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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第247話 海鮮系の食材は兎に角醤油が欲しいです、早く開発したいです

 浜から海の方に向かうと昆布お化け3人が色々詰まった網を引き摺って器用に跳ねて、波打ち際から移動してきていた。


「あ、お久しぶりです、ヒロさん」


 見覚えの有る人魚さんがこちらに気付いたのか手を振ってくる。


「お久しぶりです、ベルヘミアさん。凄い荷物ですね……。すみません、大変でしたでしょ?」


「いえいえ。元々獲物は豊富ですので。集めればすぐです。ちょっと海藻を採るのに寒い海に潜ったので、火を借りても良いですか?」


 見ると、少し唇が紫っぽい。うぉ、無理してるじゃん。荷物を下してもらい、背負って焚火に3人を運ぶ。足が持てないので、腕を支えての移動だ。足ひれが傷つかないように細心の注意を払う。


「うわぁ、温かい。やっぱり火良いね。皆、ずるい、私も交渉に参加したい」


 朝会った人魚さんが口を尖らして、他の2人に言う。


「貴方にはまだ早いわよ。もう今日も勝手に話を決めちゃうんだから。先方にも先方の都合が有るのよ?それも聞かないで、全く」


 最後の会った事が無い人魚さんが、若い人魚を(たしな)める。


「失礼しました。(わたくし)この集落の渉外交渉担当のガディミナと申します。こちらはポリミリアです」


 目礼をしながら、人魚さんが挨拶をしながら、若い子を紹介してくれる。


「ポリミリアです。よろしくお願いします」


 若い子がちょこんと頭を下げる。


「ベルヘミアは集落の長になります。まぁ、合議制なので、長と言っても調整役となりますが」


 ガディミナがベルヘミアを指して紹介してくれる。あぁ、長だから内情にも詳しかったのか。

 そう思っていると、ベルヘミアが照れたように髪を撫でながら、話し始める。


「長と言っても100人程の集落です。そもそも私達に大きな集落と言うのは存在しないですし、大体住む場所で決まります。元々もっと西側で住んでいましたが、人数が増えたので東側に移動して来ました。こちらでも交流が出来るとなるとありがたいです」


「食料的にメリットってあまり無いと思いますが、人魚側でもメリットが有るんですか?」


「パンや肉の加工品等と海で採取出来る物を交換していましたが、食べ物が変わる事によって全体的に成長が変わりました。体つきが大きくなりましたし、体力も上がりました。短時間での作業では大きく効率が上がりましたね」


 炭水化物や動物性たんぱく質、油分等の影響なのかな?消化に関しても問題無いらしい。人間だからそれもそうか。

 他にも寿命の話なんかも向こうから振ってきたので聞けたが、基本的にはエルフ的に青年期が長く続き、その後は緩やかに歳を重ねるらしい。寿命は人間より少し長い程度だ。


「あ、これ皆様と一緒に食べられればと思いまして。いつも食べている物なので、毒の心配は無いです」 


 昆布とは別に、網で包まれた荷物を開けると、50cmクラスの石鯛や伊勢海老みたいな立派な海老、ホタテみたいな貝や牡蠣みたいな貝、それにハマグリっぽいのまで有る。イカや他にも色々と有って食べきれるのかと言う量だ。

 鯛のアラで出汁を取って、ハマグリっぽいのはすましにしよう。他は鉄板焼きで良いかな。鳥も何羽か狩ってくれているので、それも一緒に焼いてしまおう。『認識』先生も貝毒は無いと言っている。牡蠣はちょっと怖かったが問題無いなら網焼きで良いかな。


 取り敢えず、昆布は乾燥の為に、岩場に重しを置いて広げておく。30枚くらいの大物が有るんだが……。馬車が昆布臭くなりそうな気がする。

 集めてもらった食材を真水で洗い手早く捌いていく。イカは洗う前に皮を剥いてしまう。真水に浸けると一気に剥きにくくなった記憶が有る。薄皮辺りからべろりと剥けると気持ちが良い。


