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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第237話 温泉卵好きです、出汁醤油でつるりといくのが堪りません

 上機嫌のタロの相手をしていると、カビアが紐のついたザルと卵を持ってきてくれた。


「それは何に使うんですか?」


 ロッサが不思議そうに指さす。


「湯の温度を測ろうかなと思って」


 時計を確認し、泉源直上に浸ける。


「鶏の卵ですよね?それで温度が分かるんですか?」


 ロッサが首を傾げる。


「卵って卵黄と卵白が有るよね。あれはそれぞれ固まる温度が違うんだ。卵黄が大体70度、卵白は80度で固まる。このまま30分程置いて、卵黄だけが固まるなら65度ちょっとかな。卵白に影響が出るなら70度ちょっと。卵白も固まるなら75度以上だね」


「そうなんですか……。なるほど……」


 ロッサが納得いったような顔になる。


「カビアお願いが有るんだけど」


「何でしょうか?」


「今朝、鳥と言うか鶏が出ていたけど、頭の部分の羽を丁寧に毟って、2時間程味付け無しで茹でて欲しいと食堂に頼んでもらえるかな」


「はい。それは可能と考えますが、何にお使いになりますか?」


「村だとタロに骨を与えていたけど、ここ最近与えられていない。骨の材料が不足している。なので、それを補充する為かな。そんなに量はいらないので、頼むと伝えて欲しい」


「畏まりました。昼時にはある程度冷えたものをお出し出来るように致します」


 そう言うとカビアは走って行った。忙しいな、彼も。


 タロは温泉を気に入ったのか、興味深げにクンクンと周囲を嗅いでいる。


『へんなにおい、ぬくいの!!すき!!』


 そんなタロを撫でながら、皆と今後について打ち合わせる。お湯が出てしまえば、後は各設備の完成を待つだけになる。ざっと巡っただけだが、未完成の建物には興味が無さそうだ。

 南の海の村に関しては、道作りの組が動き始めるだろうが、すぐでは無い。実際に村に着手するのは町が出来て暫くの後だろう。


 今日は各設備へのお湯の流れを調べて、問題が無いか見て回ると言う事で落ち着いた。


 そんな事をしている間に、30分が経過しようとしている。ザルを上げて、小皿と簡易な匙を作っていく。皆の皿に卵を割っていくが卵黄は固まり、卵白も一部が固まっている。源泉の湯温は70度ちょっとだな。予想したより高い。

 荷物から塩を取り出して、ふりかける。まぁ、サルモネラ菌がいたとしても、65度で30分煮沸したら死滅する。安心して食べよう。


「茹でた卵は食べますけど、黄色いのも白いのも固くてあまり美味しい言うんは感じませんね」


 チャットがぷにぷにと卵黄を突く。


「まぁ、つるっと食べてみて」


 そう言いながら、匙で温泉卵を食べる。ほの温かい温泉卵だ。卵黄も固まり過ぎず、流れ出す程でも無く、瑞々しい状態だ。ほのかな塩気と相まって、どこか懐かしい味がする。


「これ、美味しいわね。私も卵を茹でたのはあまり好きでは無いけど、これは瑞々しくて食べやすいわ……」


 ティアナが顔を綻ばせる。


「表現しにくいで御座るが、これは美味い……。たかが卵と侮っており申した」


 リナも気に入ったようだ。


「故郷だと、温泉が有ると、こうやって卵や野菜を茹でて料理にしていたよ」


「故郷はそんなに、温泉?と言うのが湧いているの?」


 リズが首を傾げる。


「火山、まぁ、炎を上げる山が沢山有ったからね。その分、温泉も色々な所で湧いていたよ」


 そう答えると、感心したような表情が返ってきた。


「過酷だったのね」


「いやいや。そこまで過酷では無いよ。もう何百年と付き合っているんだ。皆慣れているよ」


 そう答えながら、匙と小皿を回収し、洗っておく。食堂に寄贈したら、何かに使ってもらえるかな。そう思いながら立ち上がる。貯水設備は満水となり、排水を始めている。

 下流の影響を見に行かないといけない。まずは温泉宿かな。カビアが調整し、戻って来たのに合流して、歓楽街に湯の経路に沿って向かう。暗渠の蓋の引き上げ用の穴からは湯気が漏れ出している。


 温泉街を歩く時特有の何とも言えない香りに包まれながら進む。


 温泉宿に辿り着いたが、大きな混乱は発生していない。きちんと水門が機能しているようだ。責任者を捕まえ状況の説明を求める。


「はい。ご指示通りに大元の水門は閉じていますので、影響は有りません。浴場の設備は有る程度完成している物も有りますので、順次開放して試験となります」


「実際に浸かれるようになるのはどの辺りを見ていますか?」


「そうですね……。大浴場含めるので有れば、10日程でしょうか。それまでには気密も含めて整備は完了します」


 10日か……。海に行って帰れるか……。人魚さんに昆布の件と魚粕(うおかす)の件も話がしたいし、丁度良いか……。


「あぁ、後聞きたい事が。水路等、石では無く、不定形の固まる石を使っているようですが、材料は何なのですか?」


「あぁ、これは……」


 どうも、西の方の山から採取出来る岩を砕き、石灰と水を混ぜ合わせて、作っているようだ。聞いている限り、山の状況を聞くと休火山らしい。と言う事は、これローマンコンクリートの可能性が高い。養生期間が長いのも意味が分かった。

 と言うか、石灰を石灰として認識しているのか……。焼き入れと言うか石灰窯も開発されている。はぁぁ、石鹸作りで苦労したのに、素材の研究は結構進んでいるのか。これ石鹸作りが(はかど)りそうだな。

 尚も聞いていると花崗岩や真砂土(まさど)も有る。あぁ、これ、和製コンクリートと言うか三和土(たたき)が作れる……。

 

 仲間達と相談し、本日は視察を続行し、明日以降の天候の様子を見ながら、海まで足を延ばそうと言う話になった。人魚さん元気かな?楽しみだ。

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