を見開いて固まる。


「人類生存圏の拡大は、人間全員の悲願です。これを邪魔する有象無象にかかずらっている暇は有りません。両国共同の元、一気に包囲殲滅し、禍根の根は絶つべきです。その根回しは可能でしょうか?」


「う……うむ……。それは可能だが……。えらく大きく出たな……。ふむ……しかし、妙案は妙案か……。こちらが気を使う必要も無いか。向こうの国の問題だしな」


 その後は実際の実行に関する問題を上げては潰していく。地方での問題処理は最近の地球でも良くある事だ。問題を細分化し、一気に解決策を提示していく。


「はぁ。政治決断も出来ちゃうかぁ。しかも問題が無いよね……。うぅん……。これならいけそうかな?」


「兎に角まずは、問題の膿を出し切りましょう。そうしないと話が始まらないです」


 そう言うと、地図と執事に白紙の紙を大量に用意させた。


 さて、現代の政治の怖さ、組織と敵対した恐ろしさを思い知らせてやる。私の、リズとの幸せな生活を邪魔するのだ。苦汁を舐めてから後悔してもらう。

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