『まま、におい、ちがう?』


 人魚さんの方に恐々近寄ったタロがおっかなびっくり、こちらに戻ってくる。


『にんぎょ、だよ。遊んでもらう?』


「狼の子なんですが、一緒に遊んでもらっても大丈夫ですか? 名前はタロと言います」


「あ、はい。狼なんですね。犬は西の方の村で見ましたが、狼は話で聞いただけです。ほら、タロ、おいで」


 ベルヘミアがタロを優しく招く。恐々と近付き、手をクンクンと嗅ぐ。慣れたのか撫でられるままになり、そのまま抱きかかえられる。

 舐めるとしょっぱいのが新鮮なのか、ぺろぺろ舐めている。んー。塩分の取り過ぎにならないと良いけど。


「くすぐったい……。でも可愛いですね。中々飼い犬とかでも触る機会は無いのでちょっと嬉しいです」


 そう言いながら、優しい顔でタロを撫でつける。


『まま!!にんぎょ!!うまー』


 人魚さんは食べ物じゃない。過剰な塩分は控えていたが、塩分に飢えていたか?でも生肉で十分に塩分の補給は出来る筈だが。

 地面に下りたタロが人魚さんのあしびれを甘噛みするが、そもそも硬いので全く歯が立たない。カプカプするのが楽しいのか、延々噛んでいる。人魚さん達も穏やかな顔で撫でている。


 鍋に鉄板に網焼きと3種が可能な範囲に焚火を広げる。鍋にはお湯を生み、熱湯で洗って臭みを取ったアラを投入する。頭の鱗はもう泣きながら剥した。念の為、後で濾そう。


 海鮮類は一口大にぶつ切りにしていく。伊勢海老は人数分を超えて有るので半分に割ってそのまま網焼きだ。牡蠣も薄手の短剣を差し込んで貝柱を切って開いていく。丸々太ってぷりぷりしている。時期的には今なのか。3月頃から産卵期の筈なので今が旬か。


 石鯛は三枚にしたのを皮の方から焼く事にする。生で皮を削いだのを入念に骨抜きをしてタロの皿に乗せる。


『タロ、たいだよ』


『たい?』


 皿の上の生の魚にちょっと引き気味に匂いを嗅ぐ。良しをしてもがっつかない。クンクンと匂いを確かめる。最終的にちょっとだけ舌を出して舐めてみて、洗って残った塩分を気に入ったのか、はぐっと噛みつく。むちりっと噛みちぎり食べ始めると、一気に止まらなくなった。


『まま!!たい、うまー!!うまー!!』


 うーん……。塩分がどうもヒットしている気がする。皿まで舐めている。後で水を多めに飲まそう。


 ガディミナとカビアは政務系の話をしている。他の2人は海の話を皆としている。平和に交流してくれているようで良かった。


「ヒロ、後の準備は?」


 リズとロット、ティアナが大混乱中の現場を手伝ってくれる。


「鯛のアラの出汁がそろそろ出るから、一回布で濾して。でそのままそこの大きな貝、そうそれ。それを入れて火にかけて。口が開いたら、火から降ろして」


 そう言いながら、鉄板の上の海鮮が縮まない程度に火を通していく。新鮮なので生でも食べられるが、まぁ、そこは火を通す事で出るうま味も有る。がんがんの強火で表面を焙り、水分を閉じ込める。それでも出るエキスと鳥肉を絡める。最後にネギもどきを刻んだのをふりかけて、塩胡椒で微調整だ。

 網焼きの上の牡蠣はふっくらと、半分に割ってゴミを取り除いたウニも芳醇な香りを漂わせている。先に焼いていた伊勢海老はジュクジュクと真っ赤になっている。そろそろ出来上がりか。


 土魔術で大皿を何枚か用意して上に乗せていく。流石に、この分量を乗せるだけの大皿を何枚も作ると過剰帰還が来る。うわ……久々だ……。気持ち悪い……。


 こちらの顔色を見たのか、リズがフォローに入ってくれる。


「ヒロ、顔青いよ? 無理した?」


「皿を作るのに、ちょっと無理したかも……。でもすぐに治るよ」


「もう……。」


 少し怒った表情で、リズが頬を膨らませる。

 それを宥めながら過剰帰還に気を付けながら、取り分け用の大きめの匙と人魚さん達用の匙、カップや皆の小皿を作る。この辺りはそこまで負荷がかからない。


 馬車から保守部材用の板を何枚か持ってきて、高めの岩を足に即席のテーブルを作る。流石に大規模なテーブルを作られる程土魔術が上がっていない。1.00超えたらいけそうな気もするが。


 テーブルに皿を並べて、皆を呼ぶ。 


「人魚の方々との交友とこれからの海の村の発展を祈って、本日の宴席となります。では、食べましょう」


 そう言うと、前に海鮮系を食べ慣れたメンバーが大皿からどんどんと持って行く。カビアとレイはちょっと出遅れた。人魚さん達は鳥に興味が有るようだ。


 私は折角なので大好物の熱々の伊勢海老の焼いたのからいく。匙で殻の底から掬うとずるりと立派な身が外れる。行儀悪く、しっぽの方からざくりと噛みちぎる。程々に火が通った海老はざくざくとした食感は残しながらも、噛む度に汁気を吐き出す。大きめに頬張った所為か、口から溢れんばかりだ。エキスを堪能しながら味噌の部分と和えながら食べるのもまた濃厚で美味い……。


「前に食べた時も美味しかったけど、今回、もっと美味しい!! 何か複雑な味がする。でも、この白いの前と同じだよね? 美味しい!!」


 フィアは相変わらずイカ好きだ。海鮮系はミックスの種類が増えたので、より複雑なエキスになっているだろう。ロットと色々分け合いながら一緒に食べている。


「前の潮汁でしたか? あれも美味しかったんですが、これ、もっと複雑です。この大きな貝が美味しいですぅ……」


 チャットはすまし汁のハマグリに夢中だ。


「見た目がちょっと気持ち悪いけど、中は濃厚で美味しいのね。磯の香も生臭いのはあまり好きじゃないけど、焼いたこの香りは良いわね……」


 ティアナは焼きウニを食べて恍惚とした顔をしている。しかし渋好みな……。ドルも激しく頷いている。ドルもモツといい、ちょっと外したのが好きだ。


「はふはふ……。これ、凄く濃厚な味がします。ちょっと苦い感じなのでしょうか。でも甘くも感じて不思議です。でも美味しいです!!」


 ロッサは焼き牡蠣が気に入ったようだ。にこにこと微笑みながら牡蠣を食べ、残りのエキスを啜っている。


(それがし)はこの魚で御座るな……。海の魚は町でも食べ申したが、どこか気の抜けた印象で御座った。これは何とも芳醇でなんと身のふわふわした事か。美味い、美味いで御座る」


 リナは塩漬けの魚を戻したのを食べた事が有るのかな?確かに塩を抜く時にうまみも抜ける。それに水で塩気を抜くと、焼いてもふわふわとはしない。外はさっくり、中はふわっとだ。


「これ、鳥だよね?でも村で食べたのと違う。凄く美味しい! 何だろう、海の香りもするのに、その美味しさだけが鳥に移った感じかな? 何だか嬉しい!!」


 ポリミリアがちょっとフィアっぽく喜んでいる。人魚さん達は中々食べられない鳥から攻めている。


 最終的には混沌となり、争奪戦になった。伊勢海老とかちょっとグロイ系かなと思ったが、皆、普通に食べている。蟹の時もそうだが、皆、逞しい。食べられる物は食べないと生きていけない。きっと私が食べられない物でも食べられるんだろうなと思う。蜂の子の佃煮まではなんとかいけるが、生の蜂の子は無理だ。でも、皆は大丈夫な気がする。


 と言う訳で、人魚さん達含めて、ぽんぽこりんなお腹の集団が出来上がった。うん、話し合いしようと思っていたのに、想定外だ。まぁ、それだけ大量に食材を持ってきてもらったんだが……。

 あぁ、レイとカビアはきちんと程々で離脱した。ちなみにレイは伊勢海老派で、カビアは焼きウニ派だった。


「あぅぅ……。動けない……。でも美味しかった。悔いは無い……」


 ポリミリアが駄目な台詞を吐いているのが印象的だった。まぁ、海も陸も一緒と言う事でこれからの交流が楽しみにはなった。出来ればこうやって良い関係が築けていければ良いな。そう思いながら食休みと相成った。

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